>
>
>
性善説・性悪説はどっちの方が生きやすい?

性善説・性悪説はどっちの方が生きやすい?心理学的に解説①

はじめまして!精神保健福祉士の川島です。私は現在、こちらの初学者向けコミュニケーション講座の講師をしています。コラムを読んで興味を持っていただいたら、是非お待ちしています。

今回は「性善説・性悪説」についてお話していきます。

  • ①性善説・性悪説とは
  • ②愛着行動との関係
  • ③人を信じるメリット
  • ④人を信じるデメリット
  • ⑤性善説を身に付ける方法
  • ⑥まずは信じる法とは
  • ⑦ソーシャルサポート
  • ⑧現実検討力を高める

全部で8分ほどかかります。(^^;)少し大変ですがお付き合いください。

性善説・性悪説とは何か

まずは「性善説・性悪説」の意味や特徴から解説していきます。皆さんは、性善説は「人は生まれつき善である」という解釈をしていませんか?実はこの解釈は、半分正解で半分間違いです。

性善説・性悪説の定義

性善説・性悪説はgoo辞典によると、以下のように定義づけがされています。

せいぜん-せつ 【性善説】
人間は善を行うべき道徳的本性を先天的に具有しており、 悪の行為はその本性を汚損・隠蔽することから起こるとする説。正統的儒学の人間観。孟子の首唱。

「人は生まれつきは善であり、悪行はそれを隠すために行われる」というのが性善説です。

せいあく-せつ 【性悪説】
人間の本性を利己的欲望とみて、善の行為は後天的習得によってのみ可能とする説。孟子の性善説に対立して荀子が首唱。

人は生まれつきは悪であり、成長の過程でしか善を学ぶことが出来ない」とするのが性悪説です。

つまり、たまごが先か鶏が先かの問題で、どちらも人は善も悪も有しているのです。

性善説・性悪説のタイプ

Lewicki(1998)は性善説の近接概念である「信頼と不信」について人間を4つのタイプに分類しています。当コラムでは、性善説、性悪説としてアレンジして解説していきます。

縦軸 ↑↓ 「信頼」は「性善説」
横軸 ↔  「不信」は「性悪説」

になります。皆さんは下の表の、どの項目に当てはまりそうでしょうか?例えば、完全な性善説の方は、「強い性善説」「弱い性悪説」となります。性善説である性悪説である方は、「弱い性善説」「弱い性悪説」となります。

では、この4つのタイプの特徴について詳しく見ていきましょう。

 

1:無関心型

性善説でも性悪説でもないタイプです。つまり、人間にはもともと善悪など存在しないと考えるタイプです。他人への興味が希薄化しやすく、うわべの関係になりやすいのが特徴です。少し狭い範囲で、限られた人との付き合いをする人が多いでしょう。

2:性善説型


性善説の方です。人間はそもそも「善」であるという考え方が前提にあるので、理他人を疑うことが少なく、他者を信頼する傾向にあります。相手を警戒せずに多くの経験をし、より多くの信頼関係を作ることができます。このタイプはメンタルヘルスの状態もよく、理想的な考え方であると言えます。

3:性悪説型


性悪説の方です。人はそもそも「悪」であると考えるため、他人から何かポジティブな行為を受けても心をオープンにすることができません。他人への不信感が拭えずに、警戒心が強い傾向にあります。その結果、人間関係を円滑に維持することが難しくなります。

4:情緒不安定型


情緒不安定型の人の特徴とは、人によって態度が大きく変わることです。信頼できる人は強く信頼し、苦手な人には強く警戒心を抱きます。好き嫌いがハッキリしているため、周りの環境に大きく左右されることが多くなります。

マグレガーX理論、Y理論

性善説・性悪説と似た概念として、XY理論というものがあります。XY理論は心理学者・経営学者のダグラス・マグレガーが、著書『企業の人間的側面』の中で提唱したものです。

X理論、Y理論の2つを提唱しており、それぞれ以下のような考え方があります。

・X理論(性悪説)
「人間は本来なまけたがる生き物で、責任をとりたがらず、放っておくと仕事をしなくなる」という考え方。この場合、命令や強制で管理し、目標が達成できなければ懲罰といった、「アメとムチ」による経営手法となる。

・Y理論(性善説)
「人間は本来進んで働きたがる生き物で、自己実現のために自ら行動し、進んで問題解決をする」という考え方。この場合、労働者の自主性を尊重する経営手法となり、労働者が高次元欲求を持っている場合有効である。

このように、経営の在り方にも性善説・性悪説と近い考え方が用いられており、今や誰しも知っている「アメとムチ」による管理手法などが生まれてきました。

性悪説と愛着行動

性悪説になってしまう原因の1つとして「愛着障害」が考えられます。これは、「母親をはじめとする養育者との間で幼少期に安定した愛着を深める行動が断たれた事で引き起こされる対人面や情緒面での問題症状」のことです。愛着障害は診断名のため、精神科などで用いられる世界保健機関(WHO)が定める「ICD-10」の診断基準を元に診断されます。診断基準は、簡単に要約すると

A.5歳以前の発症

B.対人関係の不安定さ
 誰にでも助けを求める
 感情の移り変わりが激しい
 あまり他者とつながりを持とうとしない

などが挙げられます。愛着障害の診断基準は幼い子どもを対象にしていますが、大人になっても愛着障害の状態が続いたり、大人になってから愛着障害になるケースもあります。

愛着障害は幼児期の母子関係の不健康さから生じると言われており、自己肯定感の欠如、基本的信頼感の欠如など、「性悪説」になりやすい状態と言えます。

愛着障害について詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
・赤ちゃんザルの古典研究
・スキンシップの重要性
性悪説になってしまう原因「愛着理論」②

人を信じる長所

それでは、心から相手を信頼できる性善説には、どんなメリットがあるのでしょうか?大きく2つの長所があると考えられます。

①自己肯定感が高い

高橋ら(2012)の研究では、大学生234名を対象に、「他人のポジティブ面に注目することの心理的な影響」を調査しました。その結果、以下の図のようになりました。

「他者肯定感」は、自己肯定感を高めることにつながり、幸福感も上がることが分かりますね。一方で、他人を低く見積もる「他者軽視」においてマイナスの相関を示しています。これは、他者肯定感が強い人ほど、他人を軽視する傾向が低くなることを表しています。

また、今回は「相関がある」ということなので、その逆も同じことが言えます。例えば、自分の肯定することで、他人への不信感を和らげることにつながります。また、当然といえば当然ですが、相手を軽視することが少なくなれば、他者肯定感を高めることにもつながるのです。

②正しい行動を取りやすい

性悪説の人は「だまされるのではないか?」と考えている方もいるでしょう。人を信頼しないほうが、騙されず、間違った行動を起こすことが少ないがのではないか?と考えている人もいると思います。

菊地・渡邊・山岸(1997)は、96人の大学生を、一般的な信頼関係が高い群と低い群に分け、信頼関係と情報選択実験を行いました。その結果、「他人を信頼する傾向の強い人」は、「正確な行動をする」傾向があることを示しました。

性善説メリット

懐疑心を持ってが、情報を精査した方が正確に情報を読み取れそうな感覚がありますが、他人を頼ることでしか目に映らない世の中には多いようです。その意味でも、他人を信頼する!という信念は一定のメリットがありそうです。

人を信じる短所

逆に人を信じることのデメリットは存在するのでしょうか。こちらも以下の2つが考えられます。

①リスク管理ができない

誰彼構わず人を信じていくと、裏切りやしっぺがえしを食らう可能性も高まります。つまり、裏切られるリスクが高い人であっても、信頼するので自分が大きな損失を生み出してしまうこともあります。

適度に人を疑うことで、リスク管理が上手くなります。例えば、「お金貸してください」と言われた時、以下の2人だとどちらに貸したいと思えるでしょうか。

A.借金がすでに100万円あり、性格が良くない

B.借金もなく年収600万円で、性格がいい

この場合、性善説の人はBの人でもお金を貸してしまうことがあります。その結果、自分が痛い目を見ることが多くなってしまうのです。

②犯罪を許容する

性善説の人は人間は悪行を働くこともあると受け止める必要があるでしょう。手放しに人を信用するため、人間の未熟な面、おろかな面を受け入れられないことがあります。

すると、犯罪を許しがちな社会になったり、悪いことを見て見ぬフリをするようになります。これでは、法律や憲法の意味が無くなってしまうため、ある程度の性悪説は人を裁くためには必要でしょう。

また、根底にある人間の未熟さを受け入れることで、他人を許せるようになります。人間だから失敗することもあるという考え方は、現実的にヒトの性質をを受け入れて、健全な努力をするなどの活動につながります。

・ただし性悪説は不信感につながる
ただ、性悪説100%正しいというわけではありません。人間の本性を悪として考えることで、他人への不信感が高まってしまうため、性善説に考えた方が対人関係でのトラブルも少ないでしょう。

この「悪」の部分は、心理学では不信感と近い関係にあります。不信感の強い人は、敵意を伴う苦悩と関連が深く、対人問題を感じやすいこと(Gurtman, 1992)がわかっています。

また、他者に対して、冷笑的で否定的な態度を取る人は、対人関係で怒りや恨みを頻繁に経験しやすい(Smith & Frohm, 1985)といわれています。

コラム1は折り返し地点です!ここで少しだけお知らせをさせてください♪ 私たち臨床心理士・精神保健福祉士は、暖かい人間関係のある社会を創ることを目的として、コミュニケーション講座を開催しています。

心理療法やソーシャルスキルの練習を勉強したい方はぜひお待ちしています。1人で抱え込まずに、専門家やたくさんの仲間と相談しながら進めていくと、心強いと思います。もしコラムを読んでみて、もっと心理学を学習したいと感じたら、こちらのコミュニケーション講座のページを参照ください。それでは先に進みましょう!

性善説を身に付ける方法

ここからは性悪説から性善説に移行する方法をお伝えします。なお、性悪説のままでいい!という方はあまり役に立たないのでご了承ください(^^;

改善策① まずは信じる法

「性善説」について理解を深める近道は「安心」と「信頼」の違いを知ることが大切です。

安心
→「しっかりとした根拠があり、相手を信じる」

信頼
→「しっかりとした根拠がなくとも、相手を信じる」

性善説と近い信頼と安心には、このような差があるのです。「あり」「なくとも」が重要です。ちょっとわかりにくいかもしれません。例えば、恋愛関係では、

安心
→「浮気をしていないか、相手のスマホを確認した
  異性とのやりとりはなかった!信じられる」

信頼
→「浮気をしていないか気になる。
  だが確認しなくても基本的に私は相手を信頼している。
  ありのままを信じよう。」

このような違いがあるのです。皆さんでしたら、この2人のどちらとお付き合いししたいと思いますでしょうか?ほとんど方は、確認しないで信頼してくれる性善説な人だと思います。

まずは信じる法をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・安心は性悪説!?
・見返りを求める銀行
性善説力を高める「まずは信じる法」とは③

改善策② ソーシャルサポート

性善説を身に付けるには、周りからのサポートを増やすことが大切です。人生はドラクエで、僧侶系男子・僧侶系女子がいないと心が回復することがありません。サポートを受けることで、人を信じる気持ちが強まり、性善説を身に付けることができます。

・僧侶系男子・女子の特徴
性善説を和らげるには、この僧侶系男子・女子を仲間にすることが大切です。彼らの特徴としては、以下の4つが挙げられます。

1.友達が多い
2.前向きな言葉遣い
3.柔軟性がある
4.温和な性格

このような感じの方はどのコミュニティにも1人は見かけると思います。もし、「この人は僧侶系男子・女子だな」と思ったら、積極的に頼ってOKです。

ソーシャルサポートをより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・他者肯定感が高まる
・コミュニティに所属しよう
性善説を身に付ける方法「ソーシャルサポート」④

改善策③:現実検討能力をつけよう

性悪説で心から相手を信頼できない人は、認知的フュージョンが原因だと考えられます。認知的フュージョンとは、自分の「考え」と「現実」を混同し、「現実」よりも「考え」を優先することを言います。フュージョンとは「混ざる、混同」という意味があります。

・相手の反応を気にしすぎる
・些細な一言に反応する
・思い込みを拭うことができない

このような状態に心当たりがある人は、認知的フュージョンが悪さをしているかもしれません。(嶋, 柳原, 川井, & 熊野., 2014)。

認知的フュージョンが起こると、考えと現実の区別がつかなくなり、現実的ではない不安や想像を膨らませて、性悪説のようは考え方になってしまいます。

認知的フュージョンから抜け出すには、自分の考えから「考え」と「現実」を区別し、考えを客観的な視点で見ることが大切です。現実と思考を切り離す「脱フュージョン」をすることで、感情や思考とほどよい距離感を保つことができ、相手を信頼できるようになります。

現実検討力をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・フュージョンに気づく
・思考と現実の分離
性善説は「現実検討力」を付ければ身につく⑤

性悪説から性善説へ

性悪説の考え方が強く不信感が大きい人は、気分や感情に影響することや、他人と交流を深めことを回避することがわかっています。 他人への信頼感を増やすには、「性善説」の考え方が大切です。

 性悪説も1つの考え方ですが、他人を信頼してより良い人間関係を構築するには性善説に基づいだ方がリラックスできます。ぜひ、これからご紹介する方法を参考に、性善説を身に付けてくださいね。

次回は、性善説と愛着行動について解説していきます。

★性悪説は不信につながり、性善説は共感につながる!脱フュージョンで改善

 

コメント

コメントを残す

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


ブログ→
YouTube→
Twitter→

*出典・参考文献
天貝由美子. (1995). 高校生の自我同一性に及ぼす信頼感の影響. 教育心理学研究, 43(4), 364-371.
天貝由美子. (1997). 成人期から老年期に渡る信頼感の発達. 教育心理学研究, 45(1), 79-86.
Gurtman, M. B. (1992). Trust, distrust, and interpersonal problems: a circumplex analysis. Journal of personality and social psychology, 62(6), 989.
 Lewicki, R. J., McAllister, D. J., & Bies, R. J. (1998). Trust and distrust: New relationships and realities. Academy of management Review, 23(3), 438-458.
中井大介, & 庄司一子. (2006). 中学生の教師に対する信頼感とその規定要因. 教育心理学研究, 54(4), 453-463.
下坂剛. (2001). 青年期の各学校段階における無気力感の検討. 教育心理学研究, 49(3), 305-313.
Smith, T. W., & Frohm, K. D. (1985). What’s so unhealthy about hostility? Construct validity and psychosocial correlates of the Cook and Medley Ho scale. Health Psychology, 4(6), 503.
桾本知子, & 山崎勝之. (2008). 大学生における敵意と抑うつの関係に意識的防衛性が及ぼす影響. パーソナリティ研究, 16(2), 141-148.
山中一英 (1995). 対人関係の親密化過程に関する質的 データに基づく-考察 名古屋大学教育学部紀要, 42, 127-134.
高橋ら(2012)ポジティブ側面への積極的注目に関する研究 : ポジティブ志向,主観的幸福感,ネガティブ認知,他者軽視との関連 学校教育学研究論集 26, 29-39, 2012-10-31
嶋大樹, 川井智理, 柳原茉美佳, 大内佑子, 齋藤順一, 岩田彩香, … & 熊野宏昭. (2017).
Acceptance Process Questionnaire の作成および信頼性と妥当性の検討. 行動療法研究, 43(1), 1-13.