みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。
このコラムは、ナラティブセラピーシリーズの2本目です。「外在化技法」をテーマに解説していきます。
外在化技法とは、悩みや症状を、その人の性格や本質の一部としてではなく、その人の外側にあって影響を与えてくる「別の存在」として扱う、ナラティブセラピーの中心的な技法です。「人が問題なのではなく、問題が問題なのだ」という考え方にもとづいています。
今回は、外在化の考え方と進め方、一人でも試せるワークを、具体例を交えて解説します。目次は以下の通りです。
①外在化技法とは
外在化は、ナラティブセラピーを確立したマイケル・ホワイトらが発展させた技法です。まずは、その基本的な考え方を確認しましょう。
人と問題を切り離す
私たちは、悩みを抱えると、「私は怒りっぽい人間だ」「私は心配性だ」のように、問題を自分の性格そのものとして捉えがちです。ホワイトとエプストン[1]は、こうした見方を変え、問題を人から切り離して扱う方法を示しました。
例えば、「私は怒りっぽい」ではなく、「『イライラ』が、ときどき私を乗っ取ろうとする」と捉え直します。問題は、自分そのものではなく、自分の外側にあって、自分に影響を与えてくる存在として扱われるのです。
有名な例
ホワイトが紹介した有名な例に、トイレの失敗に悩む男の子の事例があります。ホワイトは、その失敗を「スニーキー・プー(ずるがしこいうんち)」というユーモラスな名前で呼び、男の子と家族が一緒に、スニーキー・プーにだまされないよう作戦を立てました[1]。男の子を責めるのではなく、家族みんなで問題に立ち向かうチームになったのです。
②外在化の効果
問題を外側に置いて捉え直すことには、どのような効果があるのでしょうか。主な効果を3つ紹介します。
自分を責めずにすむ
問題が自分の性格そのものだと思うと、「自分はダメだ」と自分を責めてしまいます。問題を外在化すると、「問題が悪さをしている」と捉えられるため、自分を責める気持ちが和らぎ、問題に向き合う元気が出やすくなります。
問題との関係を見直せる
問題を外側に置くと、「問題は、いつ、どんなときに強くなるのか」「自分は、どんなときに問題に負けずにいられたか」と、問題との関係を観察できるようになります。問題とどう付き合うかを、自分で選べるようになるのです。
周りと協力しやすくなる
家族や周りの人が、「あの人が問題だ」と考えると、責め合いが起こりがちです。問題を外在化すると、「みんなで、この問題にどう立ち向かうか」という協力関係をつくりやすくなります。
③外在化の4ステップ
外在化は、おおむね次の4つのステップで進めます。
ステップ1 問題に名前をつける
悩みや症状に、自分なりの名前をつけます。「不安」「イライラ」のような言葉でも、「心配虫」「ぐるぐる君」のような、あだ名のような名前でも構いません。自分がしっくりくる名前を選ぶのがポイントです。
ステップ2 問題の影響を探る
その問題が、自分の生活や人間関係に、どのような影響を与えているかを書き出します。「心配虫が出てくると、夜眠れなくなる」「誘いを断ってしまう」などです。
ステップ3 自分の影響を探る
反対に、自分が問題にどのような影響を与えてきたかを探ります。「心配虫が出てきても、仕事には行けている」「友人に話すと、心配虫が小さくなる」など、問題に負けなかった場面(ユニークな結果)を見つけます。
ステップ4 新しい物語を描く
見つけた例外の場面をつなぎ合わせて、「私は、心配虫に邪魔されながらも、大切なことを続けてきた人だ」というように、新しい自分の物語を描きます。
④外在化の質問例
外在化を進めるときに使われる、代表的な質問を紹介します。自分に問いかけるときにも使えます。
問題の影響を尋ねる質問
「その問題は、いつごろから、あなたの生活に入り込んできましたか?」
「問題は、あなたにどんなことを言ってきますか?」
「問題のせいで、できなくなったことはありますか?」
自分の力を尋ねる質問
「問題に負けなかったのは、どんなときでしたか?」
「そのとき、どんな工夫をしていましたか?」
「問題に立ち向かうあなたを見て、応援してくれそうな人は誰ですか?」
「問題」の部分には、自分でつけた名前を入れて使いましょう。
⑤具体例で確認
外在化の流れを、理解のために作成した架空の例で確認しましょう。
例1 不安に悩む会社員
名前をつける:会議前の強い不安を「ドキドキ怪獣」と呼ぶ
問題の影響:ドキドキ怪獣が来ると、発言をあきらめてしまう
自分の影響:資料を準備した日は、ドキドキ怪獣が小さく、一言発言できた
新しい物語:「私は、準備という武器で、ドキドキ怪獣と付き合える人だ」
例2 親子のけんか
名前をつける:宿題をめぐる親子げんかを「イライラ嵐」と呼ぶ
問題の影響:イライラ嵐が来ると、親子ともに怒鳴ってしまう
自分の影響:おやつを食べてから宿題を始めた日は、嵐が来なかった
新しい物語:「私たち親子は、作戦を立てればイライラ嵐を避けられるチームだ」
⑥一人でできるワーク
外在化は、一人でも紙に書きながら試すことができます。15分ほどで取り組める2つのワークを紹介します。
問題キャラクター化ワーク
①今の悩みを1つ選び、名前をつける
②その問題を、キャラクターとして絵に描くか、見た目を言葉で表す
③問題がよく現れる時間や場所、口ぐせを書き出す
④問題に負けなかった場面を3つ書き出す
⑤次に問題が現れたとき、どう対応するか作戦を立てる
絵の上手さは関係ありません。問題を目に見える形にすることで、「自分とは別のもの」として扱いやすくなります。
問題への手紙
問題に宛てて、手紙を書いてみます。「心配虫へ。あなたはいつも私の邪魔をするけれど、最近は〜のときには負けていないよ」というように、問題との関係や、自分の工夫を言葉にします。書くことで、問題に対する自分の立場がはっきりしてきます。
⑦取り組むときの注意
外在化は、多くの悩みに活用できる技法ですが、次の点に気をつけましょう。
責任をあいまいにしない
外在化は、自分を責めすぎないための方法ですが、暴力やいじめなど、人を傷つける行動の責任をあいまいにするものではありません。「怒りのせいで殴ってしまった」と、行動の責任を問題に押しつけることがないよう注意しましょう。
つらい体験は専門家と
トラウマとなるような体験や、心の病気の症状を扱う場合は、一人で取り組まず、ナラティブセラピーを学んだ専門家のもとで行うことをおすすめします。また、症状については、外在化と並行して、必要に応じて医療機関での治療も受けましょう。
⑧確認してみよう
ここまでの内容を、3つの問題で確認してみましょう。答えを考えてから、正解と解説を開いてください。
問題1
外在化の考え方を表す言葉として、最も適切なものはどれでしょうか。
ア 人が問題なのではなく、問題が問題なのだ
イ 問題の原因はすべて本人にある
ウ 問題は考えないようにすべきだ
問題2
外在化の4ステップの最初に行うことはどれでしょうか。
ア 問題に名前をつける
イ 新しい物語を描く
ウ 問題に負けなかった場面を探す
問題3
外在化を使うときの注意として、適切なものはどれでしょうか。
ア 暴力の責任も問題のせいにしてよい
イ 人を傷つける行動の責任まで問題に押しつけない
ウ 名前は必ずユーモラスにする
⑨まとめ
外在化技法とは、悩みや症状を自分の性格から切り離し、外側にある存在として扱うことで、問題との関係を見直し、新しい自分の物語を描いていくナラティブセラピーの技法です。
今回のポイント
「人が問題なのではなく、問題が問題」
問題に名前をつけ、影響を探る
問題に負けなかった場面を見つける
行動の責任まで問題に押しつけない
外在化の考え方は、ホワイトの著書[2]などで、さらに詳しく紹介されています。
シリーズの他のコラム
ナラティブセラピーの全体像は、シリーズ1本目で解説しています。あわせてご覧ください。
しっかり身につけたい方へ
心理療法を公認心理師の元でしっかり学びたい方は、私たちが主催する講座をおすすめします。内容は以下の通りです。
・はじめて学ぶ心理療法
・初学者向け,認知療法の基礎
・初学者向け,マインドフルネス療法
・アンガーマネジメント
講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
講座の日程が合わない方や、自分のペースで学びたい方は、個別レッスンのご相談も受け付けています。
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連



