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上質世界とは

上質世界とは,選択理論の重要概念と具体例

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは、選択理論シリーズの4本目です。「上質世界」をテーマに解説していきます。

上質世界とは、選択理論で、自分の欲求を満たしてくれる人や物、場所、活動、考え方などのイメージが集まった、心の中の「特別なアルバム」のことです。人は、この上質世界のイメージに近づこうとして、日々の行動を選んでいると考えます。

今回は、上質世界のしくみと、自分の上質世界を書き出すワーク、人間関係への活かし方を、具体例とともに解説します。目次は以下の通りです。

目次

①上質世界とは

上質世界は、選択理論の中でも、特に人間関係を理解するうえで大切な考え方です。

心の中のアルバム

グラッサー[1]は、私たちの心の中には、「これがあると満たされる」という具体的なイメージを集めたアルバムのようなものがあると考え、これを「上質世界」と名づけました。

アルバムには、大切な家族や友人、好きな食べ物、心地よい場所、打ち込める趣味、大切にしている価値観などの「写真」が貼られています。

欲求とのつながり

上質世界の写真は、5つの基本的欲求を満たしてくれるものです。例えば、「家族と囲む夕食」は愛・所属の欲求を、「仕事で表彰される場面」は力の欲求を満たしてくれるイメージです。欲求は誰にでも共通していますが、それを満たす写真は、人によってまったく違います。

②上質世界のしくみ

上質世界の写真は、どのように選ばれ、どのように変わっていくのでしょうか。

経験から写真が貼られる

上質世界の写真は、生まれてからの経験の中で、「これは気持ちよかった」「満たされた」と感じたものが、少しずつ貼られていきます。同じ食べ物でも、ある人にとってはごちそうでも、別の人にとっては苦手なものであるように、写真の中身は一人ひとり違います。

写真は入れ替えられる

上質世界の写真は、一生変わらないものではありません。新しい経験をしたり、大切にしたいことが変わったりすると、写真が入れ替わっていきます。かつて夢中だった趣味に興味がなくなったり、新しい友人が大切な存在になったりするのは、上質世界の写真が入れ替わったからだと考えられます。

③理想と現実のずれ

選択理論では、上質世界の写真と、今の現実との間にずれがあると、私たちは苦しさを感じ、そのずれを埋めようとして行動を選ぶと考えます。

ずれが行動を生む

例えば、上質世界に「家族で穏やかに過ごす週末」の写真があるのに、現実には家族げんかばかりしていると、ずれが生まれます。このずれを埋めようとして、話し合いをしようとしたり、逆に相手を責めたりと、さまざまな行動を選びます。

ずれへの3つの向き合い方

行動を変える:写真に近づくための、新しい行動を選ぶ

見方を変える:現実の中にある、写真に近い部分に気づく

写真を見直す:今の自分に合った写真に、入れ替える

どれを選ぶかは状況によりますが、相手を無理に変えようとする方法は、関係を壊しやすいため注意が必要です。

④上質世界を書き出す

自分の上質世界を書き出してみると、自分が何を大切にしているかが見えてきます。15分ほどで取り組める3つのワークを紹介します。

ワーク1 写真を書き出す

次の5つの分野ごとに、「これがあると満たされる」と感じるものを、思いつくだけ書き出します。

人:一緒にいると満たされる人

物:持っていると満たされる物

場所:いると心地よい場所

活動:していると満たされること

考え方:大切にしている価値観や信念

ワーク2 ずれを見つける

書き出した写真のうち、今の生活で、十分に手に入っていないものに印をつけます。そのずれが、最近感じているイライラや物足りなさの原因になっていないか、考えてみましょう。

ワーク3 近づく行動を決める

印をつけた写真の中から1つを選び、その写真に近づくために、今週できる小さな行動を1つ決めます。例えば、「心地よい場所:海辺」が足りないなら、「週末に30分、近くの公園を散歩する」といった、今の生活の中でできる形にしてみましょう。

⑤人間関係に活かす

上質世界の考え方は、人間関係のすれ違いを理解するのに、特に役立ちます。

相手の写真は自分と違う

人間関係のすれ違いの多くは、お互いの上質世界の写真が違うことから生まれます。自分にとっての「理想の休日」や「理想の仕事の進め方」が、相手にとっても同じとは限りません。「相手の上質世界には、どんな写真があるのだろう」と想像してみると、相手の行動が理解しやすくなります。

相手の上質世界に入る

グラッサーは、良い人間関係とは、お互いの上質世界に、相手の写真が貼られている状態だと考えました。相手の上質世界に入るには、責めたり、命令したりするのではなく、話を聞く、信頼する、尊重するといった関わりを重ねることが大切です。

⑥場面で考えてみよう

2つの場面で、上質世界の考え方を使ってみましょう。考えた後に、解説を開いてください。

場面1 休日の過ごし方でもめる

夫は休日に家でゆっくり過ごしたいが、妻は家族で出かけたい。毎週末、どちらがゆずるかでけんかになる。

場面1の解説

2人の上質世界の「理想の休日」の写真が違うことが、すれ違いの原因です。どちらが正しいかではなく、お互いの写真を言葉にして伝え合いましょう。「午前は家でゆっくりし、午後は近くに出かける」など、両方の写真に近づく方法が見つかることがあります。

場面2 部下がやる気を見せない

上司は「残業してでも成果を出す部下」を理想としているが、部下は定時で帰り、仕事への熱意が感じられない。

場面2の解説

部下の上質世界には、「仕事以外の時間を大切にする自分」や「自分のペースで成果を出す働き方」の写真があるのかもしれません。上司の写真を押しつけるのではなく、部下がどんな働き方に満足を感じるかを聞いてみましょう。部下の上質世界の中に、仕事のやりがいの写真を増やす関わりを考えることができます。

⑦気をつけたいこと

上質世界の考え方を使うときは、次の点に気をつけましょう。

写真が自分を苦しめるとき

上質世界の写真の中には、「いつも完璧でなければならない自分」のように、手に入れるのが難しく、自分を苦しめてしまうものもあります。写真に近づけないことで強く落ち込む場合は、今の自分に合った写真に入れ替えることも、一つの選択肢です。

相手の写真を変えようとしない

相手の上質世界の写真を、無理に自分の写真と同じにしようとすると、関係はぎくしゃくします。写真の違いを認めたうえで、お互いが満たされる方法を一緒に探すことが大切です。関係の悩みが深い場合は、カウンセラーなどの専門家に相談することもできます。

⑧まとめ

上質世界とは、自分の欲求を満たしてくれる人や物、場所、活動、考え方のイメージが集まった、心の中のアルバムです。人は、このアルバムの写真に近づこうとして行動を選んでいます。

今回のポイント

上質世界の写真は、経験の中で貼られ、入れ替わっていく

写真と現実のずれが、苦しさと行動を生む

自分の写真を書き出し、近づく小さな行動を決める

相手の写真は自分と違うと知り、違いを話し合う

シリーズの他のコラム

選択理論シリーズでは、基本の考え方から実践の手順までを解説しています。あわせてご覧ください。

選択理論とは|グラッサー提唱の心理学を解説

5つの基本的欲求とは|選択理論の基礎、具体例も紹介

WDEPモデルとは|選択理論の実践手順、具体例も紹介

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Glasser, W. (1998). Choice theory: A new psychology of personal freedom. New York: HarperCollins.(柿谷 正期(訳)(2000). グラッサー博士の選択理論 アチーブメント出版)
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