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夫婦の悪循環(相互作用パターン)とは

夫婦の悪循環とは,同じケンカを繰り返す理由

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは、カップル・夫婦療法シリーズの3本目です。「夫婦の悪循環」をテーマに解説していきます。

夫婦の悪循環とは、一方の反応がもう一方の反応を引き出し、それがまた最初の反応を強めることで、同じすれ違いやケンカがくり返されるやりとりのパターン(相互作用パターン)のことです。

当コラムでは、よくある悪循環のパターンと、その奥にある気持ち、二人で抜け出すためのステップを紹介します。目次は以下の通りです。

目次

①夫婦の悪循環とは

夫婦の悪循環とは、一方の反応がもう一方の反応を引き出し、それがまた最初の反応を強める、というやりとりがくり返されるパターンのことです。

どちらが原因でもない

悪循環の中では、二人とも「相手のせいでこうなった」と感じています。妻は「夫が黙るから、強く言うしかない」と感じ、夫は「妻が責めるから、黙るしかない」と感じる、といった具合です。どちらの言い分にも一理あり、どちらが始めたのかを決めても、循環は止まりません。

このように、原因と結果が一方向ではなく、輪のようにつながっていると考える見方を、家族療法では円環的因果律と呼びます。

「パターン」を共通の相手にする

悪循環のしくみを理解すると、「相手が悪い」から「二人ともパターンに巻き込まれている」へと、見方を変えることができます。夫婦療法では、このパターンを二人の共通の相手として扱い、一緒に立ち向かうことを目指します。

②よくあるパターン

夫婦の悪循環には、いくつかの典型的なパターンがあります。

追う人と逃げる人

最も多く見られるのが、一方が不満や要求をぶつけて「追い」、もう一方が黙ったり話題を変えたりして「逃げる」パターンです。研究の世界では「要求と撤退のパターン」と呼ばれ、夫婦関係の不満と結びついていることが知られています。

ある研究[1]では、夫婦に、夫が妻に変わってほしいことと、妻が夫に変わってほしいことについて、それぞれ話し合ってもらいました。すると、妻が変化を求める話題では妻が要求し夫が撤退する傾向が見られましたが、夫が変化を求める話題では、そうした違いは見られませんでした。誰が「追う人」になるかは、性格だけでなく、どちらが変化を求めているかによっても変わるのです。

感情焦点化カップル療法の3つのパターン

感情焦点化カップル療法を発展させたスー・ジョンソン[2]は、夫婦の悪循環を、次の3つに分けて説明しています。

悪者探し:お互いに相手を責め合い、どちらが悪いかを争う

抗議のポルカ:一方が追いかけて抗議し、もう一方が引いて身を守る(追う人と逃げる人)

凍りつきと逃避:二人とも引いてしまい、会話も感情のやりとりもなくなる

3つ目のパターンは、ケンカは少なくても、関係が冷え切っている状態です。静かだからといって、問題がないとは限りません。

③抜け出せない理由

悪循環がやめられないのは、二人の行動の奥に、相手とのつながりを求める気持ちがあるからです。

追う人の奥にある気持ち

追う人は、相手に怒っているように見えます。しかし、その奥には「私は大切にされていないのでは」「このまま離れていってしまうのでは」という不安があることが多いのです。不安が強いほど、相手の反応を引き出そうとして、言葉が強くなります。

逃げる人の奥にある気持ち

逃げる人は、冷たく無関心に見えます。しかし、その奥には「何を言っても責められる」「自分はダメなパートナーだ」という無力感や、これ以上ケンカを大きくしたくないという気持ちがあることが多いのです。ジョンソン[2]は、どちらの反応も、相手とのつながりが危うくなったときに、それを守ろうとする自然な反応だと考えました。感情焦点化療法(EFT)でも、こうした奥にある感情に目を向けることを大切にします。

④抜け出す4つのステップ

悪循環から抜け出すために、二人で取り組める4つのステップを紹介します。

ステップ1 パターンを描く

最近のケンカを1つ思い出し、「相手が〇〇すると、私は△△する。すると相手は□□する」と、やりとりの流れを紙に書き出します。できれば二人で一緒に書くと、お互いの見え方の違いもわかります。

ステップ2 パターンに名前をつける

書き出したパターンに、「追いかけっこ」「だんまり合戦」など、二人で名前をつけます。名前があると、「あ、また追いかけっこが始まった」と、ケンカの最中でも気づきやすくなります。相手ではなく、パターンを「共通の敵」にするのです。

ステップ3 奥にある気持ちを伝える

落ち着いているときに、パターンの中で自分が本当に感じていたことを伝えます。「責めていたけど、本当は、あなたに大切にされていない気がして不安だった」「黙っていたけど、本当は、何を言っても責められる気がして、どうしていいかわからなかった」など、怒りや無関心の奥にある気持ちを言葉にします。

ステップ4 いつもと違う一手を打つ

パターンが始まりそうになったら、いつもとは違う小さな行動を一つだけ試します。追う人なら、責める代わりに「さびしかった」と一言伝える。逃げる人なら、黙り込む代わりに「少し考えたいから、夜にまた話そう」と伝える。一方が変わるだけでも、循環の流れは変わり始めます。伝え方の具体例は、夫婦間コミュニケーションの改善法も参考にしてください。

⑤気持ちを伝える言葉の例

奥にある気持ちは、言葉にしようとすると、なかなか出てこないものです。追う側・逃げる側それぞれの言葉の例を紹介します。

追う側の言葉

いつもの言葉:「どうしてわかってくれないの!」→ 奥の気持ち:「わかってもらえないと、一人ぼっちな気がして不安になる」

いつもの言葉:「もういい、勝手にすれば」→ 奥の気持ち:「本当は、あなたにそばにいてほしい」

逃げる側の言葉

いつもの反応:黙り込む → 奥の気持ち:「何を言っても責められる気がして、言葉が出てこなくなる」

いつもの反応:「はいはい、わかったよ」→ 奥の気持ち:「あなたをがっかりさせてばかりで、自分が情けない」

相手の言葉を受け取るとき

相手が奥の気持ちを打ち明けてくれたときは、言い返したり、すぐに解決策を出したりせず、「そんなふうに感じていたんだね、知らなかった」と、まず受け止めましょう。打ち明けることには勇気がいります。受け止めてもらえた経験が、次に気持ちを伝える安心感につながります。

⑥場面で考えてみよう

架空の夫婦の例で、悪循環とその抜け出し方を考えてみましょう。

「帰りが遅い」をめぐる循環

Aさん(妻)は、夫のBさんが連絡なしに遅く帰ってくると、「どうして連絡しないの」と強く責めます。Bさんは責められるのがつらく、言い訳をしたあと黙り込みます。Aさんは「話を聞いてくれない」とさらに責め、Bさんは家にいる時間が気まずくなり、ますます帰りが遅くなる、というパターンがくり返されていました。

二人が試したこと

二人はこのパターンに「追いかけっこ」と名前をつけました。そして、落ち着いているときに、Aさんは「責めていたけど、本当は、帰りを待っているあいだ一人で心細かった」と伝えました。Bさんは「責められると、何を言っても無駄な気がして黙っていた。でも、心細い思いをさせていたとは知らなかった」と伝えました。

その後、Bさんは遅くなる日は帰る前に一言連絡し、Aさんは帰ってきたBさんに、責める代わりに「おかえり、待ってたよ」と声をかけるようにしました。ケンカがなくなったわけではありませんが、「また追いかけっこになってるね」と、途中で気づけることが増えたといいます(架空の事例です)。

自分たちのパターンを考える

この例を参考に、自分たちの夫婦でくり返されているパターンを書き出してみましょう。どちらが追う人で、どちらが逃げる人になりやすいでしょうか。それとも、二人とも黙ってしまう「凍りつき」のパターンでしょうか。パターンに気づくことが、抜け出すための第一歩です。

⑦注意

悪循環に取り組むときに、気をつけたい点をまとめます。

パターンが根深いときは

悪循環が長く続いている場合や、過去の裏切りなどで信頼が大きく傷ついている場合は、二人だけで抜け出すのが難しいこともあります。そのときは、夫婦療法を行う専門家の力を借りることを考えましょう。第三者が間に入ることで、安全に気持ちを伝え合いやすくなります。

暴力がある場合は別の問題

一方が他方を怖がっている関係は、「お互いさまの悪循環」ではなく、暴力や支配の問題です。二人で悪循環に取り組むことは、すすめられません。

パートナーから、殴る・けるなどの暴力、暴言や脅し、お金や行動の制限などを受けていて、相手が怖いと感じている場合は、話し合いや夫婦カウンセリングよりも、まず自分の身の安全を守ることを優先してください。配偶者暴力相談支援センターに相談でき、身の危険が迫っているときは警察(110番)に連絡してください。

⑧まとめ

夫婦の悪循環は、二人の反応が互いを引き出し合ってくり返されるパターンです。どちらが悪いかではなく、パターンそのものに目を向けることが、抜け出す第一歩になります。

今回のポイント

悪循環は、どちらか一方が原因ではない

追う人と逃げる人のパターンが特に多い

怒りや無関心の奥には、つながりを求める気持ちがある

パターンに名前をつけ、いつもと違う一手を打つ

シリーズの他のコラム

カップル・夫婦療法シリーズでは、夫婦療法の基本から、日常でできる工夫までを解説しています。あわせてご覧ください。

夫婦療法とは|カップルカウンセリングを解説

夫婦のコミュニケーション改善法とは|意味を解説

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Heavey, C. L., Layne, C., & Christensen, A. (1993). Gender and conflict structure in marital interaction: A replication and extension. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 61(1), 16-27.
 
[2] Johnson, S. (2008). Hold me tight: Seven conversations for a lifetime of love. New York: Little, Brown and Company.
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