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自己受容する方法,やり方

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自己受容する方法,やり方

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「自己受容する方法」についてご相談を頂きました。

自己受容ができない

相談者
35歳 女性

お悩みの内容
私の親はいわゆる毒親でした。過干渉で、しつけが厳しく、なにをするにも口を出すタイプでした。やさしくされた記憶、温かい思い出ではほとんどありません。

そのせいか、私は自分をいつも否定してしまう癖があって、今の自分ではいけない!といつも追い立てられています。

もうこんな人生には区切りをつけたいと考えています。どうすれば自分を受け入れることができるのでしょうか。簡単でないことはわかりますがヒントが欲しいです。

生まれた時からの否定され続けたことが、今のご自身に大きく影響しているのですね。一度しかない人生です。相談者の方が自己受容できるように、お手伝いさせて頂きます。

当コラムでは、自己受容の原理を解説し、改善策を提案させて頂きます。自分に合いそうなものを日々の生活の中に取り入れてみてください。

自己受容とは

自己受容は、我々カウンセラーの中では極めて重要な言葉です。自己受容には以下の意味があります。

自己のありようをそのまま受け入れること(心理学辞典, 1999)[1]

自分自身を、好ましい面も好ましくない面も含めて受け容れること(飯長, 2012)[2]

このように自己受容とは、長所、短所、自分の生きてきた道、運命など、プラスマイナス問わず、ありのままの自分を受け入れる感覚を意味します。

自己一致とは何か?

私たちカウンセラーは、心理学者のカール・ロジャーズ (Rogers, C.R.) が提唱した、自己一致、自己不一致ということばをよく使います。自己一致とは、理想とする自分と、現実の自分が近い状態です。

自己受容 理想と現実一致

自己一致の状態は以下のような特徴があります。
・現実の自分を受け入れている
・過去の自分を受け入れている
・適度にチャレンジをしている

例えば、皆さんは自分の容姿を受け入れているでしょうか?もちろん完璧!と考えている人はいないと思います。もう少し痩せたい、もう少し肌をきれいにしたい、など理想とする姿があるかもしれません。

それでも、まあまあ満足している、今の現実の自分の容姿も愛嬌があって悪くはない、こんな感覚があれば自己受容できていると考えます。

自己不一致とは何か

これに対して自己不一致とは、現実の自分と、理想とする自分が、かなりずれている状態になります。

自己受容 理想と現実不一致

自己不一致の状態は以下のような特徴があります。
・実現不能な理想を持っている
・過去の自分を受け入れていない
・目標が高すぎてやる気がでない

例えば、肌の色に強いコンプレックスを持っている女性がいたとします。

自己受容 肌

このように理想と現実が乖離している場合は、自己受容とは程遠い状態になります。肌の色はある程度の変化は可能かもしれないですが、基本的には遺伝によって親から受け継いだものです。

そうした本質的な自分を受け入れることができない場合は、いつまでも苦しむことになってしまうのです。

自己受容と心理学研究

自己受容ができないと様々なメンタルヘルス上の問題が起こります。興味があるタイトルの折り畳みをクリックしてみてください。

自己受容と友人関係の満足度研究

吉岡(2000)[3]は、中高生の男女611名を対象に、友人関係に関する質問調査を行いました。その結果の一部が以下の図です。

自己受容 友人

このように、自己受容が高いと、友人関係の満足感も高いという結果が出ています。自分を受け入れる傾向が強い人は、友人関係も楽しくできるのです。

友人関係を建設的に築くことができるようになると、友人からのプラスのフィードバックもたくさんもらえます。その結果、自己受容もしやすくなるのです。

身体的な特徴の満足と自己受容研究

田場ら(1995)[4]は、大学生352名を対象に、身体像と自己受容について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。

自己受容 身体満足

このように、自分の体への満足度が増えると、自己受容が高いという結果になっていました。自分の体は、運動神経、容姿など、自分だけの唯一無二のものです。その体について、感謝をしたり、長所を見出していくことが大事と言えそうです。

自尊心と自己受容研究

川崎ら(2006)[5]は、大学生267名を対象に、自己受容の視点から自己愛と自尊心の違いについて研究を行いました。その研究の一部が以下の図です。

自己受容 自尊心

このように、自己受容が高い方は、自尊心も強い傾向にあることが分かりました。自分を受け入れられる人ほど、自分を大切に思う気持ちが強くなると言えそうです。

対人恐怖と自己受容研究

川崎ら(2006)[5]は、大学生267名を対象に、自己受容の視点から自己愛と自尊心の違いについて研究を行いました。その研究の一部が以下の図です。

自己受容 対人恐怖

このように、自己受容が高い方は、対人恐怖が少ない傾向にあることが分かりました。ありのままの自分を受け入れることで、対人場面での失敗にオープンになり、人への恐怖が緩和されると考えられます。

対人恐怖と自己受容研究

伊藤(2006)[6]の研究では、大学生、大学院生73 名を対象に自己受容と優柔不断について調べました。その結果の一部が以下の図です。

自己受容 人間不信

このように、自己受容が高い方は、人間不信が低いという結果となりました。自分を受け入れることは、他人を受け入れる、信頼することにもつながる可能性があります。

 

自己受容のための方法

それでは自己受容はどのように進めていけばいいのでしょうか。ここからは自己受容をするためのコツをお伝えします。具体的には以下の10の方法を提案させて頂きます。

①理想を確認する
②人生を幸福にするか確認する
③嘆きの仕事
④あきらめる選択肢を持つ
⑤名言に触れる
⑥現実の自分を肯定する
⑦無条件の肯定を大事に
⑧アサーショントレーニング
⑨暖かいコミュニティに所属
⑩日記を書く

これらはカウンセリングの中でも実際よく使われる手法です。ご自身の状況に合いそうなものを組み合わせて活用してみてください。

①理想を確認する

繰り返しになりますが、自己受容ができていない方は、現実とは異なるなんらかの理想像をもっています。まずは自分の悩みを生み出す、「理想が何か」を発見しいくところから始めていきましょう。

例えば以下のようなものが挙げられます。

もっと暖かい家庭に生まれたかった
もっと綺麗な容姿になりたい
もっと仕事で成功すべき
もっと社交的な人になりたい

これらの理想像を自覚できたら、自己受容の第一歩です。自己受容をするためには、発見した理想と現実を如何に近づけるかがカギになります。あなたはその最初の入り口に立てたことになるのです。

②人生を幸福にするか確認する

先程挙げた理想は大きくわけると2つの性質を持っています。

人生を豊かにする
1つは人生を豊かにする理想です。その理想が実現可能で、前向きに行動するエネルギーになっていれば、そのまま持っておくと良いでしょう。

例えば、もう少し社交的になりたい!という目標はある程度は実現可能です。会話の練習を繰返せば、改善できるものです。前向きな活動につながる理想は、そのまま大事にしておきましょう。

人生を不幸にする
もう1つは人生を不幸にする理想です。例えば、もっと色白に生まれたかった…という悩みはどうでしょうか。肌は遺伝的な要素も多く、現実的には理想の肌色に簡単になれるものではありません。

このような悩みを生涯持ち続けるのはとてもしんどいものです。そこで、あまりにも達成不能であり、かつ自分を苦しめるような目標の場合は、理想を修正していく必要があります。

もちろん理想を修正することは容易ではありません。そこでいくつかのやり方をお伝えします。

自己受容のやり方

 

③嘆きの仕事

理想を修正する作業は大きな心の負担が生じます。カウンセリングの場面では「嘆きの仕事」という言葉を使うこともあります。

例えば、過去にいじめを受けていた人が、その過去を認めることはすごく大変なことです。思い出すだけでもしんどいのに、それを受け入れることは途方もない作業になります。

カウンセリング場面では多くの方が涙を流し、そしてどうにかこうにか自分と向き合った結果、過去と折り合いがつけられ、自己受容を一歩進めることができるのです。

タイミングは人それぞれですが、自分と本気で向き合うという選択肢も視野に入れておきましょう。

 

④あきらめる選択肢

あきらめるとは、あきらかにする作業です。自分を不幸にする理想は、どこかで整理しなくてはならないということが明らかになったのです。

理想修正するやり方に正解はありません。例えば、私の同僚の栗本は、いじめの体験を元に、今はいじめ撲滅委員会という組織を立ち上げ活動しています。

自分なりに理想を修正し、現実に近づけることが大事になるのです。

嘆きの仕事

 

⑤名言に触れる

自分を受け入れる方法として、自己受容にまつわる思想・名言に触れると効果的という研究もあります。人生の先輩たちが残してくれた名言に親しみ、それを日常生活でどのように活かすかを考えると、自己受容感が高くなることが分かっています。先人たちの名言に触れてみたい!と感じる方は下記の折り畳みを展開してみてください。

名言と自己受容研究の実際

Kimら(2014)[7]は、大学生 168 名を対象に、自己受容について調査を行いました。具体的には下記のようなトレーニングを被験者たちに行い、効果の検証が行われました。

STEP1
自己受容を高める考え方リストから好きなものを選ぶ

リストについては以下をご参照ください。試しに皆さんも一度読んでみてください。
自己受容を高める考え方リスト

STEP2
なぜその考えを選んだのか説明する

STEP3
日常生活でどのように活かすかを考える

このトレーニングを行ったグループと、トレーニングを行わなかったグループで劣等感のレベルを比較しました。その結果が以下のグラフとなります。

このように、自己受容トレーニングを行ったグループの方が、劣等感が低くなっていることが分かります。

つまり、トレーニングを受けたグループは自己受容できるようになり、結果的に劣等感が軽減したと考えられます。ぜひ、ご自身が好きな思想・名言を探してみてくださいね。

 

⑥現実の自分を肯定する

理想について折り合いがついてきたら、現実の自分を認めていく作業も大事にしましょう。おススメなのが、自己肯定タイムを作ることです。これはポジティブ心理学という分野でも推奨されています。

私の例ですが、寝る直前は自己肯定タイムにしています。目をつぶって、布団に横たわったら、

今日成長できた点
頑張れた点
うれしかった出来事
楽しかった出来事

を確認して寝るようにしています。これを毎日続けるのです。現実の自分を肯定する習慣をつけると、だんだんと自己受容ができるようになります。自然と睡眠も安定するのがメリットです。

⑦無条件の肯定 

もしあなたがうまく自分を肯定できないとしたら「無条件の肯定」を練習する必要があるかもしれません。無条件の肯定とは、

いついかなる時も
成功失敗に関わらず
条件なしに肯定していく

そんな姿勢を意味します。

結果はどうあれなんとかやれている
失敗しても…まあなんとかなるさ
今日もとりあえず健康的に生きていける
挫折も人生の大事な物語

こんな形で、大きな枠組みの中で、失敗も、成功も、全体として自分を認めていく姿勢が大事になります。自分のことを無条件に肯定できない…という方は下記のコラムを参照ください。

無条件の肯定,ストロークコラム

⑧アサーショントレーニング 

現在、心理療法の1つとしてアサーショントレーニング(以下AT)が注目されています。ATとは、「アサーティブコミュニケーション」という自他尊重のコミュニケーションを目指すもので、相手の意見を尊重しながら自己主張するための練習を行っていきます。

安達ら(2019)[8]は、大学生88名を対象にATを行いました。その結果の一部が下図となります。


自己承認とは、自己受容に近い概念です。つまり、アサーティブコミュニケーションの訓練は、自己受容にもつながるのです。自分を受け入れるには、自分の意見を大事に主張する練習をすることが有効と言えます。

アサーティブコミュニケーションの基礎

 

⑨温かいコミュニティに所属 

心理学の研究では、人間関係で暖かい体験を繰り返すと、自尊心が回復していくことがわかっています。

背が低いコンプレックスのある花子さんの例

具体例

例えば背が低いことがコンプレックスだった花子さんがいたとします。そして花子さんは、太郎さんを好きになりました。

しかし運悪く、太郎さんの好みは背が高い人で、花子さんは失恋してしまいました。

背が低い自分が嫌だ…花子さんは余計に劣等感を持っていました。自分を受け入れることができない,体のコンプレックス

しかし時は経ち、花子さんは再び恋をします。花子さんが好きになった三郎さんは、背が低い女性がタイプでした!そして無事、お互い好きになることができました。

さらに、三郎さんは最初は背が低いことで印象がよく接してくれましたが、最後は背なんてどうでもよくて、一緒にいることが楽しいと言ってくれました。

自分を受け入れる,受容体験

花子さんは、最初は背が低いことがコンプレックスだったのですが、気にしている部分を他人から受容されることで、「身長へのこだわり」が解消され、自己受容感が改善されることがあります。

 

この点、もしあなたが所属しているコミュニティが殺伐としていて、

お互いを貶し合う
悪口が多い
徹底した個人主義

このような傾向がある場合、自己受容はしにくい環境と言えます。おススメなのは、

気楽な会話ができる
お互いを助け合う
暖かい人が多い

このようなコミュニティに、1つは所属しておくことです。お互いを励ましあい、受け入れ合う体験は、きっとあなたの自己受容を育ててくれるはずです。

今所属しているコミュニティは精神的に疲れる…と感じる方は下記のコラムも参照ください。

暖かいコミュニティの探し方

⑩日記を書く

益子(2010)[9]の研究では大学生163名を対象に、本来感について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。

自分らしさ 内省傾向


自己反省ができる人ほど、本来の自分らしさが芽生えることが示唆されています。自己を理解し、向き合うことが、自己の本質を発見する重要な鍵です。

おすすめなのは日記をつけることです。日記を書くことで、自己受容が深まります。喜びを感じる瞬間や、気分を落ち込ませる要因など、日々の出来事を振り返ることで、自分の傾向や感情に気づくことができます。

日記を続けることで、自己への理解が深まります。自分を客観的に見つめ、より自分らしさを発見していくことができるでしょう。

まとめ

今回は、自分を受け入れるをテーマに解説していきました。一度しかない人生です。みなさんが、人生の主人公として、自分自身を大事にしながら、充実した生活をすごされることを願ってやみません(^^)

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・自己受容感を増やす練習
・理想の見直し,目標設定のコツ
・短所を長所に,リフレーミング練習
・ありのままの自分で人間関係を築くコツ

🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^) 

自己受容する方法,やり方,心理学講座

助け合い掲示板

2件のコメント

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    • はなまる
    • 2024年6月21日 9:54 PM

    自己肯定感が低くなっていたのでとても勉強になりました。早速今晩実践してみます^^

    返信する
    • A
    • 2021年9月11日 8:44 PM

    初めてなのですが、自己受容についてコメントします。

    私は、自分の失敗や自分への落胆が怖く、働くことへの行動ができていません。

    ですが、行動を起こす力になるのは「そういった自分も受け入れられる自分になること」だと思っています。
    学問としての心理学(自己受容)を学び実践したいので、自己受容の本やワークなどをご存知でしたら教えて頂きたいです。

    よろしくお願いいたします。

    返信する

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] 中島 義明・子安 増生・繁桝 算男・箱田 裕司・安藤 清志 (1999).  心理学辞典  有斐閣
 
[2] 飯長 喜一郎 (2012). 自己受容 人間性心理学会(編)人間性心理学ハンドブック  (p. 323)  創元社
 
 
[4] 田場 あゆみ・倉戸 ヨシヤ (1995). 青年期後期における身体像と自己受容, 他者受容との関係について  大阪市立大学生活科学部紀要, 43, 225-236.
 
[5] 川崎 直樹・小玉 正博 (2006). 自己に対する受容的認知のあり方から見た自己愛と自尊心の相違性 心理学研究, 80, 527-532.
 
[6] 伊藤 涼(2006).大学生の優柔不断と自己受容感との関連について 愛知淑徳大学大学院心理医療科学研究科修士論文抄録集 9号, p. 25-26.
 
[7] Kim, S., & Gal, D. (2014). From Compensatory Consumption to Adaptive Consumption: The Role of SelfAcceptance in Resolving Self-Deficits. Journal of Consumer Research, 41, 526-542.
 
[8] 安達 知郎・安達 奈緒子 (2019). 大学新入生に対するアサーション・トレーニングの効果 教育心理学研究, 67, 317-329. 
 
[9] 益子洋人(2010).大学生の過剰な外的適応行動と内省傾向が本来感におよぼす影響 学校メンタルヘルス13巻1号