共依存の意味とは

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「共依存」について解説していきます。

共依存の意味とは,こはく様作成

目次は以下の通りです。

①共依存とは何か
②共依存と歴史
③イネイブラーの心理
④共依存の典型例
⑤研究紹介
⑥共依存とパーソナリティ障害
⑦関連コラム

是非最後までご一読ください。

①共依存とは何か

定義

共依存とは以下の意味があります。

自己に対する過小評価のために、他者に認められることによってしか満足を得られず、そのために他者の好意を得ようとして自己犠牲的な献身を行なう傾向(加藤,1993 一部簡略化)[1]

自分を肯定できないがゆえに、他人の肯定にすがり、その結果、他者の言いなりになってしまう心理と言えます。

基本用語

共依存の関係では、

被共依存者 …依存される側
共存者   …依存する側

が存在します。共依存者はイネイブラーと呼ばれることもあります。イネイブラーは被依存症にとって望ましくない行動や習慣を促進してしまう傾向があります。

②共依存と歴史

共依存の概念が歴史に登場してきたのは1930年代です[2]。1930年代はアメリカにおいてアルコール依存症が、病気として認定された時期です。それからしばらくの間、アルコール依存症の治療は、病院や、自助グループを中心に行われていきました。

治療の実績が積み重ねられていくと、ある問題が頻発することがわかってきました。それはアルコール依存症の患者は、家族の元に戻ると再発してしまうという問題でした。

共依存者の存在

せっかく病院や自助グループで回復しても、家族と生活をすると、なぜか病気が再発してしまうのです。そうして、再び、家族から隔離し、病院や自助グループで治療を進めると、症状が回復するのです。

研究が進むと、アルコール依存症の家庭には、依存症患者のお酒を促進してしまう人がいることがはっきりとわかってきました。そうして1979年以降、アルコール依存症を支えてしまう関係を共依存(co-dependency)と呼ぶようになってきました[3]

意味の広がり

アルコール依存症は本人の問題と考えられていたのが、家族に病理があるケースもあることがわかり、共依存は非常に重要なワードとして扱われるようになってきました。

そして、当初はアルコール依存症の研究から発想された共依存という概念は、徐々にその対象が広がっていきました。現在では、アルコール依存症に限らず、薬物依存、ギャンブル依存、ひきこもり、DVなど、様々な心理的な問題で扱われるようになっています。

③イネイブラーの心理

イネイブラーの心理状態には、次のような特徴があります。

自尊心が低い

自尊心が低く、それゆえに相手に好かれたいという気持ちが強くなります。相手から嫌われることを何より恐れるので、服従してしまいます。

感情な奉仕精神

自分への愛情を確かなものにするため、相手に対して必要以上に尽くしてしまいます。例えば、手伝わなくて良いことまで手伝い、自分がなくてはならない存在になろうとします。

非共依存者を無力化

相手の愛情を独占したくなるため、相手を無力化させ自分無しでは生活できないようにしてしまいます。例えば、過剰に束縛する、暴力や罰を与えて服従させるなどが挙げられます。

精神的健康度が低い

メンタルヘルスが全般的に低いといわれています。心理学の研究では、共依存の人は落ち込みやすい傾向が高いこともわかっています。

④共依存の典型例

共依存の典型例としては以下が挙げられます。

アルコール依存 薬物依存 虐待 ヒモ関係 ストーカー甘受

以下イネイブラーの典型例を事例別に解説しました。深く理解したい事例について折りたたみを展開してみてください。

太郎(被共依存者)
・アルコール依存症
・お酒が飲みたい
・お金がない

花子(イネイブラー)
・太郎に嫌われたくない
・太郎への過剰な精神依存がある

共依存の関係

太郎は「頼めるのは花子さんだけ…」と考え、花子さんにお金を貸してくれるよう頼みます。

イネイブラーの花子さんは、
「私なんかに付き合ってくれるのは太郎さんだけ…」
太郎君に嫌われたくないがために、お金を貸してしまいます。

共依存の事例

その結果、太郎はお酒をどんどん飲んでしまい症状が回復しません……。

息子(被共依存者)
・無職
・やる気が出ない
・自宅に引きこもりがち

母(イネイブラー)
・子供がいなくなると寂しい
・実家で暮らしてほしい

親子関係での共依存

母は、息子が自分の元を離れると寂しいため、息子が心地いい生活を与え続けます。

親子関係の共依存

息子は居心地の良さから、将来に向けた行動がなかなかできません……。

母(被共依存者)
・子育てストレスを抱ている
・虐待傾向がある

娘(イネイブラー)
・ママは頑張ってる
・私が悪い、我慢すればいい

娘は、母に嫌われたくないために、母の虐待に我慢を続けます。

虐待と共依存

その結果、母の虐待傾向が過剰になってしまう…ということもあります。

二郎(被共依存者)
・見捨てられ不安がある
・浮気が心配
・スマホを毎日チェック

月子(イネイブラー)
・二郎に嫌われたくない
・二郎の行動は愛情と考えがち

月子は、二郎に嫌われたくないがために、スマホチェックは愛情の裏返しと考え受け入れています。

ストーカー行為と共依存

その結果、二郎のストーカー傾向が強まってしまう…ということもあります。

 

⑤研究紹介

アイデンティティとの関連

藤田ら(2009)[4]は、女子大学生112名を対象に母娘関係とアイデンティティ確立について調査を行いました。その結果が以下の図です、

共依存 アイデンティティ

上図は、娘のアイデンティティが確立されているほど、母娘関係が共依存になりにくいことを示しています。娘が精神的に自立していることで、母親の依存度も低くなると考えられます。

うつ病との関連

前田ら(2007)[5]らは、福祉系大学生290名を対象に、共依存と心理的健康について研究を行いました。その結果が以下の図です。

共依存 うつ

上図は、共依存傾向がある人はうつ傾向が出やすいことを示しています。つまり、相手に好かれたいがゆえに過剰な奉仕をしてしまうと、うつっぽくなりやすいと言えそうです。

⑥共依存とパーソナリティ障害

共依存は、特に相手がパーソナリティ障害を持っている場合に顕著になることがあります。

境界性パーソナリティ障害(BPD)

境界性パーソナリティ障害(BPD)の人との関係では、相手の問題や感情に優先し、自分の問題を軽視する「世話焼き」の役割に陥りやすい傾向があります。共依存のパートナーは、「正気な人」や「責任感のある人」と見なされることで自己の価値を感じることがあります。

自己愛性パーソナリティ障害(NPD)

自己愛性パーソナリティ障害(NPD)の人は、他者に自分のビジョンを信じさせ、それを実現するための助けを得る能力を持っています。彼らは、自分のニーズを他者の前に置くパートナーを引き寄せる傾向があります。共依存の人は、ナルシシストに従順で注意深い聴衆を提供し、相手の重要性や特別さを強調することで自己満足感を得ることがあります。

⑦関連コラム

共依存を克服する方法

当コラムでは共依存の意味や研究を紹介してきました。実践的に共依存を改善したい場合は以下のコラムを参考にしてみてください。心構えや具体的な接し方を紹介しています。

共依存を克服する方法

アサーション力をつける

共依存になる傾向がある方は、アサーティブコミュニケーションの学習をおすすめします。アサーティブコミュニケーションは自分を大事にして、相手と適切な距離感を保つ上で役に立ちます。

アサーティブコミュニケーションとは何か

コミュニケーション講座のお知らせ

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共依存の意味,コミュニケーション講座

ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] 加藤 篤志(1993).社会学的概念としての「共依存」関係論的視点から. 年報社会学論集 1993 巻 6 号 p. 73-82

[2] 鍋山祥子 共依存概念の混乱と問題性―フェミニズム批判を踏まえて―

[3] 柿澤 暁(2020).共依存症問題についての考察 人間学研究論集 49-64/

[4] 藤田ミナ 岡本祐子(2009). 青年期における母娘関係とアイデンティティとの関連 広島大学大学院心理臨床教育研究センター紀要 = Bulletin of Training and Research Center for Clinical Psychology (8), 121-132

[5] 浅野 壮志  小田島 裕美  宮 聡美  阿久津 洋巳(2008).「性格5因子とポジティブ・ネガティブ感情,ストレス反応,対人不安の関連」岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (7), 113-133

[6] 前田 直樹,長友 真実,田中 陽子,三浦 宏子(2007).福祉系大学生における共依存と心理的健康,九州保健福祉大学研究紀8,p.79~87