昇華の意味とは

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「昇華」について解説していきます。

昇華の意味とは,丑蟻様作成

目次は以下の通りです。

①昇華の意味とは
②昇華の意義の発展
③昇華とVaillantの分類
④昇華とアメリカ精神医学会による分類
⑤関連コラム

是非最後までご一読ください。

①昇華の意味とは

意味

昇華はで、以下のように定義されています。

性的欲求や攻撃欲求など社会的に許容されない本能的な欲求を容認可能な行動に変容して充足させること。つまり,昇華は,置き換えを基本とする機制である。他の機制とは異なり,欲求は抑圧されることなく,現実に取り組むエネルギーとなる。
(心理学辞典,1999)[1]

社会的に認められない欲求や無意識的なエネルギー(イド)が、芸術的活動・宗教的活動など社会的に価値あるものに置換されること。精神分析の用語。
(広辞苑 第六版,2008)[2]

つまり、社会的に好ましくない欲求を、多くの人に認められる欲求に変容して、物事に取り組むエネルギーとすることを意味します。

具体例

具体的には以下のような例が挙げられます。

怒りっぽい性格をスポーツで闘争本能として活かす
いじめられた体験を元に福祉職に就く
失恋した心の痛みを小説を書く際に活かす
社会に対する不満を歌詞にして発信する

このように昇華はそのまま吐き出すとネガテイブな結果になるものを、うまくコントロールして前向きな活動に活かしていくことになります。

②昇華の意義の発展

フロイトと昇華

昇華という概念は、1905年にフロイトが提唱したとされています[3]。フロイトが生きた時代は文化的に性的エネルギーは抑圧されがちでした。フロイトは性的なエネルギーは無意識に歪んだ価値で溜まり、うまく解消しないと心の問題につながると考えました。一方で、抑圧された性的エネルギーは、芸術や文化的な活動として前向きに活かすことができると考えました。

昇華の意味の発展

1936年に、フロイトの娘であるアンナフロイトが、The Ego and the Mechanisms of Defense[4]にて様々な防衛機制の1つとして昇華を分類しました。現在では、性的エネルギーに限らず、心理的な問題を前向きに活かすという意味で広く使われるようになっています。

例えば、現実の生活における失恋の経験を、小説を書く際の参考にしたり、災害にあった辛い気持ちをバネに人一倍仕事を頑張るなどが挙げられます。

③昇華とVaillantの分類

昇華は防衛機制の1つに含まれます。防衛機制とは受け入れらない現実に直面したときに、その不安を和らげようとする無意識の心理的なメカニズムのことです。

昇華は防衛機制の中でも高次な防衛機制とされています。1986年に精神科医のVaillantは、防衛機制をレベル1からレベル4まで整理しました[5]。具体的には下記の図のように「昇華」はレベル4の「成熟した防衛」に分類されます。昇華を上手く活用していくと、攻撃性や自己否定的な気持ちを前向きな力に変えることができます。

劣等感

④昇華とアメリカ精神医学会の分類

中西(1999)[6]はアメリカ精神医学会が公表している防衛機制を以下のように分類しなおしました。

上図では、昇華は「高度な適応水準」とされています。Vaillantの分類と同じく、アメリカ精神医学会も昇華を心理的に成熟したものとして捉えていることがわかります。

④関連コラム

防衛機制

今回は防衛機制の1つとして昇華を紹介しました。防衛機制には先程挙げたように様々な種類があります。理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。

防衛機制とは何か

精神分析的心理療法

昇華の源流はフロイトが提唱した精神分析的心理療法にあります。精神分析的心理療法を理解したい方は以下のコラムを参照ください。

精神分析的心理療法

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ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] 中島 義明・子安 増生・繁桝 算男・箱田 裕司・安藤 清志(編)(1999).心理学辞典.有斐閣

[2] 新村出(編)(2008). 広辞苑第六版(普通版)岩波書店

[3] 堀川聡司(2015).昇華の価値論 京都大学大学院教育学研究科紀要 P136

[4] Anna Freud(1936).The Ego and the Mechanisms of Defense 

[6] 中西 公一郎(1999).防衛機制の概念と測定 心理学評論 42 巻 (1999) 3 号 p. 261-271
*[5]は[6]を参考にして記述しました。