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断りワーク

アサーティブトレーニング大人向け

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは、アサーティブコミュニケーションシリーズの5本目です。「大人向けの断りワーク」をテーマに解説していきます。

大人向けの断りワークとは、職場や日常で起こりやすい「断りにくい場面」を設定し、DESC法などのアサーションの技法を使って、相手を尊重しながら断る練習をロールプレイで行うワークのことです。企業研修や市民講座で取り組めます。

今回は、研修担当者やトレーナーの方に向けて、大人向け断りワークの準備と進め方、解答例を解説します。目次は以下の通りです。

目次

①断りワーク大人編とは

大人向けの断りワークは、実際の職場で起こりそうな場面を使い、段階を追って主張する練習をするワークです。まずは、ねらいと前提となるスキルを確認しましょう。

ワークのねらい

大人になると、立場や人間関係への配慮から、本当は無理な頼みでも引き受けてしまうことがあります。断りワークでは、相手を責めずに、自分の状況や気持ちを伝える練習を、安全な研修の場で行います。

前提となるスキル

このワークは、次の技法の基礎知識を前提にしています。始める前に、それぞれの内容を簡単に振り返っておきましょう。

DESC法(段階的主張法)

アイメッセージ

感謝とセット法

②準備と事例

ワークの前に、教材と事例を用意します。研修担当者が解説とお手本を見せておくと、参加者が取り組みやすくなります。

教材をつくる

練習したい技法を選び、その説明と例を載せた簡単な教材を用意します。当サイトでもサンプル教材を作成しました。自由に加工してお使いください。

サンプル教材:断り方ワーク

事例を設定する

次のような、少し言いにくい場面を事例として示します。

皆さんは会社の同僚です

4人で高級な飲み屋に行くことになりました

あなたは体調が悪く、お茶とお通ししか食べていません

会計は割り勘で、1人あたり8,000円になりました

断りワーク,大人向けの事例

③ワークの進め方

ワークは、グループづくり、ロールプレイ、フィードバック、役割交代の流れで進めます。

グループと役割を決める

4人グループを作る

幹事役と断り役を決める

1分ほど普通に雑談してから始める

幹事役が「会計は1人8,000円です」と伝える

ロールプレイを始める

研修担当者は、次のように宣言します。

「それでは、飲み会も終盤です。幹事役の方、会計をお願いします。断り役の方は、DESC法を使って伝えてみましょう。」

参加者はそれぞれ実践し、研修担当者は温かく見守ります。

フィードバックする

ロールプレイが終わったら、次の4段階で伝えられていたかを、グループで確認します。

D(描写):事実を客観的に伝えたか

E(表現):自分の気持ちを伝えたか

S(提案):具体的な案を出したか

C(結果):相手の返事に応じた答えを用意できたか

役割を交代する

1人ずつ断り役を交代し、全員が練習できるように回します。前の人と同じフレーズをそのまま使うのではなく、自分の言葉で言い換えるよう促しましょう。

④解答例

ワークの最後に、解答例を紹介します。参加者が自分で考えた後に、解答例を開いて確認できるようにしています。

DESC法での解答例

解答例を見る

D(描写):「私、実はウーロン茶とお通ししか頼んでいなくて、1,000円分くらいしか食べていないんです。」

E(表現):「そのままのお支払いは、私には少し負担が大きいです…。」

S(提案):「今回は少し調整していただけると助かります。」

C(結果):相手がYESなら「ありがとうございます。今度私が多く食べたときは、多めに払いますね。」、NOなら「そうですか…申し訳ないのですが、今回は2,000円とさせてください。」

解答例のポイント

Dでは、「ずるい」などの評価を入れず、食べた量という事実だけを伝えています。Eで自分の気持ちを伝え、Sで具体的な提案をすることで、相手も応じやすくなります。Cでは、相手の返事がYESでもNOでも、関係を壊さない言い方を用意しています。

アサーティブ,断り

⑤研修で効果を高める

大人向けの研修では、参加者が安心して練習できる雰囲気づくりが、効果を大きく左右します。

安心して失敗できる場に

ロールプレイは、上手にできることより、試してみることが大切です。最初に「うまくできなくて当たり前」「笑ったり評価したりしない」というルールを共有し、安心して失敗できる場をつくりましょう。

職場に近い事例を使う

慣れてきたら、「定時直前の仕事の依頼」「休日の連絡」など、参加者の職場で実際に起こりやすい場面を事例にすると、学んだことを日常で使いやすくなります。

立場の違いに配慮する

上司と部下が同じグループになると、本音で練習しにくいことがあります。可能であれば、立場の近い人どうしでグループをつくりましょう。また、断ることが難しいハラスメントの問題は、ワークで扱うのではなく、相談窓口につなぐことを伝えておくことも大切です。

振り返りの質問例

ロールプレイの後は、次のような質問で、参加者自身に気づきを言葉にしてもらうと、学びが深まります。

断る前と後で、気持ちはどう変わりましたか?

相手役は、どの言葉で受け入れやすくなりましたか?

職場で使うとしたら、どの場面で使えそうですか?

研修担当者が答えを示すより、参加者どうしで良かった点を伝え合う方が、自信につながりやすくなります。

⑥よくある質問Q&A

私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。

参加者が恥ずかしがる時は?

大人の研修では、ロールプレイに恥ずかしさを感じる方が少なくありません。最初に研修担当者がお手本を見せ、少し大げさに演じてみると、場の緊張がほぐれやすくなります。また、いきなり全員の前で発表するのではなく、まずは2人組や少人数で練習してから、グループで行うと取り組みやすくなります。役になりきれない方には、最初は観察役として参加してもらい、他の人のやりとりを見て良かった点を伝えてもらうのも一つの方法です。「うまくできなくて当たり前」と最初に伝え、挑戦した人を拍手で認める雰囲気をつくることも効果的です。

DESC法以外の技法でもできますか?

はい、できます。このワークは、練習したい技法に合わせて内容を変えることができます。例えば、アイメッセージだけを使って断る練習や、感謝とセット法で断る練習も効果的です。初めての参加者が多い場合は、シンプルなアイメッセージや感謝とセット法から始め、慣れてきたらDESC法に進むと、段階的に身につけやすくなります。複数の技法を学んだ後は、同じ事例を別々の技法で断り比べてみると、場面に合った技法を選ぶ力もついていきます。事例も、技法に合わせて選び直してみてください。

研修の時間はどれくらい必要ですか?

説明とお手本に10〜15分、ロールプレイと交代に20分ほど、振り返りと解答例の紹介に10分ほどを見ておくと、全体で45〜60分程度で実施できます。時間が限られている場合は、1つの技法と1つの事例に絞ると、短い時間でも充実した練習になります。半日や1日の研修では、価値観ワークなどと組み合わせて、アサーションの考え方から実践まで段階的に進めるのもおすすめです。逆に時間に余裕がある場合は、事例を変えて2回目を行うと、1回目の振り返りを生かした練習ができ、より身につきやすくなります。

⑦まとめ

大人向けの断りワークは、職場で起こりやすい場面を使い、DESC法などで段階を追って主張する練習をするワークです。安心して失敗できる場をつくることが、効果を高めるポイントです。

今回のポイント

前提となる技法を振り返ってから始める

事例は少し言いにくい、身近な場面にする

フィードバックはDESCの4段階で確認する

安心して失敗できるルールを最初に共有する

社員がお互いを尊重しながら意見を伝えられるようになると、風通しの良い職場づくりにもつながります。ぜひ、社内研修などに活用してみてください。

シリーズの他のコラム

アサーティブコミュニケーションシリーズでは、基本の考え方から、断り方、研修で使えるワークまでを解説しています。あわせてご覧ください。

アサーティブコミュニケーションとは|基本を解説

断り方のコツ|感謝とセット法

価値観ワークとは|アサーティブトレーニング

断り方の練習法|教師向けアサーティブトレーニング

3つの自己表現タイプとは|自分の伝え方を知る

DESC法とは|アサーティブな伝え方の手順

しっかり身につけたい方へ

アサーティブコミュニケーションは、公認心理師による講座で、実際に学ぶことができます。内容は以下のとおりです。

・アサーション権を学ぼう

・断りワークを実際に練習

・アイメッセージ実践練習

・DESC法,自己主張訓練

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)

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講座の日程が合わない方や、自分のペースで学びたい方は、個別レッスンのご相談も受け付けています。

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

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