帰納法,演繹法の意味

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「帰納法,演繹法」について解説していきます。

帰納法,演繹法

目次は以下の通りです。

①帰納法とは
②演繹法とは

基礎からわかりやすく解説します。ぜひ最後までご一読ください。

帰納法とは

意味

帰納法(きのうほう)は、大辞林(2019)[1]によると以下のように定義されています。

帰納的推理による事象の研究法。結論の蓋然的命題は「自然の斉一性」を仮定することで普遍的法則とみなされ因果関係が確定される。

少し難しい定義になっていますね。蓋然的とは、ある程度はわかってきているという意味があります。自然の斉一性とは、何度も起こること、同じような場面で同じ結論になることは、その後も起こり続けるという意味があります。

そのうえで、帰納法をわかりやすく言い換えると以下のようになります。

何度も起こることを根拠として、普遍的な法則を見つけ出そうとする論理的推論。

具体例

具体的な事例としては以下が挙げられます。

事柄① 猫は老いた
事柄② 父も老いた
事柄③ 魚も老いた
法則:生物は老いる

事柄① SNSでおにぎり150円になったのがバズる
事柄② ニュースで物価高が放送される
事柄③ 近所のスーパーで卵や牛乳が値上がり
法則:日本経済はインフレ傾向である

このように細かな事柄から、より広い事柄に展開していく思考法になります。

提唱者

帰納法はイギリスの哲学者フランシス・ベーコンによって提唱されました。ベーコンは経験論の父と呼ばれてきました。彼は、帰納的推論と自然への注意深い観察のみに基づく科学的知識の可能性について論じました。

科学者が誤解を招くことを避けることを目的とした、懐疑的アプローチを使用することで科学を達成できると主張しました。そこから生まれたのが帰納法で、既存の知の体系を整理、正しい知識を獲得する方法として提唱しました[2]

イドラと帰納法

ベーコンは正しい知識を習得するのに障害となる先入観を「イドラ」と呼びました。ベーコンが批判したイドラには以下の4つの種類があります。

1.種族のイドラ
人間の本性に由来し、狭い人間中心の見方から生じる偏見

2.洞窟のイドラ
個人の身体的特徴・環境・教育によって生まれる、その人特有の偏見

3.市場のイドラ
言語の不当な使用から生じる偏見

4.劇場のイドラ
当時影響のあった哲学の学説への盲信や誤った論証から生じる偏見

ベーコンはこのようなイドラを批判することで、それまで台頭していた神が森羅万象を創造したという証明不可能な自然への考え方を変えようと試みました。そこで、実験と検証を繰り返し、複数のデータから、事実の本質を明らかにしていく帰納法を提唱しました。帰納法は経験主義に基づいており、この思考法によって近代科学が成立したことから、ベーコンは「近代科学の父」とも呼ばれています。

帰納法の練習問題

帰納法の考え方を身に着けたい方のために、練習問題をご用意しました。より深く理解したい方は以下を展開してみてください。

帰納法のトレーニングに挑戦してみましょう。以下の主張を帰納法で行ってみてください。

事柄①建築は計画性が大切だ
事柄②商品販売は計画性が鍵
事柄③イベントは計画性が鍵

法則⇒

事柄①クリロナはW杯で緊張で無得点
事柄②ゴルフで集中力を切らし負けた
事柄③プロ選手は精神面を強化する
法則⇒

事柄①異物混入でマック客激減
事柄②タレントは不倫で仕事激減
事柄③ミスで取引先と契約破綻
法則⇒

 

解答例

事柄①建築は計画性が大切だ
事柄②商品販売は計画性が鍵
事柄③イベントは計画性が鍵
法則⇒成功の鍵は計画性だ

事柄①クリロナはW杯で緊張で無得点
事柄②ゴルフで集中力を切らし負けた
事柄③プロ選手は精神面を強化する
法則⇒スポーツは精神面が重要だ

事柄①異物混入でマック客激減
事柄②タレントは不倫で仕事激減
事柄③ミスで取引先と契約破綻
法則⇒仕事では信頼が重要だ

 

演繹法とは

意味

演繹法(えんきほう)は、大辞林によると以下のように定義されています。

演繹による推理の手続き。代表的なものに三段論法があ

三段論法とは、一般的な法則である「大前提」を「小前提」にあてはめることで、個別的・特殊的な結論を得る論理的推論を意味します。そのうえで、帰納法をわかりやすく言い換えると以下のようになります。

一般的な法則を、個別の事象にあてはめて、結論を出そうとする論理的推論

具体例

具体的な事例としては以下が挙げられます。

大前提:人間は老いる
小前提:私は人間である
結論:つまり私は老いる

大前提:果物はビタミンが豊富だ
小前提:みかんは果物だ
結論:みかんはビタミンが豊富だ

このように、一般的な大前提を、小前提にあてはめて、結論を導き出そうとする思考法になります。

提唱者

アリストテレス

提唱者は古代ギリシャの哲学者アリストテレスとされています。アリストテレスは経験的事象を元に、演繹的に真実を導き出す分析論を重視していました。こうした手法は論理学として、三段論法などの形で体系化されました。この三段論法のことを演繹法と呼びます。

演繹法の練習問題

演繹法の考え方を身に着けたい方のために、練習問題をご用意しました。より深く理解したい方は以下を展開してみてください。

以下の問題に対して、空欄部分を埋めてみましょう。

大前提:ビジネス成功の鍵は計画性だ
小前提:商品販売はビジネスである
結論:

大前提:スポーツは精神面が重要だ
小前提:
結論:ゴルフでは精神面が重要だ

大前提:
小前提:イベント業は仕事だ
結論:イベント業は信頼が重要だ

 

解答例

大前提:ビジネス成功の鍵は計画性だ
小前提:商品販売はビジネスである
結論:商品販売は計画性が鍵だ

大前提:スポーツは精神面が重要だ
小前提:ゴルフはスポーツだ
結論:ゴルフでは精神面が重要だ

大前提:仕事では信頼が重要だ
小前提:イベント業は仕事だ
結論:イベント業は信頼が重要だ

 

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ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] 松村明, 三省堂編 修所編(2019).大辞林 第四版 大型本 .

[2] 桂 壽一(1983).ベーコンの帰納法について (昭和五十七年十月十二日提出)