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ジャーナリングとは

ジャーナリングとは,書いて気持ちを整理する方法

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは、認知行動療法シリーズの2本目です。「ジャーナリング」をテーマに解説していきます。

ジャーナリングとは、頭の中にある考えや気持ちを、紙やノートに思いつくまま書き出して整理する方法です。独立した心理療法ではなく、認知行動療法やマインドフルネス、ポジティブ心理学など、さまざまな心理療法の中で使われている技法の一つです。

当コラムでは、ジャーナリングが使われている心理療法と研究、基本のやり方と目的別の書き方を紹介します。目次は以下の通りです。

目次

①ジャーナリングとは

ジャーナリングとは、頭の中にある考えや気持ちを、紙やノートに書き出して整理する方法です。

独立した療法ではなく、技法の一つ

ジャーナリングは、それだけで一つの心理療法の体系をなすものではありません。認知行動療法やマインドフルネス、ポジティブ心理学など、いくつもの心理療法の中で、気持ちや考えを整理するための技法の一つとして使われています。このコラムでも、ジャーナリングを、さまざまな心理療法で役立つ「書く技法」として紹介します。

なお、ジャーナリングは、あくまでセルフケアの一つの手段です。専門的な治療やカウンセリングの代わりになるものではありません。

日記との違い

日記は、主にその日の出来事を記録するものです。ジャーナリングでは、出来事よりも、そのときに感じたことや考えたことに目を向けて書きます。文章の上手さや正しさは気にせず、思い浮かんだことをそのまま書き出すのが特徴です。

②使われている心理療法

ジャーナリングは、目的に応じて、さまざまな心理療法で使われています。

認知行動療法

認知行動療法では、気分が落ち込んだ場面の「出来事・考え・気分」を書き出して整理する、コラム法(思考記録)がよく使われます。書き出すことで、自分の考え方のくせに気づき、別の見方を探しやすくなります。やり方は、認知療法の効果,コラム法のやり方で解説しています。また、不眠症の認知行動療法では、眠りの状態を記録する睡眠日誌を使います(CBT-Iとは)。

マインドフルネスとポジティブ心理学

マインドフルネスでは、今この瞬間に感じていることを、判断を加えずに書き留める「書く瞑想」として使われることがあります(マインドフルネス療法、マインドフルネス認知療法(MBCT)とは)。ポジティブ心理学では、感謝したことを書き出す「感謝日記」がよく知られています(ポジティブ心理学とは)。

筆記開示法と、表現の方法

心理学者ペネベーカーらが研究した筆記開示法(エクスプレッシブ・ライティング)は、つらい体験についての気持ちを書き出す方法です。また、言葉にしにくい気持ちを、書くのではなく絵や形で表現する方法もあり、芸術療法・描画療法とはで紹介しています。

③効果と研究

書くことが心と体に与える影響については、多くの研究が行われています。

筆記開示法の研究

ペネベーカーとビール[1]は、大学生に、4日間続けて15分ずつ、つらい体験について書いてもらう実験を行いました。体験についての事実と気持ちの両方を書いたグループでは、その後の数か月間、大学の保健センターを訪れる回数が少なくなったと報告されています。

その後、146のランダム化比較試験をまとめたメタ分析[2]では、筆記開示法には、統計的に意味のある良い効果があるものの、その効果の大きさは小さいことが示されました。書くことは、心の健康を支える手軽な方法の一つですが、大きな効果を期待しすぎないことも大切です。

国内での実践研究

日本でも、女子大学生15人に、10日間、1日20分のジャーナリング(書く瞑想)に取り組んでもらい、書かれた内容や気分の変化を調べた実践研究が報告されています[3]。このように、書くことを通して自分を理解していく方法は、国内外で関心を集めています。

感謝を書く研究

エモンズとマカロー[4]は、感謝したことを毎週書き出すグループと、困ったことや出来事を書き出すグループなどを比べました。感謝を書いたグループでは、生活全体をより前向きに評価するようになったと報告されています。

ただし、こうした研究の多くは大学生などを対象にしたもので、効果の感じ方には個人差があります。研究で示された効果が、すべての人に同じように当てはまるとは限らない点にも注意しておきましょう。

④基本のやり方

ジャーナリングの基本的なやり方を紹介します。決まった形はないので、自分に合う方法を探してみましょう。

準備

ノートとペンを用意する(スマートフォンのメモでもよい)

1回5〜15分ほど、時間を決める

一人で落ち着ける場所を選ぶ

書き方のルール

思いついたことを、そのまま書く

文章の上手さや、字のきれいさは気にしない

書いた内容を、良い・悪いと評価しない

誰かに見せることを前提にしない

書くことに迷ったときのお題

今日、一番心が動いた出来事は何ですか

今、頭の中を占めていることは何ですか

最近、うれしかったこと、腹が立ったことは何ですか

今の自分に、かけてあげたい言葉は何ですか

お題はあくまできっかけです。途中でお題からそれても、浮かんできた言葉をそのまま書き進めてかまいません。書き終えた後に読み返す必要もなく、ノートを閉じて終わりにしてかまいません。

⑤目的別の書き方

ジャーナリングは、目的によって書き方を変えると、より役立てやすくなります。

モヤモヤを整理したいとき

頭の中にある心配ごとや考えを、思いつくまま、すべて書き出します。書き出したら、「自分で何とかできること」と「どうにもならないこと」に分けてみましょう。頭の中がすっきりし、次に何をすればよいかが見えやすくなります。

考え方のくせに気づきたいとき

出来事:何があったか(「会議で意見を否定された」)

考え:そのとき頭に浮かんだこと(「自分は能力がないと思われた」)

気分:そのときの気持ちと強さ(「落ち込み 80%」)

別の見方:他の考え方はないか(「意見が否定されただけで、自分が否定されたわけではない」)

前向きな気持ちを育てたいとき

寝る前に、今日あった「よかったこと」や「感謝したいこと」を3つ書き出します。小さなことでかまいません。続けることで、日々の中の良い出来事に目が向きやすくなります。

⑥続けるコツ

ジャーナリングは、続けることで役立ちやすくなります。無理なく続けるためのコツを紹介します。

小さく始める

最初から毎日長く書こうとすると、負担になって続きません。「1日3行」「週に2回」など、小さな目標から始めましょう。書けない日があっても、自分を責めずに、また書きたいときに再開すれば大丈夫です。

道具は続けやすいものを

手を動かして書くと気持ちが落ち着くという人は紙のノートを、外出先でもすぐに書き留めたい人はスマートフォンのメモアプリを、というように、自分の生活に合った道具を選びましょう。

タイミングを決める

「朝のコーヒーを飲むとき」「寝る30分前」など、毎日の習慣と組み合わせると続けやすくなります。ただし、寝る直前に心配ごとを書き出すと、かえって考えごとが止まらなくなる人もいます。その場合は、夕方など、寝る前より早い時間に書くようにしましょう。

⑦場面で使ってみよう

ジャーナリングを、よくある場面に当てはめてみましょう(架空の例です)。

仕事のモヤモヤが続くとき

Aさんは、上司に仕事のやり方を注意されてから、何日もモヤモヤした気持ちが続いていました。夜に10分間、思いつくまま書き出してみると、「注意されたことよりも、同僚の前で言われたことがつらかった」と気づきました。

気持ちの正体がわかったことで、Aさんは「次に注意を受けるときは、個別に話してほしい」と上司に伝えることができました。

考えごとで眠れないとき

Bさんは、布団に入ると、明日の予定や心配ごとが次々に浮かんで眠れませんでした。そこで、夕食後に15分間、「心配ごとを書き出す時間」をつくり、書いた心配ごとの横に「明日やること」を一つずつ書き添えるようにしました。布団に入ってから考えごとが浮かんでも、「もう書いてある」と思えるようになり、気持ちが落ち着きやすくなりました。眠りの悩みについては、CBT-Iとはでも詳しく紹介しています。

⑧注意

ジャーナリングを行うときに、気をつけたい点をまとめます。

つらくなったら無理をしない

つらい体験について書くと、書いた直後は、一時的に気持ちが沈んだり、つらさが強まったりすることがあります。先ほど紹介した研究[1]でも、つらい体験について書いた直後には、一時的な気分の落ち込みが見られました。書いていて苦しくなったり、涙が止まらなくなったりしたら、無理に続けず、いったんペンを置き、窓の外を見る、ゆっくり呼吸するなどして気持ちを切り替えましょう。大きな出来事の直後や、トラウマに関わる体験について書くときは、一人で取り組まず、専門家に相談しながら進めてください。

時間を区切って書く

際限なく書き続けると、かえって同じ悩みを何度も考え込んでしまうことがあります。タイマーなどで5分、10分と時間を区切っておくと、気持ちに一区切りをつけやすくなります。

書いた内容の扱い

ジャーナリングの内容は、人に見せることを前提にしないことで、正直に書きやすくなります。家族などに見られたくない場合は、ノートの置き場所に気をつけたり、アプリにパスコードを設定したり、書いた後に破って捨てたりしてもかまいません。

心の不調が続くときは

気分の落ち込みや不安、不眠などが2週間以上続く場合は、ジャーナリングだけで対処しようとせず、医療機関や専門家に相談しましょう。

「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちが続くときは、一人で抱え込まず、医療機関や、電話・SNSの相談窓口(厚生労働省の「まもろうよ こころ」で探せます)、お住まいの地域の精神保健福祉センターに相談してください。命の危険が差し迫っているときは、救急(119番)に連絡してください。

⑨よくある質問Q&A

私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。

ジャーナリングと日記の違いは?

日記は出来事を時系列で記録するのに向いていますが、ジャーナリングは出来事そのものよりも、そこから生まれる感情や気づきに焦点を当てる点が異なります。

ジャーナリングにはどんな効果がある?

気持ちの整理や、心身の状態が安定しやすくなる傾向が研究で報告されています。ただし、効果の感じ方には個人差があり、誰にでも同じ効果が表れるとは限りません。

毎日書かないといけませんか?

毎日でなくてもかまいません。完璧を求めず、書けるときに書くという気軽な姿勢のほうが、結果として続けやすくなります。

何を書けばよいかわからないときは?

「今日、心が動いた出来事」「今、頭の中を占めていること」など、本文で紹介したお題を参考にしてみてください。

書いていてつらくなったら?

無理に書き続けず、一度手を止めてください。つらい状態が続く場合は、心療内科や公認心理師などの専門家に相談することも検討してください。

⑩まとめ

ジャーナリングは、考えや気持ちを書き出して整理する技法で、認知行動療法やマインドフルネス、ポジティブ心理学など、さまざまな心理療法で使われています。

今回のポイント

ジャーナリングは独立した療法ではなく、さまざまな療法で使われる技法

気持ちを書く研究では、小さいながら良い効果が示されている

上手さや正しさを気にせず、思いつくまま書く

つらくなったら無理をせず、必要なら専門家に相談する

シリーズの他のコラム

認知行動療法シリーズでは、全体像から、ジャーナリング、ケースフォーミュレーション、CBT-Iまでを解説しています。あわせてご覧ください。

認知行動療法とは|CBTの効果と全体像を解説

ケースフォーミュレーションとは|見立ての基礎

CBT-Iとは|不眠症の認知行動療法を解説

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Pennebaker, J. W., & Beall, S. K. (1986). Confronting a traumatic event: Toward an understanding of inhibition and disease. Journal of Abnormal Psychology, 95(3), 274-281.
 
[2] Frattaroli, J. (2006). Experimental disclosure and its moderators: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 132(6), 823-865.
 
 
[4] Emmons, R. A., & McCullough, M. E. (2003). Counting blessings versus burdens: An experimental investigation of gratitude and subjective well-being in daily life. Journal of Personality and Social Psychology, 84(2), 377-389.
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