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ミラクルクエスチョンとは

ミラクルクエスチョンの意味とは,効果,やり方

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは、ブリーフセラピーシリーズの3本目です。「ミラクルクエスチョン」をテーマに解説していきます。

ミラクルクエスチョンとは、「眠っている間に奇跡が起きて、悩みが解決していたとしたら、翌朝どんな違いから、それに気づくでしょうか」と問いかけ、望む未来を具体的に思い描いてもらう質問のことです。解決志向ブリーフセラピーの代表的な技法で、問題の原因ではなく、目指す姿を行動の言葉で明らかにするために使われます。

今回は、ミラクルクエスチョンの効果と、自分で使うための具体的な手順を解説します。目次は以下の通りです。

ミラクルクエスチョン

目次

①ミラクルクエスチョンとは

ミラクルクエスチョンは、解決志向ブリーフセラピーを発展させた心理療法家たちが、実際の面接の中から生み出した質問です。まずは、その成り立ちと基本の形を確認しましょう。

開発した人

ミラクルクエスチョンは、インスー・キム・バーグとスティーブ・ド・シェイザーらによって開発されました。2人は夫婦でもあり、1978年にアメリカのミルウォーキーでブリーフファミリーセラピーセンター(BFTC)を設立し、解決志向ブリーフセラピーを発展させました。この質問は、その後、面接の手引き書[1]などを通して、世界中に広まりました。

質問の基本形

ミラクルクエスチョンは、おおよそ次のような流れで問いかけます。

今夜、あなたが眠っている間に、奇跡が起きたとします。その奇跡とは、今抱えている悩みが、すっかり解決してしまうというものです。

でも、あなたは眠っていたので、奇跡が起きたことを知りません。

明日の朝、目が覚めたとき、どんな違いから「あれ、奇跡が起きたのかな」と気づくでしょうか。

私は初めてこの質問を読んだとき、正直なところ、ピンときませんでした。何もしないで問題が解決するわけがない、と感じたのです。しかし、理解を深めていくと、この質問にはさまざまな効果が隠れていることが分かりました。

②4つの効果

ミラクルクエスチョンには、大きく4つの効果があります。現実にはありえない「奇跡」を想像することで、ふだんとは違う角度から悩みを眺められるのです。

未来に目が向く

悩みがあると、私たちは「なぜこうなったのか」と過去の原因探しをしがちです。例えば、仕事で大きな失敗をしたとき、その場面を何度も頭の中でくり返し、つらくなってしまうことがあります。ミラクルクエスチョンは、そんな過去のイメージをいったん脇に置き、「これからどうなりたいか」という未来へと意識を向け直してくれます。

目標の方向が分かる

「翌朝、どんな違いから気づくか」という問いは、「今と理想の状態は、具体的に何が違うのか」を考えることにつながります。「元気になりたい」のようなぼんやりした願いが、「朝ごはんをゆっくり食べている」のような具体的な姿に変わることで、目指す方向がはっきりします。

前向きな気持ちが生まれる

「どうせ失敗する」「頑張っても無駄だ」という考えが強いと、行動する気持ちがしぼみ、失敗を恐れて動けなくなりがちです。一方、うまくいった未来を思い描くと、「やってみようかな」という前向きな気持ちが生まれやすくなります。

解決の糸口が見つかる

奇跡の姿を思い描いた後は、今との違いを比べながら、現実的にできることを考えていきます。その過程で、極端な理想は、手の届く目標へと自然に修正されていきます。また、奇跡の姿の一部が、実はすでに時々起きていることに気づくこともあります。まずは奇跡をイメージし、そこから手の届く具体的な一歩を見つけるのが、ミラクルクエスチョンを活かすコツです。

ミラクルクエスチョン,効果

③やり方の5ステップ

ここからは、自分でミラクルクエスチョンを使うための手順を紹介します。紙とペンを用意して、書きながら進めてみましょう。

ステップ1 奇跡を想像する

静かな場所で、基本形の質問を自分に問いかけます。「悩みがすっかり解決した翌朝」を、できるだけ具体的に想像してみましょう。現実的かどうかは、ここでは気にしなくて大丈夫です。

ステップ2 翌朝の違いを書く

目が覚めてから夜寝るまでの一日を順に追い、「何が違っているか」を書き出します。「気分がいい」だけでなく、「いつもより15分早く起きて、コーヒーをゆっくり飲んでいる」のように、目に見える行動で書くのがポイントです。

ステップ3 周りの反応を考える

「家族や同僚は、あなたのどんな変化に気づくでしょうか」「そのとき、周りの人はどんな反応をするでしょうか」と考えます。周りの人の目を通すと、自分の変化がより具体的に見えてきます。

ステップ4 すでに起きている部分を探す

書き出した奇跡の姿の中で、「ほんの少しでも、最近起きたことがあるもの」に印をつけます。例えば、「同僚と雑談している」が、先週一度だけあったなら、それは大切な「例外」です。そのとき、何がいつもと違っていたのかを振り返ってみましょう。

ステップ5 最初の一歩を決める

最後に、奇跡の姿に近づくために、明日できる小さな一歩を1つ決めます。「同僚に自分から『おはようございます』と言う」のように、すぐに実行できるくらい小さな行動にするのがコツです。

④活用例

ミラクルクエスチョンを、さまざまな悩みに使った例を紹介します。質問、回答、実践への活かし方の順に見てみましょう。

職場の人間関係の悩み

質問:明日の朝、職場の人間関係が良くなっていたら、何が変わっていると思いますか?

回答:同僚が笑顔で挨拶してくれる。気軽に雑談ができる。自分の意見を言いやすい。

回答から、「笑顔」「雑談」「意見を言いやすい雰囲気」という具体的な理想の姿が見えてきます。これをもとに、「まずは自分から笑顔で挨拶してみる」という小さな行動から始めることができます。

育児に疲れているとき

質問:明日の朝、育児の疲れがすっかり消えていたら、どんな一日になりそうですか?

回答:朝から子どもに笑顔で接している。一緒に遊ぶ時間を楽しめる。イライラせずに子どもの話を聞ける。

「笑顔」「楽しむ」「落ち着いて話を聞く」という理想が明確になります。そのために、「週に1回は自分の休息時間を確保する」「家族に頼めることを1つ頼む」など、現実的な一歩を考えることができます。

勉強に集中できない学生

質問:明日の朝、勉強に集中して取り組めるようになっていたら、どんな変化に気づくと思いますか?

回答:机が片付いていて、すぐに始められる。分からない問題も楽しく考えられる。勉強の後に達成感がある。

「片付いた机」「楽しむ」「達成感」というキーワードから、「まず机の上を片付ける」「得意な科目から始めて、勢いをつける」といった、すぐにできる行動につなげられます。

⑤うまく使うコツ

ミラクルクエスチョンは、答え方によって効果が変わります。うまく使うための3つのコツを紹介します。

行動の言葉で答える

「不安がなくなっている」のように、「〜がない」という形の答えが出てきたら、「不安がない代わりに、何をしているか」を考えてみましょう。「ない」ことは目に見えませんが、「している」ことなら、自分でも周りの人でも確かめることができます。

すぐに答えが出なくても大丈夫

この質問は、ふだん考えたことのない問いなので、すぐに答えが出ないのは自然なことです。少し時間をおいて考えたり、「一つだけ違うとしたら何か」と範囲を狭めたりすると、答えやすくなります。

つらい時期は無理をしない

気持ちの落ち込みがとても強い時期には、明るい未来を想像すること自体が、負担に感じられることがあります。そのようなときは無理に使わず、まずは休息をとりましょう。つらい状態が続く場合は、専門家に相談してください。

⑥自分でやってみよう

最後に、実際にミラクルクエスチョンに取り組んでみましょう。10分ほどで行えます。

ミラクルクエスチョンワーク

①今いちばん解決したい悩みを1つ書く

②「奇跡が起きた翌朝」の違いを、行動の言葉で3つ以上書く

③周りの人が気づきそうな変化を1つ書く

④最近、少しでも起きたことがあるものに印をつける

⑤明日できる小さな一歩を1つ決める

回答例

ワークの回答例

①悩み:仕事に追われて、毎日余裕がない。

②翌朝の違い:アラームより少し早く目が覚める。朝ごはんを座って食べている。出社前に、今日やることを3つに絞って書いている。

③周りの変化:同僚から「最近、落ち着いているね」と言われる。

④すでに起きていること:先週の月曜日は、出社前にやることを書き出せた。その日は、前の晩に早めに寝ていた。

⑤最初の一歩:明日は、出社前の5分で、やることを3つ書き出す。

⑦確認してみよう

ここまでの内容を、3つの問題で確認してみましょう。答えを考えてから、正解と解説を開いてください。

問題1

ミラクルクエスチョンの主な目的として、最も適切なものはどれでしょうか。

ア 本当に奇跡が起きると信じてもらうこと

イ 望む未来の姿を具体的に思い描くこと

ウ 悩みの原因を突き止めること

問題1の正解と解説

正解はイ(望む未来の姿を具体的に思い描くこと)です。奇跡を仮定することで、ふだんは見えにくい「自分が本当に望んでいる姿」を、具体的な行動の言葉で描くことが目的です。

問題2

答えを書くときのコツとして、適切なものはどれでしょうか。

ア 「不安がない」のように、ないことを書く

イ 「〜している」という行動の言葉で書く

ウ できるだけ抽象的に書く

問題2の正解と解説

正解はイ(「〜している」という行動の言葉で書く)です。「ない」ことは目に見えませんが、「している」ことなら、自分でも周りの人でも確かめることができます。

問題3

5ステップの最後に行うこととして、正しいものはどれでしょうか。

ア 理想と現実の差を反省する

イ 明日できる小さな一歩を1つ決める

ウ 奇跡の内容を誰かに話す

問題3の正解と解説

正解はイ(明日できる小さな一歩を1つ決める)です。奇跡の姿に近づくために、すぐに実行できるくらい小さな行動を1つ決めて終わります。

⑧まとめ

ミラクルクエスチョンは、悩みが解決した未来を想像することで、自分が本当に望む姿を明らかにし、そこに近づく小さな一歩を見つけるための質問です。ばかばかしいと感じる人もいるかもしれませんが、ふだんの考え方をいったん脇に置くことで、気づかなかった本音や目標が見えてきます。

今回のポイント

「なぜ」ではなく「解決したら何が違うか」を考える

答えは「〜している」という行動の言葉で

すでに少しでも起きていることを探す

明日できる小さな一歩を1つ決める

シリーズの他のコラム

ブリーフセラピーシリーズでは、基礎から具体的な技法までを解説しています。あわせてご覧ください。

短期集中療法とは|ブリーフセラピーの基礎を解説

リソースとは|ブリーフセラピーでの探し方を解説

SFBTとは|解決志向ブリーフセラピーを解説

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] De Jong, P., & Berg, I. K. (1997). Interviewing for solutions. Pacific Grove, CA: Brooks/Cole.(玉真 慎子・住谷 祐子(監訳)(1998). 解決のための面接技法:ソリューション・フォーカスト・アプローチの手引き 金剛出版)
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