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心理療法の重要用語

治療同盟とラポールとは,信頼関係の築き方

治療同盟とは、相談する人とセラピストが、目標と進め方について合意し、信頼で結ばれた協力関係のことです。ラポールは、互いに安心して話せる信頼の雰囲気を指す言葉で、治療同盟の土台になります。どちらも、学派の違いをこえて、心理療法の効果を支える大切な要素とされています。

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。当コラムのテーマは「治療同盟とラポール」です。

カウンセリングで「この人になら話せる」と感じられるかどうかは、その後の取り組みに大きく影響します。当コラムでは、治療同盟とラポールの意味と、信頼関係の築き方、相談する人ができることを紹介します。目次は以下の通りです。

目次

①治療同盟とは

治療同盟は、作業同盟、援助同盟とも呼ばれ、心理療法の研究で最もよく調べられてきた要素の一つです。

3つの要素

アメリカの心理学者ボーディン[1]は、治療同盟を、次の3つの要素から成るものとして整理しました。この考え方は、学派をこえて広く使われています。

目標の合意:何を目指すのかについて、二人が合意していること

課題の合意:そのために、どのような方法で取り組むのかについて、二人が合意していること

絆:互いに信頼し、尊重し合っている感覚

「一緒に取り組む」関係

治療同盟は、セラピストが一方的に治療をほどこす関係ではなく、相談する人とセラピストが、同じ目標に向かって一緒に取り組む、チームのような関係を意味します。

②ラポールとは

ラポールは、「関係」「つながり」を意味するフランス語に由来する言葉で、心理療法では、心が通い合い、安心して話せる関係を表します。

安心と信頼の雰囲気

ラポールがある関係では、相談する人は、「この人には本当のことを話しても大丈夫だ」と感じることができます。カウンセリングの最初の段階で、まず大切にされるのが、このラポールを築くことです。

治療同盟との違い

ラポールは主に、安心感や信頼の「雰囲気」を指します。これに対して治療同盟は、信頼関係(絆)に加えて、目標と進め方についての「合意」も含む、より広い考え方です。ラポールは、治療同盟の土台にあたるといえます。

③なぜ大切なのか

治療同盟の大切さは、多くの研究で確かめられています。

295の研究のメタ分析

295の研究、3万人以上のデータをまとめたメタ分析[2]では、治療同盟が強いほど、心理療法の効果が高い傾向があることが示されました。この関係は、評価する人(相談者、セラピスト、観察者)や、心理療法の種類、相談者の特徴、国の違いをこえて、一貫して見られました。また、オンラインで行う心理療法でも、対面とほぼ同じ程度の関係が見られました。

学派をこえた共通要因

どの学派の心理療法でも治療同盟が効果と関わっていることから、治療同盟は、学派の違いをこえて心理療法を支える「共通要因」の代表と考えられています。共通要因については、統合的心理療法とはでも解説しています。

④治療同盟の築き方

セラピストは、治療同盟を築くために、次のような点を大切にしています。

話を聴き、理解を伝える

まずは、相談する人の話をじっくり聴き、理解したことを言葉にして伝えます。「わかってもらえた」という感覚が、信頼関係の出発点になります。聴き方の基本は、傾聴と共感とはで解説しています。

目標と進め方を一緒に決める

「このカウンセリングで、どうなれたらよいと思いますか」と尋ね、目標を一緒に確かめます。進め方についても、セラピストが方法を説明し、相談する人が納得したうえで始めます。悩みの背景を一緒に整理するケースフォーミュレーションも、目標と進め方を共有する助けになります。

相手を尊重する

相談する人の考えや価値観を否定せず、対等な立場で関わります。来談者中心療法の3つの基本的態度や、アドラー心理学の「横の関係」の考え方も、信頼関係を築く姿勢として参考になります。

⑤関係のほころびと修復

治療同盟は、一度築けば終わりではなく、途中で揺らぐこともあります。

ほころびは起きるもの

「セラピストに誤解された気がする」「この方法が合わない気がする」と感じて、関係がぎくしゃくすることは、珍しいことではありません。こうした関係のほころびは、相談する人が黙って通わなくなるきっかけにもなります。

話し合うことで深まる

ほころびに気づいたとき、セラピストがそれを率直に話題にし、相談する人の気持ちを受け止め、必要に応じて進め方を見直すことで、関係はかえって深まることがあります。ほころびを修復する経験そのものが、人間関係についての大切な学びになることもあります。

⑥相談する人ができること

治療同盟は、二人でつくるものです。相談する人の側からもできることがあります。

目標を言葉にしてみる

「何に困っているか」だけでなく、「どうなれたらよいか」を、短い言葉で考えておきましょう。うまく言葉にならなくても、「よく眠れるようになりたい」「人前で落ち着いて話したい」など、小さな目標で十分です。

違和感は伝えてよい

「今の進め方が、自分に合っているかわからない」

「さっきの言葉が、少し引っかかった」

「もう少し、具体的な方法を知りたい」

こうした気持ちを伝えることは、失礼なことではありません。率直に伝えることで、セラピストは進め方を調整でき、治療同盟が強まるきっかけになります。話し合っても合わないと感じる場合は、相談先を変えることも一つの選択肢です。

⑦日常の人間関係に活かす

治療同盟とラポールの考え方は、職場や家庭の人間関係にも活かせます。

目標を共有する

部下や同僚と仕事を進めるとき、「何のために、何を目指すのか」を最初に共有すると、協力しやすくなります。家庭でも、「どんな家族でいたいか」を話し合うことが、意見が違うときの土台になります。

小さな約束を守る

「あとで連絡する」と言ったら必ず連絡する、話を最後まで聴く、といった小さな行動の積み重ねが、信頼の雰囲気(ラポール)をつくります。関係がぎくしゃくしたときは、ほころびを見なかったことにせず、「さっきの話、気になっていて」と話題にしてみましょう。

⑧注意

信頼関係について、知っておきたい注意点をまとめます。

適切な距離も大切

治療同盟は、友人関係や恋愛関係とは違う、専門的な関係です。セラピストが、個人的な付き合いや金銭のやりとり、面接以外での頻繁な連絡を求めるなど、専門的な関係の範囲をこえる場合は注意が必要です。そうしたことがあれば、所属する機関や、資格を認定する団体などに相談してください。

心の不調が強いときは

気分の落ち込みや不安が強く、日常生活に支障が出ている場合は、医療機関にも相談しましょう。

⑨まとめ

治療同盟は、目標と進め方の合意と、信頼の絆から成る協力関係で、ラポールはその土台となる安心と信頼の雰囲気です。どちらも、学派をこえて心理療法の効果を支えています。

今回のポイント

治療同盟は、目標の合意・課題の合意・絆の3つから成る

治療同盟が強いほど、心理療法の効果が高い傾向がある

関係のほころびは、話し合うことで修復できる

相談する人も、目標や違和感を伝えてよい

心理療法の重要用語

「心理療法の重要用語」では、傾聴と共感、エビデンスに基づく心理療法についても解説しています。

傾聴と共感とは|心理療法に共通する基本姿勢

エビデンスに基づく心理療法とは|読み方を解説

しっかり身につけたい方へ

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講座の日程が合わない方や、自分のペースで学びたい方は、個別レッスンのご相談も受け付けています。

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Bordin, E. S. (1979). The generalizability of the psychoanalytic concept of the working alliance. Psychotherapy: Theory, Research & Practice, 16(3), 252-260.
 
[2] Flückiger, C., Del Re, A. C., Wampold, B. E., & Horvath, A. O. (2018). The alliance in adult psychotherapy: A meta-analytic synthesis. Psychotherapy, 55(4), 316-340.
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