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レジリエンスの意味とは?鍛え方,簡易診断,チェック

レジリエンスの意味とは?鍛え方,簡易診断,チェック

はじめまして!公認心理師の川島です。今回のテーマは
「レジリエンス」
です。


当コラムの目標
・立ち直る力をつける
・しなやかさを身に着ける
・生きる力をつける

全体の目次
レジリエンスの意味とは
様々な研究
簡易診断・チェック
鍛える10の方法
助け合い掲示板

はじめに

2020年はコロナショックがありました。緊急事態宣言が出たばかりの頃、私はあるニュースを見て驚愕しました。お客さんが全く来なくなったBARの店主が思い切ってミシンを3台購入し、一時的なマスク製造工場に変えた!というニュースでした。私はこのとき、レジリエンス,コロナショック

「なんてレジリエンス力だ!」

と唸ったことを覚えています。BARの店主はこれをむしろチャンスと捉え、意気揚々とマスクを作っていたのが印象的でした。

病気、天災、失恋、失業、友人との喧嘩…私たちは人生を通して様々な問題と直面し、乗り越えていくしなやかさを求められます。

そんなときに必要なのがまさにレジリエンス力なのです。本コラムではレジリエンス力の基礎を学び、しなやかに生きていく手法をお伝えしていきます。

是非最後までご一読ください。

レジリエンスとは何か?

提唱者と歴史

レジリエンスは、19世紀ぐらいから、「弾力」や「反発力」を意味する物理学用語として、主に西欧で使用されてきました。

その後、1970年代から、心理学や疫学の世界でも使う学者がでてきました。中でもアメリカの発達心理学者であるエミー・E・ウェルナー教授は第一人者と言われています。

ウェルナー教授は2017年までご健在でした。生前の様子もYOUTUBEにあがっています。

ウェルナー教授はハワイのカウアイ島の698人の乳児を対象として、1955年から40年間もの間、縦断的研究を行ったことで有名です。

縦断的研究とは、同一の対象者を定期的に診断していく手法で、心理学の世界では相当な覚悟がないとできない研究です。

ウェルナー教授は、カウアイ島の乳幼児が成長していくなかで、30%のグループが非常に、柔軟で生きる力に長けていることを発見します。

この30%について「resilient」と名付けました。

先生の研究に興味がある方は以下の折り畳みを展開してみてください。

ウェルナー教授,レジリエンス研究

当時のカウアイ島は不安定な状況でした。
・精神疾患のある母親の養育,早産
・アルコール依存症の家庭
・失業家庭
・不安定な家庭環境
これらの環境で育った子供たちの多くは、非行に走ったり、体の問題を抱えていました。

一方で全体の30%ほどの子供たちはそのようなリスクのある環境でレジリエンスを発揮し、心理的に成長していくことがわかったのです。

ワーナー教授の研究によると危険な状態を乗り越えていくためには
・ソーシャルサポートを得る
・暖かいコミュニティに所属する
ことが大事であることがわかりました。

レジリエンスは、80年代から研究上で使われることが盛んになり、精神疾患に対する、弾力性、回復力、復元力、抵抗力を意味するものとして心理学、精神医学、免疫学の世界で浸透していきました。

レジリエンス力

レジリエンス(Resilience)とは

現在では様々な定義があります。

逆境,心的外傷,悲劇,脅威,人間関係問題,深刻な健康問題などから起こるストレスにうまく適応する力
*アメリカ心理学会

強い風にも重い雪にも、ぽきっと折れることなく、しなってまた元の姿に戻るように、何があってもしなやかに立ち直れる力
*枝廣(2015)

いかがでしょうか。なんとなくイメージがつきますでしょうか。例えば、下記のようなバネがあったとします。文字で表すのは難しいです。。

(バネバネバネバネ)

バネの両端を指で押すと、
圧力⇒⇒(バネバネ)⇐⇐⇐圧力
こんな感じでばねは縮まりますよね。

次に指を離すとどうなるでしょうか?
下記のように元の形に戻ります。

(バネバネバネバネ)

この「跳ね返して元に戻る力」がレジリエンスです。心理学の世界では、ばねだけでなく、心にも
 「元に戻る力」
 「立ち直る力」
 「へこたれない心」
があると考えられているのです。

レジリエンス

レジリエンスモデル

加藤(2006)はレジリエンスの過程を以下の図のようにモデル化しています。具体的には、立ち直りのステップは大きく2段階あると考えられています。やや難易度が高いですが以下の図をご覧ください。

レジリエンス 鍛える

図を見ると、レジリエンスには2段階あることがわかります。

1次的レジリエンス
1次的レジリエンスとは、ストレスがかかる場面で最初に必要となるレジリエンスです。この1次的レジリエンスがうまく機能すれば、すぐに対処できることになります。具体的には、

・遺伝的要素
元々備わっている危機的状況への強さです。例えば遺伝研究では、日本人はやや不安になりやすい遺伝子が備わっているいることが分かっています。

・認知的評価
出来事を必要以上に過大視しない力、現実検討力とも言います。1次レジリエンスが脆弱な方は、ちょっとした出来事を悲観的に見積もる癖があります。

2次的レジリエンス
1次レジリエンスに失敗すると、心理的な問題や、現実場面でのさらなる危機へと発展していきます。次に生じたストレス反応に対して働くのが2次的レジリエンスです。具体的には以下のようなものが挙げられます。

・ソーシャルスキル
人間関係を上手に営むための技能を意味します。ソーシャルスキルがあると、人に助けを求めたり、会話をすることで折り合いをつけることができます。

・コーピングスキル
ストレスに対しての対処力を意味します。コーピングスキルは、情緒的な解決や、実際の問題解決力などが挙げられます。

2次的レジリエンスで失敗すると、さらに問題は重篤化し、悪化すると精神疾患につながることもあります。

レジリエンス 鍛え方

レジリエンス研究

レジリエンスは広い概念なので、これまで様々な分野で研究されてきました。以下折りたたんで記載したので興味があるものを展開してみてください。

レジリエンスの高さは心理的にどのような影響があるのでしょうか?藤澤(2015)は思春期158名を対象とした調査を行いました。その結果の一部が、以下のような結果になりました。

PTGはPosttraumatic Growthの略で、心的外傷後成長と言われています。ざっくりとですが、苦しいことがあった時に、成長していく力と考えるといいでしょう。

図を見ると、レジリエンスが高いと、逆境での成長力も高まるというプラスの相関関係があることが分かります。

心理学的には0.5前後の相関があると、お互いが中程度、影響しあうと考えます。やはりレジリエンスが高まると、困難な状況をバネにできるようですね。

藤澤(2015)の研究では、レジリエンスと抑うつの関連が調査されました。結果を以下の図に示します。

図はマイナスの相関になっています。すなわち、

レジリエンス力がつくと抑うつが減りやすくなる
例示リエンス力がないと抑うつになりやすい

ということを示しています。レジリエンスが低いと、状況に応じて柔軟に対応することが難しくなり、精神的に不安定な状況に陥るのですね。

*用語解説 抑うつ

長内(2004)は女子大生110名に対して、質問紙を用いてレジリエンスと心の安定について調査しています。レジリエンスを測定する尺度として、Reivich&Shatte(2002)によるThe Resilience Quotientの原文を日本語訳して使用しました。(以下RQ尺度日本語版とする)その結果が以下の図です。

不安と不眠との関係

このように、3つの要素すべてにおいてマイナスの相関を表しています。つまり、レジリエンスが高いほど、不安や不眠になりにくく、社会的な障害も少ない、さらにはうつ傾向も低くなることが言えるでしょう。

長内(2004)らの研究によると、レジリエンス力があると社会的活動がしやすくなることがわかっています。

例えば、就職活動などでは、様々な試練が待ち構えています。会社選び、志望動機の作成、面接、落選…様々な苦労を乗り越えて、はじめて就職できます。この時、レジリエンス力がある方ほど、様々な問題を乗り越えていけるのです。

レジリエンスにはいくつかの構成要素があることが分かっています。また以下の時期によって、構成要素は微妙に変わっていきます。

・「大学生」
・「成人期」
・「成人外来者」

まずは、大学生を見ていきましょう。

立ち直り力UP

構成要素としては、「新奇性追求」「肯定的な未来志向」「感情調節」の3つですね。新しいものを求め、希望を持ち、自分の感情をコントロールできることがレジリエンスの獲得には必要だと言えます。続いて成人期を見ていきましょう。

レジリエンス 高める

成人期では、「自分を管理できる能力」と、「自分の人生を受け入れる」ことが大切だとされています。特に自分自身をあるがままに捉えて、管理していくことがレジリエンスには必要というわけですね。最後に、成人外来を見ていきましょう。

レジリエンス 鍛える

この調査では、成人患者と健常者を対象にレジリエンスの構成要素を調べています。結果、社会的コンピテンス、家族凝集性、ソーシャルサポートの3つの要素が抽出されました。このように、年齢や病気の有無によってレジエンスの要素は変わってきます。すぐには、立ち直れない・・・という方は自分の状況に合わせて適切な対処が必要になります。

イラスト:逆境にもへこたれない、跳ね返して元に戻る力の象徴

鍛える10の方法

アメリカ心理学会は2020年2月1日に最新の「レジリエンスを築く10の方法」を提唱しています。以下それぞれに準拠して解説していきます。足りていない部分があると感じたらぜひリンク先をたどってみてください。

①つながりを築く
Build your connections!

共感しあう、お互い笑いあう、屈託のない会話を楽しむことはレジリエンスを高めてくれます。友人を作って遊びに行く、奥さんと定期的に出かける、毎朝家族とご飯を食べる、これらの日常のつながりはメンタルヘルスに極めて重要です。

関連コラム
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暖かいコミュニティに所属

②ウェルネスを育む
Foster wellness!

ウエルネスとは身体的、精神的、そして社会的に健康な状態を意味します。十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動など、体の健康と心の健康を大事にする姿勢を持ちましょう。

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ストレス発散-心と体の健康コラム

③目的を見つける
Find purpose!

これからの人生をどう生きるか?という目標が定まると、困難な時期も乗り越えていけます。心理学的にはアイデンティティを確立すると言います。一度しかない人生です、自分なりの人生の目的を探して、エネルギーをぶつけていきたいものです。

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目標の発見-アイデンティティ確立コラム

④適応的な考えを受け入れる
Embrace healthy thoughts

出来事を様々な視点で捉えること、状況を受け入れていくことは、レジリエンスに重要な役割を果たします。苦しい時期、辛い時期に大事なことは、頭を柔らかくして多角的に考えていく姿勢や、ありのままの自分を受け入れていく姿勢が大事になります。

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ありのままの自分を受け入れる

⑤援助を求める
Seeking help!

周囲からのサポートは、レジリエンスを高める点で重要です。トラウマやストレスが強い状況は、自分だけでは乗り越えられない時もあります。

家族や信頼できる友人、メンタルヘルスの専門家やサポートグループの力を借りて安心できる環境を作りましょう。

関連コラム
ソーシャルサポート-助けを求める
トラウマの否定的感情を緩和

⑥決断し行動する
Take Decisive Actions!

不利な状況であっても決断し行動する経験は、レジリエンスを高めてくれます。直面する問題やストレスに背を向けるのではなく、自分なりに判断し行動を取ることがとても大切です。

関連コラム
決断力を高める方法・鍛え方

⑦自己発見の機会を探す
Look for opportunities for self-discovery

危機的な状況を乗り越える経験は、レジリエンスを鍛えてくれます。大きな悲しみや困難を乗り越えた後には、何らかの成長があるものです。

より良い人間関係、自分自身の心の強さ、自己価値の向上、精神性の発達、人生への感謝の高まりなどを感じましょう。

関連コラム
苦しい時の乗り越え方

⑦自信を深める
Nurture a positive view of yourself

自分自身を前向きに捉えることは、レジリエンスを高める点で重要です。問題や課題を自分自身でクリアする経験はとても大切です。自信につながる経験を積むことで「自分は大丈夫」という気持ちを深めていきましょう。

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自己嫌悪から立ち直る

⑧広い視野で捉える
Keep Things in Perspective

目の前の困難な状況を、より広い視野で捉えらえるとレジリエンスが高まります。直面しているストレスを長期的な視点で検討できれば、苦痛な状況も人生のイベントと吹き飛ばすことができるでしょう。

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⑨希望に満ちた展望を維持する
Maintain a hopeful outlook!

楽観的な見方は、レジリエンスを高めてくれます。希望的な見通しを持ち、良いことを期待すれば、希望が見えてくるものです。恐れや心配を想像するのではなく、望むものを視覚化しましょう。

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⑩自分を大切にしてください
Take Care of Yourself!

レジリエンスの基本は、自分を大事にすることです。一時かない人生です!いたずらに自分をないがしろにするのではなく、自己受容をして、一生懸命生きている自分を褒めて、大切にしていきましょう。

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自己受容する方法

 


最後にお知らせがあります 私たち公認心理師・精神保健福祉士は、暖かい人間関係のある社会を創ることを目的として、コミュニケーション講座を開催しています。

もしコラムを読んでみて、もっと心理学を学習したいと感じたら、下記の看板をクリックしてみてください。是非お待ちしています(^^)

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献

藤澤隆史 小島雅彦 2015 逆境経験からの精神的成長を規定する要因の発達学的検討. 発達研究, 29, 95-108.

Barbara, L. F. et al. 2003 What good are positive emotions in crises? A prospective study of resilience and emotions following the terrorist attacks on the United States on September 11th, 2011. Journal of Personality and Social Psychology, 84 (2), 365-376.

The American psychological Association : The Road to Resilience on-line,
http://helping.apa.org/ resilience.06.3.2011

レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み――二次元レジリエンス要因尺度(BRS)の作成
平野 真理 2010 パーソナリティ研究
枝廣淳子 2015 「レジリエンスとは何か─何があっても折れないこころ,暮らし,地域,社会をつくる─」東洋経済新報社

斎藤ら(2009)最近のレジリエンス研究の動向と課題 明治大学心理社会学研究 4, 72-84, 2009-03-26

長内ら(2004)レジリエンスと日常的ネガティブライフイベントとの関連 Annual bulletin of Institute of Psychological Studies, Showa Women’s University 7, 28-38, 2005-03-31
加藤 寛(2006).自然災害とPTSD こころの科学,129,61-65.