自己受容ができない…自分を受け入れる,5つの方法
皆さんこんにちは。
公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。私達は現在、こちらの初学者向け心理学講座の講師をしています。
今回のお悩み相談は
「自己受容ができない」
です。
相談者
35歳 女性
お悩みの内容
私の親はいわゆる毒親でした。過干渉で、しつけが厳しく、なにをするにも口を出すタイプでした。普通の家庭では当たり前な暖かい関係を私は体験したことがありません。いつも厳しく批判ばかりされていました。
そのせいか、私は自分をいつも否定してしまう癖があって、今の自分ではいけない!といつも追い立てられている感覚があります。
もうこんな人生には区切りをつけたいと考えています。どうすれば自分を受け入れることができるのでしょうか。簡単でないことはわかりますがヒントが欲しいです。
生まれた時からの否定され続けたことが、今のご自身に大きく影響しているのですね。一度しかない人生です。相談者の方が自己受容できるように、お手伝いさせて頂きます。
当コラムでは、自己受容の原理を解説し、改善策を提案させて頂きます。自分に合いそうなものを日々の生活の中に取り入れてみてください。
自己受容とは
自己受容は我々、カウンセラーの中では極めて重要な言葉です。自己受容には以下の意味があります。
自己のありようをそのまま受け入れること 心理学辞典(1999)
自分自身を、好ましい面も好ましくない面も含めて受け容れること 飯長(2012)
このように自己受容とは、長所、短所、自分の生きてきた道、運命など、プラスマイナス問わず、ありのままの自分を受け入れる感覚を意味します。
自己一致とは何か?
私たちカウンセラーは、心理学者のカールロジャーズが提唱した、自己一致、自己不一致ということばをよく使います。
自己一致とは、理想とする自分と、現実の自分が近い状態です。
自己一致の状態は以下のような特徴があります。
・現実の自分を受け入れている
・過去の自分を受け入れている
・自己肯定感が高い
・自己嫌悪が少ない
・多少のズレはOK
例えば、皆さんは自分の容姿を受け入れているでしょうか?もちろん完璧!と考えている人はいないと思います。もう少し痩せたい、もう少し肌をきれいにしたいこんな理想とする姿があるかもしれません。
それでも、まあまあ満足している、今の現実の自分の容姿も愛嬌があって悪くはない、こんな感覚があれば自己受容できていると考えます。
自己不一致とは何か?
これに対して自己不一致とは、現実の自分と、理想とする自分が、かなりずれている状態になります。
自己不一致の状態は以下のような特徴があります。
・理想と現実の差が大きい
・過去の自分を受け入れていない
・自己嫌悪が大きい
・実現不能な理想を持っている
例えば、肌の色に強いコンプレックスを持っている女性がいたとします。
このように理想と現実が乖離している場合は、自己受容とは程遠い状態になります。肌の色はある程度の変化は可能かもしれないですが、基本的には親から受け継いでいたものです。
そうした本質的な自分を受け入れることができない場合は、いつまでも苦しむことになってしまうのです。
自己受容のための7つのコツ
それでは自己受容はどのように進めていけばいいのでしょうか。ここからは自己受容をするためのコツをお伝えします。具体的には以下の7つのやり方を提案させて頂きます。
・理想を確認する
・人生を幸福にするか確認する
・嘆きの仕事,あきらめる
・名言に触れる
・現実の自分を肯定する
・無条件の肯定を大事に
・受け入れ体験を得る
これらはカウンセリングの中でも実際よく使われる手法です。ご自身の状況に合いそうなものがありましたら参考にしてみてください。
①理想を確認する
繰り返しになりますが、自己受容ができていない方はなんらかの理想像をもっています。まずは自分が何に悩んでいるのかを整理していく必要があります。
悩みの種類は様々なものがありますが、例えば以下のようなものが挙げられます。
・もっと暖かい家庭に生まれたかった
・もっと綺麗な容姿になりたい
・もっと仕事で成功すべき
・もっと社交的な人になりたい
このように、まずは自分がどんな理想を持っているのか?それを確認することからはじめていきましょう。その理想と現実のギャップが多くの場合は、自己受容を妨げている原因になっているのです。
②人生を幸福にするか確認する
先程挙げた理想は大きくわけると2つの性質を持っています。
人生を豊かにする
1つは人生を豊かにする理想です。その理想が実現可能で、前向きに行動するエネルギーになっていれば、そのまま持っておくと良いでしょう。
例えば、もう少し社交的になりたい!という目標はある程度は実現可能です。会話の練習を繰返せば、改善できるものです。このような性質の理想はそのままでもいいかもしれません。
人生を不幸にする
もう1つは人生を不幸にする理想です。例えば、もっと色白に生まれたかった…という悩みはどうでしょうか。肌は遺伝的な要素も多く、現実的には理想の肌色に簡単になれるものではありません。
このような悩みを生涯持ち続けるのはとてもしんどいものです。そこであまりにも、達成不能であり、かつ自分を苦しめるような目標の場合は、理想を修正していく必要があります。
もちろん理想を修正することは容易ではありません。そこでいくつかのやり方をお伝えします。
③嘆きの仕事,あきらめる
嘆きの仕事
理想を修正する作業は大きな心の負担が生じます。カウンセリングの場面では「嘆きの仕事」という言葉を使うこともあります。
例えば、過去にいじめを受けていた人が、その過去を認めることはすごく大変なことです。思い出すだけでもしんどいのに、それを受け入れるとは途方もない作業になります。
ただし本当の意味で自分を受容できるようになるには、なんらかの形で過去と折り合いをつけていかなくてはなりません。
カウンセリング場面では多くの方が涙を流し、そしてどうにかこうにか、理想をあきらめ、現実的に考える作業をしています。
時にあきらめる
あきらめるとは、あきらかにする作業です。自分を不幸にする理想は、どこかで整理しなくてはならないということが明らかになったのです。
理想修正するやり方に正解はありません。例えば、私の同僚の栗本はいじめの体験を元に、今はいじめ撲滅委員会という組織を立ち上げ活動しています。
自分なりに理想を修正し、現実に近づけることが大事になるのです。
④自分を受け入れる系名言に親しむ
自分を受け入れる方法として、自己受容にまつわる思想・名言に触れると効果的という研究もあります。
人生の先輩たちが残してくれた名言に親しみ、それを日常生活でどのように活かすかを考えると、自己受容感が高くなることが分かっています。
先人たちの名言に触れてみたい!と感じる方は下記の折り畳みを展開してみてください。
Sooら(2014)は、大学生 168 名を対象に、自己受容について調査を行いました。具体的には下記のようなトレーニングを被験者たちに行い、効果の検証が行われました。
STEP1
自己受容を高める考え方リストから好きなものを選ぶリストについては以下をご参照ください。試しに皆さんも一度読んでみてください。
STEP2
なぜその考えを選んだのか説明する
STEP3
日常生活でどのように活かすかを考える
このトレーニングを行ったグループと、トレーニングを行わなかったグループで劣等感のレベルを比較しました。その結果が以下のグラフとなります。
このように、自己受容トレーニングを行ったグループの方が、グラフが低くなっていることが分かります。
つまり、トレーニングを受けたグループは自分を受け入れられるようになり、結果的に劣等感が軽減したと考えられます。
ぜひ、ご自身が好きな自分を受け入れる系の思想・名言を探してみてくださいね。
⑤現実の自分を肯定する
理想について折り合いがついてきたら、現実の自分を認めていく作業も大事にしましょう。おススメなのが、自己肯定タイムを作ることです。
私の例ですが、寝る直前は自己肯定タイムにしています。目をつぶって、布団に横たわったら、
今日成長できた点
頑張れた点
うれしかった出来事
楽しかった出来事
を確認して寝るようにしています。これを毎日続けるのです。現実の自分を肯定する習慣をつけると、だんだんと自己受容ができるようになります。自然と睡眠も安定するのがメリットです。
⑥無条件の肯定
もしあなたがうまく自分を肯定できないとしたら「無条件の肯定」を練習する必要があるかもしれません。無条件の肯定とは、
いついかなる時も
成功失敗に関わらず
条件なしに肯定していく
そんな姿勢を意味します。
結果はどうあれなんとかやれている
失敗しても…まあなんとかなるさ
今日もとりあえず健康的に生きていける
挫折も人生の大事な物語
こんな形で、大きな枠組みの中で、失敗も、成功も、全体として自分を認めていく姿勢が大事になります。
自分のことを無条件に肯定できない…という方は下記のコラムを参照ください。
無条件の肯定,ストロークコラム
⑦受け入れ体験を得る
心理学の研究では、人間関係で、暖かい体験を繰り返すと、自尊心が回復していくことがわかっています。
自己受容をしている人は友人関係が充実している傾向があります。吉岡(2000)中高生の男女611名を対象に、友人関係に関する質問調査を行いました。その結果の一部が以下の図です。
このように、自己受容が「高い」と、友人関係の満足感も「高い」という結果が出ています。自分を受け入れる傾向が強い人は、友人関係も楽しくできるのです。
友人関係を建設的に築くことができるようになると、友人からのプラスのフィードバックもたくさんもらえます。その結果、自己受容もしやすくなるのです。
具体例
例えば背が低いことがコンプレックスだった花子さんがいたとします。そして花子さんは、太郎さんを好きになりました。
しかし、運悪く、太郎さんの好みは背が高い人で、花子さんは失恋してしまいました。
背が低い自分が嫌だ…花子さんは余計に劣等感を持っていました。
しかし、時は経ち、花子さんは再び、三郎さんに恋をします。三郎さんは背が低いこと女性が好きでした!そして無事、お互い好きになることができました。
さらには、三郎さんは最初は背が低いことで印象がよく接してくれましたが、最後は背なんてどうでもよくて、一緒にいることが楽しいと言ってくれました。
花子さんは、最初は背が低いことがコンプレックスだったのですが、気にしている部分を他人から受容されることで、「背が低いことへのこだわり」が解消され、自己受容感が改善されることがあります。
この点、もしあなたが所属しているコミュニティが殺伐としていて、
お互いを貶し合う
悪口が多い
徹底した個人主義
このような傾向がある場合、自己受容はしにくい環境と言えます。おススメなのは、
屈託のない話題ができる
お互いを助け合う
暖かい人が多い
このようなコミュニティに、1つは所属しておくことです。お互いを励ましあい、受け入れ合う体験は、きっとあなたの自己受容を育ててくれるはずです。
今所属しているコミュニティは精神的に疲れる…と感じる方は下記のコラムも参照ください。
まとめとお知らせ
まとめ
今回は、自分を受け入れるをテーマに解説していきました。一度しかない人生です。
みなさんが、人生の主人公として、自分自身を大事にしながら、充実した生活をすごされることを願ってやみません(^^)
講座のお知らせ
公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では
・自己肯定感を育てる練習
・自分の短所を長として捉えなおす練習
・無条件の肯定練習
・暖かい人間関係を築くコツ
など練習していきます。興味がある方は下記のお知らせをクリックして頂けると幸いです。是非お待ちしています。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
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出典・参考文献
飯長喜一郎(2012)自己受容,人間性心理学会(編),人間性心理学ハンドブック,p323,創元社
Soo Kim and David Gal(2014)From Compensatory Consumption to Adaptive Consumption: The Role of SelfAcceptance in Resolving Self-Deficits Journal of Consumer Research , Vol. 41, No. 2 (August 2014), pp. 526-542
大鷹円美・浅川紗央里・菅原正和(2011)内的作業モデルが身体醜形イメージに与える影響 第10号 149-155