みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。
このコラムは、アサーティブコミュニケーションシリーズの4本目です。「子ども向けの断り方練習」をテーマに解説していきます。
子ども向けの断りワークとは、友達からの誘いや頼みを、相手を傷つけずに断る練習を、ロールプレイ(役割演技)で行うアサーショントレーニングのことです。アイメッセージと感謝とセット法の2つを使い、学校の授業や学級活動で取り組めます。
今回は、先生方に向けて、子ども向け断りワークの準備と進め方、声かけのコツを解説します。目次は以下の通りです。
①断りワークとは
断りワークは、子どもが「断っても友達関係は壊れない」ことを、安全な場で体験するためのワークです。まずは、ねらいと使うスキルを確認しましょう。
ワークのねらい
子どもは、友達に嫌われたくない気持ちから、本当は嫌なことでも断れないことがあります。断りワークでは、友達の気持ちを大切にしながら、自分の気持ちも伝える方法を、遊びの延長のような形で練習します。
使う2つのスキル
このワークでは、次の2つのスキルを練習します。事前に、それぞれのコラムで内容を確認しておきましょう。

②準備と教材
ワークを始める前に、簡単な教材を用意し、先生がお手本を見せておくと、子どもが取り組みやすくなります。
教材をつくる
A4サイズで1〜2枚程度の、シンプルな教材を用意します。2つのスキルの説明と、具体例を書いておきましょう。
アイメッセージの例
友達「ねえねえ、100円貸してよ!」
自分「う〜ん…わたしは困るなあ…今お金がなくて…」
感謝とセット法の例
友達「今日、学校が終わったら遊ぼうよ」
自分「ありがとう、誘ってもらえてうれしい。でも、ぼくは今日習い事があって行けないんだ。また今度遊ぼう」
当サイトでもサンプル教材を作成しました。自由に加工してお使いください。
やり方の説明とお手本
ワークの前に、先生からアサーションの考え方と、断り方の具体例を簡単に説明します。先生がお手本を見せておくと効果的です。
2つのスキルを同時に練習すると混乱しやすいため、「まずはアイメッセージの練習をしましょう」と、1つずつ進めることを伝えておきましょう。
③ワークの進め方
ワークは、役割決め、事例の読み上げ、ロールプレイ、評価、交代、感想の流れで進めます。
役割を決める
クラスを4人グループに分け、断り役1人と、お誘い役3人を決めます。じゃんけんなどで、わかりやすく決めましょう。

事例を読み上げて始める
先生が次の事例を読み上げます。
ある日、お誘い役の3人から「今日いっしょに遊ばない?」と誘われました。断り役の人は、学校が終わった後に習い事があり、断らなくてはなりません。
続けて、「お誘い役の3人は誘ってみてください。断り役の人は、わたし・ぼくを主語にして断りましょう」と声をかけ、ロールプレイを始めます。
評価して交代する
ロールプレイが終わったら、グループで次の点をチェックします。
うまく断ることができたか
やさしい言い方で断ることができたか
お互い嫌な気持ちにならなかったか
1人ずつ断り役を交代し、全員が練習できるようにします。アイメッセージの練習が終わったら、同じ流れで感謝とセット法を練習します。
感想を話し合う
最後に、グループごとに感想を話してもらいます。「普段、断れなくて困ったことはある?」「嫌なことを我慢していない?」など、話す時間をゆったりとりましょう。ワークの後は本音が出やすいので、話し合いが盛り上がっているときは、すぐに終わらせず見守ります。

④子どもへの声かけ
子どもによって、断ることへの得意・不得意はさまざまです。一人ひとりに合わせた声かけのコツを紹介します。
断るのが苦手な子
断るのが苦手な子には、上手にできた友達の言い方をまねしてよいと伝えましょう。「ありがとう」の一言だけでも言えたら、「ちゃんと気持ちが伝わったね」と認めます。
強く言いすぎる子
強い言い方になってしまう子には、「言われた友達はどんな気持ちになったかな?」と、相手の立場を考える問いかけをします。そのうえで、「わたしは」を主語にした言い方を一緒に考えましょう。
役になりきれない子
恥ずかしがって役になりきれない子には、無理に演じさせず、まずは見る役から参加してもらいます。友達のやり方を見るだけでも、十分な学びになります。
⑤実施するときの注意
断りワークは楽しく取り組めるワークですが、子どもの心に触れる活動でもあります。次の点に注意しましょう。
断れない子を責めない
うまく断れなかった子を、「どうして言えないの」と責めないことが大切です。断れないのは、友達を大切に思う気持ちの表れでもあります。少しでもできたことを認め、次の練習につなげましょう。
困りごとのサインを見逃さない
感想タイムで、「お金を貸してと言われて断れない」「嫌なことをされている」など、いじめにつながる話が出ることがあります。その場で深く聞き出そうとせず、後で個別に話を聞き、必要に応じて学年の先生やスクールカウンセラーと連携してください。
⑥よくある質問Q&A
私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。
⑦まとめ
子ども向けの断りワークは、アイメッセージと感謝とセット法を使い、友達の気持ちを大切にしながら断る練習をするワークです。安全な場で練習することで、「断っても大丈夫」という体験を積むことができます。
今回のポイント
2つのスキルは、1つずつ順番に練習する
4人グループで役割を交代しながら全員が練習する
できたことを具体的に認め、断れない子を責めない
困りごとのサインは、個別に聞いて連携する
近年、学校教育でもアサーションを取り入れることが増えてきました。道徳や学級活動の時間などで、ぜひ取り入れてみてください。
シリーズの他のコラム
アサーティブコミュニケーションシリーズでは、基本の考え方から、断り方、研修で使えるワークまでを解説しています。あわせてご覧ください。
しっかり身につけたい方へ
アサーティブコミュニケーションは、公認心理師による講座で、実際に学ぶことができます。内容は以下のとおりです。
・アサーション権を学ぼう
・断りワークを実際に練習
・アイメッセージ実践練習
・DESC法,自己主張訓練
講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
講座の日程が合わない方や、自分のペースで学びたい方は、個別レッスンのご相談も受け付けています。
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連




