みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。
このコラムは、ACTシリーズの4本目です。「価値の明確化」をテーマに解説していきます。
価値の明確化とは、「自分は人生で何を大切にし、どのような人でありたいか」という方向性をはっきりさせる、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)のプロセスです。ACTでは、つらい気持ちがあっても前に進めるよう、この価値を行動の道しるべとして使います。
今回は、価値と目標の違いと、自分の価値を見つけるための具体的なワークを解説します。目次は以下の通りです。
目次
①価値の明確化とは
ACTでいう「価値」は、一般的な「価値観」とは少し違う意味を持っています。まずは、その意味と役割を確認しましょう。
ACTでいう価値
ACTの価値とは、自分が選んだ、人生の大切な方向性のことです[1]。「家族を思いやる人でありたい」「学び続けたい」「誠実に仕事に向き合いたい」のように、「どんなふうに生きたいか」を表します。
価値は、人から押しつけられたものや、「〜すべき」というルールではありません。自分で選び、自分にとって意味があると感じられるものです。
価値の役割
不安や落ち込みがあるとき、私たちは「つらさをなくすこと」に一生懸命になりがちです。しかし、つらさをなくすことだけを目標にすると、人生の多くが「つらさを避けるための行動」で埋まってしまいます。
価値は、そんなときに、「つらさがあっても、何のために進むのか」を思い出させてくれる道しるべになります。
②価値と目標の違い
価値は、目標と混同されやすい言葉です。2つの違いを、コンパスのたとえで確認しましょう。
コンパスのたとえ
価値は、コンパスが指す「方角」にたとえられます。「東へ進む」は価値、「東京駅に着く」は目標です。東京駅には到着すれば終わりですが、東という方角には終わりがありません。そして、東へ向かう最初の一歩から、すでに価値に沿って生きていることになります。
違いを比べる
目標:達成すると終わる(例:資格試験に合格する)
価値:終わりがなく、いつでも実践できる(例:成長し続ける)
目標:結果に左右される
価値:今この瞬間の行動で表せる
目標を達成できなかったとしても、その過程で「学び続ける」という価値に沿って行動していたなら、その時間には意味があります。価値を持つことで、結果だけに振り回されにくくなるのです。
③価値を見つけるワーク
自分の価値は、すぐには言葉にならないことも多いものです。ここでは、価値を探るための3つのワークを紹介します。紙に書きながら取り組んでみましょう。
人生の領域ごとに考える
人生をいくつかの領域に分け、それぞれで「どんな人でありたいか」を書き出します。
家族:例)家族の話に耳を傾ける人でありたい
友人・パートナー:例)相手を思いやり、誠実に関わりたい
仕事・学び:例)好奇心を持って、成長し続けたい
健康・余暇:例)体を大切にし、楽しむ時間を持ちたい
80歳の誕生日を想像する
80歳の誕生日パーティーで、大切な人たちがあなたについてスピーチをしている場面を想像してください。「あの人は、こんな人だった」と、どんな言葉で語られたいでしょうか。そこに出てくる言葉は、あなたの価値を表しています。
つらさの裏側を見る
つらい気持ちの裏側には、大切にしたいことが隠れていることがあります。例えば、人間関係で傷ついて悲しいのは、人とのつながりを大切にしているからかもしれません。「何に心が痛むか」を振り返ると、自分の価値が見えてくることがあります。
④価値を行動につなげる
価値が見えてきたら、それを日々の行動につなげます。ACTでは、これを「コミットされた行動」と呼びます。
小さな行動を決める
選んだ価値に沿って、今週できる小さな行動を1つ決めます。「家族の話に耳を傾ける」が価値なら、「夕食のとき、スマートフォンを置いて家族の話を聞く」といった具体的な行動です。
価値の的で確かめる
紙に的(ダーツの的)を描き、中心を「価値に完全に沿って生きている状態」とします。今の自分の行動が、中心からどのくらい離れているかを点で書き込みます。中心に近づくために、どんな行動ができるかを考えてみましょう。
つらさと一緒に進む
価値に沿った行動をしようとすると、不安や面倒な気持ちが出てくることがあります。そのときは、アクセプタンスや脱フュージョンを使い、気持ちを抱えたまま一歩を踏み出します。
⑤具体例で確認
価値の明確化から行動までの流れを、具体例で確認しましょう。
例1 職場の人間関係
悩み:職場で孤立している気がして、話しかけるのが怖い
価値:周りの人と、温かいつながりを持ちたい
行動:毎朝、隣の席の人に自分から挨拶する
気持ちへの対処:「無視されたらどうしよう」という考えが浮かんだら、「という考えがあるな」と眺める
例2 子育て
悩み:忙しさからイライラして、子どもを怒ってばかりいる
価値:子どもが安心できる、穏やかな親でありたい
行動:寝る前の5分、子どもの話をゆっくり聞く時間をつくる
気持ちへの対処:イライラしたときは深呼吸をして、価値を思い出す
⑥取り組むときの注意
価値の明確化に取り組むときは、次の2点に気をつけましょう。
「べき」と区別する
「親なら〜すべき」「社会人なら〜しなければ」といった言葉が出てきたら、それは周りから求められているルールかもしれません。「誰にも評価されないとしても、それを大切にしたいか」と自分に問いかけてみましょう。
完璧を目指さない
価値に沿って行動できない日があっても、自分を責める必要はありません。価値は方角なので、いつでもそちらに向き直ることができます。気づいたときに、また一歩を踏み出せば大丈夫です。
⑦まとめ
価値の明確化とは、人生で大切にしたい方向性をはっきりさせ、つらさがあっても前に進むための道しるべにする、ACTのプロセスです。
今回のポイント
価値は「方角」、目標は「目的地」
人生の領域ごとに、どんな人でありたいかを書き出す
価値に沿った小さな行動を、今週1つ決める
できない日があっても、いつでも向き直せる
シリーズの他のコラム
ACTシリーズでは、基本の考え方から、6つのコアプロセスの実践までを解説しています。あわせてご覧ください。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、実際に学ぶことができます。内容は以下のとおりです。
・ACTの基礎,エクササイズ
・はじめての認知療法
・はじめての行動療法
・マインドフルネス療法の基礎
講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
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監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連




