みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。
このコラムは、内的家族システム療法(IFS)シリーズの3本目です。「Selfとパーツの種類」をテーマに解説していきます。
IFS(内的家族システム療法)では、心の中心に穏やかな「セルフ(Self)」があり、その周りに、マネージャー、消防士、追放者という3種類の役割をもつパーツがあると考えます。セルフとパーツの関係を知ることで、IFSの全体像が見えてきます。
当コラムでは、セルフの8つの特徴、3種類のパーツとその関係、セルフからパーツに関わる方法を紹介します。目次は以下の通りです。
目次
- ①セルフ(Self)とは
- ②3種類のパーツ
- ③パーツ同士の関係
- ④セルフから関わる
- ⑤自分のパーツを知るワーク
- ⑥場面で考えてみよう
- ⑦注意
- ⑧まとめ
①セルフ(Self)とは
IFSでいうセルフ(Self)とは、パーツとは別に、誰の心の中心にもあると考えられている、穏やかで思いやりのある「本来の自分」のことです。
セルフの8つの特徴
IFSを提唱したシュワルツ[1]は、セルフの性質を、英語の頭文字がCで始まる8つの言葉で表しています。
落ち着き(Calm)
好奇心(Curiosity)
明晰さ(Clarity)
思いやり(Compassion)
自信(Confidence)
勇気(Courage)
創造性(Creativity)
つながり(Connectedness)
セルフは傷つかない
IFSでは、どれほどつらい体験をした人でも、セルフそのものは損なわれずに残っていると考えます。パーツが前に出て、セルフが見えにくくなっているだけであり、パーツが少し下がると、セルフは自然に現れると捉えます。
②3種類のパーツ
IFSでは、パーツをその役割によって、マネージャー、消防士、追放者の3つに分けて捉えます。
マネージャー
マネージャーは、つらい感情が表に出てこないよう、先回りして生活をコントロールするパーツです。完璧主義、自己批判、人の顔色をうかがう、何でも計画する、といった形で現れます。本人を守るために、いつも気を張っているのが特徴です。
消防士
消防士は、それでもつらい感情があふれ出しそうになったとき、それを一気に消そうとして動くパーツです。やけ食い、飲酒、ゲームやスマートフォンへの没頭、怒りの爆発など、衝動的な行動として現れることがあります。後のことを考えず、とにかく今の痛みを消そうとするのが特徴です。
追放者
追放者は、過去のつらい体験による痛みや恥、恐れ、さびしさを抱えているパーツです。その感情があまりにつらいため、マネージャーや消防士によって心の奥に閉じ込められ、「追放」されています。幼い子どものような姿で感じられることも多いとされます。
③パーツ同士の関係
3種類のパーツは、ばらばらに動いているのではなく、互いに影響し合っています。
守る側と守られる側
マネージャーと消防士は、どちらも追放者の痛みから本人を守る「守るパーツ」です。追放者の痛みが強いほど、守るパーツの働きも強く、極端になりやすいと考えます。
例:子どもの頃に「役に立たない」と言われた痛みを抱える追放者
マネージャー:仕事を完璧にこなし、人の期待に応え続けようとする
消防士:失敗して痛みがあふれそうになると、夜中までお酒を飲んで忘れようとする
マネージャーと消防士の対立
マネージャーは消防士の衝動的な行動を嫌い、さらに厳しく管理しようとします。しかし、追放者の痛みはそのまま残っているため、消防士がまた動き出す、という悪循環が生まれることがあります。IFSでは、どちらかを押さえ込むのではなく、両方の守ろうとする意図を理解することを大切にします。
④セルフから関わる
パーツが少し下がり、セルフの状態でパーツと関わることを、IFSでは「セルフ・リーダーシップ」と呼びます。
セルフの状態に気づく
パーツと向き合っているときに、8つのCのような感覚、特に好奇心や落ち着き、思いやりが感じられたら、セルフの状態に近いサインです。反対に、パーツに対して「嫌だ」「早く消えてほしい」と感じるときは、別のパーツが前に出ています。
守るパーツを尊重する
IFSでは、追放者の痛みに直接取り組む前に、まず守るパーツの役割を認め、信頼関係を築くことを重視します。守るパーツが「もう大丈夫そうだ」と感じて許しを出してくれてから、奥にある痛みに進みます。守るパーツを無理に押しのけると、かえって抵抗が強くなると考えられています。
⑤自分のパーツを知るワーク
自分の中のマネージャーや消防士に気づくためのワークを紹介します。追放者の痛みに深く触れない範囲で、取り組んでみましょう。
マネージャーを見つける
「いつも気を張っていること」「自分に課しているルール」を書き出してみます。例えば、「人に頼ってはいけない」「失敗は許されない」などです。それぞれについて、「このルールは、私を何から守ろうとしているのだろう」と考えてみましょう。
消防士を見つける
つらいときに、ついやってしまう行動を書き出します。例えば、「疲れると深夜までスマートフォンを見る」などです。その行動の直前に、どんな気持ちがあったかを思い出してみましょう。消防士は、その気持ちを消そうとしているのかもしれません。
8つのCで自分をチェックする
パーツのことを考えているとき、8つのCのうち、どれを感じられているかをチェックしてみましょう。好奇心や思いやりを感じられていれば、セルフからパーツに関われている状態に近いと考えられます。感じられないときは、無理をせず、一度休みましょう。
⑥場面で考えてみよう
3種類のパーツの見方を、よくある場面に当てはめてみましょう(架空の例です)。
がんばりすぎて燃え尽きる
Gさんは、職場で頼まれた仕事を断れず、毎日遅くまで働いていました。休日になると何もする気が起きず、一日中動画を見て過ごしてしまい、そんな自分を責めていました。
パーツの見方で整理すると、「人の期待に応えなければ」と働き続けるマネージャーと、疲れを一気に忘れようとする消防士が、交互に動いていたことがわかります。その奥には、「役に立たなければ、見捨てられる」という追放者の不安があるのかもしれません。
見方が変わると
Gさんは、動画を見続ける自分を「だらしない」と責めるのをやめ、「疲れを消そうとしてくれているパーツ」として眺めるようにしました。そのうえで、マネージャーに「少し仕事を減らしても、大丈夫かもしれないよ」と語りかけ、週に1回は定時で帰る日をつくりました。パーツ同士の綱引きが少しゆるみ、休日の過ごし方にも余裕が出てきました。
⑦注意
セルフとパーツについて考えるときに、気をつけたい点をまとめます。
追放者には専門家と一緒に
追放者のパーツには、過去のつらい体験の記憶や感情が結びついています。一人で追放者に深く関わろうとすると、強い感情にのみ込まれることがあります。追放者に関わる取り組みは、IFSの訓練を受けた専門家のもとで行いましょう。
危険な行動があるときは
消防士の行動が、自分を傷つける行為や、お酒・薬物への依存など、心身を危険にさらすものになっている場合は、パーツの見方で理解しようとするだけでなく、医療機関や専門家に相談してください。
「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちが続くときは、一人で抱え込まず、医療機関や、電話・SNSの相談窓口(厚生労働省の「まもろうよ こころ」で探せます)、お住まいの地域の精神保健福祉センターに相談してください。命の危険が差し迫っているときは、救急(119番)に連絡してください。
⑧まとめ
IFSでは、心の中心にセルフがあり、マネージャー、消防士、追放者という3種類のパーツが、互いに影響し合っていると考えます。
今回のポイント
セルフは、8つのCで表される穏やかな本来の自分
マネージャーと消防士は、追放者の痛みから本人を守っている
守るパーツを尊重し、信頼を築いてから奥へ進む
追放者や危険な行動には、専門家と一緒に取り組む
IFSの全体像はIFSとはで、パーツへの気づき方と関わり方はパーツ(部分)の理解で解説しています。
シリーズの他のコラム
IFSシリーズでは、基本の考え方から、パーツの理解、Selfとパーツの種類までを解説しています。あわせてご覧ください。
しっかり身につけたい方へ
公認心理師、精神保健福祉士など専門家の元で心理療法を学びたい方は、私たちが開催している講座をおすすめしています。内容は以下の通りです。
・はじめての心理療法
・感情コントロール,マインドフルネス療法
・気持ちを整理する,認知行動療法
・自分も相手も大切にする,自己主張の練習
講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
講座の日程が合わない方や、自分のペースで学びたい方は、個別レッスンのご相談も受け付けています。
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連



