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感情焦点化療法(EFT)とは

感情焦点化療法とは,EFTの基礎と具体例

感情焦点化療法(Emotion-Focused Therapy:EFT)とは、感情を変化の手がかりと考え、自分の感情に気づき、受け止め、より役立つ感情へと変えていくことをめざす心理療法です。カナダ・ヨーク大学の心理学者グリーンバーグら[1]が、1980年代から発展させてきました。

みなさんこんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは「来談者中心療法シリーズ」の6本目です。来談者中心療法の基本や、提唱者ロジャーズの考え方を先に知りたい方は、来談者中心療法とはのコラムからお読みください。

感情焦点化療法は、来談者中心療法の関係づくり(共感や受容)を土台に、ゲシュタルト療法の技法などを取り入れて発展した心理療法です。来談者中心療法そのものではなく、うつや対人関係の悩みなど、さまざまな領域で使われています。また、ジョンソンが発展させた夫婦・カップル向けのEFTとは、別の流れとして区別されます。

目次は以下の通りです。

目次

①感情焦点化療法とは

感情焦点化療法は、「感情は、自分にとって何が大切かを教えてくれる情報である」と考える心理療法です。感情を抑えたり、考え方だけを変えたりするのではなく、感情そのものに丁寧に向き合うことを大切にします。

感情を手がかりにする考え方

たとえば、友人の何気ない一言に強い怒りを感じたとき、その怒りの奥には「大切にされていない」という悲しみが隠れていることがあります。感情焦点化療法では、こうした感情の重なりを一緒に探り、本当に必要としていることに気づけるよう支援します。

そして、つらさを長引かせている感情に、別の感情(たとえば自分を守ろうとする気持ちや、自分へのいたわり)を呼び起こすことで、感情そのものを変えていくことをめざします。

生まれた経緯

グリーンバーグとジョンソン[2]は、1980年代に夫婦・カップル向けの感情焦点化療法を体系化し、1988年に手引き書を出版しました。その後、グリーンバーグは個人向けの心理療法の研究に力を注ぎ、現在の感情焦点化療法へと発展させました。

来談者中心療法との関係やその後の展開を詳しく知りたい方は、以下の折り畳みを開いてください。一般の方は読み飛ばしても大丈夫です。

来談者中心療法との関係

感情焦点化療法は、来談者中心療法の「共感」「無条件の肯定的配慮」「自己一致」といった関係づくりを土台にしています。そのうえで、ゲシュタルト療法の椅子を使った対話などの技法を組み合わせ、相談者の状態に応じて、カウンセラーがより積極的に感情への取り組みを提案する点に特徴があります。

個人向けの感情焦点化療法は、初めは「プロセス体験療法(process-experiential therapy)」とも呼ばれていました。1990年代後半からは、「感情焦点化療法(emotion-focused therapy)」という名前が広く使われるようになっています。

一方、ジョンソンは、愛着理論を取り入れた夫婦・カップル向けのEFT(emotionally focused therapy)を発展させました。日本語ではどちらも「感情焦点化療法」と訳されることがあるため、どちらの流れを指しているのかに注意が必要です。

折り畳みの中で紹介したように、同じ「EFT」でも2つの流れがあります。このコラムでは、主にグリーンバーグの個人向けの感情焦点化療法を紹介します。

②感情の4つの種類

グリーンバーグ[1]は、感情を、その働きによって4つの種類に分けて考えました。自分が今感じている感情がどの種類かを知ることが、感情とうまく付き合う第一歩になります。

役に立つ感情と古い傷の感情

1つめは「一次適応感情」です。状況に対して最初に自然にわき起こり、役に立つ感情のことです。

たとえば、危険を前にした恐れは、身を守る行動につながります。大切な人を失ったときの悲しみも、喪失を受け止めるために必要な感情です。

2つめは「一次不適応感情」です。状況に対して最初にわき起こるものの、過去のつらい経験から身についてしまい、今の状況には合わない感情のことです。

たとえば、安全な場面でも「自分は見捨てられる」という強い恐れが繰り返しわき起こる場合が、これにあたります。

上乗せの感情と使われる感情

3つめは「二次感情」です。最初の感情に対する反応として、後から上乗せされる感情のことです。

たとえば、傷ついた悲しみを感じる代わりに、怒りで反応してしまう場合がこれにあたります。

4つめは「道具的感情」です。周りの人を動かすために、意識的または無意識に使われる感情のことです。

たとえば、同情してもらうために悲しみを大きく見せるような場合です。

一次適応感情:役に立つ自然な感情
一次不適応感情:古い傷から来る感情
二次感情:最初の感情を覆う感情
道具的感情:人を動かすための感情

同じ「怒り」でも、状況によって一次適応感情のこともあれば、二次感情のこともあります。感情の名前ではなく、その感情がどんな働きをしているかに目を向けることがポイントです。

③感情に気づく練習

感情焦点化療法の考え方は、日常の中で自分の感情に気づく練習にも活かせます。ここでは、一人でも負担の少ない3つの練習を紹介します。

からだの感覚から気づく

感情は、からだの感覚として表れることがよくあります。気持ちがざわついたときは、次の手順でからだに注意を向けてみましょう。

①今、からだのどこに感じがあるか探す
②その感じを「重い」「熱い」などと表す
③その感じに合う感情の名前を考える
④その感情が伝えていることを考える

感情に名前をつける

「なんだか嫌な感じ」のままにしておくより、「がっかりした」「心細い」など、感情に具体的な名前をつけると、気持ちが少し落ち着きやすくなります。

感情を表す言葉が見つからないときは、「不安・悲しみ・怒り・恥ずかしさ・寂しさ」など、いくつかの候補を思い浮かべ、どれがいちばん近いかを確かめてみましょう。

感情日記をつける

1日の終わりに、心が動いた出来事を1つ選び、次の項目を短く書き出します。続けていくと、自分がどんな場面でどんな感情を抱きやすいか、パターンが見えてきます。

出来事:何があったか
感情:何を感じたか
からだ:どこに感じがあったか
必要:本当はどうしてほしかったか

④二次感情の奥を探る

私たちが表に出している感情は、二次感情であることが少なくありません。二次感情の奥にある一次感情に気づくと、自分が本当に必要としていることが見えやすくなります。

怒りの奥にある気持ち

たとえば、家族が約束の時間に遅れてきたとき、強い怒りを感じたとします。この怒りの奥をたどってみると、「自分との約束を大切にしてもらえなかった」という悲しみや、「何かあったのでは」という心配が見つかることがあります。

奥にある気持ちに気づけると、「なんで遅れたの!」と責める代わりに、「待っている間、ちょっと寂しかった」と、本当に伝えたいことを伝えやすくなります。

練習問題

次の2つの場面で、表に出ている感情の奥に、どんな気持ちがありそうか考えてみましょう。

事例1:同僚が自分の提案を会議で横取りして発表した。強い怒りがわいて、その日は一言も口をきかなかった。

事例1の回答例

回答例:怒りの奥には、「自分の努力を認めてもらえなかった」という悔しさや、「大切に扱われなかった」という悲しみがありそうです。

この場合の怒りは、自分の権利を守ろうとする一次適応感情として働いている面もあります。奥にある気持ちに気づくことで、黙り込むのではなく、「あの提案は私が考えたものだと伝えたい」と、必要なことを言葉にしやすくなります。

続いて、もう1つの事例にも取り組んでみましょう。

事例2:友人の結婚報告を聞いて、「よかったね」と言いながら、なぜかイライラしてしまった。

事例2の回答例

回答例:イライラの奥には、「自分だけ取り残されている」という寂しさや焦り、「自分も幸せになりたい」という願いがありそうです。

イライラしている自分を責める必要はありません。奥にある寂しさに気づき、「自分も大切にされたい」という気持ちを認めることが、自分をいたわる第一歩になります。

⑤面接で使う技法

感情焦点化療法の面接では、カウンセラーとの共感的な関係を土台に、相談者の状態に合わせた技法を使います。代表的なものに、椅子を使った2つの対話があります。

共感的な関わり

すべての技法の土台になるのが、来談者中心療法から受け継いだ共感的な関わりです。カウンセラーは相談者の気持ちを丁寧に受け止め、言葉にして返しながら、相談者が自分の感情を安心して感じられる場をつくります。

共感的な関わりの基本については、3つの基本的態度のコラムで詳しく解説しています。

2つの椅子の対話

「自分はダメな人間だ」と自分を責め続けてしまうとき、自分の中には「責める自分」と「責められる自分」がいると考えます。2つの椅子を向かい合わせに置き、それぞれの椅子に座って、2つの自分の間で対話をします。

対話を続けるうちに、責められる側の自分が「本当はこうしてほしかった」と気持ちを伝えられるようになり、責める側の厳しさがやわらいでいくことがあります。

空の椅子の対話

亡くなった人や、過去に自分を傷つけた人など、気持ちを伝えきれなかった相手がいるとき、その人が目の前の空いた椅子に座っているとイメージして、言えなかった気持ちを伝えます。

これらの椅子を使った技法は、強い感情が引き出されやすいため、訓練を受けた専門家のもとで行うものです。一人で試すことは控えてください。

⑥夫婦向けEFTとの違い

「EFT」という名前で紹介される心理療法には、グリーンバーグの個人向けの感情焦点化療法のほかに、ジョンソンが発展させた夫婦・カップル向けのEFTがあります。2つは同じ出発点を持ちながら、別の流れとして発展しました。

共通の出発点

先ほど紹介したように、2つの流れは、グリーンバーグとジョンソン[2]が1980年代に一緒に取り組んだ夫婦療法の研究から始まりました。どちらも、怒りなどの表に出ている感情の奥にある、傷つきや寂しさといった感情を大切にする点は共通しています。

ジョンソンのEFTの特徴

ジョンソン[3]のEFTは、子どもと親の結びつきを説明する「愛着理論」を、大人のパートナー関係に当てはめた点に特徴があります。二人の間で繰り返されるけんかの悪循環を見つけ、お互いが安心してつながれる関係を取り戻すことをめざします。

グリーンバーグ:個人の感情の変化を重視
ジョンソン:二人の愛着の絆を重視

どちらのEFTを行っているかは、相談先によって異なります。カウンセリングを受けるときは、どちらの考え方にもとづいているかを確認するとよいでしょう。

⑦研究からみた効果と注意

感情焦点化療法は、特にうつ病に対する効果が研究されてきました。一方で、強い感情を扱う療法でもあるため、取り組むときの注意点も押さえておきましょう。

うつ病に対する研究

ゴールドマンら(2006)[4]は、大うつ病と診断された38名を対象に、来談者中心療法の関係づくりだけを行うグループと、それに感情焦点化療法の技法を加えるグループに分けて比較しました。その結果、どちらのグループでも症状は改善しましたが、技法を加えたグループのほうが、うつ症状などの改善がより大きかったと報告されています。

ただし、対象者の人数は多くなく、その後も効果を確かめる研究が続けられています。「誰にでも効果がある」と言える段階ではないことに注意が必要です。

取り組むときの注意

感情焦点化療法では、つらい感情に向き合う場面があるため、一時的に気持ちが揺れることがあります。過去のつらい体験に強く苦しんでいる方や、心の不調で治療を受けている方は、主治医に相談したうえで、訓練を受けた専門家のもとで取り組んでください。

このコラムで紹介した「感情に気づく練習」も、取り組んでいて強いつらさを感じたときは、すぐに中断してください。気分の落ち込みが続く場合は、医療機関や専門の相談窓口に相談することが大切です。

⑧よくある質問Q&A

私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。

感情を出すと悪化しない?

感情焦点化療法は、感情をただ吐き出すことをめざす療法ではありません。カウンセラーと安心できる関係を築いたうえで、感情に気づき、言葉にし、その奥にある本当の気持ちや必要としていることを理解していきます。その過程で、一時的に気持ちが揺れることはありますが、カウンセラーはその人が受け止められるペースを大切にしながら進めます。一人で無理に感情を掘り下げるのではなく、専門家と一緒に取り組むことが大切です。取り組む前に不安なことがあればカウンセラーに伝え、つらさが強いときはペースを落とすよう相談することもできます。

自分で椅子のワークをしてもいい?

2つの椅子の対話や空の椅子の対話は、強い感情が引き出されやすい技法です。特に、亡くなった人や、自分を傷つけた人との対話は、一人で行うと感情を受け止めきれなくなることがあります。そのため、このコラムでは、一人で行うことはおすすめしていません。一人で取り組みたい場合は、感情に名前をつける練習や、感情日記など、負担の少ない方法から始めてください。椅子を使ったワークに関心がある方は、感情焦点化療法やゲシュタルト療法の訓練を受けた専門家に相談してください。相談するときは、どのような訓練を受けているかを確認しておくと安心です。

夫婦で受けるならどちら?

夫婦やカップルの関係の悩みであれば、二人一緒に受けるカップル向けのEFTが選ばれることが多いです。ジョンソンのEFTは、愛着の考え方をもとに、二人の間で繰り返される悪循環を見つけ、安心してつながれる関係を取り戻すことをめざします。一方、グリーンバーグの感情焦点化療法にもカップル向けのやり方があります。どちらの考え方で行っているかは、相談先によって違うので、事前に確認するとよいでしょう。暴力がある場合は、まず安全の確保を優先してください。相談先を選ぶときは、二人とも話しやすいと感じられるかどうかも大切な目安になります。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。

来談者中心療法の考え方
傾聴と共感の練習
感情に気づくワーク
はじめての心理療法

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)

コミュニケーション教室,講座,ダイコミュ

個別レッスン

個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースで感情との付き合い方を深めたい方は、下記をご参照ください。

個別レッスンの詳細はこちら。

シリーズの続きを読む

感情焦点化療法の椅子を使った技法は、ゲシュタルト療法から取り入れられたものです。「今ここ」への気づきを大切にするゲシュタルト療法について知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。

ゲシュタルト療法とは,今ここへの気づき

感情焦点化療法の土台になっている、来談者中心療法の全体像を知りたい方は、シリーズ1本目のコラムに戻ってみてください。

①来談者中心療法とは,ロジャーズの理論と特徴

シリーズでは他に、少人数で本音を伝え合うエンカウンターグループ、気持ちを言葉で返す傾聴技法、からだの感じに注意を向けるフォーカシングも紹介しています。

他にも数多くの心理療法があります。ご自身の興味やお悩みに合った理論をじっくり探したい方は、一覧から選んでみてください。

心理療法の一覧

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Greenberg, L. S. (2010). Emotion-focused therapy: A clinical synthesis. FOCUS: The Journal of Lifelong Learning in Psychiatry, 8(1).
 
[2] Greenberg, L. S., & Johnson, S. M. (1988). Emotionally focused therapy for couples. New York: Guilford Press.
 
[3] Johnson, S. M. (2004). The practice of emotionally focused couple therapy: Creating connection (2nd ed.). New York: Brunner-Routledge.
 
[4] Goldman, R. N., Greenberg, L. S., & Angus, L. (2006). The effects of adding emotion-focused interventions to the client-centered relationship conditions in the treatment of depression. Psychotherapy Research, 16(5), 537-549.
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