みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。
このコラムは、選択理論シリーズの3本目です。「WDEPモデル」をテーマに解説していきます。
WDEPモデルとは、選択理論にもとづく心理療法「リアリティセラピー」で使われる、W(望み)、D(行動)、E(自己評価)、P(計画)の4つのステップで、自分の行動を見直し、望む方向に向けて計画を立てる方法です。アメリカのロバート・ウボルディングが、リアリティセラピーの実践手順としてまとめました。
今回は、WDEPモデルの4つのステップと、良い計画の立て方を、具体例とワークシートを使って解説します。目次は以下の通りです。
目次
①WDEPモデルとは
WDEPモデルは、選択理論の考え方を、日常の悩みに使える形にした手順です。まずは、その特徴を確認しましょう。
リアリティセラピーの手順
選択理論を提唱したグラッサーのもとで学んだウボルディング[1]は、リアリティセラピーの面接の進め方を、4つの英語の頭文字をとって「WDEP」と名づけ、分かりやすく整理しました。カウンセリングだけでなく、学校での生徒指導や、職場での部下との面談などでも使われています。
過去より「今」と「これから」
WDEPモデルでは、「なぜうまくいかないのか」と過去の原因を探るよりも、「今、何をしているか」と「これから何をするか」に焦点を当てます。自分が変えられる行動に目を向けることで、具体的な一歩につなげていきます。
②4つのステップ
WDEPモデルは、次の4つのステップで進めます。それぞれ、自分への質問の形で考えると取り組みやすくなります。
W:望みを明らかにする
「本当は、どうなりたいですか?」
「何を手に入れたいですか?」
まずは、自分が本当に求めていることを言葉にします。「上司に怒られたくない」のような避けたいことではなく、「上司と信頼関係を築きたい」のように、求めていることの形で考えるのがコツです。
D:今の行動を確かめる
「そのために、今、実際に何をしていますか?」
「昨日一日、具体的に何をしましたか?」
気持ちや考えではなく、実際の行動を、できるだけ具体的に書き出します。
E:行動を自己評価する
「今していることは、望みをかなえるのに役立っていますか?」
「このまま続けると、望みに近づきますか?」
WDEPモデルの中心となるステップです。行動が良いか悪いかを人に判断されるのではなく、自分の望みに照らして、自分で評価します。
P:計画を立てる
「では、これから何をしますか?」
「明日、最初にできることは何ですか?」
自己評価をもとに、望みに近づくための新しい行動の計画を立てます。
③良い計画の条件
WDEPモデルでは、計画の立て方が大切にされます。ウボルディングは、良い計画の条件として、次のような点を挙げています。
良い計画のチェックリスト
シンプル:分かりやすく、複雑すぎない
達成できる:今の自分の力で実行できる
測定できる:やったかどうかが分かる
すぐにできる:近いうちに始められる
自分でコントロールできる:他人の行動に左右されない
決意している:本人が「やる」と決めている
続けられる:くり返し実行できる
悪い計画と良い計画
例えば、「上司ともっと仲良くなる」は、測定できず、上司の反応に左右される計画です。「明日の朝、上司に自分から挨拶をする」なら、シンプルで、すぐにでき、自分でコントロールできる計画になります。
④具体例で確認
WDEPモデルを使った具体例を見てみましょう。どちらも理解のために作成した架空の例です。
例1 資格の勉強が続かない
W:半年後の資格試験に合格したい
D:帰宅後、スマホで動画を見て、気づくと寝る時間になっている
E:今の過ごし方では、合格には近づかない
P:帰宅したら、スマホを別の部屋に置き、まず20分だけテキストを開く
例2 夫婦げんかが多い
W:夫婦で穏やかに話せる関係になりたい
D:相手の帰りが遅いと、帰宅した瞬間に文句を言っている
E:文句を言うと相手が黙り込み、穏やかな関係からは遠ざかっている
P:帰宅したら、まず「お疲れさま」と言い、話したいことは夕食の後に伝える
どちらの例でも、相手や状況を変えようとするのではなく、自分が変えられる行動を計画にしているのがポイントです。
⑤一人で使うWDEPシート
WDEPモデルは、一人でも紙に書きながら使うことができます。次のシートに沿って、10分ほどで取り組んでみましょう。
WDEPシート
W:今の悩みについて、本当はどうなりたいか
D:そのために、この1週間、実際にしたこと(3つ)
E:それぞれの行動は、Wに役立っているか(○・△・×)
P:明日からする行動を1つ(良い計画のチェックリストで確認)
振り返りのコツ
計画を実行したら、1週間後にもう一度シートを見直しましょう。うまくいかなかった場合も、自分を責める必要はありません。「では、次は何をしようか」と、もう一度Pのステップに戻って、計画を立て直せば大丈夫です。
⑥人を支えるときの使い方
WDEPモデルは、部下や子ども、友人の相談に乗るときにも役立ちます。
質問で本人に考えてもらう
相手が悩んでいるとき、すぐに答えを教えるのではなく、「どうなりたい?」「今、何をしている?」「それは役に立っている?」と、WDEPの順に質問してみましょう。自分で考えて出した答えの方が、行動につながりやすくなります。
責めずに聞く
D(行動)を尋ねるときに、「なんでそんなことをしたの?」と問い詰めると、相手は身構えてしまいます。「最近、どんなふうに過ごしている?」と、関心を持って聞くことが大切です。グラッサーの「関係を育てる7つの習慣」(傾聴する、受容する、信頼するなど)を意識しましょう。
⑦使うときの注意
WDEPモデルを使うときは、次の点に気をつけましょう。
自己評価を押しつけない
E(自己評価)は、あくまで本人が行うものです。支える側が「その行動は間違っている」と決めつけると、相手を外からコントロールすることになり、選択理論の考え方から外れてしまいます。
つらさが強いときは専門家へ
気分の落ち込みが強い、眠れない日が続くなど、心身の不調が大きいときは、計画を立てる前に、まず休むことや、医療機関・専門家への相談を優先しましょう。
⑧まとめ
WDEPモデルは、望み(W)、行動(D)、自己評価(E)、計画(P)の4つのステップで、自分の行動を見直し、望む方向に向けて具体的な一歩を計画する方法です。
今回のポイント
「どうなりたいか」を、求める形で言葉にする
行動が望みに役立っているかを、自分で評価する
計画は、シンプルで、すぐにでき、自分でコントロールできるものに
人を支えるときは、答えを教えず、質問で考えてもらう
シリーズの他のコラム
選択理論シリーズでは、基本の考え方から実践の手順までを解説しています。あわせてご覧ください。
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監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連




