>
>
>

レジリエンスの高め方を専門家が解説しています

レジリエンス


レジリエンスの高め方を臨床心理士が解説①

レジリエンスを専門家が解説します

当コラムは「レジリエンス」をテーマに、臨床心理士である森が解説しています。私は心理テストを使って、その人の人となりを描き出す、いわゆる心理アセスメントの仕事をしています。このコラムでは、簡単にはへこたれなくなるコツを解説します。

全部で5コラムあります。しっかりと対策をお伝えしたいので全部で8分程度かかります(^^;ちょっと大変ですが。是非お付き合いください。

へこたれない自分になろう!

怖がってしまう気持ちいきなりですが、このように感じることはありませんか?

・傷つくのが怖くて前に進めない
・大変そうなことは避けたい
・自分には無理だと考えてしまう
・へこたれない強い人間になりたい!

いろいろなことを怖がってしまう気持ち、心細いですよね。

へこたれたりくじけたりする思いはなるべく避けて通りたいのは多くの人の願いです。 “ちょっとやそっとではへこたれない強い人間”になれれば、落ち込みなどの辛い気持ちに陥ることなく、快適に生活できるはずです。心理学の知識を使って、心を強くするにはどのようにしたらいいのか見てみましょう。

全くへこたれなくなる、というのは難しいかもしれませんが、最近の心理学の考え方では、“今よりもへこたれにくくなる”“へこたれても早く立ち直れるようになる”といったことは可能です。

そこで役立つのが「レジリエンス(Resilience)」という言葉です。

レジリエンスは、弾力性、回復力、復元力などといった意味の物理学用語です。イメージで言いますと、ばねの両端を指で押すと、ばねは縮まりますね。指を離すと元の形に戻ります。この「跳ね返して元に戻る力」がレジリエンスです。ばねだけでなく、心にもストレス受けて一瞬へこたれても、また元に戻る力があると考えられているのです。

最近は、レジリエンスのことを「折れない心」「困難な状況から立ち直る心の力」などといった意味で使っています。精神医学の分野では、「精神疾患を予防する力」や「精神疾患に罹患しても回復する力」としてレジリエンスが注目されています。

みなさんの中で、メンタル的にタフで打たれ強いなぁ、と思う人物はいるでしょうか。そういう人には憧れますね。しかし、大事なことは、レジリエンスは誰もが備え持っているということです。子どもの頃、嫌だった歯医者さんも、気づけば何となくやり過ごしてきましたよね?そんなふうに、ストレスを感じても、乗り越えてきた出来事はかなりたくさんあるはずです。生まれ持った性格を変えることは簡単ではありませんが、レジリエンスを鍛えることはできます。

このコラムでは、レジリエンスを強くしたい方やヒントだけでも知っておきたい方のために、レジリエンスについての知識を全5回のコラムで解説していきたいと思います。

レジリエンスが弱いと抑うつ的?

レジリエンスは抑うつと深い関係いくつかの研究によれば、レジリエンスは抑うつと関連が深いとされています。

例えば、思春期158名を対象として、日本で行われた調査があります。いくつかの質問紙を組み合わせて、レジリエンスの強さやストレスの度合い、抑うつの程度、逆境体験の有無、外傷性のストレス症状の有無などを調べたものです。

ここで言う逆境体験とは、地震などの災害や事故、病気、大切な人や家族の死などのことです。その結果、レジリエンスが強いと、幼少期に逆境を体験していても、抑うつの兆候が弱く、逆境を体験した後に精神的な成長がみられました1)。このことは、レジリエンスが弱いと、逆境に直面した時に抑うつが高まってしまう危険性を示していると言えるでしょう。

別の海外の研究ですが、アメリカで起きた9.11のテロの前後でレジリエンスを比較した調査では、レジリエンスの強さと抑うつ症状との間には負の相関がありました2)。これは、レジリエンスが強い人ほど、抑うつ症状が少なかったことを表しています。このことはまた、レジリエンスが弱い人は、大きなストレスを受けた後、抑うつが高まるリスクがあるとも考えられます。

抑うつ以外にも、レジリエンスが弱いと、生活する上で不都合なことが起こってきます。

・ストレスやプレッシャーに弱い
・変化や新しいこと避ける
・諦めやすい
・イライラしやすい
・ 精神的なダメージから中々立ち直れない

などが考えられます。このような状態が慢性化すると、逆境を体験した後の精神的な成長が少なくなり、精神疾患に罹患するリスクが高くなるので、注意が必要なのです。

レジリエンスをチェックしよう!

次の文章が自分に「当てはまる~やや当てはまる~あまり当てはまらない~当てはまらない」で答えてみましょう。

そして
「当てはまる」は3点
「やや当てはまる」は2点
「あまり当てはまらない」は1点
「当てはまらない」は0点
をつけて、合計点を出してください。

レジリエンスチェック表

レジリエンスのチェックを採点しよう!

合計点が19~27点
レジリエンスを発揮しやすい状態

備わっているレジリエンスをうまく引き出すことが得意でしょう。困難や逆境であっても、前向きに取り組める力を持っています。楽観的な捉え方ができ、かつきちんとした計画性をもっている…このバランスが良いほど、へこたれない強さがあると言えるでしょう。

合計点が15~20点
もう少しでレジリエンスを発揮できる状態

備わっているレジリエンスをまだうまく引き出せないことが多いでしょう。困難や逆境だと感じると、諦めてしまうことがあるでしょう。レジリエンスを鍛えることで、諦めないで前に進んでいける力を強化することができます。

合計点が0点~14点
レジリエンスを発揮しにくい状態

備わっているレジリエンスをうまく発揮できないでいる可能性があります。自分に自信がなかったり、完璧主義に陥っていたり、マイナス思考になりやすかったりするかもしれません。簡単に困難や逆境にへこたれてしまうこともあるでしょう。日々のちょっとした工夫の積み重ねで、レジリエンスをたくましくすると、もっと気楽に過ごせるようになるでしょう。

結果は、今レジリエンスを発揮できる状態にあるかどうかの目安です。時間や状況、トレーニング次第で結果は変化しますから、折に触れてチェックするのもいいかもしれません。繰り返しになりますが、レジリエンスは強くすることができますから、自分に取り入れやすい方法からトレーニングしていくとよいでしょう。

原因と解決策について考えよう

レジリエンスが弱い人の原因と解決策は3つレジリエンスのチェック結果はいかがでしたか。レジリエンスが発揮しやすい状態だった方もそうでなかった方も、レジリエンスをうまく引き出せるようになれば、ちょっとしたストレスなら乗り越えていけるはずです。

しかし、もしうまく引き出せない状態にあるならば、その原因を考えてみる必要がありそうです。レジリエンスをうまく引き出せない要因と解決策についてご紹介しましょう。全部読むのは大変なので、当てはまる項目についてリンク先をチェックしてみてくださいね♪

 

①論理療法で冷静な状況把握をする

・客観的な捉え方ができない
レジリエンスが弱い人は、物事の一部だけを強調して、置かれている状況を客観的に把握できない事があります。自分の思い込みで、“これは大変だ、自分には対処できない!”などと決めつけてしまうことも少なくありません。そのため、実は解決策があっても、それに気づけなくなってしまうのが問題です。

・論理療法を活用しよう
冷静かつ客観的な捉え方を養うために論理療法の「ABC理論」をご紹介させていただきます。この論理を知ると「事実」と「自分の考え」を分け状況を整理する力が身に付きます。ストレスが強い状況こそ、適応的で現実的な状況把握をすることが大切です。状況を客観的に捉える事が苦手…という方は、コラム②の解説と練習問題に取り組んでみましょう。

 

②正のストロークで自分を褒める

・ポジティブな面に気づけない
レジリエンスが弱いと、ネガティブな考え方をしがちです。ストレスがふりかかった時に、否定、自責、他罰、落ち込み、諦めなどの考えにとらわれると、何事も前に進みません。無理に楽観的に考えるわけではなく、物事のポジティブな面にも目を向けるよう工夫していくことが大切です。

・正のストロークで鍛えよう
落ち込みやすいタイプの方は、肯定的であたたかみのあるまなざしを自分に向けてみることが大切です。例えば、勉強や仕事、病気、家族関係、友人関係などでストレスを感じた時、「頑張っているね、すごいよ」と自分を褒めたり励ましたりする言動を発したり「大変だけど、そのうち何とかなるさ。終わったらおいしい物でも食べよう」と笑って言ってみたりするユーモアも、れっきとしたレジリエンスの一部です。

コラムでは、正のストロークを応用した心理技法をご紹介します。他者に対して向けられる発言をストロークと言い、その中でも肯定的ストロークを正のストロークと呼びます。この正のストロークを自分に向けてポジティブな面に気づきやすくなる工夫をしていくコツをコラム③で詳しくご紹介していきます。

 

③Iメッセージで気持ちを言葉に

・人に頼ろうとしない
レジリエンスが弱い人は、人や相談機関を使うことに消極的です。困ったらすぐに人に話を聞いてもらおう、とはあまり思わないのです。そうすると、いつまでもひとりでストレスを抱え続けることにもつながります。頼れる人には頼る、というのも立派なレジリエンスです。

・Iメッセージで気持ちを伝えよう
悩みや問題は一人で解決させるだけがレジリエンスではありません。辛い状況では、自分が感じている気持ちと理由を積極的に言葉にして、人を頼りましょう。そして、必要があれば援助を受けることも大切です。

コラムでは、人を頼ることが苦手な人でも周囲を頼りやすくなるIメッセージという発言方法をご紹介します。気持ちを伝えたり会話の糸口がつかみやすくなります。コラム④で練習問題を交えながら詳しくご紹介していきます。

次回はレジリエンスを強くするコツ

レジリエンスでへこたれない心をレジリエンスをうまく発揮できない要因として、主に「置かれている状況を客観的に把握できない」「ポジティブな面に気づけない」「人に頼ろうとしない」が考えられます。次回以降のコラムでは、レジリエンスを強くするためのコツについて解説していきます。内容は以下の通りです。

コラム② レジリエンスを高めるABC理論
コラム③ レジリエンス発揮に効果的な正のストローク
コラム④ レジリエンスを高めるIメッセージ
コラム⑤ レジエンスを高めるポイント

レジリエンスを強くすると、ストレスにすぐにはへこたれなくなり、新しいことにチャレンジしていけるようになります。良好な人間関係を築く力にもつながりますから、社会の中で活躍していく原動力にもなります。これから紹介していくコツがつかんで、レジリエンスを鍛えましょう!

★ レジリエンスは、客観的な視点・ポジティブな捉え方・人に頼る事で高められる
コミュニケーション講座

*出典
1) 藤澤隆史 小島雅彦 2015 逆境経験からの精神的成長を規定する要因の発達学的検討. 発達研究, 29, 95-108.
2) Barbara, L. F. et al. 2003 What good are positive emotions in crises? A prospective study of resilience and emotions following the terrorist attacks on the United States on September 11th, 2011. Journal of Personality and Social Psychology, 84 (2), 365-376.



原因と解決策で鍛えていこう