みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。
このコラムは、アサーティブコミュニケーションシリーズの3本目です。「価値観ワーク」をテーマに解説していきます。
価値観ワークとは、人生で大切にしているもの(価値観)に順位をつけ、グループで話し合って擦り合わせることで、互いの価値観を尊重しながら主張し、譲り合う力を育てるワークのことです。学校の授業や企業研修で、アサーションの導入として使われています。
今回は、教育者やトレーナーの方に向けて、価値観ワークの準備と進め方、振り返りのポイントを解説します。目次は以下の通りです。
①価値観ワークとは
価値観ワークは、「正解のない話し合い」を体験することで、アサーションの大切さを実感してもらうワークです。まずは、そのねらいを確認しましょう。
正解のない話し合い
価値観には、正解も、決まった順位もありません。そのため、グループで一つの順位を決めようとすると、意見がぶつかったり、誰かが黙って合わせたりする場面が自然に生まれます。
このワークでは、そうした場面を実際に体験し、後から振り返ることで、自分の自己表現のくせに気づいてもらいます。
ワークのねらい
自分の価値観を言葉にして主張する
相手の価値観を尊重し、聞く
お互いに少しずつ譲り合う
発言しにくい人に声をかける
自己表現の3つのタイプ(攻撃的・非主張的・アサーティブ)については、シリーズ6本目の3つの自己表現タイプとはで解説しています。ワークの前に紹介しておくと、振り返りがしやすくなります。
②準備するもの
価値観ワークは、特別な道具がなくても実施できます。対象に合わせて、テーマとなる価値観の言葉を選んでおきましょう。
人数と時間の目安
人数:1グループ4〜6人
時間:全体で30〜40分程度
用意:黒板やホワイトボード、記入用の紙
テーマとなる価値観
次の5つの言葉を、黒板や研修シートに書き出します。対象に合わせて選んでください。
大人向け:愛、仕事、お金、自由、遊び
子ども向け:家族や友達、お小遣い、遊ぶ時間、勉強、食事

③進め方4ステップ
価値観ワークは、個人で考える、チームで話し合う、発表する、振り返る、の4つのステップで進めます。
ステップ1 個人で順位をつける
まず、一人ひとりに、5つの価値観に順位をつけてもらいます。指導者は次のように伝えます。
「あなたの人生で大切だと思う順に、5つに順位をつけてください。」
ステップ2 チームで話し合う
次に、グループでお互いの順位を発表し合い、チームとしての順位を決めてもらいます。時間は10分程度で十分です。
「それでは、お互いの価値観を発表し合い、チームとしての順位を決めていきましょう。」
ステップ3 結果を発表する
話し合いが終わったら、チームごとに結果を発表してもらいます。結論が出なかったチームがあっても、叱ることはしません。なぜ決まらなかったのかを、温かく聞いてみましょう。
ステップ4 種明かしと振り返り
最後に、ワークの本当のねらいを伝えます。
「実は、このワークは結論を出すことが目的ではありません。本当のねらいは、次の5つの視点にありました。」
その後、次の章の「振り返りの5つの視点」を読み上げ、各チームで話し合いを振り返ってもらいます。

④振り返りの5つの視点
振り返りでは、話し合いの「結果」ではなく、「話し合い方」に目を向けます。次の5つの視点で、チームの話し合いを見直してもらいましょう。
5つの視点
①結論が出なくても正解:価値観に順位はつけられない
②全員の意見が入っているか:偏りがないかを見る
③それぞれ譲り合えたか:少しずつ歩み寄れたか
④全く主張しない人はいなかったか
⑤主張できない人に声をかけたか
視点の解説
①は、このワークで最も大切な気づきです。価値観の違いがあるときは、無理に片方が合わせるのではなく、違いを認め合えればそれで十分です。
②〜⑤は、アサーティブな話し合いができていたかを確かめる視点です。意見が偏っていた場合は、主張しすぎた人がいなかったか、主張できなかった人がいなかったかを、責めるのではなく、次に生かすために振り返ります。
⑤効果を高めるコツ
価値観ワークの効果を高めるために、指導者が意識しておきたいポイントを紹介します。
導入に使う
価値観ワークは、アサーションの講義の導入に最適です。いきなり講義に入るよりも、最初に簡単なワークを行うと場が和み、その後の講義が理解されやすくなります。
繰り返し実施する
ワークは、繰り返し行っても効果があります。1回目で強く主張しすぎた人は、次は聞く役を意識する、主張できなかった人は、次は1つ意見を言ってみる、など、自分なりの目標を立てて再挑戦してもらいます。
指導者は見守る
価値観ワークでは、指導者の介入は最低限にします。大切なのは、参加者自身が体験から学ぶことです。最低限の説明をしたら、あとは参加者が自分たちで乗り越えていけるよう見守りましょう。
配慮が必要な場面
家族やお金などのテーマは、参加者の家庭の事情に触れることがあります。話したくないことは話さなくてよいと最初に伝え、個人の価値観を評価したり、からかったりしないルールを共有しておきましょう。
⑥よくある質問Q&A
私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。
⑦まとめ
価値観ワークは、正解のない話し合いを体験し、振り返ることで、主張する、聞く、譲り合う力を育てるワークです。結論より、話し合いの過程に目を向けることが大切です。
今回のポイント
価値観に正解はなく、結論が出なくてもよい
個人→チーム→発表→振り返りの4ステップで進める
振り返りは5つの視点で、責めずに行う
指導者は介入を最小限にして見守る
日常生活では、価値観の違いからお互いに譲れず、不満がたまっていくことがあります。価値観ワークで、違いを当たり前として尊重する体験を、ぜひ学校や職場で取り入れてみてください。
シリーズの他のコラム
アサーティブコミュニケーションシリーズでは、基本の考え方から、断り方、研修で使えるワークまでを解説しています。あわせてご覧ください。
しっかり身につけたい方へ
アサーティブコミュニケーションは、公認心理師による講座で、実際に学ぶことができます。内容は以下のとおりです。
・アサーション権を学ぼう
・価値観ワークを実際に体験
・アイメッセージ実践練習
・DESC法,自己主張訓練
講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
講座の日程が合わない方や、自分のペースで学びたい方は、個別レッスンのご相談も受け付けています。
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連




