人見知りとは何か?

心理学辞典(1999)において人見知りは以下のように定義されています。

見知らぬ人に対する恐怖,不安

人見知りはもともと、見知らぬ人に恐怖を覚える乳児に対して用いられる言葉でした。最近では、大人も含め、知らない人に対して積極的になれない状態を表す言葉として認知されています。

私たちは社会に出ると、新しい人と出会う場面があります。入社、入学、クラス替え…。この時、人見知りがあると、緊張しやすく、またコミュニケーション場面を回避してしまうのです。

人見知り2パターン

心理学の世界で人見知りは以下の2つがあることがわかっています。

①恐怖型

恐怖型は幼少期から見られる、面識のない人との間に体験される不安反応です。

以下は一例です。

・子どもがお母さんの後ろに隠れる
・小さな頃から人見知りだった…
・幼い頃から警戒心が強かった

このように、小さな頃から見知らぬ人に対して怖いという感覚が強かった方は、もともと恐怖型の人見知りと考えられます。

日比野(1977)の研究では、乳幼児の人見知りと個体識別について調査を行っています。実験では、満10ヶ月の乳児43名を対象に、質問紙を用いて調査を行っています。

そして参加者を人見知りの強度により

1.人見知りが激しいグループ
2.人見知りが中程度のグループ
3.人見知りしないグループ

の3つ群に分けて調べました。以下の図は、それぞれのグループの人数とパーセンテージを表したものです。

人見知り 調査

上記のように、約80%が中程度~激しい人見知りを経験することがわかります。当研究では、人見知りがスタートする時期についても調査が行われました。

その結果、平均的には7~8か月で現れることがことが多いことがわかっています。1歳になる前から知らない人を怖がるようになるのです。恐怖シャイネスはごくごく自然なことであると言えます。

 

②自意識型

自意識型は他人からの評価が気になる、公の場や目立ってしまう状況で体験されます。

つまり、周りの視線が気になる心性から起こるシャイネスです。10代から急激に大きくなることが分かっています。

以下は自意識型の一例です。

・飲み会で会話できない・・・
・どぎまぎすると恥ずかしい思われる…
・好きな人だと緊張する・・・
・人前で話せる自信がない・・・

自意識型は10代から増えていきます。小学生の頃は自由闊達だったけど、中学生ぐらいから人が怖くなって来たという方は、自意識型に当てはまりそうです。

一方で自意識シャイネスは10代から急激に増えてきます。幼少期は社交的だったのに、10代になったとたん人見知りになってしまう方は、自意識シャイネスが活性化していると考えられます。

日常生活に支障が出るほどに大きくなると「社交不安症」と診断されることもあります。社交不安症を発症した人の約75%が15歳以下で発症しています(図1)。

社交不安障害

図1. 社交不安障害の発症年齢(DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアルより、一部改変)

社交不安症の特徴は、発症年齢と相談に訪れた年齢に差があることです。発症は15歳までが一般的であるにも関わらず、悩みを打ち明けることができないのです。

ましては15歳以下の人が「人見知り」という悩みで専門機関に通っている姿は想像しにくいでしょう。

ある研究では、発症年齢と10年以上ずれた30代半ばで医療機関や心理カウンセリングを行っている機関を訪れる傾向が見られることが分かっています。

このような相談の遅延が症状を悪化させる要因にもなると言えます。

人見知りに関する研究

シャイな男性は劣等感に陥りやすい

シャイな男性は、一般男性に比べて劣等感に陥りやすいことが分かっています。

石田(1998年)は、大学へ入学して8か月経過した新入生を対象に人見知りに関する研究を行いました。まずは女性のテスト結果から見ていきましょう。

人見知り 比較

女性の場合、シャイな人とシャイでない人との図の大きさは小さな差になっています。つまり女性にとってシャイ傾向は、相手を好きになったり、好かれたりといったことにあまり影響しないと言えます。

一方、男性の場合はどうでしょうか。男性の結果は以下の通りです。シャイな男性親密性のテスト結果

男性の場合、シャイな人とシャイでない人とに親密性で大きな差が出ていることが分かります。男性は好かれたり、好きになったりする場合に、シャイ傾向の大きさが重要な基準となるのです。

こうした男女差は、文化的な違いも大きく影響していると考えられます。

女性の場合は人見知りは奥ゆかしさや、かわいらしさとして見られることがあります。一方で、男性の場合は、自信がないとみられてしまうこともあります。

このような文化的なとらえ方が劣等感に結びついて、対人関係での自信のなさにつながっている側面がありそうです。

周囲を気にすると不安になる

人見知りのように周囲からの視線に意識が向いてしまうことを「公的自己意識」呼びます。「公的自己意識」が過剰になると、対人不安が起こりやすいと考えられています。

キム(2005)の研究では、522名を対象に「公的自己意識がメンタルへルスにどんな影響を与えるか?」について調査を行っています。

対人不安と公的自己意識

その結果、上記の図のように公的自己意識は「対人不安」に影響することが分かりました。周りの目を意識しすぎると、人との関わりが怖くなったり、自己主張が難しくなってしまいます。

毎回変わる評価に付きあっていては、不安に常に付きまとわれることになります。もちろん、ある程度は公的自己意識は必要ですが、常時周りの目を気にしている場合は注意が必要です。

失敗したくない→人間関係で悩む

齋藤(2009)は、大学生474名に対して、対人恐怖心性について調査を行いました。その結果、完璧主義傾向が強い、失敗を過剰に恐れる人は、

「集団にとけこめない」
「人間関係の当惑」

があることがわかりました。つまり、人見知りになりやすいということです。

失敗過敏と人見知り

上記の図の数字は相関係数と呼ばれるものです。簡単に説明すると、AとBはどれぐらい関わりがあるかという数字です。心理学的には0.4~0.6の数値はある程度関連していると解釈していきます。

人見知り傾向が強い方は「失敗はダメだ」「嫌われたくない」と意識するあまり、ますます人見知りを増幅されている可能性もあります。

人見知りの遺伝的影響

人見知りの原因としては、もともと緊張しやすい遺伝子を持っていることが挙げられます。

私たちが感じる緊張にはS遺伝子とL遺伝子の働きに左右されます。ヴェルツバーグ大学精神医学部のピーターレッツ博士(1996)は、それぞれの遺伝子について以下のように報告しています。

「S遺伝子」
心身の安定に必要な「脳内伝達物質・セロトニン」の分泌に影響を及ぼす。

「L遺伝子」
S遺伝子とは対極にあり、緊張しない遺伝子という性質があるのです。

さらにS遺伝子とL遺伝子の割合で人間は、

SS型・・・緊張や不安になりやすい
SL型・・・緊張や不安は中程度
LL型・・・緊張や不安に強い

の3つに分けられます。SS型が最も人見知りになりやすいタイプであり、LL型の人たちはプレッシャーや不安に強く、外向的な人が多いです。

センら(2004)は、日本とアメリカの人たちのS遺伝子とL遺伝子の割合を調べました。

遺伝子と人見知り

日本はSS型とSL型に分類される人の割合が多く、その割合は世界でも最高水準に位置づけられることが、多くの研究や調査で示されています。

お知らせ

当コラムは公認心理師、精神保健福祉士により作成されています。もっと心理学や人間関係を学習したい方は下記のコミュニケーション講座でぜひお待ちしています。

コミュニケーション講座

監修

・川島達史
・公認心理師,精神保健福祉士
・目白大学大学院心理学研究科卒
Youtubeチャンネル

 

・中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999)心理学辞典 有斐閣
・石田靖彦 (1998) 「友人関係の親密化に及ぼすシャイネスの影響と孤独感」. 社会心理学研究 , 14 (1) , 43-52.
・Sen S, et al.’s (2004) Meta-analysis of the association between a serotonin transporter promotor polymorphism (5-HTTLPR) and anxiety-related personality traits. Am J Med Genest
キム(2005)韓国と日本の大学生における対人不安と同一性,公的自己意識,相互依存的自己との関係 パーソナリティ研究 14(1), 42-53, 日本パーソナリティ心理学会
自己志向的完全主義の特徴 : 精神的不健康に関する諸特性との関連から 2009 齋藤, 路子; 今野, 裕之; 沢崎, 達夫 対人社会心理学研究. 9 P.91-P.100
・日本精神神経学会 監修 (2014) DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル