自尊心の意味とは
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「自尊心」について解説していきます。
目次は以下の通りです。
①自尊心の意味とは
②自尊心の種類
③自尊心の心理学研究
④関連コラム
是非最後までご一読ください。
①自尊心の意味とは
意味
自尊心は様々な意味が含まれる包括的名称(umbrella term)と言われています。多様な意味がありますが、心理学辞典(1999)においては広義のように表現されています。
自己に対する評価感情で、自分自身を基本的に価値のあるものとする感覚
尺度
自尊心は心理学の世界で様々な角度から研究されてきましたが、最も有名なのは心理学者のローゼンバーグが1965年に作成した自尊感情尺度です。ローゼンバーグは10の質問で自尊心を測る尺度を作成し、この尺度を基準として様々な研究が進められました。以下はローゼンタール自尊心尺度(星野翻訳,1970)を参考にして筆者が書き起こしたものです。
1.私は少なくとも人並みに価値のある人間だ
2.私は長所がたくさんある
3.自分を失敗者だと感じる*
4.私は物事を人並みにできる
5.私には誇りに思えることが少ない*
6.私は自分を可能性のある人間だと思う
7.自分にだいたい満足している
8.自分をもっと尊敬できたらと思う*
9.自分は役立たずな人間だとときどき思う*
10.自分はだめな人間だとときどき思う*
*は逆転項目
②自尊心の種類
自尊心はローゼンタールの尺度を元に研究が進んでいきました。Jordan(2003)は自尊心には「顕在的自尊心」「潜在的自尊心」の2点があると主張しています。
顕在的自尊心
顕在的自尊心とは、自分で自覚できる自尊心を意味します。例えば、自分の好きなところはどういうところですか?と質問されたとします。この時、しっかり答える事ができる部分は顕在的自尊心に当てはまります。顕在的自尊心は、言語化することが可能な自尊心です。
潜在的自尊心
潜在的自尊心とは、自分自身で自覚できない自尊心を意味します。潜在的自尊心は、知らず知らずのうちに行動に影響すると言われています。
顕在的自尊心、顕在的自尊心はそれぞれ組み合わせによって以下の4つに分けられます。特徴は以下の通りです。
③自尊心の心理学研究
心理学の世界では自尊心について様々な研究がなされてきました。
シャイになりやすい
桜井(2000)は大学生361名を対象に自尊感情について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。
上図は、自尊感情が低くなると「恥ずかしがり屋」「不機嫌」「不安」「自分は無力だと考える」と考えやすくなるという意味になります。
傷つきやすくなる
松田(2006)は大学生132名を対象に自尊感情の脆弱性(弱さ)について調査をしました。結果の一部が下図となります。
上図は、自尊感情の脆弱性が強くなると、「ミスを過度に気にする傾向」「完全でありたい欲求」が増えるということを意味しています。
幸福感が高まる
片受ら(2016)は大学生319名を対象に自尊心について調査を行いました。その結果が以下の図です。
上図は、自尊感情が高くなると「適応感」「主観的幸福感」が高くなり、「完璧主義」が低くなることを意味しています。適応感とは、簡単にいうと周囲と上手くやっていけているという感覚です。
自尊心が高まることで、適応感が増したり、幸福感が高まります。余裕ができると、完璧でなくとも自分を「許せる」ようになると推測されます。
家族関係が安定する
豊田ら(2004)は都内の大学生150名を対象に、「自尊心」と「家族関係」の関連について調査をしました。結果の一部が以下の図となります。
上記は、自尊心が高いグループは家族統合度が高い人が多く、自尊心が低いグループは家族統合度が低い人が多いことをいみしています。このことから、自尊心が安定すると、家族関係も安定すると推測できます。
④関連コラム
自尊心を高める方法
当コラムでは自尊心の意味や研究を紹介してきました。実践的に自尊心を向上させたい方は以下のコラムを参考にしてみてください。自分の長所を発見し、自信を持つ方法を紹介しています。
自己肯定感診断
筆者は自尊心に近い、自己肯定感の高さを簡易的に診断できるシステムを作りました。客観的に自尊心の高さを把握したい方は一度チェックしてみてください。
心理学講座のお知らせ
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ダイコミュ用語集監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 元専修大学人間科学部教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
出典・参考文献
松田 信樹 2006 自尊感情の脆弱性―尺度作成の試みー 日本心理学会大会発表論文集 2006,70,2EV012.
豊田 加奈子ら(2004)大学生の自尊心と関連する諸要因に関する研究 東洋大学人間科学総合研究所紀要 2004 38-54
桜井茂男(2000)ローゼンバーグ自尊感情尺度日本語版の検討 Bulletin 0f Tsukuba Developmental and Clinical Psychology,vol.12 2000三好 昭子 2007 人格特性的自己効力感と精神的健康との関連 ―漸成発達理論における基本的信頼感からの検討― 青年心理学研究 19, 21-31.
片受 靖(2016)潜在的・顕在的自尊心の高低と抑うつとの関連について 立正大学心理学研究所紀要
原島 雅之, 小口 孝司(2007)顕在的自尊心と潜在的自尊心が内集団ひいきに及ぼす効果 2007 年 47 巻 1 号 p. 69-77
Secure and Defensive High Self-Esteem. Jordan, Christian H.,Spencer, Steven J.,Zanna, Mark P.,Hoshino-Browne, Etsuko,Correll, Joshua Journal of Personality and Social Psychology, Vol 85(5), Nov 2003, 969-978
山本真理子 2001 心理測定尺度集Ⅰ-人間の内面を探る サイエンス社
星野命 1970 感情の心理と教育 児童心理