好奇心の意味
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「好奇心」について解説していきます。
目次は以下の通りです。
①好奇心と2つの意味
②好奇心と心理的な影響
③好奇心と身体的影響
④開放性と遺伝率研究
⑤関連コラム
是非最後までご一読ください。
①好奇心と2つの意味
心理学者のBerlyne(1960)は好奇心を2つに分類しています。
①拡散的好奇心
1つ目は拡散的好奇心で、以下の意味があります。
特定の目標を定めず新しい情報を幅広く求める状態
拡散的好奇心が強い方は、新しいことに挑戦するのが好き、新しいアイデアをあれこれ考える、何事にも興味関心が強いという特徴があります。例えば、ネットサーフィンをしていると、つぎつぎに情報を求め、クリックが止まらなくなることがあります。このような状態は、拡散的好奇心が刺激されていると言えます。
②特殊的好奇心
2つ目は特殊好奇心で、以下の意味があります。
特定の目標を定め、既知の情報を深く掘り下げる状態
特殊好奇心が強い方は、1つの学問を究める、疑問に思うことは調べ尽くす、表面的な理解ではものたりない、という特徴があります。例えば、興味のある情報があった時に、その情報を無我夢中で集めることがあると思います。このような状態は、特殊好奇心が刺激されている状態になります。
2つの好奇心の関係をまとめると、目新しいものに興味を持ち、いろいろな対象に興味を持つ拡散的好奇心で、その対象をさらに深めていくのが特殊好奇心なのです。
②好奇心と心理的な影響
好奇心については、心理学において様々な研究があります。
①頭がよくなる
斎藤(2014)は大学生129名を対象に好奇心と考える力の関連を調べました。その結果が以下の図となります。
上図は、拡散的好奇心が強いと「探求心」「論理的思考」「客観性」が強くなることを意味しています。ちなみに特殊好奇心も同じような結果になっていました。好奇心がある方は、物事を知る意欲と、様々な角度から検証していく意欲があると言えます。
②集中力UP
汀(2019)は大学生192名を対象に、拡散的好奇心・特殊的好奇心ついて調査をしました。その結果の一部が下図となります。
上図は、特殊好奇心が上がると、勤勉性や開放性が増すことを意味しています。好奇心は集中力をUPさせ、知らない情報に興味を持つ効果があることがわかります。
③勉強嫌いを改善
古屋(2017)は、大学生150名に対して、性格の調査を行いました。その結果の1つが下図となります。
上図は開放性が増えると勉強嫌いになりにくいことを意味しています。開放性とは、好奇心にとても近い概念です。その意味で、勉強が好きになるには、好奇心を向上させる必要があると言えます。
④楽観的になる
古屋(2017)の同研究では、開放性と楽観的な能力認知との関連も調べています。その結果、以下の図のようになりました。
上図は、開放性が増えると楽観的に考える力も増えることを意味しています。ここからは推測となりますが、好奇心がある方は、失敗や挫折があったとしても、1つの経験として前向きに捉えていくと考えられます。
③好奇心と身体的影響
Swan( 1996 ) は、60歳から80歳(平均70.6歳)のアメリカ人男女1118人を対象に、好奇心と健康との関連を調査を行いました。調査は5年間に渡って行われました。その結果の一部が下図となります。
上図は、年齢、がんが死亡リスクを上げるのに対して、好奇心はリスクを下げることを意味しています。ここからは推測となりますが、好奇心がある方は、外出をしたり、新しいアクティブティに積極的で、体をよく動かすため、健康に生きやすいと考えられます。
④開放性と遺伝率研究
好奇心に近い概念である開放性については、遺伝率研究が盛んです。Bouchard(2002)が4つの双生児研究を総合的に分析した調査によると、開放性は遺伝性が高く、平均で 57%あることがわかりました。Scottら(2002)が86人の被験者を対象とした遺伝子研究では、セロトニントランスポーター遺伝子に関連する「経験への開放性」が見出されました。
すなわち好奇心があるかは生まれながらにある程度決まっていると考えることができます。その一方で後天的に決まってくる部分もあるので、うまく好奇心を刺激することで、意図的に増やすこともできる部分があると推測できます。
⑤関連コラム
好奇心を増やす方法
当コラムでは好奇心の研究や種類を中心に解説してきました。以下のコラムではより実践的に好奇心を増やす方法を解説しました。理解を深めたい方は参照ください。
好奇心診断
筆者は好奇心の強さを簡易的に診断できるシステムを作りました。客観的に好奇心の強さを把握したい方は簡易診断を参照ください。
コミュニケーション講座のお知らせ
公認心理師のもとで心理学や人間関係のあり方を学びたい方は、コミュニケーション講座をおすすめします。講座では
・心理療法の学習
・人間関係の心理学の学習
・傾聴トレーニング
・発話トレーニング
などたくさん学ぶことができます。楽しい講座の雰囲気を大事にしています(^^)興味がある方は下記のお知らせをクリックして頂けると幸いです。是非お待ちしています!
ダイコミュ用語集監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→

名前
長田洋和
経歴
- 元専修大学人間科学部教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
*出典・参考文献
知的好奇心尺度の作成 西川一二, 雨宮俊彦 教育心理学研究 2015 63 巻 412-425
古屋 健 2017 大学生の学業遅延傾向に関わる性格特性について 立正大学心理学研究所紀要
Swan, G. E., & Carmelli, D. (1996). Curiosity and mortality in aging adults:A 5-year follow-up of the Western Collaborative Group Study. Psychology and Aging, 11(3), 449.
Berlyne, D. E. (1960). Conflict, arousal, and curiosity. McGraw-Hill Book Company.
知的好奇心と認知的態度との関連 汀 逸 鶴 早稲田大学大学院文学研究科紀要 2019
Genetic and environmental influences on human psychological differences
Thomas J. Bouchard Jr.,Matt McGue 2002 Journal of Neurobiology Free Access
・Scott F. Stoltenberg, Geoffrey R. Twitchell, Gregory L. Hanna, Edwin H. Cook, Hiram E. Fitzgerald, Robert A. Zucker, Karley Y. Little; Twitchell; Hanna; Cook; Fitzgerald; Zucker; Little (March 2002).