帰属意識の意味とは

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「帰属意識」について解説していきます。

帰属意識の意味とは,OTナガミネ様作成

目次は以下の通りです。

①帰属意識とは何か
②帰属意識と種類
③理論モデル
④組織帰属意識と5つのタイプ
⑤帰属意識と心理的影響

是非最後までご一読ください。

①帰属意識とは何か

心理学辞典(1999)「1」によると帰属意識((belongingness)は以下のように定義されています。

ある集団や組織に所属することに基づく情緒的な愛着

私たちは、なんらかの集団に対して、自分がその集団の「一員」や「メンバー」であるという意識や自覚を持つことがあります。この意識が帰属意識になります。

②帰属意識の種類

帰属意識には様々なものが挙げられます。以下代表的なものを列挙します。

組織帰属意識

尾高(1963)「1」は組織帰属意識とは「ある集団の成員が単に形の上でそれに所 属して いるだけではなく,心から,つまり生活感情の上でもそれの一 員で 有り,その集団を自分の 集団,自分の生活根拠としてかんじている度合」と定義しています。

私たちは、社会生活を営む上で、会社、自治会、スポーツチームなど、複数人からなら組織で活動することがあります。この組織に対する帰属意識が、組織帰属意識になります。

地域帰属意識

松本(1986)「3」は地域帰属意識を「ある人間が一定の地域に居住しているという客観的状態すなわち住民性に加えて、その地域社会に帰属する成員であるという主観的状態を示すもの」と定義しています。

私たちは、いずれかの地域に住んでいますが、思い出や人間関係ができると地元愛が芽生え、地元や出身として意識します。。これが地域帰属意識と言えます。

階層帰属意識 現在調査中です

「4」

現在調査中です

「5」

 

③理論モデル

マズローと帰属

心理学者マズローは、帰属意識は人間の主要な欲求の1つだと考えています。マズロー(1943)は欲求5段階説で、所属の重要性について説明しています。欲求5段階説とは、人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲するとされるという理論です。

欲求5段階説では、3段目に「所属と愛情欲求」があります。つまり、生理的欲求、安全欲求が満たされると、「組織に所属したい」「愛されたい」という欲求が芽生えてくるのです。

マズローの欲求5段階説とは

帰属意識については主に、「組織帰属意識」「階層帰属意識」に関する研究が盛んです。

ロイ・バウマイスターと帰属意識

ロイ・バウマイスターら(1995)「5」によれば、人間の活動のほとんどは、帰属のために行われているといわれています。権力、親密さ、承認、達成、などの目標は帰属意識から生まれます。

人は本能的に所属して、愛着のある人間関係を形成したいという欲求が備わっています。自然と人間関係や帰属を維持し続けるような行動特性があると考えられます。

 

④組織帰属意識と5つのタイプ

組織帰属意識では、組織に対する個人の帰属意識に関する研究が行われ、満足感などが調査されています。階層帰属意識研究では、上流、中流、下流などの意識に関する分析と、心理的影響などが調査されています。

関本・花田(1987)「6」は企業労働者4,539人を対象に、帰属意識について詳細な分析を行いました。その結果以下の5つのタイプがあることがわかりました。

①伝統型

企業の価値観を大事にし、働く意欲もある一方で、自分のための利益を追求しないタイプです。伝統的な日本の帰属意識を反映したタイプと解釈できます。満足感(正確には満足型)との関連は、34.6と最も高い数値となっています。

②企業従属型

目標意欲が低い、積極的な気持ちも低い、自分のための利益を追求しないタイプです。全体的に受け身で、企業に従属的な傾向があると推測されます。満足感(正確には満足型)との関連は、29.3と高い数値となっています。

③自己主体型

目標が高く、自分のための利益を追求する一方で、会社に残りたいという意識が低いタイプです。企業の目標と自分の目標がリンクしていて、利害関係が健康的な限りは、関係が続いていくと推測されます。満足感(正確には満足型)との関連は、26.1と高い数値となっています。

④巧利型

目標意欲が低い、積極的意欲が低い、一方で自分のための利益を追求するタイプです。企業はあくまで利益のために、所属している意識があり、利害関係が無くなり次第、関係が解消されると推測されます。満足感(正確には満足型)との関連は、2.0と低い数値となっています。

⑤希薄型

目標意欲が低い、積極的意欲が低い、自分のための利益を追求するタイプでもないタイプです。希薄型の方は、ただそこに存在しているという感覚が強く、帰属意識としてはかなり弱いと推測されます。満足感(正確には満足型)との関連は、8.0と低い数値となっています。

 

⑤帰属意識と心理的影響

組織への帰属意識と幸福感

北川・藤井(2012)「7」はインターネット上の300名を対象に、共同体帰属意識と主観的幸福感について研究をしました。その結果の一部が以下の図です。

上図は、何らかの組織に帰属している人は、幸福感を覚えやすいことを意味しています。ここからは推測となりますが、自分が所属している組織へ愛着を持つ方ほど、幸福感が高い傾向にあると予想できると言えます。

地域への帰属意識と幸福感

北川・藤井(2012)の同研究では、地域への帰属意識と主観的幸福感についても研究がされています。その結果、.327**の正の相関があることがわかりました。これは地域にかかわりを持つと幸せになりやすいことを意味しています。

不安感が減る

大坪(2017)「8」は、大学生254名に対して、ソーシャルサポートと心理的な問題について調査を行いました。その結果が以下の図です。

コミュニティ

上図は、大切な人のサポートを得られやすい方は、不安感が減りやすいことを意味しています。ここからは推測となりますが、コミュニティに所属し、帰属意識を得ると、お互い助け合う関係が増えます。その結果、心理的に安定しやすくなると言えそうです。

社会的排斥の影響

社会的排斥とは、集団や個人から仲間はずれにされることを指します。排斥を受けた人は、心理的なディストレスに敏感に反応し,それに対してすぐに対処するように進化してきたとされています。この心理的なディストレスは、「社会的痛みsocial pain」と呼ばれることもあります。排斥は思考、行動、感情へ反応を促進し、長期的には健康や適応にネガティブな影響を及ぼします。

疎外感の被害

社会的排斥を受けて、帰属意識が持てないと、孤独感や疎外感につながる可能性があります。近年の研究では、孤独感の健康被害は1日1箱のタバコを吸うことに匹敵すると報告されています。(Holt-Lunstad,2010)「9」

 

⑤関連コラム

チームワーク力を高める方法

当コラムでは帰属理論の意味や研究を中心に解説してきました。以下のコラムではより実践的にチームワーク力をつける方法を解説しました。理解を深めたい方は参照ください。

チームワーク力をつける方法

 

リーダーシップの取り方

帰属意識のあるチームを作るには、リーダーシップを取れる方が必要になります。チームをまとめる立場にいる方は以下のコラムも参照ください。

リーダーシップ力つける方法

 

コミュニケーション講座のお知らせ

公認心理師のもとで心理学や人間関係のあり方を学びたい方は、コミュニケーション講座をおすすめします。講座では

・人間関係の心理学の学習
・ビジネス心理学の学習
・心理療法の学習

などたくさん学ぶことができます。楽しい講座の雰囲気を大事にしています(^^)興味がある方は下記のお知らせをクリックして頂けると幸いです。是非お待ちしています!

コミュニケーション講座

ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


YouTube→
Twitter→
元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 元専修大学人間科学部教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

[1]心理学辞典
「2」尾 高 邦 雄:X1963」 「産 業 社 会 学 」 ダ イ ヤ モ ン ド 社 。
「3」松本 康(1986)「地域帰属意識と住民意識」庄司興吉著『住民意識の可
能性』pp. 119

「4」
Maslow, A. H. (1943). A theory of human motivation. Psychological Review, 50(4), 370–396.
https://psycnet.apa.org/record/1943-03751-001

「5」Baumeister, R. F.; Leary, M. R. (1995). “The need to belong: Desire for interpersonal attachments as a fundamental human motivation”. Psychological Bulletin. 117 (3): 497–529.

「6」
企業帰属意識の構造化と,影響要因の研究 関本 昌秀 花田 光代 産業・組織心理学研究 1987

北川・藤井(2012)「6」

大坪(2017)「7」

「8」
Julianne Holt-Lunstad  ,Timothy B. Smith ,J. Bradley Layton (2010)Social Relationships and Mortality Risk: A Meta-analytic Review https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1000316