ゲシュタルト心理学の意味

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「ゲシュタルト心理学」について解説していきます。

ゲシュタルト心理学

目次は以下の通りです。

①ゲシュタルト心理学とは
②歴史
③ゲシュタルト要因とは
④ゲシュタルト療法への発展

是非最後までご一読ください。

①ゲシュタルト心理学とは

提唱者

ゲシュタルト心理学は、ドイツの心理学者であるマックス・ウェルトハイマーによって提唱されました。ウェルトハイマーは、ヴィルヘルム・ヴントの要素主義、エドワード・ティチェナーの構成主義への反論として、ゲシュタルト心理学を提唱しました。

ゲシュタルト心理学の出発点になったエピソードがあります。ウェルトハイマーが夏休みに列車に乗って旅をしていました。その旅の途中、運動視の実験について着想を思いつき、そのまま途中下車をしてホテルの部屋で実験をしたとあります。その実験が、後のゲシュタルト心理学の根本を築き上げたことに貢献しました。

このように、ウェルトハイマーは科学的な実験を用いて、客観的な分析を重ねたことでも大きな貢献をしています。

 

意味

ゲシュタルト心理学は、以下のような意味があります。

物事を個々ではなく、全体として認識する性質に注目した心理学

ゲシュタルトとはドイツ語で”形態”という意味です。人の知覚は、複数の部分が単純に集まったものと認識するのではなくて、まとまりのある一つの全体として捉えていると考えます。ゲシュタルト心理学を説明する基本的な法則として、プレグナンツの法則があります。

 

プレグナンツの法則

プレグナンツの法則とは、以下のような意味があります。

脳の情報処理を減らすために、対象をまとまりをもって認識しようとすること

人は複数の視覚的な刺激があったときに、バラバラに知覚するのではなく、まとまりを持ったかたまりとして知覚する性質があるのです。例えば、下の図を見てみましょう。何の形に見えますか?

ほとんどの人が”三角形”と答えると思います。しかし、よく見ると所々線が切れているところがあります。

だからといって、「3つの∠が合わさったもの」とは捉えないかと思います。通常は、線の切れ目もつながっているものとして認識し、三角形であるとみることができます。

このように厳密には部分が欠けていたりしても、ゲシュタルト心理学ではあるまとまりをもって、全体的な形として知覚していると考えます。

 

②歴史

1879年~構成主義の発足

ヴントは、1879年にライプチヒ大学に初めて、心理学研究室を創設し、構成主義心理学(実験心理学)を提唱しました。その研究室で内観法を用いて、心を要素ごとに分析して研究を行いました。これが現代心理学の起源とされています。

1890年~ゲシュタルト性質

フォン・エーレンフェルスは1890年に、ゲシュタルトの概念を初めて心理学に導入しました。エーレンフェールスは、形やメロディーなどの知覚体験は、それを構成している要素の総和以上に、「ゲシュタルト性質」がなければいけないと主張しました。

ゲシュタルト性質とは、要素を変えても全体としての特徴が保たれる性質のことです。例えば、あるメロディーをテンポを速めたり、1オクターブ低くしたりしても、全体としてのメロディーが同じに聞こえる。正方形は色や大きさが変わっても、4つの辺が均等な位置関係にある限り、正方形であることは変わらないといった性質が挙げられます。

1898年~構成主義から要素主義へ

ヴントの弟子であるティチェナーが、1989年を構成主義をベースに「要素主義」を提唱しました。要素主義では、心理事象は、要素の総和によるもので、部分的な感覚や認識などが対応していると考えられています。例えば、聞いたことのあるメロディーを認識する時、その感覚の総和がメロディーの認識を構成すると考えます。

1912年~ゲシュタルト心理学

1910年にウェルトハイマーが、ゲシュタルト心理学の原点となる研究を始めました。1912年に、ヴォルフガング・ケーラー、クルト・コフカと共同で、「運動視の実験的研究」を発表したことが、ゲシュタルト心理学の起源とされています。その後、ゲシュタルト心理学の考え方は知覚心理学、社会心理学、認知心理学などに継承されました。実験主義的、自然科学的アプローチなど現代心理学に大きな影響を与えています。

 

③ゲシュタルト要因とは

ゲシュタルト要因の意味

プレグナンツの法則を説明する上で欠かせないのが、ゲシュタルト要因です。ゲシュタルト要因とは、以下のような意味があります。

人間のまとまりをもって知覚する要因のこと

つまりプレグナンツの法則が起きる要因のことを意味しています。ゲシュタルト要因は、現在まで研究されており、10種類以上存在するとされています。ここでは代表的な9つの要因を解説します。

1.近接

近接とは、距離が近いもの同士を同じカテゴリーとして知覚する性質のことをいいます。例えば、下にAからDまでの〇があります。直観的に見ると、AとB、CとDというように距離が近いもの同士を同じカテゴリーとして知覚しています。

2.類同

類同は同じ形や同じ色のものを同じカテゴリーとして捉える性質のことをいいます。

例えば、下のAは形の類同です。〇と△同士で同じカテゴリーで知覚されます。一方、Bは色の類同です。形は同じでも、同じ色どうしで知覚されます。

 

3.良い形態

良い形態とは、重なり合った図形がバラバラに知覚されず重なり合ったものとして知覚される性質です。下の図のように、重なり合った破線の〇は右のように、バラバラに知覚することはありません。

良い形態の”良い”とは、人の感性に自然に適合し単純な方向にまとまろうとするという意味があります。

4.良い連続

良い連続とは、線が連続してつながっているものとして知覚することをいいます。下の図は曲がりくねった2本の曲線が交差している図に見えます。決して、4本の線が連結しているとは知覚しません。

5.図と地

図と地とは知覚の中で前面に知覚されるものと、後ろの背景になるものを区別したものです。

図とは…前面に浮かび上がる部分
地とは…後ろの背景の部分

図と地の説明に使われるものとして、ルビンの壺があります。

この絵には2つの見方があります。壺として見える側面と、2人の顔が向かい合って見える側面です。

白い部分を図としてみた場合は壺に見えて、黒い部分を図としてみると2人の顔になります。このように、1つの絵からでも図と地が行き来することによって見え方が違ってきます。

ゲシュタルト心理学では、意識的なものを図として、無意識的なものを地として理解されています。

6.閉合

閉合とは、脳が欠けた情報の補完をすることで、1つのまとまりとして認識するゲシュタルト要因です。

閉合

上図はただの黒い模様ですが、シマウマのように知覚されます。黒い部分の形を認識し、白い部分の要素を脳が補完して、シマウマのように認識しています。そのほか、カッコ【 】なども、閉合の要因によって1つの図として認識されます。

7.共通運命

共通運命とは、同じ間隔で点滅したり、動いているものを同じグループとして捉えることを指します。

以下の動画をクリックすると、白い点が左右に動いていることが分かります。この時、下に動いた点と、上に動いた点を別のグループとして知覚します。

8.共通領域

共通領域とは、枠線や背景色などで対象が区切られると、その領域によってグループとして認識すること指します。下の図は〇が枠線で区切られていますが、左右の枠線でグループが出来上がっているように見えます。

共通領域

9.対称

対称とは、対になっている図形は1つのまとまりとして認識することを指します。下の図のギザギザはどちらも対称になっており、一つのマークや模様のように見えます。

対称

 

④ゲシュタルト療法への発展

ゲシュタルト療法とは

ゲシュタルト心理学が用いられている心理療法として、ゲシュタルト療法があります。ゲシュタルト療法はパールズという人物によって開発されました。ゲシュタルト心理学の「図と地」を用いて説明がされていることから、ゲシュタルト療法と名前がついています。

まとまりを目指す

ゲシュタルト療法の目的は、いま・ここの体験を重視して、自己を全体としてまとまりのある方向へ統合していくことを目指していきます。例えば、エンプティ・チェアという方法は、空の椅子にもう一人の自分をイメージして語りかけます。そうして表現することで、排除されていた欲求などに気づきが得られるとしています。

 

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ダイコミュ用語集監修

・川島達史
・公認心理師,精神保健福祉士
・目白大学大学院心理学研究科卒
・NHK 天才テレビ君出演
・マイナビ出版 嫌われる覚悟
Youtubeチャンネル

【出典・引用文献】
外林大作,辻正三,島津一夫,能見義博(編) 誠信心理学辞典 誠信書房
中村秀(1987) ゲシタルト心理学の創唱者マックス・ウェルトハイマー 夙川学院短期大学研究紀要 12(0), 1-17