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ストローク理論とは

ストローク理論とは,心の栄養の与え方

ストロークとは、交流分析の言葉で、相手の存在を認めるあらゆる言葉や働きかけのことです。あいさつ、ほめ言葉、うなずき、ときには叱ることも含まれます。バーン[1]は、人が心の健康を保つためには、体にとっての食べ物と同じように、ストロークが欠かせないと考えました。

みなさんこんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは「交流分析シリーズ」の3本目です。交流分析の基本や考え方を先に知りたい方は、交流分析とはのコラムからお読みください。

目次は以下の通りです。

目次

①ストロークとは何か

ストロークは、英語で「なでる」「さする」という意味の言葉です。交流分析では、相手の存在を認める関わりのすべてを、心の栄養として「ストローク」と呼びます。

心の栄養素

私たちの体は、炭水化物やたんぱく質などの栄養素がないと生きていけません。同じように、心も、人から存在を認められる関わりがないと、元気を保つことが難しくなります。

「おはよう」「ありがとう、助かったよ」「最近どう?」。こうした何気ない言葉をかけてもらうだけで、心は少し上向きます。

そして、自分から相手にかけることで、相手の心にも栄養が届きます。

ストロークが不足すると

たとえば、長い休みの間ほとんど人と話さずに過ごしていると、なんとなく気持ちが沈んだり、やる気が出なかったりすることがあります。交流分析では、こうした状態を、心のストロークの貯金が底をつきかけているサインと考えます。

ストロークの交換は、私たちの日常の気分や人間関係に、思っている以上に大きな影響を与えているのです。

②ストロークの種類

ストロークは、受け取ったときの気持ちや、伝え方によって、いくつかの種類に分けられます。種類を知ると、自分がふだんどのようなストロークを交換しているかを振り返りやすくなります。

プラスとマイナス

プラス:受け取ってうれしいストローク
例:ほめる・感謝する・ほほえむ
マイナス:受け取って嫌なストローク
例:叱る・けなす・にらむ

条件つきと無条件

「テストで100点をとったからえらい」のように、行動や成果に対するストロークを「条件つきのストローク」と呼びます。一方、「あなたがいてくれてうれしい」のように、存在そのものに対するストロークを「無条件のストローク」と呼びます。

どちらも大切ですが、条件つきのストロークばかりだと、「成果を出さないと認めてもらえない」と感じやすくなります。

言葉と言葉以外

ストロークは言葉だけでなく、うなずき、笑顔、肩をたたくといった態度や行動でも伝わります。言葉と態度が一致していると、ストロークはより伝わりやすくなります。

③マイナスを求める理由

人はふつう、プラスのストロークを求めて人と関わります。ところが、プラスのストロークが得られないと、マイナスのストロークでも求めてしまうことがあると、交流分析では考えます。

無視よりはましという心

交流分析では、もっともつらいのは、プラスでもマイナスでもなく、誰からも反応がない「無視」の状態だと考えます。そのため、プラスのストロークが足りないと、叱られたり怒られたりするマイナスのストロークでも、ないよりはましと感じてしまうのです。

日常で見られる例

親の気を引くために、わざと困らせる
相手を怒らせるようなことを言ってしまう
寂しさを紛らわせるために食べすぎる

こうした行動の背景には、「自分を見てほしい」という気持ちが隠れていることがあります。行動だけを責めるのではなく、その奥にあるストロークの不足に目を向けることが大切です。

④ストロークの5つの思い込み

交流分析家のスタイナー[2]は、多くの人が、子どものころからストロークのやりとりを制限する「思い込み」を身につけていると考え、それを5つのルールとしてまとめました。

5つのルール

①与えたいストロークでも与えない
②欲しいストロークでも求めない
③欲しいストロークでも受け取らない
④嫌なストロークでも断らない
⑤自分で自分にストロークを与えない

たとえば、ほめられても「そんなことないです」と打ち消すのは③、自分をほめることを「うぬぼれ」と感じるのは⑤にあたります。

思い込みをゆるめる

スタイナーは、こうした思い込みのために、本来は豊かにあるはずのストロークが、まるで足りないもののようにやりとりされていると考えました。

5つのルールのうち、自分に当てはまるものを1つ選び、その反対の行動を試してみましょう。たとえば③が当てはまるなら、ほめられたら「ありがとう」と受け取ることから始めます。

⑤ストロークを増やす練習

プラスのストロークは、意識すれば今日から増やすことができます。ここでは、日常の中で取り組みやすい練習を紹介します。

与える練習

毎朝、相手の目を見てあいさつする
手伝ってもらったら具体的にお礼を言う
相手の行動を1つ具体的にほめる

ほめるときは、「すごいね」より「資料が見やすくて助かったよ」のように、具体的な行動を伝えると、相手に受け取ってもらいやすくなります。

受け取る練習と自分に与える練習

ほめられたら、否定せずに「ありがとう」と一言返してみましょう。また、1日の終わりに「今日は〇〇をがんばった」と、自分で自分にプラスのストロークを与える習慣をつけるのもおすすめです。

ストロークの交換が増えると、人との関わりが心地よいものになり、後味の悪いやりとりも起きにくくなると考えられます。

職場で活かす

職場では、成果に対する条件つきのストロークが中心になりがちです。成果だけでなく、取り組む姿勢や日々の貢献にも目を向けて言葉をかけると、働きやすい雰囲気が生まれやすくなります。

朝のあいさつに相手の名前を添える
会議の後に、よかった発言を伝える
困っている人に「大丈夫?」と声をかける

⑥活用するときの注意

ストロークの考え方は日常に取り入れやすい一方で、使い方には注意が必要な場面もあります。

相手を操作しない

ストロークを、相手を思いどおりに動かすための道具として使うと、相手は違和感を覚えます。心から感じたことを伝えることが、ストロークの基本です。

つらい関係から離れる

マイナスのストロークばかりを受け続ける関係、たとえば暴言や暴力が続く関係は、ストロークの工夫で解決しようとせず、安全を優先してください。一人で抱え込まず、信頼できる人や専門の相談窓口に相談することが大切です。

⑦よくある質問Q&A

私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。

ほめるのが苦手

ほめ言葉だけがストロークではありません。あいさつをする、名前を呼ぶ、相手の話にうなずく、「ありがとう」と伝えるといった小さな関わりも、相手の存在を認める立派なストロークです。まずは、毎朝のあいさつを相手の目を見てする、手伝ってもらったら具体的にお礼を言う、といったことから始めてみてください。

ほめるときも、「すごいね」より「資料が見やすくて助かったよ」と、具体的な行動を伝えるほうが、自然で受け取ってもらいやすくなります。小さなストロークの積み重ねが、人間関係を少しずつ温かくしていきます。

ほめられても素直に喜べない

ほめられたときに「そんなことないです」と打ち消してしまうのは、珍しいことではありません。交流分析では、子どものころから「ストロークを素直に受け取ってはいけない」という思い込みを身につけていることがあると考えます。まずは、ほめられたら否定せずに「ありがとうございます」と一言返すことから練習してみてください。

最初は違和感があっても、続けるうちに、プラスのストロークを受け取ることに慣れていきます。受け取る練習を続けることで、自分を大切にする感覚も育っていきます。

子育てで気をつけることは?

子どもは、プラスのストロークが足りないと、叱られるような行動をしてでも、注目を得ようとすることがあります。困った行動が続くときは、叱ることだけで対応するのではなく、ふだんの何気ない場面で「手伝ってくれてありがとう」「その絵いいね」と、プラスのストロークを増やしてみてください。

また、「よい子だから大切」という条件つきのストロークだけでなく、「あなたがいてくれてうれしい」という存在そのものへのストロークも大切です。完璧をめざさず、できる範囲で言葉をかけることを大切にしてください。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。

交流分析の基礎
エゴグラムで自分を知る
ストロークの練習
人間関係のクセの見直し

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)

コミュニケーション教室,講座,ダイコミュ

個別レッスン

個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースでストロークを深めたい方は、下記をご参照ください。

個別レッスンの詳細はこちら。

シリーズの続きを読む

ストロークが不足したときに起こりやすい、後味の悪いやりとりのパターンについて知りたい方は、こちらのコラムがおすすめです。

⑤心理ゲームとは,交流分析が示す対人パターン

交流分析の全体像を知りたい方は、シリーズ1本目のコラムをご覧ください。

①交流分析とは,自己理解と対人関係の心理学

シリーズでは他に、自分の自我状態のバランスを知るエゴグラムや、子どものころの筋書きを考える人生脚本も紹介しています。

他にも数多くの心理療法があります。ご自身の興味やお悩みに合った理論をじっくり探したい方は、一覧から選んでみてください。

心理療法の一覧

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Berne, E. (1964). Games people play: The psychology of human relationships. New York: Grove Press.
 
[2] Steiner, C. M. (1971). The stroke economy. Transactional Analysis Journal, 1(3), 9-15.
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