性格と遺伝率の意味とは

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「性格と遺伝率」について解説していきます。

性格と遺伝,bonbon様作成

目次は以下の通りです。

①遺伝とは何か
②性格と遺伝‐4つの説
③遺伝率の計算方法
④さまざまな遺伝率
⑤自分の性格との付き合い方
⑥他人の性格との付き合い方
⑦関連コラム,動画

最後まで読むと性格と遺伝の関係を一通り理解することができます。是非最後までご一読ください。

①遺伝とは何か

遺伝とは何か

まずはじめに遺伝とは何かについておさえておきましょう。遺伝とは以下の意味はあります。

生体の形質を発現させる要因が、遺伝子によって子孫に伝えられる現象

遺伝のメカニズムを理解するためには、以下の4つを押さえておく必要があります。以下それぞれ詳しく説明します。

遺伝について解説

細胞

私たちの体は細胞から成り立っています。人間の細胞の数は、約60兆個あるといわれていています。細胞の中には遺伝情報が入っています。

遺伝とは何か・細胞を解説

染色体

細胞の中には染色体があります。染色体は、遺伝情報を伝達する重要な物質で人間の場合、22対の常染色体と1対の性染色体を持ちます。

染色体と遺伝を解説

健康な染色体は上記のようになりますが、稀に欠けていたり、3つに増えることがあり、様々な障害を起こします。

ダウン症

21番目の常色体が3つの場合、ダウン症候群という障害が出ます。ダウン症は、独特の顔立ちや知的な発達に遅れがあるのが特徴です。加えて、先天性心疾患、消化器疾患など、多くの症状を伴うことも多いです。ダウン症は、700人に一人の割合で生まれてくる頻度が高い先天性疾患とされています(Hook, E.B. ,1981)。

クラインフェルター症

X/Yは性別を決める染色体です。女児はXX、男児はXYですが、男児が余分なX染色体(XXY)をもっている場合、クラインフェルター症という障害が出ます。

クラインフェルター症

外見は背は高く、腕と脚が長いことがほとんどです。思春期には胸が膨らむなどの症状がでます。また多くの場合、発語や読むことに障害があり、計画を立てることが苦手な傾向にあります。

ターナー症

性別を決める染色体で、女児はXXですが、X染色体の片方がない(X)場合、ターナー症という障害が出ます。

ターナー病

外見は、身長が低く、首の後ろに皮膚のたるみがあります。成長しても月経がなく、思春期に生じる乳房や子宮などの発育がないため不妊症になります。また多くの場合、注意欠陥・多動症と学習障害がみられます。

 

DNA

染色体は、ひものように巻き付いている状態です。そのひもの正体がDNAになります。DNAの1つの長さは3.3cmあります。DNAには遺伝情報が書き込まれていて、伝達を行っています。イメージで言うと遺伝情報を書き込む、USBのようなものです。

遺伝とDNA

遺伝子

DNAの中には遺伝情報が書き込まれています。USBであるDNAに書き込まれている情報が遺伝情報というイメージです。具体的には、塩基(ATGC)が配列されこれが遺伝情報の基本となるのです。

A(アデニン)
T(チミン)
G(グアニン)
C(シトシン)

遺伝子は、塩基がいろいろと組み合わさってできています。

DNAと遺伝の解説

 

②性格と遺伝‐4つの説

遺伝は先程挙げた構造になっています。実際に性格に遺伝はどの程度影響するのでしょうか?心理学、生物学的には、4つの説があります。興味がある方は下記を展開してみてください。

性格は生まれた後の環境によって決まるという説

John Broadus Watson(ワトソン)が今から1940年前後に提唱しました。この説は1980年代まで、熱狂的な支持者がいました。

環境優位説は、様々な悲劇的な事件をもたらしました。私川島が衝撃を受けた「ブレンダと呼ばれた少年」の話を紹介します。

ブレンダと呼ばれた少年

1965年生まれの男の子ブレンダは、幼いころに手術の失敗で陰茎の大部分を失ってしまいました。大きくなった時に悩み苦しむだろう…考えました。

そこで、当時主流だった環境優位説から、女性として育てられました。しかし全くうまくいかず、生涯悩み続けた結果39歳で自殺をしてしまうのです。ブレンダの例が1990年代に発表されると、世界的に環境優位説は衰退していきました。

性格は遺伝によって決まるという説

アメリカの心理学者Arnold Lucius Gesell(ゲゼル)が提唱した概念です。ゲゼルは、一卵性双生児の実験を行い、片方には十分な訓練をさせ、もう片方には訓練をせず両者を比較しました。

その結果、どんなに早く訓練をしても、学習が促される発達段階に到達していないと効果が無いことが分かりました。このことから、環境よりも遺伝や個々の内面が成熟しているかどうかが重要と唱えたのが成熟優位説です。

性格は遺伝と環境の足し算によって決まるという説

Stern,W.(シュテルン)などが提唱しました。輻輳(ふくそう)とは、集まるといった意味です。輻輳説は、数字で表すことができます。

たとえば、対人不安の遺伝率は、遺伝が50%・環境が50%と考えていくのです。輻輳説は実際に行動遺伝学の基本的な分析手法として活用されています。

性格は遺伝と環境の「かけ算」で決まるという説

たとえば、対人不安を抱えやすい性格の人が、伝統工芸の職人になる、農家で農作物をつくる、このような環境に身をおけば、対人不安はさほど感じなくなります。逆に、人前で積極的に話をする仕事だと、やや不利になるといえます。

環境閾値説は、環境によって遺伝的な性格が出るか出ないかが決まってくると仮定していくのです。

 

ここまでは性格と遺伝の代表的な説を紹介しました。現在主流となっているのは、輻輳説、環境閾値説ですが、環境閾値説は、複雑すぎて統計的にはなかなか解明できていない状態です。

一方で、輻輳説は行動遺伝学で統計的に明らかになっています。そのため、現在は行動遺伝学の計算で、遺伝率を考えるのが一般的です。

③遺伝率の計算方法

現在は性格率は、行動遺伝学という分野で計算されています。行動遺伝学は先程解説した、輻輳説を土台にして、性格は、遺伝、家庭環境、外部環境の3つから計算していきます。

行動遺伝学の計算方法

計算方法は、少し複雑です。詳しく知りたい場合は、以下をチェックしてみてください。

一卵性、二卵性双生児

遺伝の研究では、双子を集めて行います。双生児法は、一卵性、二卵性の双生児を比較して遺伝率を計算します。

双生児法の解説

一卵性は、同じ遺伝子を持っているため、遺伝一致率は100%と言われています。一方で、二卵性は、遺伝情報がそれぞれ違うため、遺伝一致率は50%似るといわれています。そう考えると「一卵性と2卵生の遺伝率の差×2倍=遺伝率」という公式で、遺伝率が推測できるのです。重要な公式なので、この点をおさえておきましょう。

外部環境の比率

ぞれでは実際に遺伝率の計算法をお伝えします。仮に社交性を調査したところ以下のような遺伝率だったとします。

一卵性と二卵性の比較

一卵性の人は、同じ家庭環境で生活、同じ遺伝子、を持っています。そのため、似ている度の差は、外部環境にあると推測できます。

双生児法の解説

(遺伝+家庭環境 75%)+外部環境?%=100%

→外部環境25% が外部環境の影響になります。

一卵性双生児の計算方法

遺伝率を計算する

行動遺伝学上の計算では通常100人規模の双子で計算をするのですが、これだけ規模が大きいと、家庭環境、外部環境は平均化されて、ほぼ同一とみなすことができます。そのうえで、もう一度、以下の違いを復習しましょう

一卵性:似ている度75%
二卵性:似ている度45%

ここで注目すべきは、30%の差です。同じ家庭環境、外部環境なのにも関わらず、似ている度に差があるのです。そう考えると、この差が遺伝の影響であることがわかります。

そして、冒頭に解説した、「一卵性と2卵生の遺伝率の差×2倍=遺伝率」を前提に、30%の差を2倍すると、遺伝率が60%と推測できるのです。

家庭環境を計算する

遺伝率と外部環境の計算が出たので、最後に家庭環境を計算します。

100%-(遺伝率60%+外部環境25%)=15%

家庭環境の計算を解説

行動遺伝学では以上のように3つの比率を計算していくのです。

 

④さまざまな遺伝率

安藤(2000)、ナイジェルレスター医学博士ら(2016)の双子研究から様々な遺伝率を見ていきましょう。

外交性の遺伝率は49%、家庭環境は2%、外部環境は49%です。

外向性遺伝率

外向的、内向的は生まれながらにいてかなりの部分が決まってきてしまうことがわかります。

*安藤(2000)を参考

神経質の遺伝率は41%、家庭環境は7%、外部環境が52%です。

神経質遺伝率

神経質な性格は家庭環境より、外部環境で変わることが多いことがわかります。

*安藤(2000)を参考

協調性の遺伝率は38%、家庭環境は21%、外部環境が41%です。

協調性の遺伝率

協調性は3つの要因からバランスよく影響を受けることがわかります。

*ナイジェルレスターら(2016)参考

自主性の遺伝率は29%、家庭環境は22%、外部環境が49%です。

自主性遺伝率

自分から何かアクションが起こせるかは、家庭環境や外部環境が影響することが分かります。

*ナイジェルレスターら(2016)参考

習慣の遺伝率は11%、家庭環境は23%、外部環境が66%です。

良い習慣・悪い習慣の遺伝率

習慣は、環境をしっかり整えていく事が大切です。

*ナイジェルレスターら(2016)参考

スピリチュアル現実主義の遺伝率は33%、家庭環境は12%、外部環境が55%です。

スピリチュアル現実主義

占いにはまりやすいかどうかは、外部環境が大きく影響していると推測できます。生まれた国によって、変わる部分が多いと考えられます。

*ナイジェルレスターら(2016)参考

身長は、遺伝率が92%、家庭環境は5%、外部環境は3%です。

身長の遺伝率

身長は、もともと持っている遺伝情報でおおむね決まるといえます。

*安藤(2000)を参考

知能は、遺伝率が52%・家庭環境は34%・外部環境は14%です。

知能遺伝率

知能遺伝とは、IQ(言語理解・計算能力・記憶力)です。IQは、家庭環境の影響が大きいことが分かります。

*安藤(2000)を参考

学業成績は、遺伝率が38%、家庭環境は31%、外部環境は31%です。

学業成績遺伝率

学業成績は、IQにやる気や目的意識などを加えた内容です。学習成績は、IQと同じく遺伝の影響もありますが、家庭環境や外部環境でカバーできるといえます。

 

⑤自分の性格との付き合い方

最後に遺伝との付き合い方について、自分と他人の2つの側面から考えていきましょう。

環境選択に役立てる

性格はある程度遺伝します。そのため自分の性格にあった環境を選ぶことは極めて重要です。例えば、神経質な性格であれば以下の分野で活躍できそうです。

研究職 医療職 清掃関係 危険物取扱

外向的な性格であれば

接客業 営業職 貿易関連 美容師

などで活躍できそうですね。

自己受容のきかっけ

遺伝的に対人不安が強い傾向にあった場合、もともと持っている気質は遺伝レベルである程度決まっている!と考えて、自分を責めないようにすることができます。

例えば、あがり症で悩んでいるとしたら、自分の弱さと考えず、緊張しやすい遺伝子の影響があるかも…と考えることも視野に入れてみてください。

努力は当然する

ある程度遺伝のせいにするのは問題ないでしょう。ただし、何事も遺伝と捉えるのはよくありません。

遺伝は30~50%ほど決まっています。しかし残りの部分は、自分の努力や環境設定で、ある程度カバーできます。70%くらいは自分の責任と捉えて、自分の努力で補っていきましょう。

 

⑥他人の性格との付き合い方

他者受容に役立てる

人を理解する時に、もしかしたら遺伝も影響しているのでは?と考えておくといいかもしれません。たとえば、ADHD傾向がある方は 忘れ物やスケジュールミスが多くなります。

一般の方の感覚でいうと、怒りが芽生えるかもしれませんが、遺伝と考えると、ある程度受容できます。もともともっている遺伝的な部分と考えれば、トラブルが起きにくいでしょう。

性格を活かせる環境

他人を理解する時に、性格理解をすることで、相手に適した環境を提供できます。

ADHDの方の場合なら、集中力がないという特徴は、新しいことが好きと捉えることもできます。毎日同じ仕事を任せるのではなく、変化が起こる仕事を任せるのがいいかもしれません。

相手の性格を見極めて適切な環境を提案することが大事なのです。

言うべきことは言う

すべてを性格のせいにするのは相手にとってもよくありません。社会生活を営む上で、ダメなものはダメとしっかり伝えることも大事です。

例えば、ADHDの方が忘れ物をしたときに、忘れ物をするのは良くないと伝えるのは全く問題ありません。大事なことはそのうえで、一緒に忘れ物をしないような仕組みを考える事です。

チェックリストを作る、声に出して確認するよう促すなどの、補助的なルールを一緒に考えるようにしましょう。遺伝の影響があるからと、言うべきことを言わないのは本人のためにならないことを抑えておいてください。

 

⑦関連コラム

ビックファイブ診断

性格診断については有名なビックファイブ診断があります。ビックファイブは人間の5つの性格に分類し分析していくものです。各性格は遺伝の影響が3~6割あることが分かっています。気になる方は下記の診断をご利用ください。

ビックファイブ性格診断

 

性格と遺伝,動画解説

当コラムの内容は動画でも解説しています。仕上げご活用ください。

 

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監修

・川島達史
・公認心理師,精神保健福祉士
・目白大学大学院心理学研究科卒
Youtubeチャンネル

*出典・参考文献
・Hook, E.B. ,Rates of chromosome abnormalities at different maternal ages. Obstetrics and gynecology, 1981,58(3), 282-5.
・心はどのように遺伝するか―双生児が語る新しい遺伝観,安藤 寿康,講談社 (2000)
・Nigel Lester, Danilo Garcia,corresponding author Sebastian Lundström, Sven Brändström, Maria Råstam, Nóra Kerekes, Thomas Nilsson, C. Robert Cloninger, and Henrik Anckarsäter,The Genetic and Environmental Structure of the Character Sub-Scales of the Temperament and Character Inventory in Adolescence ,2016,Ann Gen Psychiatry