毒親の意味とは

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「毒親」について解説していきます。

毒親の意味とは,くりむ様作成

 

目次は以下の通りです。

①毒親とは何か
②毒親になってしまう原因
③毒親の影響
④関連コラム

是非最後までご一読ください。

 

①毒親とは何か

意味

毒親とは以下のような意味があります。

俗に、子供に悪い影響のある親。児童虐待に該当する行為で子供を傷つけたり、過干渉・束縛・抑圧・依存などによって子供の自立をさまたげたりする親。

つまり、暴力を振るったり、虐待を行う親のこと指します。

提唱者

毒親と言う用語をはじめに使ったのはスーザン・フォワードという心理療法士です。彼女は、子供を苦しめる親をToxic Parentsと名付けました。

Toxicとは有毒,毒性のという意味
Parentsとは親,両親という意味

があります。この2つの言葉を組み合わせて毒親と呼んで、社会に対して警鐘をならしたのです。

*スーザンフォワードの様子はこちら

 

②毒親になってしまう原因

毒親になってしまう理由について心理学の世界では、様々な研究により検討されています。

親も毒親に育てられた可能性

浦山ら(2009)は、母親383名を対象に、身近な人間関係へのストレスを調査しています。下記は結果の一部です。

自分の親に対するストレス

上図は、「子供にストレスがある群」は「自分の親に対するストレス」が大きいという意味があります。親との関係が上手くいってない母親は、自分の子どもとの付き合い方もわからなくなってしまう傾向があるといえます。

夫との関係が悪い

浦山ら(2009)の研究では、夫に対するストレスと子供のストレスについての調査も行われました。その結果の一部が以下の図です。

夫に対するストレス

上記は「子供にストレスがある群」は「夫に対するストレス」が大きいことを意味しています。夫との関係が悪い人は、メンタルヘルスが悪くなりやすくなり、結果的に子供へ対して冷たくあたってしまう可能性があると言えそうです。

孤立した子育て

中谷(2016)は、296名の親を対象に「不適切な養育」と「家族の育児協力」との関係を調査しました。その結果の一部が下記となります。

家族の子育て支援の状況

上記は「不適切な養育 高群」は「家族の育児協力」が低いことを意味しています。つまり、家族の協力が得られないと、子育てが充分に行われないことが考えられます。私も子育を3人育てていますが、一人では本当に大変です。家族の協力がない場合はキャパオーバーとなってしまい、子供に辛くあたってしまう場面も出てきてしまいます。

感情コントロールができない

中谷(2016)は、296名の親を対象に、「母親の原因帰属」と「不適切養育」の関係を調査しました。その結果の一部が下記となります。

母親の怒りや嫌悪のグラフ

上記は「不適切な養育 高群」は「怒り・嫌悪」が低いことを意味しています。すなわち毒親となりやすい方は、感情をうまく自分の中でコントロールできず、そのまま吐き出してしまうことが推測されます。

 

③毒親の影響

毒親に育てられた子どもには、どんな影響があるのでしょうか。「毒親」という言葉は、専門用語に言い換えると「不適切養育」にあたると考えられます。

不適切養育が与える影響についても、さまざまな研究が行われています。それぞれ見ていきましょう。

精神疾患・薬物依存の危険性

Duverら(2003)は、アメリカで8,613名の成人を対象とした、大規模調査が行われました。その結果、幼少期に不適切養育を受けた子どもは成人してから、

・アルコール依存
・薬物依存
・各種精神疾患へのかかりやすさ
・退学や中退

などが多いことがわかっています。

コミュ力への悪影響

戸ヶ崎ら(1997)は、小学生524名を対象に、「家庭の社会的スキル」と「児童の社会的スキル」の関係を調べました。その結果の一部が以下の図です。

関係維持スキル

上図は「家庭での関係維持スキル」と、「学校での関係維持スキル」は関係があること意味しています。家庭で関係維持が得意な方は、学校でも上手く関係を構築できると言えそうです。

もう1つの研究の結果についても見ていきましょう。以下の図をご覧ください。

上図は「家庭での関係向上スキル」と、「学校での関係向上スキル」は関係があること意味しています。つまり、家族との関係を向上できる方は、学校でも友人たちとの関係を向上できると言えそうです。

最後に、以下の図をご覧ください。

上図は「家庭での関係向上スキル」と、「学校での関係向上スキル」は関係があること意味しています。まり、家庭で言いたいことを言える人は、学校でグループの輪に参加できる傾向があると言えそうです。

人間関係などは家庭内で学ぶことも多いため、親の社会的スキルの低さが子どもにも影響している様子が見られます。

すねた行動が増える

中尾・加藤(2006)は、大学生378名を対象に、「見捨てられ不安」と「すねた伝達」の関係について調査を行いました。見捨てられ不安とは、いつか相手がいなくなってしまうのではないか?という不安を意味します。毒親に育てられた子供には、見捨てられ不安が多いことが分かっています。

その結果が以下の図です。

毒親が作る見捨てられ不安型の特徴

上図は「見捨てられ不安型」のグループの方が「すねた伝達」をしやすいことを意味しています。毒親に育てられた人は、いつか相手がいなくなるという不安があり、素直なコミュニケーションがしにくくなると予想できます。

恋愛が刹那的になる

大坊ら(2003)は、大学生の男女449名を対象に、異性関係と愛着との関連をアンケート調査しました。

以下の図は結果の一部です。

毒親 刹那的

上図は「回避型」愛着スタイルの人は、恋愛に対してネガティブなイメージが高いことを意味しています。毒親育ちの方は、恋愛とは所詮アクセサリーのように刹那的であり「信頼や成長とは無縁だ」と考えやすいと言えるかもしれません。

④関連コラム

アダルトチルドレンへの対策

当コラムでは毒親の意味や研究について解説をしていきました。臨床心理学では、家庭環境が悪かった方をアダルトチルドレンと呼ぶことがあります。以下のコラムでは、アダルトチルドレンの心理と改善法を解説しています。

アダルトチルドレンの意味と対策

 

愛着不安診断

毒親育ちの方は、人間関係で不安を覚える愛着不安を抱えがちです。筆者は愛着不安を簡易的に診断できるチェックリストを作成しました。興味がある方が参考にしてみてください。

愛着不安診断

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ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

*出典・引用文献
・Belsky, J. (1980). Child maltreatment: An ecological integration. American psychologist, 35(4), 320.
・Buchanan, A. (1996). Cycles of child maltreatment: Facts, fallacies and interventions. Wiley.
・Dube, S. R., Felitti, V. J., Dong, M., Chapman, D. P., Giles, W. H., & Anda, R. F. (2003). Childhood abuse, neglect, and household dysfunction and the risk of illicit drug use: the adverse childhood experiences study. Pediatrics, 111(3), 564-572.
・戸ヶ崎 泰子.坂野 雄二(1997).母親の養育態度が小学生の社会的スキル と学校適応にお よぼす影響――積極的拒否型の養育態度の観点から――Japanese Journal of Educational Psychology,45, 173-182
・石毛みどり, & 無藤隆. (2005). 中学生における精神的健康とレジリエンスおよびソーシャル・サポートとの関連. 教育心理学研究, 53(3), 356-367.
・神谷慶, & 幸田るみ子. (2016). 大学生の抑うつにおける自動思考とネガティブな反すうの関連. ストレス科学研究, 31, 41-48.
・久保田まり. (2010). 児童虐待における世代間連鎖の問題と援助的介入の方略: 発達臨床心理学的視点から. 季刊・社会保障研究, 45(4), 373-384.
・浦山晶美, 金川克子, & 大木秀一. (2009). 母親の身近な人間関係におけるストレス感と不適切な養育行動の関連性について. 石川看護雑誌, 6, 11-17.
・岡本真なみ. (2018). 怒りをコントロールする 「アンガーマネジメント」(第 3 回) 6 秒待てる自分づくり. 金融財政事情, 69(17), 68-69.
・Milan, S., Lewis, J., Ethier, K., Kershaw, T., & Ickovics, J. R. (2004). The impact of physical maltreatment history on the adolescent mother–infant relationship: Mediating and moderating effects during the transition to early parenthood. Journal of Abnormal Child Psychology, 32(3), 249-261.
・Montes, M. P., de Paúl, J., & Milner, J. S. (2001). Evaluations, attributions, affect, and disciplinary choices in mothers at high and low risk for child physical abuse. Child Abuse & Neglect, 25(8), 1015-1036.
・中谷奈美子. (2015). 子どもの行動に対する母親の帰属と不適切な養育――感情を媒介として――. 心理学研究, 87-14074.

・金政祐司・大坊郁夫(2003)青年期の愛着スタイルが親密な異性関係に及ぼす影響

・中尾達真・加藤和生(2004)” 一般他者” を想定した愛着スタイル尺度の信頼性と妥当性の検討 九州大学心理学研究 5 19-27