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チェンジトークの引き出し方

チェンジトークとは,引き出し方を解説

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは、動機づけ面接シリーズの2本目です。「チェンジトーク」をテーマに解説していきます。

チェンジトークとは、動機づけ面接で使われる言葉で、本人が自分の言葉で語る「変わりたい」「変われそう」「変わる理由がある」といった、変化に向かう発言のことです。

当コラムでは、チェンジトークの種類と、引き出し方、応じ方を、具体的な会話例とともに紹介します。目次は以下の通りです。

目次

①チェンジトークとは

チェンジトークとは、本人が口にする、変化に向かう発言のことです。

変化に向かう言葉

「お酒を減らしたい」「やればできると思う」「このままだと健康が心配だ」。このように、本人が自分の言葉で、変わりたい気持ちや、変わる理由、変われる見込みを語るのがチェンジトークです。

動機づけ面接を提唱したミラーとロルニック[1]は、援助者の役割を、チェンジトークに気づき、引き出し、強めることだと説明しています。

維持トークとの違い

反対に、「やめなくても大丈夫」「どうせ無理だ」のように、今のままでいる方向の発言を維持トークと呼びます。迷っている人の話には、チェンジトークと維持トークの両方が混ざっているのが自然です。維持トークを責めるのではなく、チェンジトークの割合が増えていくように会話を進めます。

②チェンジトークの種類

チェンジトークは、内容によっていくつかの種類に分けられます。

準備のチェンジトーク

変化への準備が進んでいることを示す発言です。英語の頭文字をとって、DARN(ダーン)と呼ばれます。

願望(Desire):「本当は、もう少し運動したい」

能力(Ability):「週に1回なら、歩けると思う」

理由(Reasons):「体力が落ちて、階段がきついから」

必要(Need):「このままじゃまずい」

実行のチェンジトーク

実際に変わることへの決意や行動を示す発言です。CAT(キャット)と呼ばれます。

決意(Commitment):「来週から始めます」

意欲(Activation):「やってみようと思っている」

段階を踏む(Taking steps):「昨日、ウォーキング用の靴を買った」

③なぜ大切なのか

チェンジトーク、特に決意の言葉は、その後の行動と結びついていることが研究で示されています。

決意の言葉と行動の変化

薬物の問題を抱える84人の動機づけ面接の録画を分析した研究[2]では、面接の中で語られた「変わる決意」の言葉の強さが、その後の、薬物を使わなかった日の割合を予測していました。願望や能力、必要、理由といった準備の言葉は、決意の強さを通して、行動の変化につながっていると考えられています。

自分の言葉に動かされる

人は、他人から言われたことよりも、自分で口にしたことに動かされやすいものです。援助者が変わる理由を並べるのではなく、本人が自分で変わる理由を語れるよう支えることが、動機づけ面接の要です。

④チェンジトークの引き出し方

チェンジトークを引き出すための、代表的な質問の方法を紹介します。

引き出す質問をする

「今のままだと、どんなことが心配ですか」(理由)

「もし変わるとしたら、どんな良いことがありそうですか」(願望)

「これまでに、何かをやめたり始めたりできた経験はありますか」(能力)

ものさしの質問

「変わることは、あなたにとってどのくらい大切ですか。0から10で表すと何点ですか」と尋ねます。例えば「4点」と答えたら、「なぜ0点ではなく4点なのですか」と続けます。すると本人は、変わりたい理由を自分の言葉で語り始めます。

ここで「なぜ10点ではないのですか」と尋ねると、変われない理由(維持トーク)を引き出してしまうため、低い点数との比較で尋ねるのがコツです。自信の程度についても、同じように尋ねることができます。

過去と未来を見る

「調子が良かった頃は、どんなふうに過ごしていましたか」と過去を振り返ったり、「5年後、どうなっていたいですか」と未来を想像してもらったりすることも、チェンジトークを引き出すきっかけになります。

⑤チェンジトークへの応じ方

チェンジトークが出てきたら、それを聞き流さず、強めるように応じます。

広げる・認める・返す・まとめる

広げる:「もう少し詳しく教えてください」と、話を深めてもらう

認める:「それは大切な気づきですね」と、是認する

返す:「体力を取り戻したいんですね」と、聞き返す

まとめる:語られたチェンジトークを集めて、要約して返す

維持トークへの応じ方

維持トークが出てきても、反論したり説得したりはしません。「今は、やめることは考えられないんですね」と、そのまま聞き返します。そのうえで、「やめないことで、何か気になっていることはありますか」と、変化の側にも目を向けてもらいます。決めるのは本人であることを伝えると、反発が和らぎやすくなります。

⑥場面で考えてみよう

チェンジトークの引き出し方を、架空の会話で見てみましょう。

運動不足を気にしている人との会話

援助者:「運動について、ご自分ではどう考えていますか」

本人:「しなきゃとは思うんですけど、仕事で疲れていて」(維持トーク)

援助者:「疲れていて、なかなか時間がとれない。でも、しなきゃという気持ちもあるんですね」

本人:「健康診断で、血圧が高めだと言われたので」(理由)

援助者:「運動することは、0から10でどのくらい大切ですか」

本人:「6くらいかな」

援助者:「なぜ0ではなく6なんでしょう」

本人:「子どもと公園で遊ぶとき、すぐ息が切れるのがいやで」(願望・理由)

会話のポイント

援助者は一度も「運動しましょう」とは言っていません。本人が自分の言葉で、変わる理由を語っています。このあと、「では、どんなことなら始められそうですか」と尋ね、本人が「週末に子どもと歩くくらいならできるかも」と答えたら、それを計画につなげていきます(架空の事例です)。

⑦注意

チェンジトークを扱うときに、気をつけたい点をまとめます。

言わせようとしない

チェンジトークを無理に言わせようとすると、誘導尋問のようになり、本人は反発を感じます。本人が変わらないことを選ぶ自由も尊重しながら、自然に語られる変化の言葉を大切に拾っていきましょう。

依存の問題があるときは

お酒やギャンブル、薬物などがやめられず、生活や健康に影響が出ている場合は、依存症の可能性があります。本人や家族だけで抱え込まず、お住まいの地域の精神保健福祉センターや、依存症の専門医療機関に相談しましょう。家族だけで相談することもできます。

⑧まとめ

チェンジトークは、本人が自分の言葉で語る、変化に向かう発言です。援助者は、それに気づき、引き出し、強めることで、本人の変わる意欲を支えます。

今回のポイント

チェンジトークは変化に向かう発言、維持トークは現状維持の発言

準備のDARNと、実行のCATがある

ものさしの質問は「なぜ0点ではないのか」と尋ねる

維持トークには反論せず、聞き返して受け止める

動機づけ面接の全体像は動機づけ面接(MI)とはで、チェンジトークを引き出す土台となるスキルはOARS技法とはで、迷いのしくみは両価性とはで解説しています。

シリーズの他のコラム

動機づけ面接シリーズでは、基本の考え方から、チェンジトーク、OARS技法、両価性までを解説しています。あわせてご覧ください。

動機づけ面接とは|MIの基礎と具体例を解説

OARS技法とは|動機づけ面接の基本スキル

両価性とは|変わりたいけど変われない心理

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Miller, W. R., & Rollnick, S. (2013). Motivational interviewing: Helping people change (3rd ed.). New York: Guilford Press.(原井 宏明・岡嶋 美代・山田 英治・黒澤 麻美(訳)(2019). 動機づけ面接〈第3版〉上・下 星和書店)
 
[2] Amrhein, P. C., Miller, W. R., Yahne, C. E., Palmer, M., & Fulcher, L. (2003). Client commitment language during motivational interviewing predicts drug use outcomes. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 71(5), 862-878.
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