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機能分析(ABC分析)とは

ABC分析とは,行動を客観視するツール

みなさんこんにちは。公認心理師の川島達史と申します。私はこちらのコミュニケーション教室を開催しています。

このコラムは、行動療法シリーズの5本目です。今回は、「機能分析(ABC分析)」について詳しく解説します。

「どうして、あの子はいつもこうなのだろう」「どうして、自分は先延ばしをしてしまうのだろう」——そんなときに役立つのがABC分析です。目次は以下の通りです。

目次

①機能分析とは何か

行動を「性格」ではなく「機能」で見る

機能分析は、行動を「性格」や「やる気」の問題にせず、その行動が、環境の中でどんな「はたらき(機能)」を果たしているかを調べる方法です。行動は、その後に「得なこと」が起こる、または「嫌なこと」が避けられると、繰り返されやすくなります。これが、オペラント条件づけの考え方です(用語集のオペラント条件づけ)。

行動療法では、行動をこのように、生物学的な要因と環境要因の両面から観察して理解する作業を、行動アセスメント(機能アセスメント)と呼んでいます(SAGE事典)[1]。ABC分析は、その代表的な方法です。

なぜ役立つのか

原因を「本人の性格」に置くと、「もっと頑張れ」と言うしかなくなります。原因を「行動と環境の関係」に置くと、環境や関わり方の側から、変えられるところが見つかります。行動を、目に見えない「こころ」ではなく、観察できる行動に着目して、整理できるところが、この方法の強みです。

次のようなことに心当たりがある方と、特に相性が良い方法です。

自分の行動のクセを、客観的に理解したい
子どもや部下の行動に、どう対応すればいいか悩んでいる
何度言っても、同じ行動が繰り返される
原因が分からず、対応に困っている

あてはまると感じた方は、まず、気になる行動を1つ選んで、A・B・Cを書き出してみてください。

もう少し詳しい背景を知りたい方は、以下を開いてみてください。読み飛ばしても、この先の内容は問題なく読み進められます。

行動分析学の歴史と方法

機能分析(ABC分析)の考え方は、1930〜1950年代にスキナーが体系化した「オペラント条件づけ」の理論を土台にしています。行動が、その後の結果によって増えたり減ったりする、という基本原理が、機能分析の考え方の出発点です。

行動の機能を実験的に調べる方法を確立したのが、Iwataら[2]で、1982年発表・1994年に再掲された論文です。この研究では、注目の有無、要求の有無、遊具の有無などの条件を変えながら、問題行動が起きやすい状況を実験的に特定する手法を示しました。

この手法は、現在も「機能分析(functional analysis)」の標準的な方法として、学校や福祉、医療の現場で使われています。もともとは、自傷行動や強い問題行動を対象に発展した手法ですが、考え方自体は、日常のちょっとした困りごとにも応用できます。日本語で学べる入門書としては、杉山[3]の解説書が広く読まれています。

②ABCの3つの要素

ABCは、行動の流れを表す3つの要素の頭文字です。

A(Antecedent)先行事象

行動の直前の状況(きっかけ)です。時間、場所、人、出来事などを含みます。

B(Behavior)行動

実際に行った行動です。

C(Consequence)結果

行動の直後に、起きたことです。得られたもの、避けられたことを含みます。

Bは、具体的に書く

B(行動)は、誰が見ても同じように分かる形で書きます。「怠けている」「やる気がない」ではなく、「起きてから30分、スマホを見ている」のように、観察できる形にします。

Cは、「本人にとって」の結果

C(結果)は、周りから見てどうかではなく、本人にとって、どんな結果になっているかを考えます。叱られる結果でも、本人にとっては「注目してもらえた」という得になっている場合があります。

③ABC分析の進め方

ステップ1 行動を1つ選び、記録する

「先延ばしをする」ではなく、「メールの返信を、夕方まで開かない」のように、1つの行動を具体的に決めます。

ステップ2 直前の状況(A)を記録する

その行動が起きたときの、直前の状況(時間、場所、誰といたか、何があったか)を、書き留めます。数回分、記録すると、共通点が見えてきます。

ステップ3 直後の結果(C)を記録する

行動の直後に、何が起きたか(何が得られ、何が避けられたか)を書きます。

ステップ4 パターンを読む

どんなAのときに行動が起きやすいか、どんなCが、その行動を続けさせているかを探します。

ステップ5 変えるところを決めて、試す

A(きっかけ)、B(行動)、C(結果)のうち、どこを変えるかを決めて、試します。試したあとも、記録を続けて、変化を確認します。

④行動の4つの機能

4つの機能

行動分析では、行動が続く理由(機能)は、大きく次の4つに整理されます。この整理は、Iwataらの研究(1982年発表・1994年に再掲)から発展しました。

①注目・関心を得る:叱られても話しかけてもらえる

②嫌なことから逃れる:課題や場面から離れられる

③欲しいものを得る:物ややりたいことが手に入る

④それ自体が心地よい:やること自体が気持ちよい

同じ行動でも機能は違う

同じ行動でも、人や場面によって、機能は違います。たとえば「席を立つ」は、課題から逃れるためのこともあれば、注目を得るためのこともあります。

⑤事例で進めてみよう

事例1 夜お菓子を食べてしまう花子さん

A(先行事象):仕事で疲れて帰宅する/家にお菓子が置いてある
B(行動):夕食後に、お菓子を食べる
C(結果):ほっとして、疲れが少し楽になる

花子さんにとって、お菓子は、仕事の疲れから一時的に離れる(気分を切り替える)はたらきをしていると考えられます。対策は、次のように、A・B・Cの各所で考えられます。

・Aを変える:お菓子を買い置きしない
・Bを置き換える:温かいお茶を飲む、入浴する
・Cを変える:お菓子を食べなかった日を記録して、別のご褒美を用意する

事例2 授業中に立ち歩く子ども

A(先行事象):難しい課題が出される
B(行動):席を立って歩き回る
C(結果):課題をしなくて済む/先生が注意してくれる

この場合、機能は「課題からの逃避」や「注目を得ること」と考えられます。対策としては、課題を小さく分けて取り組みやすくする(A)、座って取り組めたときに、すぐに注目して褒める(C)などが考えられます。

⑥エリスのABC理論との違い

名前は同じ、中身は違う

「ABC」という名前は、論理療法のエリスが提唱したABCモデルにも使われています。名前は同じですが、中身は違います。

*行動分析のABC:
A=先行事象、B=行動、C=結果

*エリスのABC:
A=出来事、B=信念、C=結果(感情や行動)

行動分析のBは「行動」、エリスのBは「信念」です。エリスのABCについては、論理療法のコラムや認知療法のコラムで解説しています。

応用行動分析(ABA)

ABC分析や機能分析は、行動療法だけでなく、応用行動分析(ABA)として、学校や福祉の現場でも広く使われています。

講師の視点

ABC分析の魅力は、人を責めずに、状況を冷静に見られるところです。「あの人は、こういう人だ」と決めつける代わりに、「どんなときに、何が起きているのか」を見ることで、対応の糸口が見つかります。自分自身にも、使える見方だと思います。

私自身、締め切り前に、つい部屋の片づけを始めてしまうことがありました。ABCで整理すると、「仕事に取りかかるのが不安」というAがあり、片づけをすると不安が一時的に和らぐ、というCがあると気づきました。原因が分かると、自分を責める気持ちが減りました。

⑦理解度を確認する練習問題

ここまでの内容を踏まえて、2つの事例で練習してみましょう。

会議で発言しない次郎さん

<事例>
会議で意見があっても、なかなか発言しない次郎さん。会議のあとになって、「やっぱり言えばよかった」と後悔します。

次の3つを考えてみてください。

①A(先行事象)に入りそうなことを、2つ
②B(行動)を、具体的に書き直す
③C(結果)として、行動が続く理由になりそうなことを、1つ

回答例

A(先行事象)の候補:
「参加者に上司がいる」「意見が他の人と違いそう」などが考えられます。

B(行動)の書き直し:
「会議の間、自分から一度も口を開かない」と具体的に書きます。

C(結果)と機能:
「発言しなかったことで、間違いを指摘されずに済む」が考えられます。この場合、機能は「嫌なこと(否定される可能性)から逃れること」と考えられます。

資料の提出が遅れる部下

<事例>
何度言っても、資料の提出が遅れる部下。上司が催促すると、その場では「すみません」と謝るのに、次回も遅れます。

この事例について、環境の側から見直せるところを考えてみてください。

回答例

たとえば、提出の期限があいまいでないか(A)、提出できたときに、きちんと感謝や評価が伝わっているか(C)、提出までの小さな中間チェックがあるか(A)などが見直せます。「本人のやる気」ではなく、環境や関わり方を変える視点が大切です。

⑧自分で使うときの目安

自分で使えるコツ

ABC分析は、日常の悩みであれば、自分でも使えます。記録は、感想や推測ではなく、事実だけを書くのがコツです。

注意点

他の人の行動を分析するとき、「人を責める道具」にしないことが大切です。また、自傷や暴力など、深刻な行動が関わっている場合は、自己流で対応せず、専門家に相談してください。

ワークで気分が悪くなる、悩みがかえって強まる場合は、いったん中止してください。「消えてしまいたい」という気持ちがあるときは、ワークで何とかしようとせず、医療機関や公的な相談窓口に相談してください。

よくある質問Q&A

私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。

Q. ABC分析は誰にでも使える?

はい、日常の悩みであれば、どなたでも使えます。自分の行動にも、子どもや部下の行動にも使えます。ただし、深刻な問題行動や、強い不調が背景にある場合は、専門家の力を借りることをおすすめします。気軽な記録から、試してみてください。

Q. 原因が複数で絞れません

よくあることです。1つの行動に、複数の機能が重なっていることもあります。まずは、記録を数回分、集めてみてください。共通するAやCが見えてきます。1回で決めつけず、仮説を立てて試し、変化を見ながら調整していくのがコツです。教室でも、そうして少しずつ見つけていく方が多いですよ。

Q. 気持ちは無視するの?

無視するわけではありません。行動療法では、考えや感情も、行動の一部として扱うことがあります。ABC分析では、まず、観察できる行動に注目することで、状況を整理しやすくしています。気持ちや考えを大切にしたい方は、認知療法と組み合わせて使うのもおすすめです。

Q. 認知療法とどう違う?

コラム法は、考え方(自動思考)を見直す方法です。ABC分析は、行動の前後の状況を整理して、行動が続く理由を調べる方法です。見る場所が違うので、両方を使うと、悩みを多角的に理解できます。また、エリスのABCとは中身が違うので、注意してくださいね。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。

・認知療法の基礎
・思考の歪みの改善
・行動療法の学習
・マインドフルネスワーク

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)

コミュニケーション教室,講座,ダイコミュ

個別レッスン

個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースで行動療法を深めたい方は、下記をご参照ください。

個別レッスンの詳細はこちら。

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不安な場面に段階的に向き合う、具体的な進め方を知りたい方はこちら。

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認知行動療法シリーズ全体に戻りたい方は、こちらの全体像コラムからどうぞ。

認知行動療法の全体像

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] SAGE Encyclopedia of Theory in Psychology. Behavior Therapies.

[2] Iwata, B. A., Dorsey, M. F., Slifer, K. J., Bauman, K. E., & Richman, G. S. (1994). Toward a functional analysis of self-injury. Journal of Applied Behavior Analysis, 27(2), 197-209.(初出:Analysis and Intervention in Developmental Disabilities, 2, 3-20, 1982)

[3] 杉山尚子 (2005). 行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由. 集英社新書.

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