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マインドフルネス認知療法(MBCT)とは

MBCTとは,マインドフルネス認知療法

みなさんこんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは、マインドフルネス療法シリーズの8本目です。今回は「MBCT」をテーマに解説していきます。

MBCT(マインドフルネス認知療法)とは、うつ病を繰り返し経験した人の再発を防ぐことを目的に、マインドフルネスの練習と認知療法の考え方を組み合わせた、8週間のグループプログラムです。シーガル、ウィリアムズ、ティーズデール[1]の3人が開発しました。

このMBCTは、主にうつ病の再発予防を目的として作られ、医療機関などで専門の指導者のもとで行われます。目次は以下の通りです。

目次

①MBCTとはどんな療法

MBCTは、うつ病の再発予防のために作られた、マインドフルネスにもとづくプログラムです。まずは、生まれた経緯と、どのような人を対象にしているかを確認しましょう。

生まれた経緯

1990年代、うつ病の研究者だったシーガル、ウィリアムズ、ティーズデールは、うつ病から回復した人が再発を防ぐための方法を探していました。その中で、カバット・ジンのマインドフルネスストレス低減法(MBSR)に出会います。

3人は、MBSRの練習をもとに、認知療法の考え方を組み合わせ、うつの再発予防に特化したプログラムを作りました。それがMBCTです。

土台となったMBSRについては、MBSRのコラムで解説しています。

対象となる人

MBCTは、主に、うつ病を何度か経験し、現在は回復している人を対象としています。うつの症状が重い時期に行うのではなく、回復したあとに、次の再発を防ぐために学ぶプログラムです。

現在は、不安の問題など、うつ病以外の悩みに応用する試みも行われています。

②うつが再発する仕組み

MBCTは、「なぜうつ病は再発しやすいのか」という研究から生まれました。再発の仕組みを知ると、MBCTが何をめざしているのかが理解しやすくなります。

気分と考えの結びつき

うつ病を経験した人は、回復したあとも、少し気分が落ち込んだときに、「自分はダメだ」「また悪くなる」といった否定的な考えが、自動的に呼び起こされやすくなると考えられています。

その考えにとらわれて同じことを繰り返し考え込む(反すう)うちに、小さな落ち込みが大きな落ち込みへと広がり、再発につながることがあります。

することモードとあることモード

MBCTでは、心の状態を2つのモードで説明します。問題を解決しようと考え続ける「することモード」と、今の体験をそのまま感じ取る「あることモード」です。

することモード:考えて問題を解決しようとする
あることモード:今の体験をそのまま感じる

気分の問題は、考えるだけでは解決しにくいことがあります。MBCTでは、「することモード」にはまっていることに気づき、「あることモード」に切り替える力を育てることをめざします。

③8週間のプログラムの流れ

MBCTは、少人数のグループで、週1回2時間ほどのセッションを8回行うのが基本の形です(シーガルら, 2013)[1]。毎回、自宅で行う練習の課題も出されます。

前半:気づく力を育てる

前半では、レーズンエクササイズやボディースキャン、呼吸の練習などを通して、自動操縦に気づき、今この瞬間に注意を向ける力を育てます。

注意がそれたら気づいて戻す、という基本を、繰り返し練習していきます。

後半:つらさと付き合う

後半では、つらい考えや感情が浮かんだときに、それを避けたり追い払ったりせず、距離をとって眺める練習をします。考えを「事実」ではなく「心の出来事」として見る脱中心化も、大切なテーマです。

最後の回では、再発のサインに気づいたときにどう対処するか、自分なりの行動計画を作ります。

④自宅でできる練習

MBCTで使われる練習の中には、日常の中で手軽に取り入れられるものもあります。ここでは代表的な2つを紹介します。

3分間呼吸空間法

3分間呼吸空間法は、MBCTでもっとも大切にされる短い練習です。ストレスを感じたときに、今の状態に気づき、注意を呼吸に集め、体全体へ広げるという3つのステップで、心の状態を立て直します。

各ステップはおよそ1分ずつです。具体的な手順はマインドフルネス呼吸法のコラムで紹介しています。

日常の活動に気づく

歯磨き、シャワー、食器洗いなど、毎日行っている活動を1つ選び、その間だけ体の感覚や動きに注意を向けてみましょう。自動操縦に気づく練習になります。

また、気分が少し落ち込んだときに浮かぶ考えを、「〜と考えている」と書き出してみるのも、MBCTの考え方を活かした練習です。

⑤効果を調べた研究

MBCTは、うつ病の再発予防について、多くの研究が行われてきたプログラムです。ここでは代表的な研究を紹介します。

最初の研究

ティーズデールら(2000)[2]は、うつ病から回復した145名を、MBCTを受けるグループと、通常の治療を続けるグループに分けて比べました。その結果、うつ病を3回以上経験した人では、MBCTを受けたグループの再発率が、約60週間の経過の中で大きく低くなっていました。

一方、うつ病の経験が2回以下の人では、はっきりした差は見られませんでした。

研究をまとめた分析

カイケンら(2016)[3]は、9つの研究に参加した1,258名のデータをまとめて分析しました。その結果、MBCTを受けた人は、受けなかった人に比べて、60週間以内の再発のリスクが低いことが示されました。

研究の数値の読み方を詳しく知りたい方は、以下の折り畳みを開いてください。一般の方は読み飛ばしても大丈夫です。

研究の数値の読み方

カイケンら(2016)の分析では、MBCTを受けた人の再発のリスクは、受けなかった人を1とした場合に約0.69と報告されています。これは、再発のリスクがおよそ3割低かったことを意味します。

また、抗うつ薬などの他の治療を受けた人と比べても、MBCTを受けた人の再発のリスクは約0.79と、やや低い傾向が見られました。ただし、これは研究全体の平均的な結果であり、すべての人に同じ効果があるわけではありません。

このように、多くの研究のデータを集めて分析する方法を「メタ分析」と呼びます。1つの研究よりも、全体の傾向をつかみやすい方法です。

⑥受けるときの注意点

MBCTは医療の現場でも使われるプログラムですが、受ける時期や方法には注意が必要です。参加を考えるときのポイントを確認しましょう。

受ける時期を選ぶ

MBCTは、主にうつ病から回復した人の再発予防を目的としています。症状が重い時期は、まず主治医のもとで治療を優先し、参加の時期は主治医と相談して決めましょう。

自己判断で抗うつ薬をやめたり減らしたりしないことも大切です。

指導者を確認する

MBCTは、訓練を受けた指導者のもとで行うことが基本です。参加する前に、指導者がどのような研修を受けているか、困ったときにどう対応してもらえるかを確認しておくと安心です。

練習中に強い不安や息苦しさ、自分が自分でないような感覚が出てきたときは、すぐに中断してください。安全に続けるための目安は、マインドフルネスの副作用と安全な実践法のコラムで詳しく解説しています。

⑦よくある質問Q&A

私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。

うつの真っ最中でも受けられる?

MBCTは、もともとうつ病から回復した人が、再発を防ぐことを目的に作られたプログラムです。症状が重い時期は、集中して練習に取り組むことが難しく、つらい考えに注意を向けることで、かえって気分が落ち込むこともあります。そのため、まずは主治医のもとで今の症状の治療を優先し、ある程度回復してから、主治医と相談のうえで参加を検討するのが一般的です。

参加の時期に迷う場合は、主治医やプログラムの指導者に相談してください。焦らず、自分のペースで回復を優先してください。

薬をやめてもいい?

MBCTを受けることを理由に、自己判断で抗うつ薬をやめたり減らしたりしないでください。急に薬をやめると、体調を崩したり、症状がぶり返したりすることがあります。研究では、MBCTを受けた人の再発のリスクが、抗うつ薬などの他の治療を受けた人と比べてやや低い傾向も示されていますが、薬の調整は、必ず主治医と相談しながら進める必要があります。

MBCTは薬の代わりというより、自分で心の状態に気づき、対処する力を育てる方法の1つとして考えてください。主治医とよく話し合いながら、自分に合った治療の形を考えていきましょう。

一人で本を見て取り組める?

MBCTの考え方や練習の一部は、本や音声教材を使って、一人で試すこともできます。日常のストレスへの対処として、3分間呼吸空間法などを取り入れるのはよい方法です。ただし、うつ病の再発予防を目的とする場合は、訓練を受けた指導者のもとで、8週間のプログラムとして受けることが基本です。

グループで体験を分かち合うことにも意味があるためです。一人で取り組んで気分が悪化した場合は、すぐに中断して専門家に相談してください。まずは短い練習から、日常に取り入れてみてください。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。

マインドフルネスの学習
心が落ち着く呼吸法
はじめての認知行動療法
感情コントロールの練習

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)

コミュニケーション教室,講座,ダイコミュ

個別レッスン

個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースでマインドフルネスを深めたい方は、下記をご参照ください。

個別レッスンの詳細はこちら。

シリーズの続きを読む

MBCTの土台になった、カバット・ジンの8週間のプログラムについて知りたい方は、こちらのコラムがおすすめです。

⑨MBSRとは,マインドフルネスストレス低減法

MBCTで大切にされる、考えを「心の出来事」として眺める力について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

⑥脱中心化とは,自動操縦との関係と具体例

MBCTで使われる練習は、ボディースキャンやレーズンエクササイズのコラムでも詳しく紹介しています。

他にも数多くの心理療法があります。ご自身の興味やお悩みに合った理論をじっくり探したい方は、一覧から選んでみてください。

心理療法の一覧

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Segal, Z. V., Williams, J. M. G., & Teasdale, J. D. (2013). Mindfulness-based cognitive therapy for depression (2nd ed.). New York: Guilford Press.
 
[2] Teasdale, J. D., Segal, Z. V., Williams, J. M. G., Ridgeway, V. A., Soulsby, J. M., & Lau, M. A. (2000). Prevention of relapse/recurrence in major depression by mindfulness-based cognitive therapy. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 68(4), 615-623.
 
[3] Kuyken, W., Warren, F. C., Taylor, R. S., Whalley, B., Crane, C., Bondolfi, G., et al. (2016). Efficacy of mindfulness-based cognitive therapy in prevention of depressive relapse: An individual patient data meta-analysis from randomized trials. JAMA Psychiatry, 73(6), 565-574.
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