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性善説・性悪説の意味や違いとは何か‐遺伝率,メリット,デメリット

性善説・性悪説の意味や違いとは

皆さんこんにちは。公認心理師の川島達史です。
今回のテーマは
「性善説,性悪説」
です。

はじめに

性善説、性悪説は人類のテーマでもあります。皆さんは人と接するときに、その人を善人とみなす方でしょうか?それとも、悪者として考え、警戒をする方でしょうか?

当コラムでは、性善説、性悪説の原理と、長所、短所などを解説していきます。目次は以下の通りです。

  • 性善説,性悪説とは何か?
  • 性善説,性悪説の分類
  • メリット・デメリット
  • 発展編-関連コラム

一通り読むと性善説、性悪説を理解する上で基本的なことを抑えられると思います。是非最後までご一読ください。

性善説,性悪説の意味とは

意味とは

まずは「性善説・性悪説」の意味や特徴から解説していきます。性善説・性悪説は古典的には以下のような違いがあります。

せいぜん-せつ 【性善説】
人間は善を行うべき道徳的本性を先天的に具有しており、 悪の行為はその本性を汚損・隠蔽することから起こるとする説。正統的儒学の人間観。孟子の首唱。

「人は生まれつきは善であり、悪行はそれを隠すために行われる」というのが性善説です。

▼参考動画

せいあく-せつ 【性悪説】
人間の本性を利己的欲望とみて、善の行為は後天的習得によってのみ可能とする説。孟子の性善説に対立して荀子が首唱。

人は生まれつきは悪であり、成長の過程でしか善を学ぶことが出来ない」とするのが性悪説です。

▼参考動画


つまり、
・性善説は元々人間は善であり、悪は後天的に取得したものである
・性悪説は元々人間は悪であり、善は後天的に取得するものである

という両者の違いがあるのです。

性善説,性悪説と遺伝学

さて!実際私たちはどの程度、生まれながらに善悪が決まってきているのでしょうか?

性格は30~70%前後遺伝する

この点については行動遺伝学という分野である程度の結論が出てきています。

例えば、安藤(2011)の遺伝率研究では性格の遺伝率はおおむね30~60%前後という結果にもなっています。

数字にブレがあるのは性格には複数の種類があるからです。

善は50%程度遺伝?

性格の中の1つに「誠実さ」があります。誠実さは、約束を守る、時間を守る、嘘をつかないなど、性善説と非常に近い概念です。先程の安藤の研究では誠実さの大きさは50%の遺伝率であることがわかっています。

かなり乱暴な解釈となりますが、善人,悪人は生まれながらに、半分程度は決まっているという仮説が成り立ちます。

パーソナリティ障害と遺伝

安藤の主張を裏付ける研究として、遺伝率の研究家であるTorgersen(2000)の研究結果も挙げられます。Torgersenはパーソナリティ障害(性格の偏り障害)について遺伝率の調査を行いました。

その結果、50%前後の割合で遺伝率が確認されたのです。パーソナリティ障害の中には反社会性人格障害という障害があります。

反社会性パーソナリティ障害は、暴力的で攻撃的な性格傾向がみられる障害で、精神医学の世界では先天的な影響もあるとすることが一般化されています。

*遺伝について興味がある方は下記のコラムを参照ください。
 性格と遺伝率の関係

現代の性善説,性悪説

性善説・性悪説と似た概念として、XY理論というものがあります。XY理論は心理学者・経営学者のダグラス・マグレガーが、著書『企業の人間的側面』の中で提唱したものです。

X理論、Y理論の2つを提唱しており、それぞれ以下のような考え方があります。

①X理論(性悪説)

「人間は本来なまけたがる生き物で、責任をとりたがらず、放っておくと仕事をしなくなる」という考え方。この場合、命令や強制で管理し、目標が達成できなければ懲罰といった、「アメとムチ」による経営手法となる。

②Y理論(性善説)

「人間は本来進んで働きたがる生き物で、自己実現のために自ら行動し、進んで問題解決をする」という考え方。

この場合、労働者の自主性を尊重する経営手法となり、労働者が高次元欲求を持っている場合有効である。

このように、経営の在り方にも性善説・性悪説と近い考え方が用いられており、今や誰しも知っている「アメとムチ」による管理手法などが生まれてきました。

性善説 性悪説

性善説の長所と短所

性善説を取るとどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?様々なものが挙げられます。気になる項目がありましたら展開してみてください。

メリット

心理学の世界では「返報性の原理」が確かめられてています。返報性とは、自分が相手に示した感情は自分にも返ってくるとする心理です。

例えば、
相手に笑顔を示すと 相手からの笑顔が返ってきます
相手に好意を示すと 相手から好意が返ってきやすくなります
相手に悪口を言うと、相手から悪口が返ってきやすくなります

信頼も同じ原理で、相手を信頼すると、相手も自分を信用しようとしてくれるのです。もちろん例外もありますが、原則としては自分の感情はそのまま相手の感情に反映されやすいと意識しておきましょう。
*くわしくはこちらの返報性のコラムを参照ください。

高橋ら(2012)の研究では、大学生234名を対象に、「他人のポジティブ面に注目することの心理的な影響」を調査しました。

その結果、以下の図のようになりました。

自己肯定感 増える

このように他者肯定感と自己肯定感にプラスの相関が見られます。つまり、相手を肯定的に捉えることは、自分を肯定することにもつながるのですね。

高橋ら(2012)の研究では、大学生234名を対象に、「他人のポジティブ面に注目することの心理的な影響」を調査しました。

その結果、以下の図のようになりました。

性善説 メリット

上記のように他者肯定感と主観的幸福感の間でプラスの相関があることが分かりました。これは、他者肯定感が高いほど「自分は幸福だ」と感じやすくなることを表しています。

一般的に、お金持ちは幸福!名誉があれば幸福!というイメージが強いですが、純粋に性善説に生きるだけでも幸せは感じられそうです。

性悪説の人は「だまされるのではないか?」と考えている方もいるでしょう。人を信頼しないほうが、騙されず、間違った行動を起こすことが少ないがのではないか?と考えている人もいると思います。

菊地・渡邊・山岸(1997)は、96人の大学生を、一般的な信頼関係が高い群と低い群に分け、信頼関係と情報選択実験を行いました。

その結果、「他人を信頼する傾向の強い人」は、「正確な行動をする」傾向があることを示しました。

性善説メリット

懐疑心を持ってが、情報を精査した方が正確に情報を読み取れそうな感覚がありますが、他人を頼ることでしか目に映らない世の中には多いようです。

その意味でも、他人を信頼する!という信念は一定のメリットがありそうです。

 

デメリット

性善説な人は相手を疑わないため、騙されやすい傾向があります。例えば、マルチ商法やネットワークビジネスの勧誘などに応じてしまう人は、基本的に相手を疑わないタイプが多いです。

「本当に効率の良い稼ぎ方だから、自分にも勧めてくれてるんだ!いい人だなぁ」

と思ってしまいます。

私の知人にネットワークビジネスの勧誘に応じた人がいますが、彼は紛れもなく性善説なタイプでした。性善説のダークサイドとして騙されやすくなることを念頭に置いておきましょう。

性善説 ねずみ講

性善説で他人に寛容な態度を取っていると、パートナーや友人に依存されることがあります。性善説な人は以下のような人間関係を構築しがちです。

1.信じすぎる
2.相手が甘える
3.相手をダメにする

このように、自分が相手を信じすぎるが故に、相手が成長しなくなってしまうのです。例えば、あなたが、ギャンブル依存症の彼と付き合っていたとします。

すると、

「お金かして!」

と何度も要求され、その度に応じていていては相手は「また借りればいいや」と無力化してしまいます。最終的には多額の損失に発展してしまう可能性があります。

相手を信じすぎてしまう…という方は下記のコラムを参照ください。
共依存の意味とは?診断

グループに性善説な人が増えると、サボりが横行しやすくなります。こうした現象は、社会心理学でただ乗り現象と呼ばれています。

例えば、空き缶がゴミ箱の下に落ちていた時、健全な場合は気づいた人が拾います。しかし、性善説の人が多いと「誰かが拾ってくれるだろう」と見て見ぬふりをしてしまうのです。

このようなサボりが積み重なっていく集団としての仕事の質が各段に落ちてしまうことが予想されます。

 

川島の見解

ここまでは性善説、性悪説について概観をしてきました。私のカウンセリング経験となってしまいますが、実際には、性善説を取っている人の方が全体としてはメンタルへルスが良い傾向にあります。

人を信じる人は、相手からも信頼されやすくなりますし、他者肯定感が育ちやすくなります。人は疑いすぎるときりがなく、そして疑うことで様々な制限をかけてしまい、自分も相手も息苦しい状態になってしまいます。

原則は性善説、例外的に性悪説を採用する。これぐらいのスタンスが健康的なのではないか?そう感じてします♪参考まで。

 

発展コラム

ここからは性善説,性悪説に関する関連コラムを紹介させて頂きます。理解を深めたい方は参考にしてみてください。

信頼関係コラム

性善説な考え方になるためには、信頼関係の構築方法を学ぶことをオススメします。信頼関係コラムでは信頼することのメリット・信用するための方法について解説しています。

人を信用するのが苦手…という方は下記をご覧ください。
信頼関係の意味とは?

愛着不安コラム

性善説になりやす方の1つの特徴として愛着形成の安定が挙げられます。愛着形成とは、

「赤ちゃんと特定の他者との間に情緒的な結びつきが形成される」

ことを意味します。

例えば、赤ちゃんの頃に愛情をたっぷりもらっていた人は性善説になりやすいのです。こうした話を聞くと「すでに手遅れでは?」と思われるかもしれません。しかし、大人になってからでも愛着不安と上手く付き合う方法があるのです。

基本的に相手を疑ってしまう…という方は下記をご覧ください。
愛着障害入門

まとめ+お知らせ

まとめ

性善説性悪説の違い・どちらの方がよいのかについて解説していきました。どちらにもメリットデメリットはありますが、メンタルへルス的には性善説の方が良い傾向にあります。

性善説でいると人間関係も良好になりやすく、幸福感も上がります。

もちろん、誰彼構わず信用する!という極端な姿勢はNGですが、基本的には相手を信頼するというオープンな姿勢は人生を豊かにしてくれるでしょう。

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・無条件の肯定のコツ

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1件のコメント

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    • 匿名
    • 2020年5月13日 10:51 PM

    内容は良いが、誤字脱字が多過ぎて、逆に不信感を感じてしまう。
    今後の人のために是非、修正を

    返信する

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
天貝由美子. (1995). 高校生の自我同一性に及ぼす信頼感の影響. 教育心理学研究, 43(4), 364-371.
天貝由美子. (1997). 成人期から老年期に渡る信頼感の発達. 教育心理学研究, 45(1), 79-86.
Gurtman, M. B. (1992). Trust, distrust, and interpersonal problems: a circumplex analysis. Journal of personality and social psychology, 62(6), 989.
 Lewicki, R. J., McAllister, D. J., & Bies, R. J. (1998). Trust and distrust: New relationships and realities. Academy of management Review, 23(3), 438-458.
中井大介, & 庄司一子. (2006). 中学生の教師に対する信頼感とその規定要因. 教育心理学研究, 54(4), 453-463.
下坂剛. (2001). 青年期の各学校段階における無気力感の検討. 教育心理学研究, 49(3), 305-313.
Smith, T. W., & Frohm, K. D. (1985). What’s so unhealthy about hostility? Construct validity and psychosocial correlates of the Cook and Medley Ho scale. Health Psychology, 4(6), 503.

遺伝マインド –遺伝子が織り成す行動と文化 有斐閣  2011 安藤 寿康 
桾本知子, & 山崎勝之. (2008). 大学生における敵意と抑うつの関係に意識的防衛性が及ぼす影響. パーソナリティ研究, 16(2), 141-148.
山中一英 (1995). 対人関係の親密化過程に関する質的 データに基づく-考察 名古屋大学教育学部紀要, 42, 127-134.
高橋ら(2012)ポジティブ側面への積極的注目に関する研究 : ポジティブ志向,主観的幸福感,ネガティブ認知,他者軽視との関連 学校教育学研究論集 26, 29-39, 2012-10-31
嶋大樹, 川井智理, 柳原茉美佳, 大内佑子, 齋藤順一, 岩田彩香, … & 熊野宏昭. (2017).
Acceptance Process Questionnaire の作成および信頼性と妥当性の検討. 行動療法研究, 43(1), 1-13.

Torgersen, S., Lygren, S., Oien, P.A., Skre, I., Onstad, S., Edvardsen, J., …, & Kringlen, E. (2000).
A twin study of personality disorders. Comprehensive psychiatry, 41(6), 416-25.