みなさんこんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。
このコラムは、マインドフルネス療法シリーズの7本目です。今回は「マインドフルネスの副作用」をテーマに解説していきます。
マインドフルネスの副作用とは、瞑想の練習中や練習後に、不安や落ち込みが強まるなどの好ましくない体験が起きることです。瞑想に関する研究をまとめた報告では、全体として約8%の参加者にこうした体験が見られました(ファリアスら)[1]。
目次は以下の通りです。
①副作用を知る大切さ
マインドフルネスは、ストレスの軽減や気分の安定に役立つ一方で、「誰でも安全にできる万能な方法」ではありません。正しく理解して取り組むために、まず副作用を知ることが大切です。
広まったマインドフルネス
マインドフルネスとは、今この瞬間の体験に、評価や判断を加えずに注意を向けることです。基本的な考え方はマインドフルネス療法とはのコラムで解説しています。
人は起きている時間の約半分、目の前のこととは別のことを考えているという研究もあります(キリングスワースら)[2]。マインドフルネスは、こうしてさまよう心を「今ここ」に戻す練習として、企業研修やスポーツの分野にも広がっています。

講師が伝えたいこと
心理の現場に長く携わってきた立場から正直にお伝えすると、やり方を間違えると、心の状態が悪化することもあります。
マインドフルネスは、カウンセリングと同じように心に深く働きかける方法です。だからこそ、効果とリスクの両方を知ったうえで取り組んでいただきたいと考えています。
②副作用を調べた研究
瞑想の副作用については、イギリスの研究者ファリアスらが、世界中の研究をまとめて調べています。数字の意味を正しく読み取ることが大切なので、順番に見ていきましょう。
研究の概要
ファリアスら(2020)[1]は、6,742件の文献を調べ、条件に合った83の研究(瞑想を行った参加者は合計6,703名)をまとめて分析しました。その結果、83の研究のうち55の研究で、少なくとも1種類の副作用が報告されていました。
このように、多くの研究を一定の基準で集めて整理する方法を「系統的レビュー」と呼びます。1つの研究や個人の体験談よりも、全体の傾向をつかみやすい方法です。

8%という数字の読み方
副作用が報告された参加者の割合は、全体として約8.3%と推定されました。ただし、この割合は研究の種類によって大きく異なり、実験的な研究では約3.7%、日常の実践者などを調べた観察研究では約33.2%でした。
つまり、「8%」は1つの目安であり、どのような人が、どのような形で実践するかによって、副作用の起きやすさは変わると考えられます。
健康な人にも起きる
この研究では、副作用は、心の病気の経験がない人にも起きることがあると報告されています。研究者たちは、全体の割合が、一般的な心理療法で報告される副作用の割合と同じくらいだと述べています。
マインドフルネスは「気軽な気晴らし」ではなく、心理療法と同じように、正しい知識と準備のもとで行うべきものだといえます。
③報告された主な副作用
ファリアスらの研究で、副作用が報告された研究の中で多かったのは、不安、抑うつ、認知の異常の3つでした。それぞれの中身と、起こりうる理由を見ていきましょう。
不安感が強まる
もっとも多かったのは「不安」で、副作用が報告された55の研究のうち33%(18研究)で報告されていました。
マインドフルネスでは自分の内面を観察しますが、その中には、長い間向き合うことを避けてきたつらい記憶や感情が含まれていることがあります。準備が整わないうちに向き合うと、不安を観察するつもりが、不安に飲み込まれてしまうことがあると考えられます。

気分が落ち込む
次に多かったのは「抑うつ」で、27%(15研究)で報告されていました。
慣れないうちは、将来への悲観的な考えや自分へのダメ出しを「観察する」つもりが、その考えにどっぷり浸かる時間になってしまうことがあります。リラックスしようとしたのに、気づいたら自分を責め続けていた、という状態です。
認知の異常
3番目に多かったのは「認知の異常」で、25%(14研究)で報告されていました。考えがまとまらない、現実感が薄れるといった、ものの感じ方や考え方の乱れを広く含む分類です。
自分が自分でないように感じる、周りの世界が現実味を失って見えるといった「離人感」も、瞑想の好ましくない体験として報告されることがあります。一時的にフワフワする程度でも、長く続いたり強くなったりする場合は、練習を中止するサインです。
まれに報告された副作用
頻度は低いものの、胃腸の不調や、自殺に関わる考えや行動も、それぞれ11%(6研究)で報告されていました。数としては少ないものの、見過ごしてはいけない副作用です。
練習を続けるうちに、強い落ち込みが続いたり、「消えてしまいたい」「死にたい」という気持ちが出てきたりした場合は、すぐに練習をやめてください。一人で抱え込まず、医療機関や専門の相談窓口に相談することが大切です。
割合の数字の注意点
ここで紹介した33%や27%は、「副作用が報告された研究のうち、その種類の副作用を報告していた研究の割合」です。「副作用を経験した人の33%が不安になった」という意味ではない点に注意しましょう。
④副作用が起きやすい場面
副作用は誰にでも起こりうるものですが、特に注意したい場面があります。ここでは、一般に注意が必要とされる3つの場面を紹介します。
心の不調があるとき
うつ病の症状が重い時期や、パニックを起こしやすい時期に、いきなり「感情をありのままに観察する」のは難しいことです。心の不調で治療を受けている方は、主治医に相談し、できれば専門家の指導のもとで取り組みましょう。
つらい感情に集中するとき
不安や恐怖といった感情をひたすら観察し続けると、受け流せるようになるどころか、その感情に飲み込まれてしまうことがあります。特に初心者のうちは、つらい感情を長時間眺め続けることは避けましょう。
独学で長時間行うとき
短い動画を見ただけで、準備不足のまま長時間の瞑想に挑戦すると、副作用が起きやすくなると考えられます。最初は短い時間から始め、分からないことがあれば経験のある指導者に相談しましょう。
⑤安全な実践の4つのコツ
ここからは、マインドフルネスを安全に実践するための具体的な方法を4つ紹介します。
①感情の観察は後回し
最初から不安や焦りなどのつらい感情に焦点を当てるのは控えましょう。まずは呼吸の感覚や体の感覚など、感情以外のものに注意を向けることから始めます。
それだけでも、十分にマインドフルネスの入り口に立てています。
②グラウンディングで準備
グラウンディングとは、足の裏が床についている感覚などを確かめて、「今ここに自分がいる」という感覚を取り戻す方法です。瞑想中に不安になったとき、現実に戻るための「命綱」になります。
具体的なやり方はグラウンディングのコラムで紹介しています。マインドフルネスを始める前に、身につけておくと安心です。
③短時間から始める
最初は5〜10分程度の短い時間から始めましょう。「もう少しやりたい」と感じるくらいで切り上げるのが、安全に続けるコツです。
慣れてきたら、少しずつ時間を延ばしていけば十分です。
④やめる基準を決めておく
練習を始める前に、「続けてよい状態」と「やめるべき状態」を決めておきましょう。具体的な目安は、次のセクションで紹介します。
⑥続ける・やめるの目安
練習中の体や心の状態を、信号の色にたとえて3段階で確認すると分かりやすくなります。自分の状態をこまめに確かめながら取り組みましょう。

続けてよいサイン
足や体が床や椅子に支えられている感覚があり、呼吸が自然に保てている状態です。軽いイライラや軽い悲しみ、軽い不安などは、むしろそれを観察することがマインドフルネスの練習になるので、続けて構いません。
注意とやめるサイン
黄色:汗がにじむ・恐怖に近い感覚
赤色:息苦しさ・動悸・頭痛
赤色:自分が自分でない感覚が強い
黄色のサインが出たら、時間を短くするか、目を開けて周りを見るなど、注意の向け方を変えましょう。赤色のサインが出たら、すぐに練習をやめてグラウンディングを行い、普段の生活に戻ってください。
中断した後の過ごし方
練習を中断したあとは、温かい飲み物を飲む、軽く体を動かす、好きな音楽を聴くなど、日常の落ち着ける活動に戻りましょう。すぐに練習を再開する必要はありません。
再開するときは、時間を短くし、目を開けたまま行うなど、負担の少ない形から試してみてください。中断したあとも不調が続く場合は、公認心理師や医療機関に相談してください。
⑦よくある質問Q&A
私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。
マインドフルネスの学習
心が落ち着く呼吸法
はじめての認知行動療法
感情コントロールの練習
講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)
個別レッスン
個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースでマインドフルネスを深めたい方は、下記をご参照ください。
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瞑想中に不安に飲み込まれそうになったとき、今ここに戻るための具体的な方法を知りたい方は、こちらのコラムがおすすめです。
安全に始める準備ができたら、感情以外の対象から始められる呼吸法に取り組んでみましょう。
シリーズでは、うつの再発予防を目的としたマインドフルネス認知療法(MBCT)や、8週間のプログラムであるMBSRも紹介しています。
他にも数多くの心理療法があります。ご自身の興味やお悩みに合った理論をじっくり探したい方は、一覧から選んでみてください。
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連




