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セルフコンパッションとの関係

セルフコンパッションとは,ACTとの関係

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは、ACTシリーズの6本目です。「セルフコンパッション」をテーマに解説していきます。

セルフコンパッションとは、失敗したときや、つらい状況にあるときに、自分を責めるのではなく、大切な友人に接するように、自分自身に思いやりを向ける態度のことです。アメリカの心理学者クリスティン・ネフが提唱し、ACTの考え方とも深く重なっています。

今回は、セルフコンパッションの3つの要素と、ACTとの関係、日常で使えるワークを解説します。目次は以下の通りです。

目次

①セルフコンパッションとは

セルフコンパッションは、日本語では「自分への思いやり」「自己への慈しみ」などと訳されます。まずは、その意味と、自尊心との違いを確認しましょう。

自分への思いやり

親しい友人が仕事で失敗して落ち込んでいたら、多くの人は「大変だったね」「誰にでもあることだよ」と声をかけるでしょう。ところが、自分が同じ失敗をすると、「なんて自分はダメなんだ」と厳しく責めてしまうことがあります。

セルフコンパッションは、友人にかけるような温かい言葉を、自分自身にもかけることです。甘やかすことではなく、苦しんでいる自分を、そのまま思いやる態度です。

自尊心との違い

自尊心(自己肯定感)は、「自分は価値がある」と自分を高く評価する感覚です。ただし、自尊心は、成功しているときには高くても、失敗したり、人と比べて劣っていると感じたりすると、大きく揺らぎやすい面があります。

セルフコンパッションは、うまくいっているかどうかに関係なく、自分に優しくする態度です。そのため、失敗したときこそ、支えになりやすいと考えられています。

②3つの要素

ネフ[1]は、セルフコンパッションを、次の3つの要素から成り立つものとして説明しています。

自分への優しさ

失敗や欠点に対して、厳しく批判するのではなく、温かく理解しようとする態度です。「どうしてこんなこともできないの」ではなく、「つらかったね、よく頑張ったね」と声をかけます。

共通の人間性

失敗や苦しみは、自分だけに起こる特別なことではなく、人間なら誰もが経験するものだと捉えることです。「自分だけがダメなんだ」と孤立するのではなく、「誰にでもあることだ」と、他の人とのつながりの中で自分を見つめます。

マインドフルネス

つらい気持ちを、無視したり大げさにしたりせず、ありのままに気づいて受け止めることです。気持ちに飲み込まれず、かといって押し込めもしない、バランスのとれた気づきが、自分への思いやりの土台になります。

③ACTとの関係

セルフコンパッションは、ACTとは別に発展してきた考え方ですが、ACTの6つのコアプロセスと深く重なっています。

アクセプタンスと重なる

つらい気持ちを追い払わずに受け止めるという点で、セルフコンパッションの「マインドフルネス」は、ACTのアクセプタンスと重なります。セルフコンパッションは、受け止めるときに「温かさ」を加えたものと考えることもできます。

脱フュージョンと重なる

「自分はダメだ」という自己批判の声に気づき、それにのみ込まれないようにする点で、ACTの脱フュージョンとも重なります。自己批判を事実ではなく、「頭の中の厳しい声」として眺めることで、自分に優しくする余地が生まれます。

価値に向かう力になる

価値に沿って行動しようとすると、失敗や挫折は避けられません。そのたびに自分を責めていると、挑戦を続けることが難しくなります。セルフコンパッションは、つまずいた自分を立て直し、また価値に向かって歩き出す力を支えてくれます。

④研究で分かっていること

セルフコンパッションについては、心の健康との関連が多くの研究で調べられています。

心の健康との関連

マクベスとガムリー[2]は、セルフコンパッションと心の不調の関係を調べた研究をまとめて分析しました。その結果、セルフコンパッションが高い人ほど、抑うつや不安、ストレスが低い傾向が、はっきりとみられました。

練習で高められる

ネフとガーマー[3]は、セルフコンパッションを育てる8週間のプログラムを開発し、ランダムに振り分けて比べる研究を行いました。その結果、プログラムに参加した人は、参加しなかった人に比べて、セルフコンパッションが高まり、抑うつやストレスが軽くなっていました。セルフコンパッションは、練習によって育てられる力だと考えられています。

日本でも、有光[4]がセルフコンパッションを測る尺度の日本語版を作成し、研究が進められています。

⑤今日からできるワーク

ここでは、日常の中で取り組みやすい3つのワークを紹介します。つらいことがあった日に、試してみてください。

3つの言葉をかける

つらい出来事があったとき、3つの要素に沿って、心の中で次のような言葉をかけます。

①マインドフルネス:「今、とてもつらい」

②共通の人間性:「こんなふうに苦しむのは、自分だけじゃない」

③自分への優しさ:「自分に優しくしてあげよう」

言葉は、自分にしっくりくるものに変えて構いません。胸に手を当てながら行うと、温かさを感じやすくなります。

友人への手紙を書く

自分の失敗や悩みについて、「自分のことを無条件に大切に思ってくれる友人」の立場から、自分宛ての手紙を書いてみます。その友人なら、どんな言葉をかけてくれるでしょうか。書いた手紙は、つらいときに読み返せるよう、手元に残しておきましょう。

自己批判の声を言い換える

「なんでこんなミスをするんだ」という自己批判の声に気づいたら、同じ状況の友人に言うとしたら、どう言うかを考えます。「確認する時間がなかったんだね。次はどうしたらいいか一緒に考えよう」のように、優しく、かつ前に進める言葉に言い換えてみましょう。

⑥場面で使ってみよう

セルフコンパッションを、日常の2つの場面で使ってみましょう。場面を読んで考えた後に、解説を開いて確認してください。

場面1 仕事で大きなミス

大事な書類の数字を間違え、上司に注意された。帰り道、「なんで自分はいつもこうなんだ」と自分を責め続けている。

場面1の解説

まず、「今、とても悔しくて、つらい」と気持ちに気づきます(マインドフルネス)。次に、「ミスをして落ち込むのは、誰にでもあることだ」と考えます(共通の人間性)。最後に、「忙しい中で頑張っていたよね。次は確認の時間をとろう」と、友人に声をかけるように自分に語りかけます(自分への優しさ)。責めるのをやめても、反省や改善はできます。

場面2 子どもに怒鳴ってしまった

疲れていて、子どもに強く怒鳴ってしまった。子どもが寝た後、「ひどい親だ」と自分を責めて眠れない。

場面2の解説

胸に手を当てて、「今、後悔していて苦しい」と認めます。そして、「子育てに疲れて、余裕がなくなるのは、多くの親が経験することだ」と考えます。そのうえで、「それだけ子どものことを大切に思っているんだね」と自分をいたわり、明日、子どもに「昨日は怒鳴ってごめんね」と伝えることを決めます。

場面に共通するポイント

どちらの場面でも、自分を責める代わりに、3つの要素に沿って言葉をかけ、最後に「次にどうするか」という行動につなげています。セルフコンパッションは、失敗をなかったことにするのではなく、失敗から立ち直り、前に進むための態度なのです。

⑦取り組むときの注意

セルフコンパッションの練習を始めるときは、次の点を知っておくと安心です。

最初は違和感があって当然

自分に厳しくすることに慣れている人ほど、自分に優しい言葉をかけると、照れくさく感じたり、「甘えではないか」と感じたりすることがあります。それは自然な反応です。最初は短い言葉から、少しずつ慣れていきましょう。

つらさが強いときは専門家へ

自分に優しくしようとすると、かえって悲しみや過去のつらい記憶が湧いてくることもあります。そのような場合は無理をせず、カウンセラーなどの専門家と一緒に取り組むことをおすすめします。

⑧まとめ

セルフコンパッションとは、つらいときに自分を責めるのではなく、大切な友人に接するように、自分に思いやりを向ける態度です。ACTのアクセプタンスや脱フュージョンと重なり、価値に向かって進み続ける力を支えてくれます。

今回のポイント

自分への優しさ、共通の人間性、マインドフルネスの3要素

自尊心と違い、失敗したときこそ支えになる

練習によって育てられる力

最初の違和感は自然な反応

シリーズの他のコラム

ACTシリーズでは、基本の考え方から、6つのコアプロセスの実践までを解説しています。あわせてご覧ください。

ACTとは|アクセプタンス&コミットメント療法を解説

脱フュージョンとは|ACTの実践ワークを解説

アクセプタンスとは|ACTの実践法を解説

価値の明確化とは|ACTのワークと具体例を解説

文脈としての自己とは|ACTの核心概念、具体例も紹介

ACTの6つのコアプロセスとは|全体像を解説

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、実際に学ぶことができます。内容は以下のとおりです。

・ACTの基礎,エクササイズ

・はじめての認知療法

・はじめての行動療法

・マインドフルネス療法の基礎

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)

セルフコンパッションとは,ACTとの関係,心理学講座

講座の日程が合わない方や、自分のペースで学びたい方は、個別レッスンのご相談も受け付けています。

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Neff, K. D. (2003). Self-compassion: An alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself. Self and Identity, 2(2), 85-101.
 
[2] MacBeth, A., & Gumley, A. (2012). Exploring compassion: A meta-analysis of the association between self-compassion and psychopathology. Clinical Psychology Review, 32(6), 545-552.
 
[3] Neff, K. D., & Germer, C. K. (2013). A pilot study and randomized controlled trial of the mindful self-compassion program. Journal of Clinical Psychology, 69(1), 28-44.
 
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