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アサーティブコミュニケーション

アサーションとは?意味,トレーニング方法

アサーティブコミュニケーション(アサーション)とは、自分の気持ちや考えを正直に、その場にふさわしい方法で伝え、同時に相手の気持ちや考えも大切にするコミュニケーションのことです。1950年代のアメリカで行動療法の技法として生まれ、現在は職場や学校など、さまざまな場面で学ばれています。

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史です。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。当コラムのテーマは「アサーティブコミュニケーション(アサーション)」です。

川島達史,公認心理師,精神保健福祉士

アサーティブコミュニケーションは、わかりやすく実践的なので、初学者がとても学びやすい心理療法です。人間関係の入門として、是非ご活用ください。目次は以下の通りです。

目次

①アサーションとは

アサーションは、自分も相手も大切にする自己表現です。まずは、その意味と、基本となる3つの自己表現の考え方を確認しましょう。

アサーションの意味

日本にアサーションを紹介した心理学者の平木[1]は、アサーションを次のように説明しています。

自分の気持ち,考え,信念などを正直に,素直にその場にふさわしい方法で表現し,そして相手が同じように発言することを奨励しようとする対人関係のあり方

アサーションを身につけるためのトレーニングは「アサーション・トレーニング」と呼ばれ、心理療法やコミュニケーションスキルの学習として用いられています。

3つの自己表現

アサーションでは、人の自己表現を、自分を優先して相手を軽く扱う「攻撃的な表現」、自分を抑えて相手を優先する「非主張的な表現」、自分も相手も大切にする「アサーティブな表現」の3つに分けて考えます。

自分がどのタイプになりやすいかは、場面によっても変わります。3つのタイプの特徴やセルフチェックは、シリーズ6本目の3つの自己表現タイプとはで詳しく解説しています。

②アサーションの歴史

アサーションは、1940〜50年代のアメリカで行動療法の技法として生まれ、1970年代の権利運動をきっかけに、社会に広く広がりました。

行動療法から始まる

アサーションの源流は、行動療法家のアンドリュー・ソルターが1949年に出版した『条件反射療法』[2]にあるとされています。ソルターは、自分の気持ちを素直に表現できないことが、心の問題につながると考えました。

1950年代には、精神科医のジョセフ・ウォルピ[3]が、自己表現が苦手な人のための訓練法として、主張訓練(アサーティブ・トレーニング)を行動療法に取り入れました。その後しばらくは、医療やカウンセリングの分野を中心に発展しました。

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権利運動と広がり

アサーションが爆発的に広がったのは1970年代です。当時のアメリカでは、人種差別や性差別をなくし、人権を守ろうとする動きが高まっていました。そんな中、アルベルティとエモンズの『Your Perfect Right(あなたの完全な権利)』[4]がベストセラーになります。

この本をきっかけに、アサーティブコミュニケーションは、医療だけでなく、教育、福祉、産業などの分野にも広がっていきました。

ユアーパーフェクトライト

日本での広がり

日本では、1990年代に心理学者の平木典子らがアサーションを紹介しました。現在では、企業研修、市民講座、ハラスメント防止、学校での人間関係づくりなど、さまざまな場面で活用されています。

③5つのアサーション権

平木[1]は、人間関係を築くうえで、誰もが持っている基本的な権利として「アサーション権」をまとめています。人間関係における憲法のようなものです。

5つの権利

尊重される権利:一人の人間として大切にされる

自分の行動を決める権利:頼みを断ることもできる

過ちをおかす権利:人は完璧ではなく、失敗してもよい

不平等を訴える権利:不当な扱いには声をあげてよい

主張しない自由:あえて主張しないことも選べる

「主張しない自由」は、特に大切です。身の危険がある場面などでは、無理に自己主張しなくてかまいません。自分を守るために、主張しないことを選んでもよいのです。

相手も同じ権利を持つ

アサーション権は、自分が持っていると同時に、相手も持っているという点が重要です。自分が断る権利を持つように、相手にも断る権利があります。自分も他人も互いに尊重し合う姿勢が、アサーションの土台となるのです。

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④代表的な5つの技法

アサーションには、日常ですぐに使える技法がいくつもあります。ここでは代表的な5つを、言葉の例とともに紹介します。気になる技法は、詳しいコラムも参照してください。

アイメッセージ

主語を「私」にして、自分の気持ちとして伝える方法です。「あなたは〜だ」と言うより、責める印象がやわらぎます。詳しくはアイメッセージの意味とやり方を参照してください。

言葉の例:「今の言葉、私は少し傷ついたかも…」

DESC法

描写(Describe)、表現(Express)、提案(Specify)、結果(Consequences)の4段階で、順を追って主張する方法です。詳しくはシリーズ7本目のDESC法とはで解説しています。

言葉の例:「今日は1年前からの約束があって…(描写)困ったな…(表現)別の日ならどうですか?(提案)」

感謝とセット法

断る前に、誘ってくれたことや頼ってくれたことへの感謝を伝える方法です。相手の気持ちを大切にしながら断ることができます。詳しくはシリーズ2本目の感謝とセット法で解説しています。

言葉の例:「誘ってくれてありがとう。ただ、今日は外せない予定があって…」

壊れたレコード法

しつこい誘いや要求に対して、同じ言葉を落ち着いて繰り返す方法です。理由を変えたり言い訳を重ねたりせず、同じ答えを繰り返すことで、相手があきらめやすくなります。

言葉の例:「すみません、今日はどうしても予定があって…」(繰り返す)

限界設定

「ここまではOK、ここから先はNG」という線を、あらかじめ自分の中で決めておく方法です。判断に迷う場面が減り、落ち着いて伝えやすくなります。詳しくは限界設定のやり方を参照してください。

例:残業に応じるのは週2回まで、飲み会は22時に帰る

⑤練習してみよう

ここからは、紹介した技法を使って練習してみましょう。場面を読んで、自分ならどう伝えるかを考えた後に、回答例を開いて確認してください。

練習1 急な仕事の依頼

定時の直前に、同僚から「この資料、今日中に一緒に仕上げてくれない?」と頼まれました。あなたは今日、家族との約束があります。

練習1の回答例

感謝とセット法とアイメッセージを組み合わせると、次のように伝えられます。

「頼ってくれてありがとう。手伝いたい気持ちはあるんだけど、今日は家族との約束があって、私は抜けられないんだ。明日の朝なら30分手伝えるけど、どうかな?」

断るだけでなく、自分にできる代わりの案を添えると、相手も受け入れやすくなります。

練習2 気になる言い方

職場の先輩から、会議中に「そんなことも知らないの?」と言われ、嫌な気持ちになりました。

練習2の回答例

その場で言い返すのが難しければ、後で落ち着いて、アイメッセージで伝えます。

「先ほどの会議で『そんなことも知らないの』と言われて、私は少し落ち込んでしまいました。分からないことがあったら、教えていただけるとうれしいです。」

相手を責める言葉ではなく、事実と自分の気持ち、してほしいことを順に伝えるのがポイントです。

⑥アサーションの効果研究

アサーティブな表現ができる人ほど、対人関係のストレスが小さいことが報告されています。一方で、トレーニングの効果は、研究によって結果が分かれています。

研究で分かっていること

アサーティブな人は、人間関係のトラブルやストレスが少ない傾向があります。ただし、短い授業や研修だけで、すぐに自己表現の仕方が変わるとは限りません。繰り返し練習し、日常で使ってみることが大切です。

研究の紹介

代表的な研究を2つ紹介します。研究の詳しい内容に興味がある方は、以下を展開してみてください。一般の方は読み飛ばしても大丈夫です。

自己表現のタイプとストレスの研究

関口ら[5]は、大学1年生175名を対象に、自己表現のタイプと対人ストレスの関係を調べました。その結果、アサーティブなタイプの学生は、対人ストレスとなる出来事やストレス反応が最も少なく、攻撃的なタイプの学生は最も多いことが分かりました。

3つの自己表現と対人ストレスの関係

授業でのトレーニングの研究

廣岡と廣岡[6]は、中学生を対象に、授業でアサーション・トレーニングを行いました。その結果、主張性の尺度などの得点には、はっきりした変化は見られませんでした。一方で、生徒の理解度は良好で、アサーティブなコミュニケーションを好ましいと考える気持ちが高まったことが確認されています。

⑦研修や授業で使う

アサーションは、グループで練習すると身につきやすくなります。指導者の方に向けて、研修や授業で使えるワークと、取り組むときの注意点を紹介します。

指導者向けのワーク

当シリーズでは、次のワークを、手順と解答例つきで紹介しています。

価値観ワーク(学校・職場)

断り方の練習法(子ども向け)

断りワーク(大人向け)

主張しない自由も教える

ワークでは、主張することを強制しないことが大切です。また、暴力やハラスメント、いじめなど、身の安全や心身の健康に関わる場面では、一人で主張しようとせず、信頼できる人や相談窓口に助けを求めることも、大切な自己表現だと伝えましょう。

⑧よくある質問Q&A

私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。

自己主張すると嫌われませんか?

アサーションは、自分の意見を押し通すことではありません。相手の気持ちも大切にしながら、自分の気持ちを伝える方法です。言い方を工夫すれば、むしろ「正直に話してくれる人」と信頼されることも多いものです。例えば、断るときに感謝を添えたり、「私は」を主語にして気持ちを伝えたりするだけで、印象は大きく変わります。最初は、身近な人との小さな場面で試してみてください。自分の気持ちを伝えずに我慢を続けると、相手も「本当はどう思っているのだろう」と不安になり、かえって距離ができてしまうこともあります。伝えてみて、思ったより相手が受け止めてくれた、という体験が自信につながっていきます。

つい言いすぎてしまいます

言いすぎてしまう方は、気持ちが高ぶったまま伝えていることが多いです。まずは、言う前に一呼吸おいて、「自分は本当は何を伝えたいのか」を確かめてみましょう。そのうえで、「あなたは〜だ」ではなく、「私は〜と感じた」と、自分を主語にして伝えるのがおすすめです。相手を責める言葉が減り、話し合いが続きやすくなります。言いすぎてしまう場面には、疲れている、急いでいるなど、共通する状況があることも多いので、自分のパターンを振り返ってみるのもおすすめです。言いすぎたと気づいたときは、「さっきは強く言いすぎた、ごめんね」と後から伝えるのも立派なアサーションです。

どんな場面でも主張すべきですか?

いいえ、必ずしもそうではありません。アサーションには「あえて主張しない自由」もあります。例えば、相手が感情的になっていて危険を感じる場面や、主張しても状況が悪くなりそうな場面では、その場は引いて、後で落ち着いて伝えたり、他の人に相談したりする方が良いこともあります。大切なのは、「言えなかった」ではなく、「今は言わないことを自分で選んだ」と考えられることです。主張するかどうかを、相手との関係や自分の安全を考えて選べることも、アサーションの大切な力です。ハラスメントなどの場合は、一人で抱えず相談窓口を頼ってください。

⑨まとめ

アサーションは、自分も相手も大切にしながら、気持ちや考えを正直に伝えるコミュニケーションです。技法を知り、日常の小さな場面で練習することで、少しずつ身についていきます。

仕上げ動画

アサーションの考え方や歴史について、動画でも解説しました。仕上げとしてご活用ください。

講師からのメッセージ

私は研修講師として、長年アサーションのワークを行ってきました。アサーショントレーニングは抽象的なところが少なく、日常生活ですぐに使える、手触り感のある心理療法です。

アサーティブコミュニケーションを学ぶと、複雑な人間関係をしなやかに進める力がついていきます。皆さんが自他尊重の気持ちを育て、健康的な関係を築かれることを心から応援しています。

シリーズの他のコラム

アサーティブコミュニケーションシリーズでは、基本の考え方から、断り方、研修で使えるワークまでを解説しています。あわせてご覧ください。

断り方のコツ|感謝とセット法

価値観ワークとは|アサーティブトレーニング

断り方の練習法|教師向けアサーティブトレーニング

断りワーク|大人向けアサーティブトレーニング

3つの自己表現タイプとは|自分の伝え方を知る

DESC法とは|アサーティブな伝え方の手順

しっかり身につけたい方へ

アサーティブコミュニケーションは、公認心理師による講座で、実際に学ぶことができます。内容は以下のとおりです。

・アサーション権を学ぼう

・アイメッセージ実践練習

・DESC法,自己主張訓練

・自分を大事に,他人を大事にする

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)

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講座の日程が合わない方や、自分のペースで学びたい方は、個別レッスンのご相談も受け付けています。

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
 
 
[3] Wolpe, J. (1958). Psychotherapy by reciprocal inhibition. Stanford, CA: Stanford University Press.
 
[4] Alberti, R. E., & Emmons, M. L. (2008). Your perfect right: Assertiveness and equality in your life and relationships (9th ed.). Atascadero, CA: Impact Publishers.(初版1970年)
 
[5] 関口 奈保美・三浦 正江・岡安 孝弘(2011). 大学生におけるアサーションと対人ストレスの関連性:自己表現の3タイプに着目して ストレス科学研究, 26, 40-47.
 
[6] 廣岡 雅子・廣岡 秀一(2004). 中学生のコミュニケーション能力を高めるアサーション・トレーニングの効果―授業での実践的研究― 三重大学教育学部研究紀要 教育科学, 55, 75-90.
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