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観察・感情・ニーズ・要求の4ステップ

NVCの4ステップとは,具体的な実践法

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは、NVC(非暴力コミュニケーション)シリーズの2本目です。「NVCの4ステップ」をテーマに解説していきます。

NVCの4ステップとは、観察・感情・ニーズ・要求の4つの要素を順に言葉にすることで、相手を責めずに自分の気持ちと願いを伝え、相手の言葉の奥にある気持ちと願いも受け取るための、NVC(非暴力コミュニケーション)の基本の型です。

当コラムでは、4つのステップそれぞれのポイントと言い換えの例、職場や家庭での使い方を紹介します。目次は以下の通りです。

目次

①4ステップとは

NVCの4ステップは、観察・感情・ニーズ・要求の4つの要素を、順に言葉にしていく伝え方の型です。

4ステップの全体像

1.観察:「〜を見たとき(聞いたとき)」

2.感情:「私は〜と感じて」

3.ニーズ:「なぜなら、私は〜を大切にしたいから」

4.要求:「〜してもらえますか?」

NVCを提唱したローゼンバーグ[1]は、この4つを、自分を正直に表現するときにも、相手の言葉を共感をもって受け取るときにも使う、と説明しています。

使う前に知っておきたいこと

4ステップは、毎回この順番どおりに、すべて言わなければならないものではありません。最初のうちは、紙に書いて型どおりに練習し、慣れてきたら、自分の言葉で自然に話せるようにしていきます。一つひとつのステップを、具体例とともに見ていきましょう。

②ステップ1 観察

観察とは、評価や決めつけを混ぜずに、実際に見たこと・聞いたことを述べることです。

評価と観察の違い

「あなたはだらしない」「いつも遅い」のような言葉は、事実ではなく、事実に対する評価です。評価を聞いた相手は、責められたと感じて言い返したくなります。観察は、ビデオカメラに映るような、誰が見ても同じになる事実を述べます。

言い換えの例

評価:「あなたはいつも話を聞いていない」→ 観察:「今、私が話している間に、スマートフォンを3回見ていたね」

評価:「彼は仕事が遅い」→ 観察:「彼は、今月の報告書を締め切りの2日後に提出した」

評価:「子どもが言うことを聞かない」→ 観察:「宿題をしようと言ったら、『あとで』と言ってゲームを続けた」

「いつも」「全然」「絶対」などの言葉は、評価が混ざっているサインです。回数や時間、具体的な言葉に置き換えてみましょう。

③ステップ2 感情

感情とは、観察した出来事について、自分がどう感じているかを表す言葉です。

感情と「感情もどき」

「無視された気がする」「裏切られたと感じる」は、感情を表しているように見えますが、実は「相手が自分を無視した」「裏切った」という、相手の行動についての解釈です。NVCでは、こうした言葉を感情と区別し、その奥にある本当の感情(さびしい、悲しい、不安など)を探します。

感情もどき:「無視された」→ 感情:「さびしい」「悲しい」

感情もどき:「バカにされた」→ 感情:「悔しい」「恥ずかしい」

感情もどき:「責められている」→ 感情:「不安」「つらい」

感情の言葉を増やす

「むかつく」「最悪」など、いつも同じ言葉で気持ちを表していると、自分が本当は何を感じているのかが見えにくくなります。うれしい、ほっとした、わくわくする、がっかりした、心細い、もどかしい、など、感情を表す言葉のレパートリーを増やしておくと役立ちます。

なお、怒りや恐れを表した顔の写真を見て、その感情を言葉で選ぶと、写真の人物の性別を選ぶ場合に比べて、感情に関わる脳の扁桃体の反応が弱まったという研究も報告されています[2]。気持ちに名前をつけることは、自分を落ち着ける助けにもなると考えられます。

④ステップ3 ニーズ

ニーズとは、感情の奥にある、自分が大切にしたいことです。

ニーズと手段の違い

NVCでいうニーズは、安心、休息、尊重、理解、つながり、自由、協力など、誰もが持っている大切にしたいことです。「夫に早く帰ってきてほしい」は、特定の人の特定の行動に結びついているので、ニーズではなく、ニーズを満たすための「手段」です。この場合のニーズは、「つながり」や「協力」かもしれません。

ニーズと手段を分けると、選択肢が広がります。「早く帰る」以外にも、「休日に一緒に過ごす時間をつくる」「家事の分担を見直す」など、同じニーズを満たす方法がいくつも見えてくるからです。

感情とニーズをつなげる

ローゼンバーグ[1]は、他人の言動は私たちの感情のきっかけにはなっても、原因ではないと述べています。感情の原因は、自分のニーズが満たされているか、満たされていないかにある、と考えるのです。「あなたが〇〇したから、私は怒っている」ではなく、「私は〇〇を大切にしたいから、〇〇と感じている」と、自分のニーズと感情をつなげて伝えます。

⑤ステップ4 要求

要求とは、ニーズを満たすために、相手に具体的にお願いしたいことを伝えることです。

具体的に、肯定形で

「もっと気をつかってほしい」のようなあいまいなお願いは、相手が何をすればよいのかがわかりません。また、「〜しないで」という否定形のお願いも、何をすればよいのかが伝わりにくくなります。今すぐできる、具体的な行動を、「〜してもらえますか?」という肯定形で伝えましょう。

あいまい:「もっと家のことをやってほしい」→ 具体的:「月曜と木曜のゴミ出しをお願いできるかな?」

否定形:「会議で話をさえぎらないで」→ 肯定形:「私が話し終わってから、意見を言ってもらえますか?」

要求と強要の違い

断られたときに、相手を責めたり、罰したり、罪悪感を抱かせたりするなら、それは要求ではなく強要です。NVCの要求は、相手が「いいえ」と言う自由があることを前提にしています。

断られたら、「いいえ」の奥にある相手のニーズに耳を傾けます。例えば「今日は疲れていて休みたいんだね」と受け止めると、お互いのニーズを満たす別の方法を一緒に探しやすくなります。

つながりを確かめる要求

行動をお願いする前に、「今の話を聞いて、どう感じた?」「私の言いたいことが伝わったか、言い直してもらえる?」と、相手の気持ちや受け取り方を確かめるお願いをするのも効果的です。誤解をその場で解き、相手とのつながりを保ちながら話を進められます。

⑥場面で使ってみよう

4ステップを、日常のよくある場面に当てはめてみましょう。

職場で頼みごとをする

場面:同僚が、共有の資料を毎回締め切りの直前に送ってくる

観察:「今月の2回、資料が届いたのが会議の30分前だったよね」

感情:「私は焦ってしまって」

ニーズ:「会議の前に内容を確認して、落ち着いて準備したいんだ」

要求:「次回から、前日の夕方までに送ってもらうことはできそうかな?」

家族に気持ちを伝える

場面:パートナーが、食事中もずっとスマートフォンを見ている

観察:「夕食のあいだ、ずっとスマートフォンを見ていたね」

感情:「私は少しさびしかった」

ニーズ:「一日のことを話して、つながりを感じたいから」

要求:「夕食の15分だけ、スマートフォンを置いて話さない?」

相手の言葉を4ステップで聴く

相手が責める言葉を使っているときも、4ステップで聴くことができます。例えば、上司に「なんでこんなミスをするんだ」と言われたら、心の中で「上司は、取引先との信頼を守りたくて、焦っているのかもしれない」と、相手の感情とニーズを推測します。

そのうえで、「取引先に迷惑がかかることを心配されているんですね」と、推測を言葉にして確かめます。相手が「わかってもらえた」と感じると、話し合いが落ち着いて進みやすくなります。

うまくいかないときは

相手が強い怒りを向けてきて、自分も動揺しているときは、無理に共感しようとしなくてかまいません。まず、自分の感情とニーズを心の中で確かめる「自分への共感」をして、落ち着いてから話を続けましょう。

「少し考えさせてください」と、いったん時間をとることも大切な選択肢です。

⑦注意

4ステップを使うときに、気をつけたい点をまとめます。

型より気持ちに目を向ける

4ステップを型どおりに言おうとすると、話し方がぎこちなくなり、相手に「マニュアルどおりに話している」と感じさせてしまうことがあります。また、4ステップを、相手を自分の思い通りに動かすための手段として使うと、相手はそれを敏感に感じ取ります。

大切なのは、決まった言い回しではなく、自分と相手の感情とニーズに関心を向けることです。慣れてきたら、自分の言葉で自然に伝えましょう。

安全を優先する場面

暴力や脅しがある関係では、4ステップで話し合うことよりも、自分の身の安全を守ることを優先してください。配偶者からの暴力については配偶者暴力相談支援センター、身の危険が迫っているときは警察(110番)に相談できます。

また、人間関係の悩みで、眠れない、食欲がないなどの状態が続く場合は、一人で抱え込まず、医療機関や心理の専門家に相談しましょう。

⑧まとめ

NVCの4ステップは、観察・感情・ニーズ・要求の4つを言葉にすることで、相手を責めずに自分の思いを伝え、相手の思いも受け取るための型です。

今回のポイント

観察:評価を混ぜず、事実を述べる

感情:「感情もどき」ではなく、自分の感情を言葉にする

ニーズ:手段ではなく、大切にしたいことに目を向ける

要求:具体的・肯定形で、断る自由を残して頼む

NVCの考え方や背景、提唱者ローゼンバーグについては、NVCとはで解説しています。

シリーズの他のコラム

NVCシリーズでは、基本の考え方から、4ステップの実践までを解説しています。あわせてご覧ください。

NVCとは|非暴力コミュニケーションを解説

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Rosenberg, M. B. (2015). Nonviolent communication: A language of life (3rd ed.). Encinitas, CA: PuddleDancer Press.(安納 献(監訳)小川 敏子(訳)(2018). NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法 新版 日本経済新聞出版社)
 
[2] Lieberman, M. D., Eisenberger, N. I., Crockett, M. J., Tom, S. M., Pfeifer, J. H., & Way, B. M. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421-428.
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