自己効力感の意味

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「自己効力感」について解説していきます。

自己効力感の意味とは,ネムAC様作成

目次は以下の通りです。

①自己効力感の意味とは
②提唱者と歴史
③結果,効果予測
④自己効力感と4つの要因
⑤関連コラム

是非最後までご一読ください。

①自己効力感の意味とは

自己効力感はセルフ・エフィカシー(self-efficacy)と言われることもあります。まずは定義をいくつか紹介いたします。

達成することができると自分の可能性を認識していること(Bandura,1997)[1]

自分が行為の主体であり、行為について統制がとれ、外部の要請に対応できるという感覚(心理学辞典,1999,一部簡略化)[2]

ある状況において,結果を達成するために必要な行動を自分がうまくできるかどうかの予期(坂野ら, 1986)[3]

 

②提唱者と歴史

「行動主義」「社会的学習理論」の歴史を抑えると自己効力感の原理を理解しやすくなります。

行動主義とは

1920年代から1950年代は、人間がなぜ行動するのか?という回答については、行動主義心理学が主役でした。行動主義では、学習や行動は報酬と罰で決まると考えて行きます。

例えば、「挨拶」をすると、相手から「笑顔」が返ってくるとします。すると、次も挨拶をしよう!という気持ちになります。これはオペラント条件付けと言ったりします。このような何らかの対価があるからこそ、私たちは行動すると解釈していくのです。

社会的学習理論とは

1960年代になると、世界で4番に引用数が多い有名な心理学者であるバンデューラが「社会的学習理論」を提唱しました[4]。社会学習理論とは、人間の学習と行動に関する理論体系です。これに対して「社会的学習理論」においてバンデューラは、学習は報酬がなかったとしても、観察するだけ成り立つとしています。

アルバート・バンデューラ,自己効力感

バンデューラと自己効力感

バンデューラは 1977年に「Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change」という論文を発表し[5]、社会的学習理論に重要な要素である自己効力感について詳細な分析をしていきました。バンデューラの発表後、世界中の心理学者が研究を進め、自己効力感が、人間の行動やメンタルヘルスに重要な役割があることが理解されて行ったのです。

 

③結果,効果予測

バンデューラは自己効力感の要素について以下の2つの概念を挙げています。

結果予期(Outcome Expectation)

結果予測とは、行動をすることで生み出される、前向きな結末の予測を意味します。例えば、毎日50回腕立てをすれば、筋肉がつくぞ!という結果の予測を表します。この予測が前向きであれば私たちは行動するモチベーションを高くすることができます。

効力予期(Outcome Expectation)

効力予測とは、結果を生み出すために必要な行動をうまく行うことが出来る確信を意味します。例えば、腕立て伏せ30回、1か月毎日できる!という予測を意味します。

このように自己効力感には、どんな結果が待っているか?自分がそれを実際に達成できるか?という2つの要素があるのです。

③自己効力感と4つの要因

自己効力感には以下の4つが影響するとバンデューラは主張しています。

達成体験

達成体験とは、文字通り何かを「達成したり、成功したり」した体験のことです。ある課題や活動で成功したとき、他の同じような活動でも成功できると考えれるようになります。達成体験が最も重要とされており、過去に目標や課題を達成したことで自信が生まれ、自己効力感も必然的に高まっていくのです。

代理体験

代理体験とは、他人の成功体験を見ることで、「自分も成功できる」という前向きな気持ちが生まれることです。特に相手との類似性や近似性が高い場合に、体験しやすいとされています。例えば、自分と同程度の学力の友人がテストで100点を取ったら、「自分にもできるかも」と考えやすくなります。

言語的説得

言語的説得とは、「自分はできる」と思える言葉を他人からかけてもらうことです。人は他人から励まされることで、自信を持つことができ、自己効力感が高まるのです。例えば、教師から「あなたは努力家だから、きっと100点を取れる」などと言われると、勉強への自信が湧いてきます。

生理的高揚

生理的高揚とは、ワクワク感やドキドキ感のことです。気分が高揚することで、目の前の問題に対して、「自分にはできる!」という感覚が強くなり、自己効力感も高まっていきます。例えば、お酒を飲むとコミュニケーションが進んだり、運動すると仕事や勉強へのモチベーションが上がったりするなどが挙げられます。

 

⑤関連コラム

自己効力感を向上させる方法

当コラムでは自己効力感の意味や研究を紹介してきました。実践的に自己効力感を向上させたい方は以下のコラムを参考にしてみてください。自信をつける方法を紹介しています。

自己効力感を改善する方法

自己効力感診断

筆者は自己効力感を診断できるシステムを作りました。客観的に自己効力感の強さを把握したい方は以下の診断を参照ください。

自己効力感診断

 

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ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1]Bandura, A. (1997).  Self-efficacy: The exercise of control. New York : W.H. Freeman.
[2]中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999).心理学辞典 有斐閣.
[3]坂野雄二・東條光彦(1986).一般性セルフ・エフィカシー尺度作成の試み 行動療法研究, 12, 73-82.
[4]Bandura, A., Ross, D., & Ross, S. A. (1961). Transmission of aggression through the imitation of aggressive models. Journal of Abnormal and Social Psychology, 63(3), 575–582
[5]Bandura, A. (1977). Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84(2), 191–215.