>
>
催眠療法と自律訓練法の違い

催眠療法と自律訓練法の違いとは

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは、催眠療法シリーズの2本目です。「催眠療法と自律訓練法の違い」をテーマに解説していきます。

催眠療法と自律訓練法の違いとは、主に「誰が導くか」にあります。催眠療法は、セラピストの言葉の導きと暗示によって集中した状態をつくるのに対し、自律訓練法は、決まった言葉を自分で心の中でくり返し、自分の力でリラックスした状態をつくります。自律訓練法は、催眠の研究から生まれた「自己催眠」の方法でもあります。

今回は、2つの方法の違いと共通点を整理し、自分に合う方法の選び方と、2つを体験して比べるワークを紹介します。目次は以下の通りです。

目次

①2つの方法の関係

催眠療法と自律訓練法は、別々の方法ではなく、深いつながりを持っています。まずは、その関係を確認しましょう。

自律訓練法は催眠から生まれた

自律訓練法を体系化したドイツの精神科医シュルツは、催眠を受けた人の多くが、手足の重さや温かさを感じることに注目しました。そして、その感覚を言葉にして自分でくり返すことで、セラピストがいなくても、催眠に近い状態をつくれるようにしたのです[1]。

他者催眠と自己催眠

セラピストなど、他の人の導きによって入る催眠を「他者催眠」、自分の力で入る催眠を「自己催眠」と呼ぶことがあります。この言い方で整理すると、催眠療法は主に他者催眠を、自律訓練法は自己催眠を用いる方法だと言えます。

②主な違い

催眠療法と自律訓練法の主な違いを、3つの観点から比べてみましょう。

導く人と言葉

催眠療法:セラピストが、その人に合わせた言葉で導く

自律訓練法:自分で、決まった公式を心の中でくり返す

催眠療法では、目的や反応に合わせて、セラピストが言葉を自由に組み立てます。自律訓練法では、「両腕が重たい」など、あらかじめ決まった公式を使います。

目的と使い方

催眠療法:不安、痛み、習慣など、特定の悩みに働きかける

自律訓練法:心身をリラックスさせる力を、日常的に育てる

場所と頻度

催眠療法:主に面接室で、セラピストと一緒に行う

自律訓練法:自宅や職場などで、1日2〜3回、自分で練習する

このほか、催眠療法はセラピストへの信頼関係が大切になり、自律訓練法は、毎日続けて練習することが大切になる、という違いもあります。

③共通点

違いがある一方で、2つの方法には、大切な共通点もあります。

注意を集中させる

どちらも、注意を一つのことに集中させ、周りへの意識を薄めることで、ふだんとは少し違う、落ち着いた心の状態をつくります。

心と体のつながりを使う

どちらも、言葉やイメージによって、体の感覚に変化を起こすことができる、という心と体のつながりを活かしています。「腕が重たい」と思い浮かべることで、実際に腕の力が抜けていくような体験が、その代表です。

④自分に合う方を選ぶ

どちらの方法が合うかは、悩みの内容や、自分の取り組み方の好みによって変わります。次の3つの視点で考えてみましょう。

視点1 悩みの内容

人前での強い緊張、特定の痛み、習慣を変えたいなど、はっきりした悩みに専門家と取り組みたい場合は、催眠療法が選択肢になります。日々のストレスや緊張を、全体的に和らげたい場合は、自律訓練法が取り入れやすい方法です。

視点2 一人で続けたいか

自分のペースで、毎日少しずつ練習したい人には、自律訓練法が向いています。一方、一人ではなかなか集中できない、専門家に導いてもらいたい人には、催眠療法が合うことがあります。

視点3 費用と時間

催眠療法は、専門家のもとに通う必要があり、費用や時間がかかります。自律訓練法は、一度やり方を覚えれば、費用をかけずに続けられます。まずは自律訓練法を試し、必要に応じて専門家に相談する、という順番もおすすめです。

⑤2つを体験して比べる

ここでは、自律訓練法と、催眠の要素を取り入れたイメージのワークを、それぞれ短く体験して比べてみましょう。どちらも3分ほどで行えます。

体験1 自律訓練法の重感

①椅子に深く腰かけ、目を閉じる

②「気持ちが落ち着いている」と心の中で1〜2回くり返す

③「右腕が重たい」と、ゆっくり4〜5回くり返し、右腕にぼんやり注意を向ける

④両手をグーパーと握り、ひじを曲げ伸ばしし、伸びをして目を開ける(消去動作)

体験2 イメージの誘導

①椅子に深く腰かけ、目を閉じて、ゆっくり3回呼吸をする

②「階段を一段下りるごとに、心が静かになっていく」と思い浮かべ、10段の階段をゆっくり下りていくイメージをする

③下りた先に、心が落ち着く場所があると想像し、しばらく味わう

④「5つ数えたら、すっきりと目が覚める」と心の中で言い、1から5まで数えて目を開ける

比べてみよう

体験の後に、「どちらが落ち着きやすかったか」「どちらが続けやすそうか」をメモしてみましょう。決まった言葉をくり返す方が楽な人もいれば、イメージを広げる方が入りやすい人もいます。自分に合う方を、日常のセルフケアに取り入れてみてください。

⑥場面で考えてみよう

2つの場面で、どちらの方法が合いそうか考えてみましょう。考えた後に、解説を開いてください。

場面1 毎晩寝つけない

仕事のことが気になって、毎晩なかなか寝つけない。病院で相談したところ、大きな病気はないと言われた。

場面1の解説

毎日の寝る前の時間に、自分で続けられる方法が合いそうです。布団の中で、自律訓練法の重感と温感の公式を練習してみましょう。そのまま眠る場合は、消去動作は不要です。2〜3週間続けても寝つけない日が続く場合は、医療機関に改めて相談しましょう。

場面2 発表への強い緊張

来月、大勢の前で発表をする。過去に発表で頭が真っ白になった経験があり、思い出すだけで強い緊張を感じる。

場面2の解説

特定の場面への強い緊張なので、専門家と一緒に取り組む催眠療法が選択肢になります。落ち着いて発表している自分の姿をイメージする練習などを、セラピストの導きのもとで行えます。並行して、日々の緊張を和らげるために、自律訓練法を練習しておくのも効果的です。

⑦取り組むときの注意

どちらの方法も、比較的安全とされていますが、次の点に注意しましょう。

持病がある方は相談を

心臓や血圧の病気、糖尿病などで治療中の方や、統合失調症、解離の症状などで治療中の方は、どちらの方法も、始める前に主治医に相談してください。

不快な反応が出たら中止

練習中に、強い不安やめまい、気分の悪さを感じたら、すぐに目を開けて中止しましょう。また、運転中など、意識がぼんやりすると危険な場面では行わないでください。催眠療法を受ける場合は、専門的な資格と訓練を持つ専門家を選びましょう。

⑧まとめ

催眠療法と自律訓練法の大きな違いは、セラピストに導かれるか、自分で行うかにあります。自律訓練法は催眠の研究から生まれた自己催眠の方法で、2つは深いつながりを持っています。

今回のポイント

催眠療法はセラピストが導き、自律訓練法は自分で公式をくり返す

特定の悩みには催眠療法、日々のセルフケアには自律訓練法

どちらも注意の集中と、心と体のつながりを活かす

持病がある方は、始める前に主治医に相談

あわせて読みたいコラム

催眠療法と自律訓練法、それぞれの詳しいやり方は、こちらで解説しています。

催眠療法とは|歴史と基礎を公認心理師が解説

自律訓練法とは|やり方と効果と具体例を解説

しっかり身につけたい方へ

公認心理師、精神保健福祉士など専門家の元で心理療法を学びたい方は、私たちが開催している講座をおすすめしています。内容は以下の通りです。

・はじめての心理療法

・心と体のリラックス練習

・マインドフルネス療法の学習

・緊張をほぐす,エクササイズ

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)

催眠療法と自律訓練法の違いとは,心理学講座

講座の日程が合わない方や、自分のペースで学びたい方は、個別レッスンのご相談も受け付けています。

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


YouTube→
Twitter→
元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Schultz, J. H., & Luthe, W. (1959). Autogenic training: A psychophysiologic approach in psychotherapy. New York: Grune & Stratton.
↑