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ACTの6つのコアプロセスとは

ACTの6つのコアプロセスとは,全体像を解説

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは、ACTシリーズの7本目です。「ACTの6つのコアプロセス」をテーマに解説していきます。

ACTの6つのコアプロセスとは、アクセプタンス、脱フュージョン、今この瞬間との接触、文脈としての自己、価値、コミットされた行動の6つからなる、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の全体像を示す枠組みのことです。6つのプロセスが互いに支え合うことで、ACTが目指す「心理的柔軟性」が育まれると考えられています。

今回は、ACTシリーズのまとめとして、6つのコアプロセスの全体像と、その目標である心理的柔軟性を解説します。目次は以下の通りです。

目次

①目標は心理的柔軟性

6つのコアプロセスは、ACTが目指す「心理的柔軟性」を育てるための枠組みです。まずは、心理的柔軟性の意味と、なぜ大切なのかを確認しましょう。

心理的柔軟性の意味

ヘイズら[1]は、心理的柔軟性を、今この瞬間に意識的に触れながら、状況に応じて、自分の価値に役立つ行動を続けたり変えたりできる力と説明しています。

簡単に言えば、「つらい気持ちに振り回されず、自分らしい行動を選べる心のしなやかさ」です。柔軟性が高い人は、不安があっても大切な挑戦をし、うまくいかなければ別のやり方に切り替えることができます。

なぜ大切なのか

カシュダンとロッテンバーグ[2]は、心理的柔軟性を、心の健康の土台となる力として位置づけています。状況はいつも変わり、思い通りにならないことも多いものです。そのときに、一つのやり方や考えに固執せず、柔軟に対応できることが、心の健康を保つうえで大切だと考えられています。

②6つのコアプロセス

ACTでは、心理的柔軟性を、6つのプロセスが互いに支え合うことで生まれると考えます。6つを六角形に並べた図は「ヘキサフレックス」と呼ばれます。

ACTの6つのコアプロセス

心を開くプロセス

アクセプタンス:つらい気持ちを追い払わず、受け止める

脱フュージョン:考えを「頭の中の言葉」として眺める

この2つは、つらい体験に対して「心を開く」ためのプロセスです。詳しくは、アクセプタンスと脱フュージョンのコラムで解説しています。

今ここに気づくプロセス

今この瞬間との接触:過去や未来ではなく、今の体験に注意を向ける

文脈としての自己:考えや気持ちに「気づいている視点」を持つ

この2つは、「今ここ」に気づくためのプロセスです。詳しくは、文脈としての自己のコラムで解説しています。

大切なことをするプロセス

価値:人生で大切にしたい方向性をはっきりさせる

コミットされた行動:価値に沿った行動を、具体的に続ける

この2つは、「大切なことをする」ためのプロセスです。詳しくは、価値の明確化のコラムで解説しています。なお、考えとの付き合い方に注目する心理療法には、メタ認知療法もあります。

③柔軟性が失われるとき

心理的柔軟性が失われると、6つのプロセスの反対の状態が起こります。ACTでは、これを「心理的硬直性」と呼びます。

6つの反対の状態

体験の回避:つらい気持ちを避けようとする

フュージョン:考えを事実だと信じ込む

過去や未来へのとらわれ:後悔や心配に心を奪われる

概念としての自己への執着:「私は〜な人間だ」に縛られる

価値の見失い:何のために生きているか分からなくなる

行動の停止や衝動的な行動:動けない、またはその場しのぎの行動をとる

悪循環が起こる仕組み

例えば、人前で話すのが怖い人が、「失敗するに違いない」という考えを信じ込み(フュージョン)、話す機会を避け続ける(体験の回避)と、ますます自信がなくなり、「人とつながりたい」という価値からも遠ざかっていきます。6つの状態は互いに影響し合い、悪循環をつくっていくのです。

④自分の状態を振り返る

ここでは、6つのプロセスに沿って、今の自分の状態を振り返ってみましょう。それぞれ0〜10点で、自分の感覚に近い点数をつけてみてください。

6つのチェック項目

①つらい気持ちがあっても、避けずにいられる

②考えに飲み込まれず、少し離れて眺められる

③今この瞬間の体験に、注意を向けられる

④「私は〜な人間だ」という思い込みに縛られていない

⑤自分が大切にしたいことが分かっている

⑥大切なことのために、具体的な行動をとれている

これは診断のためのテストではなく、自分の状態を知るための目安です。点数の低い項目が、今、取り組むとよいプロセスのヒントになります。

結果の活かし方

①が低い人はアクセプタンス、②が低い人は脱フュージョン、⑤や⑥が低い人は価値の明確化のコラムを読んで、ワークを試してみましょう。6つのプロセスはつながっているので、どれか1つに取り組むだけでも、全体の柔軟性が少しずつ高まっていきます。

⑤1日の中で使うワーク

6つのプロセスを、1日の流れの中で使ってみましょう。それぞれ1〜2分で行えます。

朝:価値を思い出す

朝起きたら、「今日、自分はどんな人でありたいか」を一言で決めます。「穏やかでいたい」「誠実に仕事をしたい」など。そして、その価値に沿った小さな行動を1つ決めます。

日中:立ち止まって気づく

不安やイライラを感じたら、ゆっくり3回呼吸をして、「今、どんな考えと気持ちがあるか」に気づきます。「〜という考えがあるな」と言い換え、気持ちには「ここにいていいよ」と場所を与えます。

夜:行動を振り返る

寝る前に、「今日、価値に沿ってできたこと」を1つ書き出します。できなかったことがあっても、自分を責めずに、「明日はどうしようか」と考えます。この振り返りが、コミットされた行動を続ける支えになります。

⑥場面で使ってみよう

6つのプロセスを、1つの場面にまとめて使ってみましょう。考えた後に、解説を開いて確認してください。

場面 発表の前日

明日、職場で初めて大勢の前で発表をする。「うまく話せず、笑われるに違いない」と考え、仮病を使って休もうか迷っている。

6つのプロセスで考える

場面の解説

今この瞬間との接触:深呼吸をして、今の体の感覚に気づく

アクセプタンス:「緊張と不安がある」と認め、追い払おうとしない

脱フュージョン:「『笑われるに違いない』という考えがあるな」と眺める

文脈としての自己:不安に気づいている自分がいることを感じる

価値:「仕事で成長したい」「チームの役に立ちたい」ことを思い出す

コミットされた行動:休まずに出社し、最初の一言だけでも練習しておく

場面から分かること

6つのプロセスを使っても、不安が消えるわけではありません。それでも、不安と一緒にいながら、自分にとって大切な行動を選ぶことができます。これが、心理的柔軟性が発揮されている状態です。

⑦効果と研究

ACTの効果については、多くの比較研究が行われています。

研究のまとめ

ア・チャクら[3]は、ACTの効果を調べたランダム化比較試験39件をまとめて分析しました。その結果、ACTは、何もしないグループや一般的な支援と比べて効果があり、うつや不安、痛みなどのさまざまな問題に対して、すでに確立された治療法(認知行動療法など)と同じくらいの効果がみられたと報告しています。

研究を読むときの注意

一方で、研究によって対象や方法はさまざまで、どの問題に、どのくらいの回数で効果があるかは、まだ研究が続けられています。ACTが合うかどうかは人によって違うため、心の不調の治療として取り組む場合は、専門家と相談しながら進めましょう。

⑧確認してみよう

ここまでの内容を、3つの問題で確認してみましょう。答えを考えてから、正解と解説を開いてください。

問題1

ACTの6つのコアプロセスが育てることを目指している力は何でしょうか。

ア 心理的柔軟性

イ 記憶力

ウ 競争に勝つ力

問題1の正解と解説

正解はア(心理的柔軟性)です。6つのプロセスは互いに支え合い、つらい気持ちがあっても、大切な方向に沿って行動を選べる「心理的柔軟性」を育てます。

問題2

「大切なことをする」ためのプロセスの組み合わせとして、正しいものはどれでしょうか。

ア アクセプタンスと脱フュージョン

イ 今この瞬間との接触と文脈としての自己

ウ 価値とコミットされた行動

問題2の正解と解説

正解はウ(価値とコミットされた行動)です。アクセプタンスと脱フュージョンは「心を開く」、今この瞬間との接触と文脈としての自己は「今ここに気づく」ためのプロセスです。

問題3

考えを事実だと信じ込んでいる状態を、ACTでは何と呼ぶでしょうか。

ア フュージョン

イ 体験の回避

ウ 価値の見失い

問題3の正解と解説

正解はア(フュージョン)です。考えと自分がくっついた状態をフュージョンと呼びます。考えを「頭の中の言葉」として眺めることを、脱フュージョンと言います。

⑨まとめ

ACTの6つのコアプロセスは、心を開く、今ここに気づく、大切なことをするという3つの組に分かれ、互いに支え合いながら、つらい気持ちがあっても大切な方向に沿って行動を選べる「心理的柔軟性」を育てる枠組みです。

今回のポイント

6つのプロセスは、心を開く、今ここに気づく、大切なことをするの3組

6つのプロセスは互いにつながっている

点数の低いプロセスから取り組んでみる

朝・日中・夜の短いワークで習慣にする

シリーズの他のコラム

ACTシリーズでは、基本の考え方から、6つのコアプロセスの実践までを解説しています。あわせてご覧ください。

ACTとは|アクセプタンス&コミットメント療法を解説

脱フュージョンとは|ACTの実践ワークを解説

アクセプタンスとは|ACTの実践法を解説

価値の明確化とは|ACTのワークと具体例を解説

文脈としての自己とは|ACTの核心概念、具体例も紹介

セルフコンパッションとは|ACTとの関係

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、実際に学ぶことができます。内容は以下のとおりです。

・ACTの基礎,エクササイズ

・はじめての認知療法

・はじめての行動療法

・マインドフルネス療法の基礎

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)

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講座の日程が合わない方や、自分のペースで学びたい方は、個別レッスンのご相談も受け付けています。

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Hayes, S. C., Luoma, J. B., Bond, F. W., Masuda, A., & Lillis, J. (2006). Acceptance and commitment therapy: Model, processes and outcomes. Behaviour Research and Therapy, 44(1), 1-25.
 
[2] Kashdan, T. B., & Rottenberg, J. (2010). Psychological flexibility as a fundamental aspect of health. Clinical Psychology Review, 30(7), 865-878.
 
[3] A-Tjak, J. G. L., Davis, M. L., Morina, N., Powers, M. B., Smits, J. A. J., & Emmelkamp, P. M. G. (2015). A meta-analysis of the efficacy of acceptance and commitment therapy for clinically relevant mental and physical health problems. Psychotherapy and Psychosomatics, 84(1), 30-36.
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