みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。
このコラムは、動機づけ面接シリーズの3本目です。「OARS技法」をテーマに解説していきます。
OARS技法とは、動機づけ面接の基本となる4つのスキル、開かれた質問(Open questions)、是認(Affirming)、聞き返し(Reflecting)、要約(Summarizing)の頭文字をとった呼び方で、相手の考えや変わる理由を引き出すための会話の土台です。
当コラムでは、4つのスキルそれぞれのポイントと具体例、日常でできる練習方法を紹介します。目次は以下の通りです。
①OARS技法とは
OARS(オールズ)技法とは、動機づけ面接で使われる4つの基本スキル、開かれた質問・是認・聞き返し・要約の、英語の頭文字をとった呼び方です。
4つのスキル
O(Open questions):開かれた質問
A(Affirming):是認
R(Reflecting):聞き返し
S(Summarizing):要約
動機づけ面接を提唱したミラーとロルニック[1]は、OARSを、動機づけ面接のあらゆる段階で使われる、中核的なコミュニケーションのスキルとして位置づけています。
動機づけ面接以外でも役立つ
OARSは、もともと来談者中心療法などの共感的な聴き方を土台にしたスキルです。そのため、カウンセリングだけでなく、家族との会話や職場での面談など、相手の考えを引き出したい場面で幅広く役立ちます。
②開かれた質問
開かれた質問とは、「はい」「いいえ」や一言では答えられない、相手が自由に考えを語れる質問です。
閉じた質問との違い
閉じた質問:「お酒は毎日飲みますか?」→「はい」
開かれた質問:「お酒とのつきあい方について、どう考えていますか?」→ 本人の考えが語られる
閉じた質問は、事実を確かめるときには便利ですが、続けると尋問のようになり、相手は受け身になります。開かれた質問は、相手に考える余地を与え、本人の言葉を引き出します。
質問を重ねすぎない
開かれた質問であっても、次々に質問を重ねると、相手は答えることに疲れてしまいます。質問をしたら、返ってきた答えを聞き返す、というリズムを意識しましょう。
③是認
是認とは、相手の強みや努力、良い意図を認めて、言葉で伝えることです。
褒めることとの違い
「すごいですね」「えらいですね」と褒める言葉は、評価する側とされる側という上下の関係を生みやすくなります。是認は、相手の具体的な行動や姿勢に目を向け、それをそのまま認めて伝えます。
褒める:「えらいですね」
是認:「忙しい中でも、今日こうして相談に来てくれたんですね」
是認:「うまくいかなくても、何度もやり方を工夫してきたんですね」
「あなたは」を主語にする
是認では、「私はうれしい」ではなく、「あなたは〜してきたんですね」と、相手を主語にすると、相手の努力そのものに光を当てることができます。
④聞き返し
聞き返しとは、相手の言葉の意味をくみ取り、それを言葉にして返すことです。動機づけ面接で最も大切にされるスキルです。
単純な聞き返しと複雑な聞き返し
相手:「仕事が忙しくて、運動する時間なんてないんです」
単純な聞き返し:「運動する時間がないんですね」(言葉をほぼそのまま返す)
複雑な聞き返し:「時間があれば、体を動かしたい気持ちもあるんですね」(言葉の奥にある意味をくみ取って返す)
複雑な聞き返しは、相手がまだ言葉にしていない気持ちや意味を推測して返すため、話を深めたり、変化の方向に進めたりする力があります。
疑問形にしない
聞き返しは、語尾を上げて質問のようにするのではなく、「〜なんですね」と、語尾を下げて伝えるのが基本です。推測が外れていても、相手が訂正してくれることで、理解を深めることができます。
質問より聞き返しを多めに
動機づけ面接では、質問の回数よりも、聞き返しの回数を多くすることが勧められています。聞き返しが多いと、相手は「聴いてもらえている」と感じ、自分から話を広げやすくなります。
⑤要約
要約とは、相手が話したいくつかの内容をまとめて、伝え返すことです。
要約の3つの使い方
集める要約:相手が語ったチェンジトークを集めて返し、変わる理由を本人にあらためて聞いてもらう
つなぐ要約:以前に話した内容と今の話をつなげ、迷いの両面を示す
移る要約:話の区切りでそれまでの内容をまとめ、次の話題に移る
要約の例
「ここまでのお話をまとめると、健康診断の結果が気になっていて、子どもと元気に遊べる体でいたいと思っている。一方で、仕事が忙しくて時間がとれないことも悩んでいる。こんなところでしょうか」。要約の最後に「ほかに何かありますか」と尋ねると、相手が話を付け加えやすくなります。
⑥練習してみよう
OARSは、日常の会話の中で練習することができます。
聞き返しの練習
家族や友人と話すとき、相手が話した内容を、「〜なんですね」「〜と感じているんですね」と、1回だけ聞き返してみましょう。慣れてきたら、相手の言葉の奥にある気持ちをくみ取る、複雑な聞き返しにも挑戦します。
是認を1日1回伝える
身近な人の具体的な行動や努力を見つけて、「〜してくれたんですね」「〜を続けているんですね」と、1日1回伝えてみましょう。相手の良いところに目を向ける習慣は、OARS全体の土台になります。
会話を振り返る
誰かと話したあとで、「閉じた質問と開かれた質問、どちらが多かったか」「聞き返しを何回したか」を振り返ってみます。自分の会話のくせに気づくことが、上達への近道です。
⑦注意
OARSを使うときに、気をつけたい点をまとめます。
技法より関心を
OARSは、相手への関心と尊重があってこそ生きるスキルです。形だけ聞き返したり、是認を決まり文句のように使ったりすると、相手は「マニュアルどおりに対応されている」と感じてしまいます。相手を理解したいという気持ちを大切にしましょう。
専門的な支援が必要なとき
相手が深刻な悩みや、心身の不調を抱えている場合は、聴くことだけで支えようとせず、医療機関や専門家への相談をすすめましょう。
お酒やギャンブル、薬物などがやめられず、生活や健康に影響が出ている場合は、依存症の可能性があります。本人や家族だけで抱え込まず、お住まいの地域の精神保健福祉センターや、依存症の専門医療機関に相談しましょう。家族だけで相談することもできます。
⑧まとめ
OARS技法は、開かれた質問・是認・聞き返し・要約の4つから成る、動機づけ面接の基本スキルです。
今回のポイント
開かれた質問で、相手が自由に語れるようにする
是認は、褒めるのではなく具体的な努力を認める
聞き返しを中心に、質問より多めに使う
要約で、語られた内容と変わる理由をまとめて返す
動機づけ面接の全体像は動機づけ面接(MI)とはで、OARSを使って変化の言葉を引き出す方法はチェンジトークの引き出し方で、迷いのしくみは両価性とはで解説しています。
シリーズの他のコラム
動機づけ面接シリーズでは、基本の考え方から、チェンジトーク、OARS技法、両価性までを解説しています。あわせてご覧ください。
しっかり身につけたい方へ
公認心理師、精神保健福祉士など専門家の元で心理療法を学びたい方は、私たちが開催している講座をおすすめしています。内容は以下の通りです。
・はじめての心理療法
・やる気を引き出す,心理学
・家族・職場の人間関係がよくなる,会話練習
・自分も相手も大切にする,自己主張の練習
講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
講座の日程が合わない方や、自分のペースで学びたい方は、個別レッスンのご相談も受け付けています。
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連




