開放性の意味とは

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「開放性」について解説していきます。

開放性の意味,mybears様作成

目次は以下の通りです。

①開放性の意味
②開放性の研究
③開放性と尺度
④年齢による変化
⑤関連コラム

是非最後までご一読ください。

①開放性の意味

意味

開放性は心理学辞典(2015)[1]によると以下のように定義されています。

新しい美的、文化的、知的経験を受け入れる傾向の個人差
(一部部簡略化)

具体的には、物事に好奇心を持って取り組む、新しいことを受け入れる、柔軟に様々な価値観を認める、これらの特徴がある性格を意味します。

開放性とビッグファイブ

開放性が発展してきたのは1990年以降です。心理学者のゴールドバーグ(1993)[2]は、性格の次元は5つからなるビッグファイブを統計的な手法により明らかにしました。ビッグファイブの1つには「開放性(Openness to experience)」が含まれています。

開放性が高い人は、芸術好き、冒険心がある、珍しいアイデアを好む、好奇心旺盛、などの特徴があるとされています。現在の心理学研究において、開放性は性格研究において重要な指標として、様々な研究で活用されています。

ゴールドバーグ・外向性・内向性

開放性と遺伝

開放性は遺伝の影響を受けることがわかっています。4つの双生児研究を総合的に分析した調査によると、開放性はビッグファイブの特徴の中で最も遺伝性が高く、平均で 57%あることがわかりました(Bouchardら 2002)[3]。また、86人の被験者を対象とした遺伝子研究では、セロトニントランスポーター遺伝子に関連する「経験への開放性」が見出されました。(Scott Fら,2002)[4]。すなわち開放的であるかどうかは生まれながらにある程度決まっていると考えることができます。

②開放性の研究

勉強が嫌いになりにくい

古屋(2017)[5]は、大学生150名に対して、性格の調査を行いました。その結果の1つが下図となります。

開放性と勉強嫌悪

上記は開放性が高い人ほど勉強嫌いになりやすいという意味になります。開放性が高いと、学ぶ意欲が持続しやすいと言えます。

楽観的になる

古屋(2017)[5]の同研究では、開放性と楽観的な能力認知との関連も調べています。その結果の以下の図となります。

開放性と楽観的な能力認知

上図は、開放性が高いと楽観的に考える力があることを意味しています。開放性がある方は、失敗や挫折があったとしても、1つの経験として前向きに捉えていくと推測されます。

創造性が高まる

ビックファイブ以前の研究も紹介します。McCrae(1987)[6]は、18歳~80歳までの男性268名を対象に、発散的思考と開放性の関係について調査を行いました。

開放性と発散的思考

上図は、発散的思考は開放性と高い相関があることを意味しています。発散的思考とは創造的思考を意味します。開放性が高い人は、クリエイティブな考えを好むと言えます。

③開放性と尺度

ゴールドバーグ(1992)[7]の研究では、開放性を測る以下の10項目が抽出されています。後半の3つの項目は逆転項目で意味を逆にして解釈していきます。

Rich in vocabulary.
I have a vivid imagination.
I have a great idea.
I understand things right away.
I use difficult words.
I spend time looking back on things.
I’m full of ideas.
I have a hard time understanding abstract ideas. ( Reversal )
I’m not interested in abstract ideas. ( Reversal )
I don’t have a good imagination. ( Reversal )

語彙が豊富です
私は豊かな想像力を持っています。
私は素晴らしいアイデアを持っています。
私は物事をすぐに理解します。
難しい言葉を使います。
私は物事を振り返るのに時間を費やしています。
私はアイデアでいっぱいです。
私は抽象的な考えを理解するのに苦労しています。 (逆転項目)
私は抽象的なアイデアには興味がありません。 (逆転項目)
想像力がありません。 (逆転項目)

④開放性と尺度

川本ら(2015)[8]の研究では、開放性が年齢差によってどのような違いがあるのかを調査しました。その結果が以下の図です。

開放性 年代

上図のように、20代から80代にかけて、ゆるやかに開放性が少なくなっていることが分かります。つまり、人は歳を取るごとに新しいことを学んだり、体験したりする機会が減っていくと言えるでしょう。

⑤関連コラム

ビッグファイブ診断

筆者は開放性の強さを簡易的に診断できるシステムを作りました。客観的に開放性の強さを把握したい方は以下の簡易診断を参照ください。

ビッグファイブ,開放性診断

好奇心を向上させる方法

開放性と近い概念として好奇心が挙げられます。以下のコラムでは好奇心を強くする方法を解説しています。開放性を高めたい方は参考にしてみてください。

好奇心を向上させる方法

心理学講座のお知らせ

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ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] 中島 義明・子安 増生・繁桝 算男・箱田 裕司・安藤 清志(編)(1999).心理学辞典.有斐閣

[2] Goldberg LR (1993). “The structure of phenotypic personality traits“. The American Psychologist. 48 (1): 26–34

[3] Bouchard TJ Jr, McGue M.(2003).Genetic and environmental influences on human psychological differences. J Neurobiol. Jan;54(1):4-45. doi: 10.1002/neu.10160. PMID: 12486697.

[4] Stoltenberg SF, Twitchell GR, Hanna GL, Cook EH, Fitzgerald HE, Zucker RA, Little KY. (2002).Serotonin transporter promoter polymorphism, peripheral indexes of serotonin function, and personality measures in families with alcoholism. Am J Med Genet. Mar

[5] 古屋健(2017).大学生の学業遅延傾向に関わる性格特性について 立正大学心理学研究所紀要 第15号 33-45

[6] McCrae, R. R. (1987). “Creativity, divergent thinking, and openness to experience“. Journal of Personality and Social Psychology. 52 (6): 1258–1265. doi:10.1037/0022-

[7] Goldberg, L. R. (1992). The development of markers for the Big-Five factor structure. Psychological Assessment, 4(1), 26. doi:10.1037/1040-3590.4.1.26

[8] 川本哲也, 小塩真司, 阿部晋吾, 坪田 祐基, 平島太郎, 伊藤大幸, 谷伊織(2015).ビッグ・ファイブ・パーソナリティ特性の年齢差と性差:大規模横断調査による検討 発達心理学研究 26 巻 2 号 p. 107-122