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人生の意味

実存療法における人生の意味とは

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは、実存療法シリーズの3本目です。「人生の意味」をテーマに解説していきます。

実存療法における人生の意味とは、どこかに用意された正解ではなく、人との関わりや仕事、体験、そして変えられない苦しみへの向き合い方の中で、一人ひとりが自分で見いだしていくものです。

当コラムでは、フランクルの考え方を交えながら、人生の意味の捉え方と、自分にとっての意味を見いだすワークを紹介します。目次は以下の通りです。

目次

①人生の意味とは

実存療法では、人生の意味は、あらかじめどこかに用意されている答えではなく、人や仕事、体験との関わりの中で、一人ひとりが見いだしていくものと考えます。

「無意味」という関心事

精神科医ヤーロム[1]は、人間が向き合う4つの究極的関心事の一つに「無意味」を挙げました。人生にあらかじめ決められた意味がないことは、不安をもたらす一方で、自分の人生の意味を、自分で見いだしていける自由でもあると考えます。

意味は「問われている」

「人生の意味とは何か」と問い続けて答えが出ずに苦しくなることがあります。実存療法の流れをくむフランクルは、私たちが人生に意味を問うのではなく、人生のほうが私たちに問いかけており、私たちは日々の行動でそれに答えていくのだ、と考え方を転換することを提案しました。

②フランクルの考え方

人生の意味をめぐる考え方に、大きな影響を与えたのが、オーストリアの精神科医ヴィクトール・フランクルです。

『夜と霧』の体験

フランクルは、第二次世界大戦中にナチスの強制収容所に収容されました。その体験をつづった『夜と霧』[2]の中で、極限の状況でも、生きる意味を見失わなかった人が、心の支えを保ちやすかったことを描いています。この体験をもとに、生きる意味を中心にすえた心理療法、ロゴセラピーを発展させました。

意味を見いだす3つの道

フランクルは、人が意味を見いだす道を、大きく3つに分けて考えました。

創造:仕事や作品づくりなど、何かを生み出したり、誰かの役に立ったりすること

体験:自然や芸術に心を動かされたり、人を愛したりすること

態度:変えられない苦しみに対して、どのような態度をとるかを選ぶこと

3つ目の「態度」は、病気や喪失など、自分では変えられない状況にあっても、意味を見いだす道が残されていることを示しています。

③意味は見いだしていくもの

人生の意味は、考え込むだけで見つかるものではなく、行動や関わりの中で見えてくるものです。

意味が「ある」感覚と「探す」気持ち

心理学者スティーガーら[3]は、人生の意味を、「自分の人生には意味がある」と感じている程度と、「人生の意味を探している」程度の、2つの側面に分けて測る質問紙を作りました。この2つは別のものであり、意味を探していることと、意味があると感じていることは、必ずしも一致しません。

意味を探すこと自体は自然なことですが、探すことばかりに気をとられると、今ここで意味を感じる機会を見逃してしまうこともあります。

関わりの中で見えてくる

ヤーロム[1]は、人生の意味についての問いに対しては、頭で答えを出そうとするよりも、人や仕事、物事に深く関わることが助けになると考えました。何かに夢中になっているとき、人は「意味とは何か」と問わなくても、意味を生きているのです。

④意味を見いだすワーク

フランクルの3つの道を手がかりに、自分にとっての意味を見いだすワークを紹介します。

3つの道で書き出す

創造:これまでに、誰かの役に立てた、何かを生み出せたと感じた経験は?

体験:心が動かされた景色、作品、人との出会いは?

態度:つらい状況の中で、自分なりに大切にしてきた姿勢は?

思いつくものを、それぞれ1〜3つずつ書き出してみましょう。小さなことでかまいません。

「人生からの問い」に答える

「人生は今、私に何を問いかけているだろうか」と考えてみます。例えば、「家族は今、私に何を求めているだろう」「今の仕事で、私にしかできないことは何だろう」といった問いです。答えは、大きな目標でなくてもかまいません。今日できる行動として、書き出してみましょう。

価値に沿った一歩

書き出したことから、自分が大切にしたい価値を1つ選び、それに沿った小さな行動を今週の予定に入れます。価値に沿って行動するという考え方は、価値の明確化でも詳しく紹介しています。

⑤日常で意味を感じる習慣

人生の意味は、大きな出来事の中だけでなく、日々の小さな場面にも見いだすことができます。

一日の終わりに振り返る

寝る前に、「今日、誰かの役に立てたこと」「心が動いたこと」「自分なりに大切にできた姿勢」を、それぞれ1つずつ思い出してみましょう。フランクルの3つの道に沿った振り返りです。毎日続けると、意味は特別な場面だけにあるのではないと実感しやすくなります。

人との関わりを1つ増やす

人生の意味は、人との関わりの中で感じられることが多いものです。しばらく連絡をとっていない人に一言メッセージを送る、身近な人の話をいつもより丁寧に聴く、といった小さな関わりを、1つ増やしてみましょう。

⑥場面で考えてみよう

人生の意味について悩みやすい場面に、ここまでの考え方を当てはめてみましょう(架空の例です)。

定年後、生きがいを見失った

Cさんは、定年退職してから、「自分はもう誰の役にも立っていない」と感じ、毎日をぼんやり過ごしていました。3つの道で書き出してみると、「創造」として、現役時代に後輩を育てたことが一番の誇りだったと気づきました。

Cさんは、地域の学習支援のボランティアに参加することにしました。子どもに勉強を教える時間に、「教えることが自分にとって大切なのだ」という手応えを感じるようになりました。

病気で、以前の生活ができなくなった

Dさんは、病気のために仕事を辞め、「こんな体では、生きている意味がない」と感じていました。主治医やカウンセラーと話す中で、「態度」の道、つまり、病気とどう向き合うかを選ぶことに意味があると考えるようになりました。

Dさんは、同じ病気の人が集まる会に参加し、自分の経験を話すようになりました。病気がなくなったわけではありませんが、「この経験が誰かの役に立つかもしれない」と感じられるようになったといいます。

⑦注意

人生の意味について考えるときに、気をつけたい点をまとめます。

答えを急がない

人生の意味は、すぐに答えが出るものではありません。答えが見つからないことを、失敗だと考える必要はありません。また、「意味のある人生を送らなければ」と自分を追い詰めると、かえって苦しくなります。小さな手応えを積み重ねていくことを大切にしましょう。

無意味感が強いときは

「何をしても意味がない」という感覚が強く、気分の落ち込み、興味の喪失、不眠などが2週間以上続く場合は、うつ病などの心の不調が隠れていることがあります。医療機関に相談しましょう。

「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちが続くときは、一人で抱え込まず、医療機関や、電話・SNSの相談窓口(厚生労働省の「まもろうよ こころ」で探せます)、お住まいの地域の精神保健福祉センターに相談してください。命の危険が差し迫っているときは、救急(119番)に連絡してください。

⑧まとめ

実存療法における人生の意味は、与えられるものではなく、関わりや行動、苦しみへの向き合い方の中で、自分で見いだしていくものです。

今回のポイント

人生の意味は、用意された正解ではない

フランクルは、創造・体験・態度の3つの道を示した

意味は、考え込むより、関わりの中で見えてくる

無意味感が強く続くときは、専門家に相談する

実存療法の全体像は、実存療法(実存人間主義)とはで、自由と責任については、自由と責任で解説しています。

シリーズの他のコラム

実存療法シリーズでは、基本の考え方から、自由と責任、人生の意味までを解説しています。あわせてご覧ください。

実存療法とは|人生の意味を問う心理療法、具体例も紹介

実存療法における自由と責任とは|意味と具体例を解説

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Yalom, I. D. (1980). Existential psychotherapy. New York: Basic Books.
 
[2] Frankl, V. E. (1977). …trotzdem Ja zum Leben sagen: Ein Psychologe erlebt das Konzentrationslager. München: Kösel.(池田 香代子(訳)(2002). 夜と霧 新版 みすず書房)
 
[3] Steger, M. F., Frazier, P., Oishi, S., & Kaler, M. (2006). The Meaning in Life Questionnaire: Assessing the presence of and search for meaning in life. Journal of Counseling Psychology, 53(1), 80-93.
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