ピグマリオン効果の意味

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「ピグマリオン効果」について解説していきます。

ピグマリオン効果

目次は以下の通りです。

①ピグマリオン効果とは
②迷路実験
③教師・生徒実験
④日本の研究
⑤ピグマリオン効果を生かす方法
⑥ピグマリオンと類似する効果
⑦ゴーレム効果とは

是非最後までご一読ください。

①ピグマリオン効果とは

意味

ピグマリオン効果は以下のように定義されています。

人は他人に対して期待を持っている
この期待が成就されるように人は行動し
実際の他人の成績が左右される
(心理学辞典,1999,一部簡略化)

私たちは、意識するにせよ、無意識にせよ、他人に対して期待をしているものです。そしてその期待通りになるように、発言をしたり、行動したりするのです。

ピグマリオン-語源

ピグマリオンという言葉は、古代ローマの『変身物語,第10巻』が元になっています。

ピュグマリオン王は、自分で彫った女性の彫像に恋をしました。この姿を見た愛と美の女神アフロディーテは、彫刻に命を吹き込み、ついに人間にしてしまいます。そうしてピュグマリオン王は人間になった女性と幸せに暮らしました。

このようにポジティブな思い込みが、現実化することを象徴して使われるようになったのです。

ピグマリオン効果,由来,ギリシャ

 

提唱者

ピグマリオン効果は、心理学者のロバートローゼンタールによって提唱された概念です。ローゼンタールは20世紀の心理学者のうち、84番に引用数が多く、非常に有名な効果と言えます。ローゼンタール効果と呼ぶこともあります。

*こちらの動画の3分40秒からインタビューがはじまります。

 

②迷路実験

ローゼンタールには「迷路実験」と「教師・生徒実験」の代表的な研究があります。ローゼンタールは、実験協力者の学生たちに、ネズミを使った迷路実験をさせました。具体的には

これは優れたネズミだ
これはノロマなネズミだ

と2種類のネズミを渡しました。しかし、実際には全く両者には違いはありません。

結果はどうなったでしょうか?

結果としては、前者の優れたネズミの方が、成績が良かったのです。原因は以下の通りでした。

優れたネズミと言われた学生たち
→ネズミを丁寧に扱う

ノロマなネズミと言われた学生たち
→ネズミをぞんざい扱う

この両者のネズミの扱い方の違いが、実験結果に反映されたものとローゼンタールは考えました。

③教師・生徒実験

ローゼンタールは別の研究として「教師の生徒に対する期待の効果」を検証しました。具体的な実験デザインは以下の通りです。

・6つの学年,それぞれ3クラス,合計18クラスで調査
・あらかじめ20%の児童をランダムに選ぶ
・学級担任に授業の前に児童の名簿を見せる
・名簿には以下の情報が記載されている
「1年以内に成績が開花する期待できる!!」

結果はどうなったでしょうか?

8か月後にテストをすると実際にランダムに選んだはずの生徒の成績が大幅に良かったのです。

ピグマリオン効果,実験結果

上記の図のうち、黒い群は通常の生徒達の成績の平均で、縞々の群は期待をかけられた生徒たちの平均です。学年が若いほど成績に差が出ているのが分かりますね。

*ピグマリオン効果については諸説あり、批判的な見解もあります

 

④日本の研究

ピグマリオン効果については、日本でも様々な研究があります。以下、結論のみ記載しました。面白そうなタイトルがありましたら展開してみてください。

ピグマリオン効果はスポーツの分野でも、パフォーマンスを上げる効果として有効なことが分かっています。伊藤(1977)は、コーチ1名、柔道の選手10名を対象にピグマリオン効果の検証を行いました。実験デザインは以下の通りです。

・選手をA群とB群の2つに分ける
A
コーチに将来柔道のパフォーマンスが伸びるはず!と告げる
B
何も告げない

 

結果はどうなったでしょうか?

1回目の試合と2回目の試合の結果はこちらです。
A群の赤い矢印
B群の青い矢印
比較してみください。どのような傾向があるでしょうか?

スポーツの試合結果とピグマリオン効果いかがでしょうか?

期待をかけたA
ほぼすべて右上の矢印が出ています

期待をかけなったB
全体的に右下に矢印が出ています

この実験からコーチから期待をかけられたA群にピグマリオン効果が現れたと推測することができます。

古城(1980)は小学校の教師24名を対象に調査を行いました。少々複雑な調査なので、じっくり説明します。

①テスト結果でグループ分け
児童に算数のテストを実施する
成績が良いグループ
成績が悪いグループ
にわける

②先生のアンケートでグループ分け
先生に質問を行い、
ポジティブ(ピグマリオン効果あり)な期待をする児童
ネガティブ(ピグマリオン効果なし)な期待をする児童
の2つを分ける。

③4グループに分類
2×2で4つのグループに分ける。

④ 好成績児童の成績の原因を探る
好成績の児童がなぜその成績になったのかと先生に聞く。具体的には、「能力」によるものなのか「運」によるものなのかを教師が判定する。

結果はどうなったでしょうか?

 

ピグマリオン効果とは

つまり、

ポジティブ(ピグマリオン効果あり)な期待を
した児童の高成績は
「児童の能力が高い」

ネガティブ(ピグマリオン効果なし)な期待を
した児童の高成績は
「たまたま運がよかったから」

と考えてしまう傾向があったのです。原因帰属理論では、能力への帰属の方が、運など外的要因のせいにするよりも、成果が出やすいことがわかっています。

 

⑤ピグマリオン効果を生かす方法

ポジティブな影響があるピグマリオン効果は、学校や職場、日常生活にぜひ取り入れたいものです。ここからは具体的な方法を見ていきましょう。

職場での活用例

仕事では部下はもちろんプロジェクト―チームなど、様々なケースでピグマリオン効果が利用できます。

みんな優秀だからきっとうまくいくよ
期待している旨を伝える
例え失敗をしても取り返せる!と期待する

など、前向きな期待を自分の中で高め、また実際に伝えることが大事です。

恋愛での活用例

恋愛では、パートナーにポジティブな期待することで、ピグマリオン効果が現れ、期待した行動に促せます。たとえば

きっと僕たちはうまくいく
あなたは能力抜群!きっと出世するわ!
喧嘩をしても乗り越えていける

など、パートナーへの期待を言葉にしてやる気を引き出すのが効果的です。

子育ての活用例

子供を褒めることで、前向きな子供に育てることができます。

〇〇ちゃんは自分で考えることができる
自分の力で乗り越えられるよ
努力家だからやり遂げるに違いない

などの声かけは、ピグマリオン効果に有効です。過度の期待でなければ、積極的に頑張った点や、成長した点を、ほめるようにしましょう。

⑥ピグマリオンと類似する効果

ホーソン効果との違い

ホーソン効果とは、治療を受ける人が信頼する治療者に期待されていると感じることで、行動変容などが促され、結果的に病気が良くなる。もしくは、良くなったように感じる現象のことです。ホーソン効果は、統計上プラセボの1つとして扱われることがあります。

元々は、ハーバード大学が行った、米国のホーソン工場で労働者の作業効率の向上を目指すための調査から発見された現象になります。実験の1つでは、工場の電球を異なる明るさのものに変えて、労働者の生産性を測定しました。

その結果、どの電球に変えても生産性の増加が見られたのです。作業効率が高まった要因は、電球の明るさは関係しておらず、「ハーバード大学の実験に参加している」という気持ちが大きく影響していると報告されました。

ハロー効果との違い

ハロー効果とは、何かを評価する時に、その対象が持つ特徴的な要素に影響されて、他の部分についての評価が歪められる現象のことです。例えば、イケメン・美女は頭もいいし、性格もいいと思われやすいなどが挙げられます。

ハロー効果には、ポジティブに影響するものもあれば、ネガティブに影響するものもあります。例えば、ブサイクな人は能力まで低いと思われやすいなどです。これはポジティブハロー効果、ネガティブハロー効果と呼ばれています。

ピグマリオン効果は効果の影響を受けるのが相手、ハロー効果は効果の影響を受けるのが自分という違いがあります。

⑦ゴーレム効果とは

ピグマリオン効果の反対の意味として、ゴーレム効果が挙げられます。ゴーレム効果は以下の意味があります。

人に対して悪い印象を持ち接すると、実際に悪い人になってしまう効果

周囲が悪い印象をもつと、良い印象が打ち消されてしまい、周囲の期待通り悪い影響が出てしまうのです。例えば、学校で教師と生徒が接する場合

この生徒は元々能力が低い
この生徒は丁寧に教えても覚えない

など、生徒に対して教師の期待が低いと、実際に成績が下がりやすくなります。また恋愛、仕事などでも、最初から悲観的に考えると結果も悪くなりがちです。注意しましょう。

関連コラム

最後に、ピグマリオン効果と関連するコラムを紹介します。

選択的注意

ピグマリオン効果は、最初にプラスのイメージを持つことで、プラスの情報を集める効果があります。このように、特定の情報を集める心理を選択的注意と言います。

ピグマリオン効果と近い概念なので、ぜひこちらのコラムも合わせて読んでみてください。

選択的注意,知覚コラム

褒める力をつけよう

ピグマリオン効果を現実化するには、相手への声掛けの引き出しが大事になってきます。ほめ上手になりたい方は下記のコラムを参考にしてみてください。

褒める言葉コラム

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コミュニケーション講座

監修

・川島達史
・公認心理師,精神保健福祉士
・目白大学大学院心理学研究科卒
Youtubeチャンネル

*出典・参考文献
井上 健治・大沢 啓子・亀谷 秀樹・佐々木 正宏・渡辺孝憲 1978 教師の期待効果に関する研究 東京大学教育学部紀要 17, 59-76, 2-28.
中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999)心理学辞典 有斐閣
伊藤 三洋 1977 柔道の教授 武道学研究 10, 2, 77-79.
古城 和敬・天根 哲治・相川 充 1980 教師期待と児童の成績に対する教師の原因帰属―教師の個人差の観点からの検討― 日本教育心理学会総会発表論文集 22, 37.
西門 正巳 1991 経営革新へのパラダイムと戦略 岡山大学経済学会雑誌 22(3・4), 755-773, 02.
R.H. Waterman, Jr., The Renewal Factor,Raphael Sagalyn Inc.,1987.(奥村昭博 監訳『超優良企業は革新する』講談社)
Rosenthal,R. & Jacobson,L. 1968 pygmalion in the classroom.Holt.
T.J.Peters and R.H.Waterman, 1982 In Search of Excellence,Harper & Row Publishers Inc.