内発的動機づけの意味

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「内発的動機づけ」について解説していきます。

内発的動機づけの意味

目次は以下の通りです。

①内発的動機づけとは
②提唱者や歴史
③内発的動機づけの効果
④内発的動機づけへの影響要因

是非最後までご一読ください。

内発的動機づけとは

外部からの賞罰によらず、自らの自発性からくる動機づけ

自らの知的好奇心や興味によって行動し、報酬や罰に左右されない場合、内発的動機とされます。

例えば
・趣味に没頭する
・相対性理論について知りたい
・三国志の歴史を学ぶ
・仕事が楽しく自ら残業してしまう

などが挙げられます。

一方で、報酬や罰に左右される動機づけは、外発的動機づけと言われます。

歴史や提唱者

1950年代は、動因低減説が主流でした。動因提言説とは人はもともと、自分にとって不快な出来事がない場合に行動するという説です。例えば、おなかが減るから働く、疲れをとるために横になるなどがあげられます。

1960年代になると、人間は必ずしも不快な感情を解消するために行動するわけではないという主張が盛り上がります。そして心理学者のYoungとMurrayが動因提言説への反論として「内発的動機づけ」の概念化を行いました。

その後、1970年代には、DeciやLepperといった研究者が、内発的動機づけを高める要因や、抑制する要因などの研究を進めていきました。

内発的動機の効果

内発的動機が高いと以下のような効果があります。

学習や作業が長続きする

心理学者のDeciは内発的動機づけの効果について、以下の実験をしています。その実験では、ソマ・パズルと呼ばれる当時流行していたパズルを用いて、2つのグループを比較しています。

A.パズルを解くと
報酬がもらえるグループ

B.パズルを解いても
報酬はもらえないグループ

その結果、Bの方がパズルに取り組む時間が長いという結果になりました。Bはパズルの面白さに内発的動機づけが高まって、取り組む時間が長かったということです。このように、内発的動機づけが高まると、学習や作業の時間が持続しやすいという効果があります。

なお、報酬を与えてしまうことで、やる気がそがれることをアンダーマイニング効果と言います。

周りの内発的動機を高める

教える側の内発的動機づけが高いと、教えられる側の内発的動機づけが高まることが知られています。これを「動機づけの社会的伝達モデル」と言います。

寺尾・中谷(2019)は大学生を対象に、教師の内発的動機づけが高いと認知すると、生徒の内発的動機づけが高まるかどうかを調べています。

下の図は結果の一部です。

ざっと解説をしますと、Aの「教師の内発的動機づけが高いと認知」すると、学習活動への期待に影響をして、Bの「生徒の内発的動機づけ」が高まるということです。

言い換えると、「この先生は教えること自体が楽しそうだ」と生徒が感じると、「この授業内容は楽しそうだ」と内発的動機づけが高まるか?ということです。

つまり、教師の内発的動機づけが高いと生徒が認知すると、生徒の内発的動機づけが高まることがわかりました。

このように、内発的動機づけは教師から生徒へ伝達される性質があり、教師側の内発的動機づけも重要だということを示しています。

内発的動機への影響要因

内発的動機が高い人は以下の特徴があります。

深い学習行動

田中(2018)は内発動機づけについて、学習行動や自己効力感などの関係を調べています。その結果、内発的動機づけは深い学習行動との関連が強いことがわかりました。

深い学習行動とは
・新しいことを勉強するときは、
前に学んだことと関連させて勉強する
・図や表を作る

など、単純な暗記に頼らない勉強方法です。内発的動機づけが高い人は、学習方法もより効果的な方法を取ると言えます。

開放性が高い

開放性とは、ビックファイブとよばれる性格の5因子のうちの1つです。開放性が高い方は、新しいことに挑戦することが好きで、好奇心が旺盛な傾向があります。内発的動機が高くなりやすいと推測されます。

アイデンティティが確立

内発的動機が高い方はアイデンティティが確立されている傾向があると言えます。アイデンティティが確立されている人は、自分なりの価値観が定まっています。外部の報酬よりも自分が何をすべきかの基準が明確になっていると言えます。

 

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ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 元専修大学人間科学部教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

【出典、参考文献】

中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999)心理学辞典 有斐閣 

臨床心理学辞典  1999 恩田 彰  伊藤 隆二

田中希穂(2017)学習動機と自己効力感が学習行動におよぼす影響 同志社大学教職課程年報 (7),3-18

寺尾香那子,中谷素之(2019) 教師の内発的動機づけが学習者の期待形成および内発的動機づけに与える影響 日本教育工学会論文誌 43(2), 117-125

教育心理学研究 内発的動機づけ研究の展望 鹿毛 雅治 ジャーナル フリー 1994 年 42 巻 3 号 p. 345-359