>
>
心理ゲームとは

心理ゲームとは,交流分析が示す対人パターン

心理ゲームとは、交流分析の考え方で、「分かっちゃいるけどやめられない」と繰り返してしまう、最後に嫌な気持ちが残る人間関係のパターンのことです。バーン[1]は、こうしたやりとりを「ゲーム」と名づけ、その仕組みを分析しました。

みなさんこんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは「交流分析シリーズ」の5本目です。交流分析の基本や考え方を先に知りたい方は、交流分析とはのコラムからお読みください。

目次は以下の通りです。

目次

①心理ゲームとは何か

心理ゲームの「ゲーム」は、遊びの意味ではなく、決まった筋書きに沿って進み、決まった結末で終わるやりとりのことです。まずは、心理ゲームの特徴を確認しましょう。

後味の悪いパターン

心理ゲームには、次のような特徴があります。思い当たるやりとりがないか、振り返りながら読んでみてください。

同じようなやりとりを何度も繰り返す
表の言葉と本音がずれている
最後に嫌な気持ちが残る
本人はパターンに気づいていない

なぜ繰り返すのか

交流分析では、心理ゲームは、心の栄養であるストロークが不足したときに起こりやすいと考えます。ゲームは後味が悪いものの、相手から強い反応(ストローク)を得られるため、気づかないうちに繰り返してしまうのです。

ストロークについては、ストローク理論のコラムで解説しています。

心理ゲームは、特別な人だけがするものではなく、誰もが日常の中で気づかないうちに参加しているものです。大切なのは、ゲームをしないことより、ゲームに気づいて途中で降りられるようになることです。

②ゲームが進む流れ

バーン[1]は、心理ゲームには決まった流れがあると考え、それを公式のようにまとめました。流れを知ると、ゲームが始まりそうなときに気づきやすくなります。

ゲームの公式

①仕掛け:裏のある誘いをかける
②弱み:相手がその誘いに乗る
③反応:表面上のやりとりが続く
④転換:突然、立場が入れ替わる
⑤混乱:一瞬、何が起きたか戸惑う
⑥結末:嫌な気持ちが残る

転換に注目する

心理ゲームの特徴は、④の「転換」にあります。それまで助けていた人が急に責める側に回る、などと立場が入れ替わり、お互いに嫌な気持ちで終わります。

「さっきまで普通に話していたのに、気づいたらけんかになっていた」という経験があれば、そこに転換が起きていたのかもしれません。

③代表的なゲームの例

バーンは、日常でよく見られる心理ゲームに、分かりやすい名前をつけて紹介しました。ここでは代表的な2つを紹介します。

「はい、でも」のゲーム

相談を持ちかけた人が、相手の助言に対して「はい、でも…」と次々に断り続けるゲームです。最後は助言した側が言葉に詰まり、相談した側は「やっぱり誰にも分かってもらえない」、助言した側は「助けようとしたのに」と、お互いに嫌な気持ちが残ります。

「あら探し」のゲーム

相手の小さなミスを待ち構えていて、見つけたとたんに厳しく責めるゲームです。責める側は一時的に優位に立った気分になりますが、関係は少しずつ悪くなっていきます。

どちらのゲームも、表向きは「相談」や「指摘」に見えるため、本人もゲームをしていることに気づきにくいのが特徴です。

「キック・ミー」のゲーム

わざと相手を怒らせたり、失敗を重ねたりして、最後に叱られることで「やっぱり自分は嫌われる」と確かめるゲームです。本人は「いつも自分ばかりひどい目にあう」と感じていますが、その流れを自分で招いている面があります。

このゲームの背景には、マイナスのストロークでもいいから相手の反応がほしい、という気持ちが隠れていることがあります。

④ドラマの三角形と役割

心理ゲームの中で人がとる役割を、分かりやすく示したのが、カープマン[2]の「ドラマの三角形」です。ゲームの最中、人は3つの役割の間を行き来すると考えます。

3つの役割

迫害者:相手を責めたり、攻撃したりする
救済者:頼まれていないのに助けすぎる
犠牲者:自分は無力で、かわいそうだと感じる

役割が入れ替わる

たとえば、困っている同僚を助けすぎた人(救済者)が、感謝されないことに腹を立てて責め始めると(迫害者)、責められた同僚は「やっぱり自分はダメだ」と落ち込みます(犠牲者)。こうした役割の入れ替わりが、ゲームの「転換」にあたります。

自分がどの役割に入りやすいかを知っておくと、ゲームに巻き込まれそうなときに気づきやすくなります。

⑤ゲームから抜け出す方法

心理ゲームは、自分の関わり方を少し変えるだけで、流れを止めることができます。ここでは、日常で取り組みやすい方法を紹介します。

パターンを書き出す

繰り返してしまうやりとりを1つ選び、次の3つを書き出してみましょう。パターンが見えると、次に同じ場面が来たときに気づきやすくなります。

きっかけ:どんな言葉や場面で始まるか
流れ:途中でどんなやりとりが続くか
結末:最後にどんな気持ちが残るか

成人の自我状態で返す

ゲームが始まりそうだと気づいたら、いつもと違う返し方をしてみましょう。たとえば「はい、でも」が続くときは、助言をやめて「あなたはどうしたいと思う?」と、相手の考えを聞いてみます。

また、ふだんからプラスのストロークを交換していると、ゲームで強い反応を得る必要が少なくなり、ゲームそのものが起きにくくなります。

ストロークを満たしておく

心理ゲームは、ストロークが不足したときに起こりやすいと考えられています。ふだんから家族や同僚と、あいさつや感謝などのプラスのストロークを交換しておくことが、ゲームの予防になります。

自分が疲れているとき、寂しいときほど、ゲームに入りやすくなることも覚えておきましょう。

⑥活用するときの注意

心理ゲームの考え方は、人間関係を見直すのに役立ちますが、使い方には注意が必要です。

相手を責める道具にしない

「あなたはゲームをしている」と相手を指摘すると、かえって関係がこじれることがあります。心理ゲームの考え方は、まず自分の関わり方を振り返るために使いましょう。

危険な関係は別に考える

暴力や強い威圧、ハラスメントがある関係は、心理ゲームとして自分の工夫で解決しようとせず、安全を優先してください。一人で抱え込まず、信頼できる人や専門の相談窓口に相談することが大切です。

⑦よくある質問Q&A

私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。

ゲームはわざとしている?

心理ゲームは、多くの場合、本人も気づかないうちに始まり、繰り返されるものです。わざと相手を困らせようとしているわけではなく、「自分を見てほしい」「やっぱり自分はダメだと確かめたい」といった、意識されない気持ちが背景にあると交流分析では考えます。

そのため、相手を「ゲームをしている」と責めても、関係はよくなりにくいものです。まずは自分自身がゲームに参加していないかに気づき、自分の関わり方を変えることから始めてみてください。気づけたこと自体が、ゲームから抜け出す大切な一歩です。

職場でゲームに巻き込まれたら?

たとえば、相談を受けて助言をしても「でも…」と断られ続けるときは、助言を続けるのをやめ、「あなたはどうしたいと思う?」と、相手自身の考えを聞いてみましょう。助けたい気持ちから一方的に引き受けすぎると、後で「なぜ自分ばかり」と不満がたまり、ゲームの結末につながりやすくなります。

落ち着いた成人の自我状態で、事実と自分にできることを整理して伝えることが大切です。ハラスメントにあたる場合は、社内の窓口などに相談してください。自分を守りながら、関わり方を工夫していきましょう。

家族とのゲームをやめたい

同じけんかを繰り返す場合、そのやりとりがパターン化した心理ゲームになっている可能性があります。まずは、けんかが始まるきっかけ、途中の流れ、最後に残る気持ちを書き出して、パターンを見つけてみましょう。そのうえで、いつもと違う返し方を1つ決めておくと、ゲームの流れを途中で止めやすくなります。

また、ふだんからプラスのストロークを増やすことも、ゲームの予防になります。暴力や強い威圧がある場合は、安全を優先して専門の相談窓口に相談してください。小さな変化の積み重ねが、関係を変えるきっかけになります。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。

交流分析の基礎
エゴグラムで自分を知る
ストロークの練習
人間関係のクセの見直し

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)

コミュニケーション教室,講座,ダイコミュ

個別レッスン

個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースで心理ゲームを深めたい方は、下記をご参照ください。

個別レッスンの詳細はこちら。

シリーズの続きを読む

ゲームを防ぐために大切な、プラスのストロークの交換について知りたい方は、こちらのコラムがおすすめです。

③ストローク理論とは,心の栄養の与え方

交流分析の全体像を知りたい方は、シリーズ1本目のコラムをご覧ください。

①交流分析とは,自己理解と対人関係の心理学

シリーズでは他に、自分の自我状態のバランスを知るエゴグラムや、子どものころの筋書きを考える人生脚本も紹介しています。

他にも数多くの心理療法があります。ご自身の興味やお悩みに合った理論をじっくり探したい方は、一覧から選んでみてください。

心理療法の一覧

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


YouTube→
Twitter→
元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Berne, E. (1964). Games people play: The psychology of human relationships. New York: Grove Press.
 
[2] Karpman, S. (1968). Fairy tales and script drama analysis. Transactional Analysis Bulletin, 7(26), 39-43.
↑