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3つの基本的態度とは

3つの基本的態度とは,来談者中心療法

3つの基本的態度とは、来談者中心療法を提唱したロジャーズ[1]が示した、カウンセラーが持つべき「自己一致」「無条件の肯定的配慮」「共感的理解」の3つの態度のことです。相手が安心して自分と向き合える関係をつくるための土台とされています。

みなさんこんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは「来談者中心療法シリーズ」の3本目です。来談者中心療法の基本や、提唱者ロジャーズの考え方を先に知りたい方は、来談者中心療法とはのコラムからお読みください。

目次は以下の通りです。

目次

①3つの基本的態度とは

3つの基本的態度は、カウンセリングの技術というより、聴き手が相手にどう向き合うかという「あり方」を表したものです。まずは全体像と、ロジャーズの理論の中での位置づけを確認しましょう。

3つの態度の全体像

3つの基本的態度は、次のように整理できます。「無条件の肯定的配慮」は「無条件の肯定的関心」と訳されることもあります。

自己一致:感じていることと態度が一致
無条件の肯定的配慮:一人の人として尊重
共感的理解:相手の気持ちを感じ取る

3つはばらばらのものではなく、互いに支え合っています。たとえば、自分の気持ちに正直でいられるからこそ(自己一致)、相手の気持ちを落ち着いて感じ取ることができます(共感的理解)。

6つの条件の中の位置づけ

ロジャーズ[1]は1957年の論文で、人が心理的に成長・変化するために必要な6つの条件を示しました。3つの基本的態度は、そのうちカウンセラー側の態度にあたる3つです。

6つの条件の全体を知りたい方は、以下の折り畳みを開いてください。一般の方は読み飛ばしても大丈夫です。

人格変化のための6つの条件

ロジャーズ(1957)は、セラピーによって人格が建設的に変化するには、次の6つの条件がそろい、一定期間続くことが必要であり、それで十分であると主張しました。

1.二人が心理的に接触している
2.相談者は不一致の状態にある
3.聴き手は関係の中で一致している
4.聴き手は無条件の肯定的配慮を持つ
5.聴き手は共感的に理解している
6.4と5が相談者に最低限伝わっている

このうち3〜5が、一般に「3つの基本的態度(中核条件)」と呼ばれるものです。見落とされやすいのが6番目の条件で、聴き手がいくら配慮や共感を持っていても、それが相手に伝わらなければ意味がないとされています。

また、「必要かつ十分」という主張はその後多くの研究で検証されてきました。現在では、3つの態度が治療の効果と関連することは支持されている一方、それだけで十分とまでは言えないという見方も多く、議論が続いています。

折り畳みの中で紹介したように、態度は「持っている」だけでなく、相手に「伝わる」ことが大切です。ここからは、3つの態度を1つずつ、よくある誤解とあわせて見ていきます。

②自己一致(純粋性)

自己一致とは、聴き手が心の中で感じていることと、表に出す態度が一致していることです。「純粋性」とも呼ばれ、無理に「いい人」や「完璧な専門家」を装わない姿勢を指します。

自己一致の意味

たとえば、相手の話がよく分からないのに「なるほど、分かります」と言うと、心の中と態度がずれてしまいます。相手はそのずれを、言葉にならない違和感として感じ取ることがあります。

自己一致している聴き手は、分からないときは「もう少し詳しく教えてもらえますか」と正直に伝えます。態度に裏表がないことが、相手の安心と信頼につながります。

よくある誤解

自己一致は「思ったことを何でも口に出すこと」ではありません。自分の気持ちに気づいていることが出発点で、それをどこまで伝えるかは、相手の役に立つかどうかで判断します。

たとえば、相手の話に退屈を感じたとき、それをそのまま伝える必要はありません。「自分は今、少し集中が切れているな」と気づき、聴き方を立て直すことも、自己一致の大切な働きです。

日常での例

友人:「この服、似合ってるかな?」

自己一致していない返し方:本当はあまり似合っていないと思うのに「すごく似合ってる!」とだけ言う

自己一致した返し方:「色はすごく似合ってると思う。形はこっちのほうが好きかな」と、自分の感じたことを相手が受け取りやすい形で伝える

自分の感じたことを、相手を傷つけない形で正直に伝えることが、日常での自己一致の練習になります。

③無条件の肯定的配慮

無条件の肯定的配慮とは、相手がどんな考えや行動をしていても、まずは一人の人として尊重し、受け止める姿勢です。「こういう条件を満たしたら認める」という条件をつけないことから、「無条件」と呼ばれます。

無条件の肯定的配慮の意味

私たちは普段、「成績がよいから認める」「言うことを聞くから大切にする」といった条件つきで人を評価しがちです。条件つきの関わりの中では、相手は認められない部分を隠すようになります。

無条件に受け止めてもらえると、相手は自分の弱い部分や、うまくいかない部分も安心して話せるようになります。その結果、自分自身を見つめ直しやすくなると考えられています。

よくある誤解

無条件の肯定的配慮は、「相手の行動に何でも賛成すること」や「甘やかすこと」ではありません。受け止めるのは、そう考えたり行動したりするようになった本人の気持ちや背景です。

たとえば、約束を何度も破ってしまう人の話を聴くときも、「約束を破ってもいい」と言うわけではありません。「守りたい気持ちはあるのに、うまくいかなくて苦しいんですね」と、本人の気持ちを受け止めるのです。

日常での例

子ども:「テストで悪い点をとっちゃった」

条件つきの返し方:「勉強しないからでしょう」

無条件の肯定的配慮を意識した返し方:「そうか、悔しかったね。どんなところが難しかった?」

まず気持ちを受け止めてから、必要に応じて一緒に対策を考えると、相手は責められたと感じにくくなります。

④共感的理解のポイント

共感的理解とは、相手の考えや感情を、相手の立場に立って「あたかも」自分のことのように感じ取ろうとする姿勢です。そして、感じ取ったことを言葉にして相手に返すことで、理解が伝わります。

共感的理解の意味

ロジャーズは、相手の内側の世界を、あたかも自分のことのように感じ取りながら、「あたかも」という性質を失わないことが大切だとしました。相手の気持ちを感じ取りつつも、自分と相手の区別は保ったままでいる、ということです。

共感的理解は、相手の気持ちを当てるテストではありません。「こういう気持ちですか?」と確かめながら、相手と一緒に理解を深めていく作業だと考えると、取り組みやすくなります。

同情・同調との違い

共感と混同されやすいのが「同情」と「同調」です。違いを整理すると、次のようになります。

同情:相手をかわいそうだと上から見る
同調:相手と同じ気持ちに巻き込まれる
共感:相手の立場から気持ちを感じ取る

同情は、相手との間に上下の関係をつくりやすく、同調は、聴き手自身が疲れ切ってしまう原因になります。共感的理解は、相手の気持ちに寄り添いながらも、落ち着いて話を聴ける状態を保つことを大切にします。

日常での例

同僚:「また上司に怒られた。もう会社に行きたくない」

同情の返し方:「かわいそうに。大変だね」

同調の返し方:「ひどい上司だね!私まで腹が立ってきた」

共感的理解の返し方:「何度も怒られて、会社に行くのがつらくなっているんだね」

⑤3つの態度の練習

3つの基本的態度は、知識として知るだけでなく、練習によって少しずつ身についていきます。ここでは、一人でも取り組める3つの練習と、共感的な返し方の練習問題を紹介します。

練習1:自分の気持ちに気づく

自己一致の土台は、自分が今何を感じているかに気づくことです。1日の終わりに、次の手順で振り返ってみましょう。

①今日、人と話した場面を1つ選ぶ
②そのとき感じた気持ちを書き出す
③実際の態度と気持ちを比べてみる
④ずれていたら、その理由を考える

ずれがあったこと自体を責める必要はありません。気づけたことが、自己一致に向けた大切な一歩です。

練習2:評価をいったん保留する

無条件の肯定的配慮を練習するには、人の話を聴くとき、「よい・悪い」の判断を数秒だけ保留する習慣をつけます。

①相手の話を最後まで聴く
②心に浮かんだ評価に「今は置いておく」と声をかける
③相手がそう感じた理由を想像する
④気持ちを受け止める一言を返す

練習3:気持ちを言葉で返す

共感的理解を相手に伝えるには、相手の気持ちを言葉にして返す練習が役立ちます。次の2つの発言に、共感的に返す言葉を考えてみましょう。

事例1:「明日のプレゼン、うまくいく気がしない。失敗したらどうしよう」

事例1の回答例

回答例:「明日が近づいて、失敗したらどうしようと不安になっているんだね」

ポイントは、「大丈夫だよ」とすぐに励ますのではなく、まず「不安」という気持ちを言葉にして返すことです。励ましは、気持ちを受け止めたあとでも遅くありません。

続いて、もう1つの事例にも取り組んでみましょう。

事例2:「せっかく作った料理なのに、家族が何も言わずに食べている」

事例2の回答例

回答例:「がんばって作ったのに、何の反応もないと寂しいよね」

この発言の奥には、「認めてほしい」「気づいてほしい」という気持ちがありそうです。出来事の説明よりも、その奥の気持ちに目を向けて返すと、共感が伝わりやすくなります。

気持ちを言葉で返す練習をさらに深めたい方は、傾聴技法のトレーニングのコラムも参考にしてください。

⑥効果を調べた研究

3つの基本的態度については、多くの研究をまとめて分析した「メタ分析」が行われています。その結果、3つの態度はいずれも、心理療法の効果と関連していることが報告されています。

共感と効果の関係

エリオットら(2018)[2]は、82の研究(相談者6,138名)をまとめて分析しました。その結果、カウンセラーの共感が高いほど、心理療法の効果が高い傾向が見られ、この関係は療法の種類や相談内容が違っても、おおむね当てはまりました。

ただし、研究によって結果のばらつきも大きく、「共感さえあれば必ず効果が出る」という意味ではありません。

配慮・一致と効果の関係

無条件の肯定的配慮についても、ファーバーら(2018)[3]が64の研究をまとめ、効果との間に小さいながらも一貫した関連があることを報告しています。また、自己一致(純粋性)についても、コールデンら(2018)[4]のメタ分析で、効果との関連が報告されています。

研究の数値の読み方を詳しく知りたい方は、以下の折り畳みを開いてください。一般の方は読み飛ばしても大丈夫です。

研究の数値の読み方

エリオットら(2018)のメタ分析では、共感と効果の関係の強さが、相関係数r=.28と報告されています。ファーバーら(2018)の肯定的配慮のメタ分析では、効果量g=.28と報告されています。

相関係数(r)は、2つのものの関係の強さを−1から1の数値で表したもので、0に近いほど関係が弱く、1に近いほど強いことを示します。.28は、心理学の研究では「小〜中程度」の関係とされることが多い値です。

効果量(g)は、結果の違いの大きさを表す指標です。

なお、これらは「関連がある」ことを示した研究で、3つの態度が効果を生む原因であることを直接示したものではありません。効果が出ている相談者ほど、カウンセラーを共感的だと感じやすい、という逆向きの可能性も考えられます。

⑦実践するときの注意

3つの基本的態度は日常でも役立ちますが、無理に演じたり、一人で抱え込んだりすると、かえって負担になることがあります。実践するときの注意点を押さえておきましょう。

完璧に演じようとしない

3つの態度を「常に完璧にできなければならない」と考えると、かえって自己一致から遠ざかってしまいます。うまくできない自分に気づき、それを認めることも、自己一致の一部です。

最初から3つすべてを意識するのは難しいので、まずは「評価を保留する」など、1つに絞って練習するのがおすすめです。

自分の気持ちも大切にする

相手の気持ちを受け止めることに集中しすぎると、聴き手自身が疲れてしまうことがあります。疲れたときは「今日はここまで聞かせてくれてありがとう」と区切りをつけることも大切です。

自分の気持ちを大切にできる聴き手のほうが、長く安定して相手を支えることができます。

専門家につなぐ場面

身近な人の話を聴く中で、「死にたい」「自分を傷つけてしまう」といった命に関わる話や、暴力・虐待が疑われる話が出ることがあります。このような場合は、傾聴だけで一人で抱え込まず、医療機関や専門の相談窓口につなぐことが大切です。

3つの基本的態度は、専門的な支援の代わりではなく、専門的な支援と組み合わせて活かすものと考えておきましょう。

⑧よくある質問Q&A

私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。

3つの態度は生まれつき?

3つの基本的態度は、性格というより、練習によって身につけていく関わり方だと考えてください。もともと優しい人でも、相手の話を評価せずに聴くことや、気持ちを言葉にして返すことは、意識して練習しないと難しいものです。

逆に、話を聞くのが苦手だと感じている人でも、短い練習を重ねることで少しずつ自然にできるようになります。完璧をめざさず、1日1回、相手の気持ちを言葉にして返してみるところから始めてみてください。うまくいかなかった日があっても、気づけたこと自体が成長の一歩です。練習の記録をつけておくと、自分の変化にも気づきやすくなります。

受け入れられない話のときは?

無条件の肯定的配慮は、相手の考えや行動に賛成することではありません。「そう考えるようになった気持ち」を受け止めることと、「その考えに賛成すること」は分けて考えてください。

どうしても受け入れられないと感じるときは、無理に分かったふりをせず、「私は少し違う考えだけれど、あなたがそう感じた理由をもっと知りたい」と正直に伝えることも、自己一致の一つの形です。相手を尊重しながら、自分の考えも大切にしてよいのです。自分の考えを伝えるときは、「私は〜と思う」と自分を主語にして話すと、相手を否定する印象をやわらげられます。

聴いていて疲れてしまうときは?

共感的理解は、相手の気持ちを「あたかも自分のことのように」感じ取ろうとする姿勢であり、相手と同じ気持ちに巻き込まれることではありません。聴いていて強く疲れるときは、相手との間に少し距離をとり、自分の気持ちを休ませることも大切です。

また、命に関わる話や、暴力・虐待が疑われる話の場合は、一人で抱え込まず、医療機関や専門の相談窓口につなぐことを考えてください。聴き手自身が信頼できる人に相談することも、大切なセルフケアです。聴き終わったあとは、好きなことをして気分を切り替える時間をつくるのもおすすめです。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。

来談者中心療法の考え方
傾聴と共感の練習
自己理解を深めるワーク
はじめての心理療法

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)

コミュニケーション教室,講座,ダイコミュ

個別レッスン

個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースで来談者中心療法の考え方を深めたい方は、下記をご参照ください。

個別レッスンの詳細はこちら。

シリーズの続きを読む

3つの基本的態度を、実際の会話の中でどう表すかを練習したい方は、あいづちや感情の反映などの具体的な聴き方を紹介したこちらのコラムがおすすめです。

④傾聴技法とは,具体的なトレーニング法

3つの態度が生まれた背景や、来談者中心療法の全体像を知りたい方は、シリーズ1本目のコラムをご覧ください。

①来談者中心療法とは,ロジャーズの理論と特徴

シリーズでは他に、少人数で本音を伝え合うエンカウンターグループ、からだの感じに注意を向けるフォーカシング、感情を手がかりに変化をめざす感情焦点化療法も紹介しています。

他にも数多くの心理療法があります。ご自身の興味やお悩みに合った理論をじっくり探したい方は、一覧から選んでみてください。

心理療法の一覧

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Rogers, C. R. (1957). The necessary and sufficient conditions of therapeutic personality change. Journal of Consulting Psychology, 21(2), 95-103.
 
[2] Elliott, R., Bohart, A. C., Watson, J. C., & Murphy, D. (2018). Therapist empathy and client outcome: An updated meta-analysis. Psychotherapy, 55(4), 399-410.
 
[3] Farber, B. A., Suzuki, J. Y., & Lynch, D. A. (2018). Positive regard and psychotherapy outcome: A meta-analytic review. Psychotherapy, 55(4), 411-423.
 
[4] Kolden, G. G., Wang, C.-C., Austin, S. B., Chang, Y., & Klein, M. H. (2018). Congruence/genuineness: A meta-analysis. Psychotherapy, 55(4), 424-433.
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