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交流分析

交流分析とは,自己理解と対人関係の心理学

交流分析(Transactional Analysis:TA)とは、人の心を「親」「成人」「子ども」の3つの自我状態に分けて考え、自分と他者とのやりとりのクセを理解し、よりよい人間関係を築くための心理学です。アメリカの精神科医バーン[1]が、1950年代に精神分析をもとに作りました。

みなさんこんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

目次は以下の通りです。

目次

①交流分析とは何か

交流分析は、専門用語を日常の言葉に置きかえて、誰でも自分の心や人間関係を振り返れるように作られた心理学です。まずは、その特徴と生まれた経緯を確認しましょう。

分かりやすい心理学

交流分析は「精神分析の口語版」と呼ばれることがあります。精神分析の難しい理論を、「親の心」「子どもの心」といった身近な言葉で説明し直したことが、大きな特徴です。

「人間関係でいつも同じ失敗をする」「本当は仲良くしたいのに、けんか腰になってしまう」。交流分析は、こうした人間関係のクセに自分で気づき、変えていくための手がかりを与えてくれます。

生まれた経緯

エリック・バーン(Berne, E.)は、カナダ生まれの精神科医です。精神分析を学んだのち、1950年代に、患者の話し方や態度が場面によって大きく変わることに注目し、交流分析の考え方をまとめました。

1964年に出版した一般向けの本『Games People Play(人生ゲーム入門)』[2]がベストセラーとなり、交流分析は世界中に広まりました。日本でも、医療や教育、企業研修などで活用されています。

②心の3つの自我状態

交流分析の土台となるのが「自我状態」の考え方です。自我状態とは、考え方、感じ方、ふるまい方がひとまとまりになった、心のモードのようなものです。

親・成人・子ども

交流分析では、私たちの心には次の3つの自我状態があると考えます。場面によって、どの自我状態が表に出るかが変わります。

親(P):親や養育者から取り入れた心
成人(A):今の状況を冷静に判断する心
子ども(C):子どものころの感じ方の心

たとえば、後輩に注意するときは「親」、仕事の段取りを考えるときは「成人」、友人と思いきり笑うときは「子ども」の自我状態が働いていると考えられます。

5つに分ける見方

親の自我状態は、厳しく導く「批判的な親(CP)」と、温かく世話をする「養育的な親(NP)」に分けられます。子どもの自我状態は、のびのびとした「自由な子ども(FC)」と、周りに合わせる「順応した子ども(AC)」に分けられます。

この5つの心のエネルギーの強さをグラフに表したものが「エゴグラム」です。詳しくはエゴグラムのコラムで解説しています。

今の自我状態に気づく

日常の中で、「今の自分はどの自我状態で話しているか」を意識してみましょう。たとえば、つい部下に強い口調で注意したときは「批判的な親」、締め切りに追われて黙々と作業しているときは「成人」が働いているかもしれません。

自分の自我状態に気づけるようになると、場面に合わない自我状態から話していることにも気づきやすくなり、言い方を切り替えるきっかけになります。

③やりとりの3つの型

交流分析では、人と人とのやりとりを、どの自我状態から、相手のどの自我状態に向けて話しているかで分析します。やりとりは、大きく3つの型に分けられます。

相補的なやりとり

話しかけた自我状態に、期待どおりの自我状態から返事が返ってくるやりとりです。たとえば「今何時?」(成人)に「3時だよ」(成人)と返ってくる場合で、会話は自然に続きます。

交差するやりとり

期待とは違う自我状態から返事が返ってくるやりとりです。たとえば「今何時?」(成人)に「自分で時計を見なさい」(親)と返ってくると、会話はそこで途切れ、気まずさが生まれます。

裏のあるやりとり

表向きの言葉とは別に、本音のメッセージが隠れているやりとりです。たとえば「この服、お高いんですよ」という店員の言葉に、「あなたには買えないでしょう」という裏のメッセージが込められている場合です。

裏のあるやりとりは、後で紹介する心理ゲームのきっかけになることがあります。

会話が急に途切れたり、なんとなく気まずさが残ったりしたときは、交差するやりとりや裏のあるやりとりが起きていなかったかを振り返ってみましょう。

自分がどの自我状態から話していたかに気づくことが、次の会話を変えるきっかけになります。

④基本となる4つの人生態度

交流分析では、自分と他人を基本的にどう見ているかを「人生態度(基本的な構え)」と呼び、4つに分けて考えます。自分がどの構えをとりやすいかを知ることが、人間関係を見直す手がかりになります。

4つの構え

私もOK、あなたもOK
私はOK、あなたはOKでない
私はOKでない、あなたはOK
私もOKでない、あなたもOKでない

アーンスト[3]は、この4つの構えを2つの軸で整理した図を示し、人がその場その場で構えを行き来していることを説明しました。

めざす構え

交流分析がめざすのは、「私もOK、あなたもOK」という構えです。自分を大切にしながら、相手の存在も尊重する態度で、対等な関係を築く土台になります。

ストレスがかかると、「私はOKでない」と自分を責めたり、「あなたはOKでない」と相手を責めたりしやすくなります。そうした自分に気づき、少しずつ「私もOK、あなたもOK」に戻ることを意識してみましょう。

構えに気づく練習

人とぶつかったときに、心の中で「自分が悪い」と思ったのか、「相手が悪い」と思ったのかを振り返ってみましょう。前者が多い人は「私はOKでない」、後者が多い人は「あなたはOKでない」の構えに入りやすいのかもしれません。

どちらに気づいた場合も、「自分にも相手にも、それぞれの事情がある」と考え直してみることが、「私もOK、あなたもOK」に戻る練習になります。

⑤時間の使い方の6分類

バーン[2]は、人が他者と過ごす時間の使い方を6つに分類しました。どの過ごし方が多いかによって、人との関わりから得られる心の栄養(ストローク)の量や質が変わると考えます。

6つの過ごし方

①引きこもり:一人の世界に入る
②儀式:あいさつなど決まったやりとり
③雑談:天気や趣味などの気軽な話
④活動:仕事や勉強などの共同作業
⑤ゲーム:後味の悪いやりとり
⑥親密さ:本音で心を通わせる

①から⑥に進むほど、得られる心の栄養は多くなりますが、傷つくリスクも高くなります。一人の時間も、儀式や雑談も、どれも生活に必要な過ごし方です。

バランスを見直す

最近の1週間を振り返り、6つの過ごし方のうち、どれが多かったかを書き出してみましょう。たとえば「活動」ばかりで「親密さ」の時間がほとんどないと気づけば、家族や友人と本音で話す時間を意識してつくるきっかけになります。

「ゲーム」の時間が多いと感じた方は、心理ゲームのコラムも参考にしてください。

⑥主な分析とシリーズ

交流分析には、ここまで紹介した考え方を使った、いくつかの代表的な分析方法があります。このシリーズでは、それぞれをコラムで詳しく解説しています。

4つのテーマ

自分の自我状態のバランスを知るエゴグラム、心の栄養となる関わりを考えるストローク、子どものころに作られた人生の筋書きを考える人生脚本、繰り返してしまう後味の悪いやりとりを考える心理ゲームの4つです。

学ぶ順番の目安

初めての方は、まずエゴグラムで自分の傾向を知り、次にストロークで人との関わり方を見直すのがおすすめです。そのうえで、人生脚本や心理ゲームに進むと、自分の体験と結びつけて理解しやすくなります。

⑦活用するときの注意

交流分析は分かりやすい心理学ですが、使い方を誤ると、自分や他人を決めつける道具になってしまうことがあります。活用するときの注意点を確認しておきましょう。

人を決めつけない

「あの人は子どもの自我状態ばかりだ」など、交流分析の言葉を使って他人を評価するのは避けましょう。交流分析は、まず自分のクセに気づくために使うものです。

研究の状況と相談の目安

交流分析は医療や教育の現場で広く使われてきましたが、効果を厳密に調べた研究は、認知行動療法などと比べるとまだ多くありません。

人間関係の悩みから、気分の落ち込みや不眠などが続いている場合は、一人で抱え込まず、医療機関や専門家に相談してください。

⑧よくある質問Q&A

私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。

性格は変えられる?

交流分析では、性格をすっかり別のものに変えることより、自分の「人間関係のクセ」に気づき、場面に合わせて自我状態を使い分けられるようになることを大切にします。

たとえば、ついきつい言い方をしてしまう人が、それが「批判的な親」の自我状態から出ていると気づければ、落ち着いた「成人」の自我状態で話し直すことができます。こうした小さな切り替えを重ねることで、結果として人との関わり方が変わっていきます。焦らず、まずは気づくことから始めてみてください。まずは1日1回、自分の自我状態を振り返ることから試してみてください。

科学的な根拠はある?

交流分析は、精神科医のバーンが臨床経験をもとに作った理論で、分かりやすい言葉で人間関係を説明できることから、医療、教育、企業研修などで広く使われてきました。

一方で、認知行動療法などと比べると、効果を厳密に調べた研究はまだ多くありません。そのため、交流分析は「自分や人間関係を振り返るための分かりやすい道具」として活用し、心の不調の治療が必要な場合は、医療機関や専門家に相談することをおすすめします。自分に合う使い方を見つけながら、無理なく取り入れてください。

どこから学べばいい?

初めての方には、まず3つの自我状態を理解し、エゴグラムで自分の傾向を知ることから始めるのがおすすめです。自分の傾向が分かると、ストロークやゲームといったほかの考え方も、自分の体験と結びつけて理解しやすくなります。このシリーズでは、エゴグラム、ストローク、人生脚本、心理ゲームの順にコラムを用意しています。気になるテーマから読み進めてみてください。

仲間と一緒に練習したい方は、講座を活用するのも一つの方法です。一人で学ぶより、仲間と話し合うと理解が深まりやすくなります。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。

交流分析の基礎
エゴグラムで自分を知る
ストロークの練習
人間関係のクセの見直し

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)

コミュニケーション教室,講座,ダイコミュ

個別レッスン

個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースで交流分析を深めたい方は、下記をご参照ください。

個別レッスンの詳細はこちら。

シリーズの続きを読む

自分の5つの自我状態のバランスを知りたい方は、エゴグラムの見方と活かし方を解説したこちらのコラムがおすすめです。

②エゴグラムとは,診断の見方と活かし方

人との関わりで得られる「心の栄養」について知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。

③ストローク理論とは,心の栄養の与え方

他にも数多くの心理療法があります。ご自身の興味やお悩みに合った理論をじっくり探したい方は、一覧から選んでみてください。

心理療法の一覧

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Berne, E. (1961). Transactional analysis in psychotherapy. New York: Grove Press.
 
[2] Berne, E. (1964). Games people play: The psychology of human relationships. New York: Grove Press.
 
[3] Ernst, F. H. (1971). The OK corral: The grid for get-on-with. Transactional Analysis Journal, 1(4), 33-42.
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