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自由と責任

実存療法における自由と責任とは
 

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは、実存療法シリーズの2本目です。「自由と責任」をテーマに解説していきます。

実存療法における自由と責任とは、変えられない状況の中でも、それにどう向き合いどう行動するかを選ぶ自由があること、そしてその選択によって自分の人生を形づくっているのは自分自身だと引き受けることを指します。

当コラムでは、自由がなぜ不安を生むのか、責任を引き受けるとはどういうことかを、具体例とワークで紹介します。目次は以下の通りです。

目次

①自由と責任とは

実存療法でいう自由とは、どんな状況にあっても、その状況にどう向き合い、どう行動するかを選ぶことができる、ということです。そして責任とは、その選択によって、自分の人生を形づくっているのは自分自身だと引き受けることです。

状況の中の自由

私たちは、生まれる時代や家庭、体質、偶然の出来事などを選ぶことはできません。実存療法でいう自由は、「何でも思い通りにできる」という意味ではなく、そうした変えられない条件の中で、それにどう向き合い、次に何をするかを選ぶ自由のことです。

人生の「作者」になる

精神科医ヤーロム[1]は、責任を、自分の人生や感情、つらさの「作者」であることを自覚することだと説明しています。これは「自分が悪い」と責めることではなく、「この先の物語を書き進められるのも自分だ」と気づくことを意味します。

②自由はなぜ不安なのか

自由は、喜ばしいものであると同時に、重く、不安なものでもあります。

選ぶことの重さ

選ぶということは、選ばなかった道をあきらめることでもあります。また、自分で選んだ以上、結果を誰かのせいにはできません。こうした重さから、人は無意識のうちに、自由から逃げようとすることがあると、実存療法では考えます。

責任から逃げるパターン

他人や環境のせいにする:「親があんな育て方をしたから」「会社が悪いから」

決めずに先送りする:「そのうち考える」と、大事な決断を延ばし続ける

「しなければ」で考える:本当は自分で選んでいることを、義務だと感じて選択から目をそらす

誰かに決めてもらう:重要な判断を、いつも他人の意見に任せる

これらは、誰にでもある自然な反応です。大切なのは、自分を責めることではなく、「今、自分は選択から目をそらしているかもしれない」と気づくことです。

③責任を引き受けるとは

責任を引き受けることは、自分を責めることとは違います。

責めることとの違い

「自分のせいだ」と自分を責めると、人は過去にとらわれて動けなくなります。一方、責任を引き受けるとは、「起きたことをどう受け止め、これからどうするかは、自分が選べる」と、未来に目を向けることです。

例えば、仕事で失敗したときに、「自分はダメな人間だ」と責めるのではなく、「次に同じことが起きないよう、確認の手順を見直そう」と考えるのが、責任を引き受ける態度です。

選べることと選べないことを分ける

強制収容所を生き抜いた精神科医フランクル[2]は、すべてを奪われた状況でも、その状況にどんな態度をとるかという最後の自由だけは、誰にも奪えないと述べました。自分では変えられないことと、自分が選べることを分けて考えることが、責任を引き受ける第一歩になります。

④自分でできるワーク

自由と責任について考えるためのワークを紹介します。紙に書きながら取り組んでみましょう。

「しなければ」を「選ぶ」に言い換える

「しなければならない」と感じていることを3つ書き出し、それぞれを「〜することを選んでいる」と言い換えます。次に、「なぜそれを選んでいるのか」を書き足しましょう。

「毎日、残業しなければならない」→「残業することを選んでいる。なぜなら、チームに迷惑をかけたくないし、評価も大切にしたいから」

言い換えてみると、「選んでいる理由」が自分にとって納得できるものか、それとも見直したいものかが見えてきます。

選べることを書き出す

今悩んでいることを1つ取り上げ、紙を2つに分けて、左に「自分では変えられないこと」、右に「自分が選べること」を書き出します。右側から、今週できることを1つ選んで実行してみましょう。

先送りしている決断を見つける

「いつか決めよう」と先送りしていることはないでしょうか。1つ書き出し、「決めないでいること」によって、何を選んでいることになっているのかを考えてみましょう。決めないことも、一つの選択です。

⑤場面で考えてみよう

自由と責任の考え方を、よくある場面に当てはめてみましょう(架空の例です)。

転職を迷い続けている

Aさんは、5年前から転職を考えていますが、「今の会社にも恩がある」「景気が悪いから」と、決断を先送りしてきました。「しなければ」の言い換えをしてみると、「今の会社にいることを選んでいる。なぜなら、安定を手放すのが怖いから」と気づきました。

Aさんは、すぐに転職するかどうかではなく、「1か月以内に、興味のある業界の人に話を聞く」という小さな選択をしました。自分で選んだ一歩だと感じられたことで、迷いの中にも少し手応えが生まれました。

親の介護で自分の時間がない

Bさんは、親の介護で自由な時間がなくなり、「自分の人生は親に奪われた」と感じていました。「変えられないこと」と「選べること」を書き出すと、親の病気は変えられない一方で、介護サービスの利用を増やすこと、週に1回は友人と会うことは、自分で選べると気づきました。

「介護をする」ことも、Bさんが親を大切に思う気持ちから選んでいることだと捉え直したことで、つらさがなくなったわけではないものの、自分の生活を取り戻すための選択をしやすくなりました。

⑥注意

自由と責任について考えるときに、気をつけたい点をまとめます。

「自己責任」とは違う

実存療法でいう責任は、つらい状況をすべて本人のせいにする「自己責任論」とは違います。虐待や暴力、病気、災害、差別など、本人に責任のないことで苦しんでいる場合、その原因を自分に求める必要はありません。実存療法の責任は、「これからどう向き合うかを選べる」という、未来に向けた考え方です。

つらいときは専門家に

自分を責める気持ちが強くなりすぎたり、気分の落ち込みや不眠が2週間以上続いたりする場合は、医療機関や心理の専門家に相談しましょう。

「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちが続くときは、一人で抱え込まず、医療機関や、電話・SNSの相談窓口(厚生労働省の「まもろうよ こころ」で探せます)、お住まいの地域の精神保健福祉センターに相談してください。命の危険が差し迫っているときは、救急(119番)に連絡してください。

⑦まとめ

実存療法における自由と責任は、変えられない状況の中でも向き合い方を選べること、そして自分の人生の作者であることを引き受けることです。

今回のポイント

自由とは、状況にどう向き合うかを選べること

自由は不安も生み、人は選択から逃げることがある

責任を引き受けるとは、自分を責めることではない

「しなければ」を「選ぶ」に言い換えて考える

実存療法の全体像は、実存療法(実存人間主義)とはで、人生の意味については、人生の意味で解説しています。

シリーズの他のコラム

実存療法シリーズでは、基本の考え方から、自由と責任、人生の意味までを解説しています。あわせてご覧ください。

実存療法とは|人生の意味を問う心理療法、具体例も紹介

実存療法における人生の意味とは|意味と具体例を解説

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Yalom, I. D. (1980). Existential psychotherapy. New York: Basic Books.
 
[2] Frankl, V. E. (1977). …trotzdem Ja zum Leben sagen: Ein Psychologe erlebt das Konzentrationslager. München: Kösel.(池田 香代子(訳)(2002). 夜と霧 新版 みすず書房)
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