みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。
このコラムは、ACTシリーズの3本目です。「アクセプタンス」をテーマに解説していきます。
アクセプタンスとは、不安や悲しみ、体の不快な感覚など、今感じている体験を、追い払ったり戦ったりせずに、そのまま心の中に置いておく姿勢のことです。ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の名前にも含まれる、中心的な考え方の一つです。
今回は、アクセプタンスの考え方と、日常で使える具体的なワークを解説します。目次は以下の通りです。
①アクセプタンスとは
アクセプタンスは「受容」とも訳されます。ただし、ACTでいう受容は、我慢やあきらめとは違う意味を持っています。
アクセプタンスの意味
ヘイズら[1]は、ACTの中で、つらい気持ちや考え、体の感覚が生じたとき、それを避けたりコントロールしたりしようとせず、心を開いてそのまま体験することを大切にしました。
例えば、人前で話す前に不安が湧いてきたとき、「不安を消さなきゃ」と戦うのではなく、「不安があるな」と認めて、不安と一緒にいることを選ぶ。これがアクセプタンスです。
我慢やあきらめとの違い
我慢:つらさを感じないように押し込める
あきらめ:状況を変える努力をやめてしまう
アクセプタンス:つらさを感じることを認めつつ、大切な行動を続ける
アクセプタンスは、「つらい状況を受け入れて何もしない」ことではありません。変えられない気持ちには場所を与え、変えられる行動にエネルギーを使う、という考え方です。
②なぜ受け入れるのか
つらい気持ちは、なくしてしまった方が楽に思えます。それなのに、なぜACTでは受け入れることを大切にするのでしょうか。
抑えるほど強くなる
ウェグナーら[2]は、「白いクマのことを考えないでください」と指示された人が、かえって白いクマのことを何度も考えてしまうことを、実験で示しました。考えや気持ちは、抑えつけようとするほど、かえって強く意識されてしまうことがあるのです。
避けるほど生活が狭くなる
不安を感じないように、人前で話す機会や、新しい挑戦を避け続けると、そのときは楽になります。しかし、避けるものが増えるほど、生活の幅は狭くなり、大切なことができなくなっていきます。ACTでは、こうした「体験の回避」が、多くの心の苦しみを長引かせていると考えます。

流砂のたとえ
流砂にはまったとき、必死にもがくほど深く沈んでいくと言われます。助かるためには、体を広げて流砂に身を預けることが大切だ、というたとえがあります。つらい気持ちも同じで、もがくのをやめて受け止めたとき、かえって身動きがとりやすくなることがあるのです。
③アクセプタンスのワーク
ここでは、一人でも取り組みやすい3つのワークを紹介します。最初は、それほど強くない不快な気持ちで練習してみましょう。
観察する
不快な気持ちが湧いてきたら、それが体のどこで感じられるかを探します。胸のあたりが重い、喉が詰まる感じがする、など。その感覚の形、大きさ、温度、重さを、科学者が観察するように、好奇心を持って眺めてみます。
呼吸を送り込む
感覚が見つかったら、ゆっくり息を吸い、その息がその感覚のまわりに流れ込んでいくイメージをします。感覚を消そうとするのではなく、感覚のまわりに「すき間」をつくるようなイメージです。
場所を与える
最後に、「ここにいていいよ」と、その感覚に心の中で場所を与えます。好きにならなくても大丈夫です。「今はここにあるね」と認めるだけで十分です。この3つの流れは、ハリス[3]が紹介している「拡張」のワークをもとにしています。
④実践の4ステップ
日常の場面でアクセプタンスを使うときは、次の4つのステップで進めます。
ステップ1 気持ちに名前をつける
「今、不安がある」「今、イライラしている」と、気持ちに名前をつけます。名前をつけるだけでも、気持ちに飲み込まれにくくなります。
ステップ2 戦っていないか確かめる
「この気持ちを消そうとしていないか」「避けようとしていないか」を確かめます。戦っていることに気づいたら、いったん力を抜きます。
ステップ3 ワークで場所をつくる
③のワークで、観察する、呼吸を送る、場所を与える、を行います。1〜2分でも構いません。
ステップ4 大切な行動を選ぶ
気持ちがあるままで、「今、自分が大切にしたいことのために、何ができるか」を考え、小さな行動を選びます。
⑤場面で使ってみよう
2つの場面で、アクセプタンスを使ってみましょう。考えた後に、解説を開いてください。
場面1 初めての職場
新しい職場に初めて出勤する日の朝、緊張でお腹が痛くなり、「行きたくない」と感じている。
場面2 大切な人を亡くしたとき
身近な人を亡くし、悲しみが急に押し寄せてきて、何も手につかない。
⑥取り組むときの注意
アクセプタンスは、何でも受け入れればよいという意味ではありません。次の点に気をつけましょう。
害を受け入れる必要はない
アクセプタンスの対象は、自分の中に生じる気持ちや考え、体の感覚です。暴力やハラスメントなど、自分を傷つける状況を受け入れる、という意味ではありません。そうした状況からは離れ、相談窓口や周りの人の助けを求めることが大切です。
強いつらさは専門家と
トラウマの記憶や、強い不安・落ち込みに一人で向き合うと、かえってつらくなることがあります。そのような場合は、ACTを学んだ専門家のもとで、少しずつ取り組むようにしましょう。
⑦まとめ
アクセプタンスとは、つらい気持ちや感覚を追い払わずにそのまま心に置き、大切な行動にエネルギーを使えるようにする、ACTの中心的な考え方です。
今回のポイント
気持ちは抑えるほど強くなり、避けるほど生活が狭くなる
アクセプタンスは我慢やあきらめとは違う
観察する、呼吸を送る、場所を与える
気持ちがあるままで、大切な行動を選ぶ
シリーズの他のコラム
ACTシリーズでは、基本の考え方から、6つのコアプロセスの実践までを解説しています。あわせてご覧ください。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、実際に学ぶことができます。内容は以下のとおりです。
・ACTの基礎,エクササイズ
・はじめての認知療法
・はじめての行動療法
・マインドフルネス療法の基礎
講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
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監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連




