みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。
このコラムは、ブリーフセラピーシリーズの2本目です。「リソース探し」をテーマに解説していきます。
リソースとは、悩みを解決したり、目標に近づいたりするために使える「資源」のことです。能力や経験など自分の中にあるものから、家族や友人、相談できる場所など周りにあるものまで、幅広いものが含まれます。ブリーフセラピーでは、問題の原因よりも、相談者がすでに持っているリソースに目を向けることを大切にします。
今回は、リソースの種類と、リソースを見つけて活かすための具体的な方法を解説します。目次は以下の通りです。
①リソースとは
リソースは、英語の「resource」で、「資源」「頼りになるもの」という意味です。まずは、ブリーフセラピーでリソースが大切にされる理由を確認しましょう。
リソースの意味
リソースには、問題の解決に役立つものなら、ありとあらゆるものが含まれます。例えば、次のようなものです。
能力 技術 知識 性格 価値観 健康
成功体験 失敗から学んだこと 乗り越えてきた経験
家族 友人 職場の仲間 相談機関 情報 お金 時間
悩んでいるときは、「自分には何もない」と感じやすいものです。しかし、改めて書き出してみると、思っている以上に多くのリソースを持っていることに気づくことがあります。

ブリーフセラピーでの位置づけ
ブリーフセラピーに大きな影響を与えた精神科医ミルトン・エリクソンは、相談者が持っている力や経験、ときには症状やこだわりさえも、変化のために活かせる資源と考えました。
この考え方は、解決志向ブリーフセラピーにも受け継がれています。面接の手引きをまとめたデ・ヨングとバーグ[1]も、問題が起きていないときや、少しましなときといった「例外」や、相談者の強みを丁寧に探し、それを解決の材料にしていくことを重視しています。
②リソースの種類
リソースは、大きく「自分の中にあるもの」と「自分の周りにあるもの」に分けられます。また、ふだんは見落としやすいリソースもあります。
自分の中のリソース
自分自身が持っている能力や経験、性格などです。
例:専門知識、資格、体力、健康
例:朝型の生活、まじめさ、人の話を聞く力
例:過去に資格試験に合格した経験、使える時間やお金、パソコンやアプリ
周りのリソース
周りの人や社会、環境から得られる支えです。自分の中のリソースを補い、目標の達成を後押ししてくれます。
例:家族や友人の応援、職場の制度や上司の理解
例:同じ経験をした先輩、専門家や相談機関
例:図書館、地域のサークル、インターネット上の情報
見落としやすいリソース
うまくいかなかった経験や、つらい時期を乗り越えてきた事実も、大切なリソースです。例えば、「前回の試験に落ちた」経験からは、自分の苦手分野や、効果のなかった勉強法が分かります。また、「つらい時期でも、仕事は休まず続けてきた」ことは、粘り強さという立派な力です。
短所に見える性格も、見方を変えればリソースになります。「心配性」は「準備を丁寧にできる」、「頑固」は「意志が強い」と捉え直すことができます。
③活かすための4ステップ
リソースを見つけて活かすには、次の4つのステップで進めると分かりやすくなります。紙やノートに書き出しながら進めましょう。
ステップ1 悩みを整理する
まず、何に困っているのかを具体的に書き出します。「いつ、どこで、どんなことに困っているのか」を意識すると、整理しやすくなります。悩みが大きいときは、いくつかの小さな悩みに分けてみましょう。
ステップ2 目標を決める
次に、どうなりたいかを、具体的な目標にします。「自信をつけたい」ではなく、「3か月後に、会議で1回は発言する」のように、達成できたかどうかが分かり、期限があるものにするのがコツです。
ステップ3 リソースを書き出す
目標のために使えそうなリソースを、「自分の中のリソース」と「周りのリソース」に分けて、できるだけたくさん書き出します。ここでは質より量です。「こんなことは役に立たない」と判断せず、思いついたものはすべて書きましょう。
ステップ4 計画を立てる
書き出したリソースの中から、すぐに使えそうなものを選び、「いつ、どのリソースを、どう使うか」を計画にします。毎日の生活に組み込める小さな行動にすると、続けやすくなります。
リソース活用シート
4つのステップを記入できるエクセルシートを用意しました。ご自身の状況に合わせて、自由に変更しながらご活用ください。
④見つけるための質問
リソースがなかなか思いつかないときは、自分に次のような質問をしてみましょう。解決志向ブリーフセラピーでよく使われる質問をもとにしています。
例外を探す質問
「悩みが少しでも軽かったのは、どんなときだった?」
「そのとき、自分は何をしていた? 周りはどうだった?」
どんな悩みにも、比較的ましなときがあるものです。その「例外」のときに自分がしていたことや、周りの状況には、解決のヒントになるリソースが隠れています。
乗り越えてきた力を聞く
「これまで、どうやってこの状況をしのいできた?」
「似たような困難を乗り越えたことはある?」
つらい状況でも、今日まで何とかやってきたこと自体が、その人の力の証です。どうやって乗り越えてきたのかを振り返ると、自分なりの対処法が見つかります。
周りの人の視点を借りる
「親しい友人は、自分の良いところをどう言うだろう?」
「困ったとき、誰なら話を聞いてくれそう?」
自分の良いところは、自分では気づきにくいものです。身近な人の目を借りて想像すると、思いがけないリソースが見つかることがあります。

⑤具体例で確認
4つのステップを使った具体例を3つ紹介します。ご自身の状況に近いものを開いて、参考にしてみてください。
資格試験が不安な例
会話が苦手な例
運動を習慣にしたい例
⑥自分でやってみよう
それでは、実際に自分のリソースを書き出してみましょう。10分ほどで取り組めます。
リソース書き出しワーク
①今の悩みを1つ書く
②その悩みについて、3か月後にどうなっていたいかを書く
③自分の中のリソースを5つ以上書く
④周りのリソースを3つ以上書く
⑤明日からできる小さな行動を1つ決める
書き出すときのコツ
「こんなものはリソースではない」と思うものでも、まずは書いてみましょう。書き出したものを眺めると、組み合わせ次第で使えるものが見つかります。
なかなか思いつかないときは、④の質問を使ったり、信頼できる人に「私の良いところはどこだと思う?」と聞いてみたりするのもおすすめです。書き出したリストは、気持ちが落ち込んだときに見返せるよう、手元に残しておきましょう。
⑦まとめ
リソースとは、悩みの解決や目標の達成に使える、ありとあらゆる資源のことです。リソースに目を向けると、自分が思っていた以上に恵まれていることに気づき、前向きに行動する勇気がわいてきます。
今回のポイント
リソースは「自分の中」と「周り」の両方にある
失敗経験や短所に見える性格もリソースになる
悩み→目標→リソース→計画の4ステップで活かす
思いつかないときは、例外や乗り越えてきた経験を探す

シリーズの他のコラム
ブリーフセラピーシリーズでは、基礎から具体的な技法までを解説しています。あわせてご覧ください。
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監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連




