自己嫌悪の意味

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「自己嫌悪」について解説していきます。

自己嫌悪の意味,まめ大福様作成

目次は以下の通りです。

①自己嫌悪の意味とは
②自己嫌悪と6つの因子
③自己嫌悪と研究
④関連コラム

是非最後までご一読ください。

①自己嫌悪の意味とは

意味

自己嫌悪は心理学的には以下のように定義されています。

否定的な感情や事象が自分自身に由来するとし、自分が自分自身のことをいやだと感じること(水間,1996)

簡単に言えば、自分の欠点、短所、失敗を嫌だと思う感覚を意味します。

青年期に増える

自己嫌悪は青年期に最も大きくなる感情です。青年期は「自分とはなにか?」「自分には何ができるか?」と考える時期です。この時期は理想を高く持つことが多く、理想と現実のギャップに悩みやすくなります。

また周囲のコミュニケーション能力も未熟なので、いじめにあったり、人格批判を受けやすく、自尊心を傷つけられ、自己嫌悪になってしまうこともあります。

心理的機能

一方で、自己嫌悪は自分の行動を改めるきっかけになる感情です。例えば、目標があるにも関わらず、実行しなかったとき、自己嫌悪になることで、反省し生活態度を改めることができます。

 

②自己嫌悪と6つの因子

佐藤(1994)は中学生から大学生まで300名を対象に、自己嫌悪について詳細な調査を行いました。その結果、自己嫌悪は6つの因子構成になっていることがわかりました。

①課題遂行停滞

課題遂行停滞とは、目標があるにも関わらず、怠けていたり、努力をしない自分が嫌になることを意味します。例えば、1日3時間は勉強する!と決めたにも関わらず全く勉強しない自分を責める、などが挙げられます。

②他人への配慮欠如

他人への配慮欠如とは、人の悪口を言ってしまったり、迷惑をかけた時に感じる自己嫌悪を意味します。例えば、嘘をついて相手を騙してしまった時に後悔をする感覚、などが挙げられます。

③他者への意識過剰

他者への意識過剰とは、自分に自信が持てないため、馬鹿にされることに敏感になり、ちょっとした批判で自信をなくことを意味します。例えば、青年期に容姿をからかわれ、周りと比べて落ち込むなどが挙げられます。

④他者との親和不能

他者との親和不能とは、人間関係でうまく溶け込めない感覚があるときに感じる自己嫌悪です。例えば、周りが誘い合って出かけているのに自分だけが呼ばれず、自信を無くす時、などが挙げられます。

⑤他者への表出不能

他者への表出不能とは、言いたいことが言えない、主張ができない時に起こる自己嫌悪です。例えば、本当は断りたいのに、うまく断れず、ストレスをためる時などが挙げられます。

⑥目標方向不能

目標方向不能とは、何に情熱をぶつければ良いかわからず、自分に自信を持てないことを意味します。例えば、周りは目標が明確で自信を持って進路を決めているにも関わらず、自分自身はなんとなく進路を決めてしまい、自己嫌悪になる時、などが挙げられます。

 

③自己嫌悪と研究

自己嫌悪については心理学の世界で様々な研究がなされています。

他者肯定感が下がる

細田ら(2009)は、中学生305名を対象に、自己肯定感についての調査を行っています。結果の一部が下図となります。

自己肯定感と他者肯定感

上図は、自己肯定感と他者肯定感はお互いにプラスの関係にあることを意味しています。これは逆に考えると、自己嫌悪が強くなると、他者嫌悪も強くなると解釈することもできます。

傷つきやすくな

斎藤ら(2009)は大学生474名を対象に、自己評価と失敗過敏について調査を行いました。結果の一部が下図となります。

自己評価と失敗過敏の関係

上図は自己評価が高くなると、失敗過敏が小さくなるという意味があります。逆に考えると、自己嫌悪になると余裕を失い、失敗に敏感になると解釈することができます。

成長につながることも

ガブリエル・エッティンゲン(1991)は、ネガティブ思考がダイエットにどのような効果を与えるかを調べました。結果の一部が下図となります。

上図は、ネガティブ思考の女性の方が約11kg近く体重を落とすことができたことを意味しています。ネガティブ思考はダイエットだけではなく、異性との関係や勉強などでも同じような傾向が確認されています。ここからは推測ですが、自己嫌悪は、マイナスの影響がある一方で、自分を成長させる効果もあると推測できます。

 

④関連コラム

自己嫌悪をやめる方法

当コラムでは自己嫌悪の意味や研究を紹介してきました。実践的に自己嫌悪を治したい方は以下のコラムを参考にしてみてください。自分の長所を発見する方法を紹介しています。

自己嫌悪をやめる方法

自己嫌悪診断

筆者は自己嫌悪の強さを簡易的に診断できるシステムを作りました。客観的に自己嫌悪の強さを把握したい方は以下の簡易診断を参照ください。

自己嫌悪診断

 

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コミュニケーション能力,教室

ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

*出典・参考文献
Gabrile Oettingen & Thomas A. Wadden 1991 Expectation, fantasy, and weight loss : Is the impact of positive thinking always positive? Cognitive Therapy and Research Volume 15, Issue2
細田 絢, 田嶌 誠一(2009)中学生におけるソーシャルサポートと自他への肯定感に関する研究 教育心理学研究,57,309-323
斎藤 路子 今野 裕之 沢崎 達夫(2009)自己志向的完全主義の特徴 : 精神的不健康に関する諸特性との関連から 対人社会心理学研究 (9), 91-100, 2009-03 大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室

青年期における自己嫌悪感の発達的変化 佐藤 有耕 1994 教育心理学研究