人生脚本とは、交流分析の考え方で、子どものころに自分で作り上げ、大人になってからも知らず知らずのうちに従っている「人生の筋書き」のことです。バーン[1]は、人は親などからのメッセージをもとに、幼いころに自分の人生の筋書きを決めていると考えました。
みなさんこんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。
このコラムは「交流分析シリーズ」の4本目です。交流分析の基本や考え方を先に知りたい方は、交流分析とはのコラムからお読みください。
目次は以下の通りです。
目次
①人生脚本とは何か
人生脚本は、演劇の台本のように、人生の大まかな流れや結末を決めてしまう、心の中の筋書きです。まずは、その意味と、日常の中での表れ方を確認しましょう。
知らずに従う筋書き
「どうせ自分は最後にうまくいかない」「人に頼ってはいけない」。こうした考えに、理由ははっきりしないのに縛られていると感じることはないでしょうか。
交流分析では、こうした考えの背景に、人生脚本があると考えます。
人生脚本は、本人が気づかないうちに、仕事の選び方、恋愛のパターン、人間関係の築き方などに影響を与えます。
同じパターンの繰り返し
たとえば、いつも「あと一歩」のところで失敗する、なぜか同じような人とばかり付き合ってしまう、といった繰り返しのパターンは、人生脚本に気づくヒントになります。
交流分析の全体像は、交流分析とはのコラムで解説しています。
脚本の3つの型
バーンは、人生脚本を、結末の違いから大きく3つの型に分けて考えました。自分の目標を達成していく「勝者の脚本」、大きな失敗も成功もしない「平凡な脚本」、同じ失敗を繰り返してしまう「敗者の脚本」です。
ただし、これは人の価値を決めるものではありません。どの脚本も、気づくことで書きかえていけると交流分析では考えます。
②脚本が作られる仕組み
人生脚本は、生まれつき決まっているものではなく、子どものころの経験の中で作られていきます。その仕組みを知ると、自分の脚本を客観的に見つめやすくなります。
親からのメッセージ
子どもは、親や周りの大人の言葉、態度、表情から、「自分はどういう存在か」「人生とはどういうものか」についてのメッセージを受け取ります。
「お前はしっかりしているね」と言われ続けた子どもは、「自分はしっかりしていなければならない」と受け止めるかもしれません。言葉だけでなく、言葉にされない態度からも、多くのメッセージが伝わります。
子ども自身の決断
交流分析では、子どもはそうしたメッセージをもとに、自分なりに「こう生きよう」と決断していると考えます。同じ家庭で育ったきょうだいでも、違う脚本を持つことがあるのはそのためです。
子どものころの決断は、その時の状況で生き抜くためには役立つものでした。しかし、大人になった今では、合わなくなっていることもあります。
③禁止令と5つの駆り立て
人生脚本を作るメッセージには、「〜してはいけない」という禁止のメッセージと、「〜しなければならない」と駆り立てるメッセージがあります。代表的なものを紹介します。
禁止令
グールディング夫妻[2]は、子どもが受け取りやすい禁止のメッセージを、12の「禁止令」としてまとめました。たとえば、次のようなものがあります。
感じるな(感情を出してはいけない)
子どもであるな(甘えてはいけない)
近づくな(親しくなってはいけない)
成功するな(うまくいってはいけない)
5つの駆り立て
ケーラー[3]は、「こうしていれば認めてもらえる」と人を駆り立てるメッセージを、次の5つにまとめ、「ドライバー」と呼びました。
完全であれ
人を喜ばせよ
努力せよ
強くあれ
急げ
ドライバーは、適度であれば長所にもなりますが、強すぎると、休むことができない、断れないといった生きづらさにつながることがあります。
④自分の脚本に気づく
人生脚本は、自分では気づきにくいものです。ここでは、自分の脚本に気づくための問いかけを紹介します。
紙に書き出しながら、ゆっくり取り組んでみましょう。
振り返りの問いかけ
子どものころ、よく言われた言葉は?
家族の中で、どんな役割をしていた?
好きだった物語や主人公は?
人生で繰り返しているパターンは?
好きだった物語の主人公は、自分の脚本と重なっていることがある、と交流分析では考えます。思いついたことを、評価せずにそのまま書き出してみてください。
ドライバーを確かめる
5つのドライバーのうち、自分がもっとも強く駆り立てられているものはどれかを考えてみましょう。たとえば「完全であれ」が強い人は、ミスを極端に恐れ、仕事を人に任せられないことがあります。
気づくこと自体が、脚本から自由になる第一歩です。
⑤脚本を書きかえる
交流分析では、人生脚本は子どものころに自分で決めたものだからこそ、今の自分が新しく決め直すことができると考えます。この考え方は「再決断」と呼ばれます。
許可のメッセージ
自分を縛っているメッセージに気づいたら、その反対の「許可」のメッセージを、自分に与えてみましょう。
完全であれ→「完全でなくてもいい」
強くあれ→「弱さを見せてもいい」
急げ→「自分のペースでいい」
小さな行動で確かめる
許可のメッセージを頭で理解するだけでなく、小さな行動で確かめてみることが大切です。たとえば「強くあれ」が強い人は、まず身近な人に小さな頼みごとをしてみます。
「頼っても大丈夫だった」という経験を重ねることで、新しい筋書きが少しずつ自分のものになっていきます。
うまくいかない日があっても、古い脚本に戻ったと自分を責める必要はありません。気づいて、また新しい行動を選び直すことを繰り返すうちに、少しずつ変化が積み重なっていきます。
⑥取り組むときの注意
人生脚本の振り返りは、子どものころの記憶に触れるため、ときに心の負担になることがあります。安全に取り組むための注意点を確認しておきましょう。
親を責める作業ではない
人生脚本の振り返りは、親や周りの大人を責めるためのものではありません。今の自分がどう生きたいかを考えるための作業です。
つらい記憶が出てきたら
振り返りの中で、つらい記憶や強い感情がよみがえった場合は、無理に続けず中断してください。虐待やいじめなど、深い傷つきに関わる記憶がある場合は、一人で取り組まず、カウンセラーなどの専門家と一緒に進めることをおすすめします。
⑦よくある質問Q&A
私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。
交流分析の基礎
エゴグラムで自分を知る
ストロークの練習
人間関係のクセの見直し
講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)
個別レッスン
個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースで人生脚本を深めたい方は、下記をご参照ください。
シリーズの続きを読む
人生脚本にもとづいて繰り返されやすい、後味の悪いやりとりのパターンについて知りたい方は、こちらのコラムがおすすめです。
交流分析の全体像を知りたい方は、シリーズ1本目のコラムをご覧ください。
シリーズでは他に、自分の自我状態のバランスを知るエゴグラムや、心の栄養となるストロークも紹介しています。
他にも数多くの心理療法があります。ご自身の興味やお悩みに合った理論をじっくり探したい方は、一覧から選んでみてください。
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連




